前回のあらすじ
何か五月と総悟が公園に連れてこられた。
「火野君も何故ここに?」
「いや、何か家でぐーたらしてたらグラサン付けた星奈さんに着替えさせられて、そのままお姫様抱っこされてここに連れてこられたわ。よく分からんけど取り合えずゲームのデイリー消化してたわ」
「火野君はもっと動揺してください…………」
人生経験豊かな総悟はもはやこの程度の事では動揺しなくなったらしい。今後が心配だ。
「で、五月は?」
「それが、私も火野君と同じく…………」
「ふーん…………まぁええわ。大体分かった。よく分からんが俺も五月も今日はオフにするか」
「いや、どっちなんですか………………って、私もですか!?」
「そうだよ(肯定)」
「いや、私は」
「最近の五月は息抜きが足りておらんしのう。ちょうどいい機会だ、折角だから今日はぶらぶらすっか。よし、行くぞ!」
「あ、待ってください火野君!」
渋る五月だが、結局ダッシュする総悟を追いかけるのだった。
その後、ちょっと遅めの昼を取ってから総悟と五月は電車で一時間ほどの距離にある砂浜を歩いていた
「人の目の高さから見える水平線までの距離は約4キロメートルらしい」
「へぇ、そうなんですか?それは初耳です。火野君はどこで知ったんですか?」
「五月と声が似てる女子高校生に教えてもらった。ちな、他にもその人から道徳的に学んだ事も色々とあるで」
「ふふっ、三玖が知ったら嫉妬しそうです」
「えー、するかねぇ」
総悟はそう笑いながら歩き続ける。五月もその隣で笑みを浮かべる。
「(不思議ですね…………火野君と話しながら歩いているだけで、問題が解決した訳でもないのにずっと曇っていた心が晴れた気がします…………)」
やっぱり総悟の事が好きなんだろうなと五月が実感しているのをいざ知らず、総悟は五月に話しかける。
「五月は最近は受験勉強の方は大丈夫か?最近、ちょっと煮詰まっているような気がするが」
「……………正直、少し焦っているかもしれないです。目標の大学の偏差値に届かず、停滞している気がしていて」
「でも、偏差値が落ちている訳ではないんだろ?なら、学力は伸びている証拠だ。そんなに焦る必要はないぞ、マジで」
「火野君…………ありがとうございます」
「ん。………………折角だから、他にも悩み事があるなら聞くで」
「………………」
五月は一瞬迷ったが、嘘を交えながら話すことにした。
「…………実は、下田さんの塾の生徒から恋愛に関する相談を受けていまして」
「ほーん」
「その子は好きな人がいるみたいですが、既にその人か付き合っている彼女がいて………………それで、想いを封じようとしていて苦しんでいるみたいでして………こういう場合、どうすれば良いのでしょうか」
「………………」
一部嘘を交えて五月はそう尋ねた。確かに好きな人がいて、と言った相談を受けてはいるが内容は完全に五月が現在進行形で悩んでいることである。流石の総悟も即答は出来ず黙り込んでしまうが、少しして口を開く。
「まぁ、こういう場合は解決方法は2つしかないわな。1つは、自分の心の中で完結させて諦めるか」
「では、もう1つの方法と言うのは……………?」
「自分の気持ちを正直に相手に伝える事だな」
「!?」
五月はその答えを聞いて驚く。その答えは自分の中には無かったからだ。
「で、ですが…………それは相手を困らせてしまうと言うか、迷惑になるのでは………………?」
「確かに人によっては困らせちゃうかもな。でも、相手が誠実な人ならちゃんと想いを受け止めてくれるだろうさ。受け止めてくれる人なのかどうかは、ほんとにその人の事が好きなら分かるんじゃね?」
「……………か、仮にですが…………火野君はもし告白されても迷惑には感じないのですか?」
「別に。俺がその人にアタックした訳でもないのに、何か魅力的な部分を見つけてくれて好きになってくれたんだろ。迷惑どころか…………寧ろ、光栄だな」
「………………!」
総悟の脳裏に一花の顔が過る。正面から自分に好意を伝えてくれた一花を振るのは本当に心苦しかった。けど、その後も今までと変わらない態度で、親友でいてくれてる一花に総悟は感謝している。
「ま、どちらの方法を取るかは自分で決めるんだな。大事なのはどちらを選んだにせよ自分が後悔しない事だと俺は思う」
「後悔しない事………………」
五月は考える。自分が後悔しない選択とは何なのか。…………何より、自分がどうしたいのか。
答えはすぐに決まった。
「………………火野君、今日はありがとうございました。そろそろ戻りましょうか」
「あら、もうこんな時間か。戻るころにはとっくに日が暮れてるな」
「そうですね。………………あと、すみませんが最後にもう1か所寄っても良いですか?」
「?」
「で、この公園と言う訳か」
五月が総悟を連れてやって来たのはいつぞやに2人で夜に散歩した公園だった。あたりは既に真っ暗で月が上空にあった。
「ほんで、何でここに?」
「そうですね…………火野君風に言うならセルフオマージュ、という言葉が最適でしょうか」
「セルフオマージュ……………?」
五月は足を止めると、よく分かってなさそうな総悟の方を向く。
「火野君。あなたは、私や姉妹が迷った時はいつも一緒になって迷ってくれて、そして私たちを導いてくれましたよね」
「そりゃあ先生でもあり、友達でもあるからな。当然だろ」
「ええ。ですが、その当然が私にとってはとても嬉しかった。最近も自分の夢に自信を持てなくなった私の背中を押してくれて、そしてお母さんや私たちの為に無堂先生に怒ってくれた。その事がどれだけ嬉しかったか、たぶん火野君にも分からないと思います」
「んもー、今日は褒めてばっかやなー。別に何も出てこんぞよー?」
照れる総悟に五月は微笑を浮かべながら言う。
「………………そんな火野君だからこそ、私は惹かれたのでしょうね」
「そっかぁ………………え?」
雲に隠れていた月がその全容を現し、虚を突かれた表情の総悟と頬を赤く染める五月を照らす。
「火野君」
「月が綺麗ですね」
あの時は言葉の本当の意味を知らず無意識に使い、後から総悟に教えてもらった。そして、五月は改めてあの時と同じ言葉を総悟に送った。
「………………それが五月の後悔しない選択か」
「………………はい」
これが3度目の告白とあってか、思いのほか早く総悟は冷静さを取り戻した。
「迷惑になると思ってこの想いは伝えないつもりでした。けど、火野君は迷惑がらずにこの想いを受け止めてくれる優しい人ですから。その優しさに甘えさせてもらいました」
「………………そっか」
「それと、返事は言わなくて大丈夫です。答えは分かっていますから」
「………………」
「………………なんて。今言ったのも嘘ではないですが、本当の所は何か言われたら泣いちゃいそうなので」
目の端に涙の粒が溜まっていたが、五月は笑顔でそう言った。
「ふむ、五月の泣き顔も見てみたいような気もするが(畜生)……………ここは本人の希望を汲み取って何も言わないでおこう」
「ふふっ………………火野君は相変わらずいい性格をしていますね」
「だろ?」
「もう、今のは皮肉です」
五月は涙を拭うと笑った。
「……………よし。五月の勇気に敬意を表して、あの時作ったカレーをまた作ってやろう」
「え、本当ですか!?いつ作ってくれますか!?出来れば年内が良いです!」
「落ち着けや。その代わり明日からも受験勉強頑張ってくれメンス」
「勿論です。これでスッキリしたので、明日からは新たな気持ちで臨めそうです。……………なので」
五月は総悟に手を差し出す。
「明日からもよろしくね、火野君!」
「フッ…………ああ、任された」
総悟も差し出された手を掴んで握手した。とある別作品の言葉を借りると、仲良くなれるおまじないだ。
「くしゅん!……………うぅ、冷えてきましたね。そろそろ帰りましょうか」
「そうしろそうしろ。風邪なんて引いたらぶっ飛ばす。勿論、上杉を」
哀れ上杉、いつでもどこでも理不尽の犠牲者になり掛ける運命か。
「では火野君。また明日」
「おう、またな」
2人はそれぞれ反対方向に歩き出す。五月は先ほどの握手の感触を思いだすように自分の右手をさする。
「(例え実らなくても、この恋の思い出はきっと私の人生を輝かせてくれるもの何事にも代えられない宝。今後、何か辛いことがあっても私を支えてくれるでしょう。火野君、あなたに恋して本当に良かったよ。そして今なら、心の底から言えます)…………火野君、三玖。おめでとう」
空に向かってそう呟きながら帰路につく五月。その道中でコンビニが見えると、今回の功労者でもある姉妹4人の顔が浮かぶ。
「…………何か甘いものでも買っていきましょうかね」
姉妹のグループチャットに何か欲しいものがあるかを聞くメッセージを投稿して、五月はコンビニに入っていく。昨日まで雲で見えていなかった月は明るく、綺麗に街を照らしているのだった――――――。
to be continued……………
原作だと五月が自分の中で自己完結しちゃったのがちょっと不満でした。どうせなら告ってくれや………………。
これで五つ子全員が恋をして告白をしっかりと描写出来て満足です。勿論実ったものもあれば実らなかったものもありますが、わしゃ満足じゃ。でも、ちょっとせつねー。
本編完結まではもう残り数話の予定です。恐らく3~5話以内には完結すると思います。やる気スイッチが入ったり入らなかったりでマジですみません。だが私は謝らない(記憶喪失)
では、最後までお付き合いおなしゃす。