魔法少女リリカルなのはStrikers~二つの翼を持つもの~ 作:ジェナス
政人がオルセン大佐から機動六課へと出向が言い渡されてから半年がたったこの日、機動六課本部にある司令室では六課司令の八神はやて二佐とその補佐であるリィンフォースⅡ曹長の2人が翌日に迫った部隊の本格運用に向けて最終確認を行っていた。
「ふぅ、次の案件で最後ですよ。はやてちゃん」
「そか、えっと最後の案件はと。はぁ、そういえばこれが残っとったな」
リィンから最後の案件として渡された書類の束を見てはやてはため息をついた。
「確かにこの案件は難しいですよね。あの部隊の隊員を期間限定の試験部隊とはいえ、常に管理局の指揮下に置くのは六課が初めてですから」
「そうなんよな。でも彼の持っている実力とスキルは私達が直面するであろう状況を考えると必要不可欠なのは確かや。問題は彼が彼のスキルをどれだけ現場で遺憾なく発揮できる状態を私が作るかやな。まぁ彼が地球出身なのは少し楽になるかな」
渡された書類の束の2枚目に書いてある件の人間のプロフィールを見てはやては自分を奮い立たせた。
「そうですね。でもなぜクロノ提督はA-01に協力を求めたのでしょうか?」
「非魔力結合空間における戦闘能力と保有ランク制限の対象にならないからやな。常にフルパフォーマンスが行えるSランククラスの隊員を六課が保有するにはコレしか方法がないしな」
「確かにそうですね」
コン、コン
リィンの疑問にはやてが答えた直後、司令室のドアをノックされた。
「どうぞ」
はやてが入室の許可を出すと、栗色の髪の女性と金髪の女性の2人が入ってきた。
「はやてちゃん。お仕事、もう少しかかる?」
「もし良かったら久しぶりに3人で食事でもどうかな?」
その2人ははやての小学生の頃からの親友である高町なのは一等空尉とフェイト・T・ハラオウン執務官だった。彼女達との間柄には階級というものは意味を成さず、はやては気軽に答えた。
「うーん、一応今やっとる案件が最後なんやけどな、その案件がちょっち難しくてな」
「もしかして、例の部隊から来る人?」
「そや。そういえばセキュリティ上の問題で2人にはまだ誰が来るか言ってなかったな。ちょうど今朝セキュリティレベルが下がった事やし一応2人にも名前と顔を教えとくな」
はやてが悩んでいる案件にすぐに気がついたなのはが確認を取るとはやてはなのはとフェイトの2人に自分が持っている資料を渡した。
「さすがアーリアセキュリティ社の実行部隊の人だね。私も執務官として一緒に捜査をしたことがあるけど毎回渡される資料に書かれている資格のレベルの高さには驚かされるよ。あ、六課に来るのは地球出身の人なんだね」
渡された書類に書いてある資格を見てフェイトは素直な言葉を漏らした。
「そういえば、フェイトちゃんはA-01の人たちと一緒に捜査をしたことがあったんやったな」
「うん、あの部隊の人たちは本当にすごいよ。陸戦も空戦も関係なく高いレベルで戦えるし錬度は多分管理局の平均的な部隊よりはるかに優れてるよ。でもなのはの方がより詳しく知ってるんじゃないかな。よく航空戦技教導隊とは合同演習をしてるみたいだから。なのは?」
はやてとフェイトが話している間何も話さないなのはを不思議に思い、フェイトがなのはに声をかけると、なのはは静かにつぶやいた。
「ま、政人君?」
「え、まさか知り合いなんか? なのはちゃん」
「も、もしこの人が私の知ってる人だったら」
はやての言葉になのははぎこちないながらも首を縦に振って肯定の意思を示した。
「でも、どうして?」
「2人には話したことがあるよね。私には‐」
『八神司令、高槻大尉が六課への最終アプローチに入りました。着陸後、すぐに地下格納庫に入るのでそこで待機していてほしいそうです。その場で搭乗機の説明をしたいそうです』
なのはが詳しい説明をしようとした瞬間六課のHQから通信が入り、中断されてしまった。
「わかった。すぐに行きます。詳しい話は後やな。それじゃ行こか」
通信を聞いたはやてはすぐに六課地下にあるA-01の装備の整備に割り当てられた地下格納庫になのはとフェイト達と一緒に向かった。
はやてたちが六課地下にある格納庫へと向かった頃、CFA-44《ノスフェラト》に乗った政人は最終アプローチに入っていた。
『視界良好、風向き130度、風速10ノット。目視でも十分に着陸できますね』
「そうだな。だが滑走路の距離もあまり余裕が無いんだ。ILSを使用した計器着陸を行う」
烈風の管制を聞きながら、政人は自身がかぶるヘルメットのHMDにILSを表示させた。
『フライトコントロールよりヴォルメテウス01、そのまま着陸コースを維持せよ』
「こちらヴォルメテウス01、了解した」
六課のHQ内に併設されている管制室からの通信を聞き、政人はノスフェラトのエンジンノズルを下に向け、さらにフラップ並びにスラット更にランディングギアをおろした。するとノスフェラトは通常の航空機では失速してしまう角度まで機首を上げた。推力偏向ノズルによってSTOL機能を得ているノスフェラトだからこそ可能な着陸だった。
「3,2,1…タッチダウン」
その数秒後、滑走路にギアが接地してから数秒後、十分に減速したノスフェラトは誘導路を通り滑走路前の
『ナイスランディング、ヴォルメテウス01』
「そちらこそ、いい管制をありがとう」
エプロンで待機していた整備員の誘導に従って指定された場所で機体を停止させエンジンを止めると、別の整備員によってノーズギアにトーイングカーが接続され、地上のハンガーの中へと格納された。ハンガー内の指定の場所へと格納されたノスフェラトはメインギアに機体止めが付けられた。その後、別の整備員に合図が送られ、ノスフェラトを地下のハンガーに移動させるべくエレベーターが下がっていった。
「はぁ、疲れた」
周りの景色が下から上へと流れていく中、政人はヘルメットを脱ぎながら溜息を付いた。
『確かに空中給油を2回もしましたからね。お疲れ様でした。マスター』
「ああ、ありがと。それにしても俺が来る前に地上要員を全員ここにこさせて正解だったな」
『そうですね。局の人間は回転翼機にはなれているそうですが固定翼機に慣れている人間はいないですからね。局の人間では到着もあと2,3時間は延びていたでしょう』
「確かにな。っと、着いたか」
いつもと違う声音の政人に対して烈風が声をかけた。
『緊張しているのですか?』
「ああ、まさか、こうやって再会するなんて思ってもいなかったからな。烈風はどうだ?」
『私は楽しみです。マスターが私と出会う前を知っている方はご両親を除けば殆どいませんからね』
「たしかにそうだな」
景色の流れが止まり、いきなり入ってきた眩いライトの光に目がくらんだが、直ぐに慣れ政人の目に入ってきたのはアーリア社の格納庫に匹敵するほどの設備が備わっているであろう格納庫だった。そこでは何人もの人間が格納庫中を駆け回り、たったいま入ってきた唯一の機体の整備の準備を行っていた。
「これまたすごいな。滑走路もそうだったがこれだけの設備、オルセン司令。此処への出向自体は俺に話す前にすでに決まっていたな」
『そのようですね。さすがに我社の施設科連隊をつぎ込んでもわずか半年でこれだけの設備を整えるのは難しいですからね』
エレベーターも完全に止まり、機体を載せたエレベーターがロックされると政人はコックピットハッチを開け、整備主任へと声をかけた。
「おやっさん、いつもどおり燃料満タンで通常の多目的装備で整備しておいてくれ」
「了解、それとここの隊長が待機所で待ってるってよ。しかも局が誇る三大美女だ。爆ぜろ」
政人から指示を受けた整備主任は格納庫の直ぐ隣にあるパイロット待機所を目線だけでさした。そこから格納庫の様子を見つめている3人のうち栗色の髪の女性を見つけた政人は少しだけ悲しそうな目をするとうなずいた。
「分かってるよ。俺が呼んでもらったんだからな。それじゃ、こいつを頼むぜ。おやっさん」
「おお、行って来い」
コックピットにあるコンソールに差し込んでおいた待機状態の烈風を抜き取ると政人はコックピットから降りてパイロットスーツともなっているバリアジャケットを解除し、さらにヘルメットを袋に入れると待機所へと向かった。
「あれが、アーリア社が開発した最新鋭戦闘機か。思ったよりシンプルな形やな」
「こっちの世界の飛行機とは全然違うね。どちらかと言うと地球の戦闘機に似てるね」
「うん、でもこっちの世界は基本的に輸送が目的だから戦闘機とは違いが出てくるだろうし、塗装や識別番号も迷彩能力を考えている塗装だね」
たった今地上から降りてきた戦闘機CFA-44《ノスフェラト》を眺めていた3人はそれぞれの感想を漏らした。するとそのノスフェラトのコックピットハッチが開き、パイロットと整備員が話している様子が見て取れた。
「彼が出向してきた高槻政人大尉やな」
「うん、そうみたいだね。なのは、やっぱなのはの知っている人?」
「この距離からだと確信は持てないんだけど。多分、私の知ってる政人君だと思う」
パイロットの姿を見たなのははこちらに視線を送っている彼の姿に自分の幼い頃の記憶を重ね合わせた。
彼女は自身の相棒と一緒に毎日持ち歩いているもう1つの首飾りの感触を身を包んでいる制服の上から静かに確かめた。
コンコン
それからすぐに待機室のドアがノックされた。
「どうぞ」
はやてが返事をするとアーリア社の制服を着た政人が入ってきた。
「本日よりアーリアセキュリティ社、A-01連隊第01特務小隊《ヴォルメテウス》隊より出向してまいりました高槻政人大尉であります」
「管理局本局遺失物管理部、機動六課司令、八神はやて三等陸佐や」
「機動六課《ライトニング》分隊隊長、フェイト・T・ハラオウン執務官です」
「同じく機動六課《スターズ》分隊隊長、高町なのは一等空尉です」
政人の敬礼にはやてたち3人も答礼を返した。敬礼を解いたなのははすぐさま政人に話しかけたそうだったがなのはが言葉を発する前に政人は頭を下げた。
「今回は皆さんよりも階級が低い私の為にわざわざ地下に降りていただきありがとうございます」
「いえいえ、高槻大尉の行動は私達も納得していますから、気にしないでください」
「ありがとうございます、八神三佐。ではさっそくアイツについて説明をしたいのですがよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」
はやての言葉を聞いた政人は再び頭を上げ、彼の背後にある窓から見えるノスフェラトを親指で指した。そしてはやてから許可をもらうとブリーフィングルームにもなるこの待機室にあるプロジェクタを作動させ、首から烈風を取り出しコンソールへとつないだ。更には彼が持ってきたかばんの中から3つのタブレット端末をはやて達3人に渡した。
「では、私の搭乗機であるCFA-44《ノスフェラト》について説明させてもらいます」
政人ははやて達3人が待機室のソファに座ったのを確認すると部屋の電気を落とし窓も遮光カーテンで覆うと説明を始めた。
「まずCFA-44《ノスフェラト》は俗に言う軍用機の中でもステルス能力を持った
政人の説明を3人は手渡された端末を見ながら真剣に聞いていた。そんな中フェイトが政人に説明をした。
「特殊武装とは具体的にはどんなものなのですか」
「詳しくは話せませんが、対次元航行艦を想定した物と数的不利を覆すための装備ということだけ伝えておきます」
「そ、そんな対次元航行艦用の装備やって」
「た、確かに最近は独自の次元航行艦を持つテロ組織も多いけど」
「まさかアーリア社の技術がそこまで行ってるとは思わなかったよ」
政人の説明に3人は驚愕をあらわにした。
「また、ノスフェラトのコンソールにインテリジェンスデバイスを差し込むと簡易的な警戒機としても用いることが出来ます。さらに…・・・」
その後も数十分ほど政人によるノスフェラトの説明が続いた。
次回、彼女との本格的な再開の予定。