魔法少女リリカルなのはStrikers~二つの翼を持つもの~ 作:ジェナス
一時的にとはいえ管理局の指揮下に入ると言う事から管理局から支給された地上部隊の制服に着替えた後、昼食を食終えると政人は機体付から整備記録をもらいその整備記録を宛がわれた自室でチェックしていた。
『それにしてマスターの地上本部の制服姿は久しぶりですね』
「言われてみればそうだな。あっちじゃ基本つなぎ姿か野戦服だったもんな」
暇だったのか烈風は政人に話しかけた。政人は整備記録を机の上に置き、鏡に映る自分の姿を見た。
「こいつを着るのもかれこれ7年ぶりになるのか」
『そうですね。あっという間に戦闘機パイロットになってしまったのでそれ以上の年月を感じますよ』
「そうだな」
完全実力主義が常識の管理世界だから可能だった今までの不相応とも呼べる自身の経歴を思い浮かべながら政人は静かに呟いた。
コンコン
政人が整備記録を読み終えた頃、ドアがノックされた。{俺の部屋を知っているのは限られているが誰だ?}
こんな中途半端な時間にあまり隊内に知り合いのいない政人を尋ねてくる人物は少なかったが、それでも政人は誰が来たのかはドアを開けるまで分からなかった。
「政人君、時間いいかな?」
ドアの前に立っていたのは政人の幼馴染のなのはだった。
「なのはか、どうした?」
「うん、はやてちゃんが魔導士としての政人君の実力を見たいらしくて」
「・・・・・・なるほどな。少数精鋭部隊だからこそバランスよく隊員を配置してより任務達成率を上げたいってわけか」
「うん、さすが政人君昔からそういう鋭いところは変わらないよね」
「まぁな。それで演習内容は? シミュレーターを利用した模擬作戦か? それとも1on1の模擬戦闘?」
「後者だよ。模擬戦闘のほうがその人の本来のポジションが見えてくるからね」
「お、流石は教導隊だな。ということは俺の模擬戦相手は」
「うん、私。本当は政人君とやりたいって言ってた人が若干2名ほど居たんだけど、実力を見るなら教導隊所属の私のほうが適任だってはやてちゃんが」
「そうか。まぁ筋は通っているな。八神達はもう演習場に向かっているのか?」
「うん、待たせてもなんだから私達も早く行こう」
「そうだな」
なのはの言葉に同意した政人は机の上に置いてあった烈風を首にかけるとなのはの後に続いて演習場へと向かった。
演習場へ向かった政人が見たのは何も無い人工島だった。
「あそこが演習場って事は。最新のシミュレーターを導入しているみたいだな」
「うん、一応私とレイジングハートが監修して作った自信作なんだ。ビルとか瓦礫とかの感触も高いレベルで再現してるんだよ。実際にビルには立つことができるんだよ」
「ああ、知ってる。大本を開発したのはアーリア社だし。俺達A-01も利用しているからな。通常の訓練に比べ危険は高いが、その分実戦に限りなく近い経験が出来るんだよな。こいつは」
「それじゃ、シミュレーターを起動させるね」
人工島を見てすぐさまその正体を見破った政人に対してなのはは感心したように返した。そしてなのはがコンソールを操作してシミュレーターを起動させると人工島は一気に市街地のビル群へとその姿を変えた。
『なのはちゃん、高槻君、聞こえ取るか?』
政人達が演習場へと向かおうとした時観戦室に居る少しやつれた感が漂うはやてから通信が入った。
「聞こえてるよ」
「感度良好。問題無し」{なのはの奴、模擬戦の慣習ができるギリギリの所までO☆HA☆NA☆SHIしたな。昔以上に性格が大変なことになっているみたいだな。テスタロッサも似たような状況だな}
「政人君、ドウカシタ?」
「い、いえ。何でもありません」
政人の考えを感じ取ったのかなのはがその瞳のハイライトを消して話しかけると政人は冷や汗を流しながら敬礼をした。そんな2人のやり取りを見てはやては苦笑いを浮かべた。此処で下手なことをいって再びO☆HA☆NA☆SHIされるのが嫌なようだ。
『それで高槻君、なのはちゃん、ルールを説明するで。状況は見てのとおり市街地での遭遇戦や。2人は演習場のそれぞれ端からスタートしてもらうで。その後、どちらかが戦闘不能、若しくはこちらが状況終了を宣言するまで戦ってもらう。また双方ともCPとの連絡は取れないとする。そしてなのはちゃんのリミッターはまだ機動六課が正式稼動してないことを理由に一時的に外してある状態や。ただしこれはあくまで訓練なのでブラスターシステムならびにそれに準するシステムは使用禁止。使用した時点で状況終了とします。そしてこの模擬戦では高槻君の空戦魔導士としての索敵能力、隠密能力、空戦能力を見させてもらう事になっとる。ええか?』
「うん、大丈夫だよ」
「了解」
『それでは、2人ともグッドラック』
はやてからの励ましの言葉を最後に通信が切れ、ウィンドウも同時に消えた。
「負けないよ」
「ああ、当たり前だ」
はやてからの通信が切れると2人の目の色が変わり、なのはは教導官、政人は1人の兵士としての目になった。そして数分後、2人はバリアジャケットを纏いスタート地点に到着した。
「こちら、ヴォルメテウス01、開始位置に付いた」
『こちら、スターズ01、開始位置に付きました』
『それでは、状況開始!!』
2人から通信が入るとはやてが模擬戦開始の合図を叫んだ。
模擬戦が始まった瞬間なのはと政人は対照的な行動に出た。2人とも索敵用のサーチャーを出現させたのは変わらないが、なのはは飛行魔法で自身も索敵を行い、政人はアサルトフォームに変形した烈風を手にビルの中へとその姿をくらませた。
「市街地戦ではなのはは大体ビルの4階から6階ぐらいの高さで索敵を行うことが多い、なら7階以上で陣取れば高い確率でなのはの上方を取れる」
『はい、ですが気をつけてください。すでにこちらにサーチャーが幾つか向かってきてます』
「了解、なのは本人の魔力反応が感じられたら直ぐに教えてくれ」
『了解しました。マスター』
市街地戦に特化した迷彩服を身に纏い政人は魔力を使わずになのはよりも上方を取るために自身の足で階段を駆け上がっていた。数秒後、目標の階に到達した政人は自身が放ったサーチャーの反応を確認していた。
『マスター、11方向より魔力反応多数』
魔力反応を感知したことを烈風から伝えられると政人は外からの死角に身を潜め、バリアジャケットについているポーチから鏡を取り出し外の様子を伺った。
「サーチャーというより索敵能力が付いているスフィアだな。処理能力が高いレイジングハートと空間把握能力が高いなのはのコンビだから成せる力技だな」
『発見と同時に攻撃して砲撃の射線上へと焙り出す積もりでしょうか』
「だろうな。いつの間にそんなえげつない性格になっちまったのだろうか?」
政人は愚痴をつぶやきながらも、回避コースが多く取れる路地に面している窓に近寄った。
『どうやら大体ここら辺に居るということには気付いたようですね』
「ああ、それぞれのスタート地点は互いに分かっているし、俺のスタート地点から一番近くて隠れられるのはこのビル群だからな。スフィアの数がさっきから増え続けてやがる。この布陣なら砲撃主はっと」
自身を囲うスフィアの布陣を見てなのはが陣取るであろう場所の候補を挙げ、なのはが陣取っていたらいやな場所に向けてサーチャーを移動させた。さらに自分も攻撃に向けて移動を開始していた。
『サーチャー1番、3番。反応ロスト』
「やっぱ、そこに居たか」
待ち伏せされたら一番嫌な場所に面した窓の近くに移動していた政人だったがサーチャーの反応がロストした場所が自分が向かっていた場所だったことを受け、そのまま全速力で窓を突き破り、飛行魔法を発動した。
「
外に出た直後、自分が突き破った窓の真下を通り過ぎていくなのはを見つけ交戦を宣言すると烈風の銃口を向け、引き金を引いた。
『!マスター! ブレイクレフト!』
「スターズ01、エンゲージオブディフェンシブ!」
政人の魔力反応を感知したレイジングハートがなのはに指示を出すと政人と同じように交戦を宣言して左の路地へと急旋回を行い、政人の攻撃を回避し政人が放った魔力弾は地面を穿つだけに終わった。
「逃がさねぇ! っチィ!」
「ストレイトバスター!」
なのはを追撃し、政人が路地へと差し掛かった瞬間、なのははレイジングハートを政人に向け速射砲を放った。
「当たるかよ!」
政人はなのはの速射砲を砲撃に沿うようにバレルロールで回避した。そして烈風を一時的に待機モードへと変換し同時に日本刀型のストレージデバイスを呼び出した。
「ハァ!」
「 !? クゥッ」
砲撃を回避しなのはへと接近した政人は呼び出した刀を上段から振り下ろした。なのはは政人の斬撃をレイジングハートで受け止め、しばしの間つばぜり合いとなった。
「やっぱり、剣術止めてなかったんだね。政人君」
「ああ、こいつは俺の根源に繋がるものだからな」
政人となのはのつばぜり合いは体格で勝る政人が徐々に押し始めていた。
{やっぱ、力じゃ勝てない。それなら!}
押し込まれつつあったなのはは索敵に飛ばしていたスフィアを呼び戻し政人の背後に配置した。
『マスター! チェックシックス! ブレイク!』
「チィ」
なのはの攻撃は直前に察知した烈風の警告に反射的に上昇回避した政人には当たることなく自身へと向かってきたが、思念コントロールでなのはの直前で急激に進路を変えて政人へと向かった。
「今度はコッチの番だよ!」
「だからといって負けるわけにはいかないんだよ!」
背後を取られた政人は装備を烈風へと戻し、左右へとビルの間を縫うようにして回避していた。
{良し! このまま背後に}
『マスター! ブレイク! ライトハイ!』
政人は背後から迫るスフィアの攻撃を左へのターンで回避しそのままなのはの背後へと回ろうとしたが下から新たなスフィアからの攻撃を警告されすぐさま右へシャンデルを行い回避した。
{ちぃ、スフィアの数と精度が予想以上だ}
{予想以上に回避能力が高い}
互いに模擬戦の前に予想していた能力より相手の能力が高いことを感じ取っていた。そんな中、なのはは自身の空間把握能力を遺憾なく発揮し徐々に政人の回避コースを狭めていった。
{徐々に追い込まれている。烈風、まだか?}
{もう少し......今です}
徐々に回避コースが狭まりつつある事に焦りを見せた政人だったが、烈風が合図を送ると政人の目の前に自身へと迫るスフィアとなのはをロックマーカーに捕らえたディスプレイが表示された。それと同時に政人は減速魔法を発動させ、さらに体を持ち上げて自分自身で空気抵抗を受け、急制動をかけた。そしてそのまま宙返りへと移行し、烈風がロックした目標に向かい宙返りの途中でアサルトフォームツーハンドモードに移行させた烈風の引き金を引いた。
「ウソッ!?」
なのはは政人が宙返りをした瞬間に何とか回避行動を取ったがスフィアたちは政人が放った魔力弾によって貫かれて破壊された。更に政人に後を取られ、今度はなのはが追い回される立場になってしまった。
「逃がさない」
政人の周りに数個のスフィアが形成され政人が加速するのと同時になのはに向けて発射された。
{通常誘導型、それなら}
なのはは放たれたスフィアが一般の魔導師達が使う思念誘導型ではなく通常誘導型だと判断し誘導を振り切る為に右方向へ旋回しようと体を右に傾けた。だが、その瞬間なのはの行く手を遮る様に魔力弾の弾幕が張られ回避コースが消されてしまった。
「グゥッ」
なのははすぐさま上昇し回避コースを変えたがそこにスフィアが到達し直撃を受けた。
『ソニックムーブ』
スフィアの直撃を受け、体勢を崩したなのはに向け政人は日本刀を取り出し加速魔法を発動させなのはに切りかかった。
『プロテクション! ロードカトリッジ!』
「ディバインバスター!」
政人の斬撃をレイジングハートがオートガードで受け止め、更にカートリッジと呼ばれる魔力ブースターを使用した。その間に体勢を立て直したなのはがゼロ距離砲撃を放ち政人は吹き飛ばされた。
「グゥ」
ゼロ距離でしかもカートリッジによって強化された砲撃の直撃を受けたかに思われた政人だったがなのはが砲撃体勢を整えた直後に防御魔法を展開させギリギリ直撃だけは免れていた。
「防御の上から叩き込まれる。なのはと戦った事のある先任たちの言葉が身に染みて分かった気がする」
だが、吹き飛ばされたことからも分かるとおり、政人はなのはの砲撃を完全に防御しきった訳ではなく確実にダメージを受けていた。
「防御の上からでも叩き潰す事ができるのが砲撃タイプの真骨頂だからね」
「いいや普通は貫くのが砲撃タイプだからね。叩き潰すのはどちらかというと前衛タイプでしょ」
「にゃはは、そうだっけ?」
「って、笑顔で砲撃を撃つな! 怖ェよ」
政人の指摘を受け、とぼけたような笑いを漏らすなのはだったがちゃっかり砲撃を放ち、政人を追い詰めていった。政人は不意打ちを受けた形になったが、先ほどと同じようにバレルロールで砲撃を回避しなのはに接近した。
『ソニックムーブ!』
政人が日本刀を振りかぶりなのはがレイジングハートを構え防御体勢に入った瞬間、政人は加速魔法を発動させなのはの後に回り込んだ。
「レイジングハート!」
『レストリクトロック』
だがその瞬間、なのははレイジングハートに発動待機状態にさせておいた拘束魔法を発動させ、デバイス、政人の両方をその場に拘束させた。
「チィッ」
「カートリッジロード」
『ロードカートリッジ』
何とかして拘束を解こうともがく政人に対してなのははカートリッジを2つロードし更に模擬戦中に四散した魔力素を収束し始めた。
「外れた!」
「ディバインバスター!」
政人が拘束魔法を破壊するのとなのはが砲撃を放つのはほぼ同一だった。だが政人にとって直撃するまでの数秒間さえあれば十分だった。
「龍月」
政人は自身に迫る砲撃に対して自分の魔力を乗せた斬撃を放った。すると切っ先から魔力で構成された巨大な龍が現れ砲撃とぶつかった。それだけではなく、なのはの砲撃さえ取り込み更に巨大な姿になりなのはへと迫った。
「ラウンドシールド!」
『ロードカートリッジ』
砲撃直後だったため、回避は間に合わないと判断したなのははカートリッジを使用した防御魔法を発動して政人の攻撃を迎え撃った。
{だめ、シールドが保たない。それなら!}
シールドに幾つもの罅が入り、数秒後には破壊されると判断したなのはは貼っているシールドの角度を僅かばかりか上へと向けた。すると力のベクトルが変換され、政人の攻撃は上空へと消えていった。
「ふぅ」
「一息つくのは少し早くないか? 仮想敵部隊のエースなんだろ?」
「な!?」
政人の攻撃を何とか凌ぎ切ったなのはが一つ息を吐くと政人がなのはの後から抱きつくようにしてナイフを首筋に向けていた。
「チェックメイトだな」
『そこまで! 状況終了!』
その直後、はやてから通信が入り模擬戦の終了が宣言された。
サブタイトルから何処かのバトルジャンキーが出ると思った方、残念、模擬戦の相手は我らが魔......じゃなくてなのはさんでした。確か戦技教導隊って仮想敵を行う部隊なのでその設定を活かしてみました。
~おまけ~
はやてから状況終了と言われた政人はナイフを収納し、なのはから離れた。
『それにしても、なのはちゃんに抱きつくなんて勇気あるな。高槻君は』
『でもマスターは高槻殿に抱きつかれて嬉しかったみたいですよ。はやて』
「にゃ! はやてちゃんもレイジングハートも何を言ってるの!」
「はぁ、バインドで拘束してもすぐに外されると思って、直接拘束しただけなんだが」
『それでも、どさくさにまぎれてなのはさんの胸の下を通るように拘束していましたよね、マニアックですね。マスター』
「なっ! ね、狙ってやったわけじゃないぞ」
『どもるって事は認めるんですね。変態マスター』
「だから、違うって言ってんだろ!」
『狙ってやってくれたらよかったですね。マスター』
『次は、前から抱きしめてもらうか? なのはちゃん』
「だから、違うって言ってるでしょ!」
上司と相棒から弄られる2人のエースは顔を真っ赤にしていた。
※おまけは基本的にキャラ崩壊が激しいキャラ居ます。