魔法少女リリカルなのはStrikers~二つの翼を持つもの~ 作:ジェナス
政人が六課にやってきた翌日、六課隊舎では六課の設立式が行われていた。
「それでは、話が長い部隊長は嫌われてしまうんで部隊長訓話はここでお終いにします。次はアーリア社から出向してきた高槻政人大尉からの各種注意事項や」
はやてに指名された政人は昨日の砕けた態度からは想像も出来ない軍人らしい動きで壇上に立った。
「注意事項の前にまずは俺のことだな。俺はさっき八神部隊長が言ったようにアーリアセキュリティ社の実戦部隊から出向してきた高槻政人大尉だ。名前の響きから気付いた人間も居ると思うが地球出身だ。一応そこのスターズ分隊隊長の高町一尉とは幼馴染だ」
「そ、そんな!」
「あぁんまぁりぃだぁ!」
「くっ、偶然を装って着替え中の高町一尉とフラグを建てようと思ったのに」
「こんなにも強固なフラグを建てているとは予想外だった」
「フェイトちゃんは俺の嫁!」
「シグナムさん! 踏んでください」
「ヴィータちゃん、ヴィータちゃん、ハァハァ(*´д`)」
政人がなのはと幼馴染だと暴露すると、部隊のあちこちから嘆く男性隊員の声が上がった。
「隊長陣、気持ちは分かりますが、話が進まなくなりますので一旦デバイスをしまってください」
六課の変態達に対してデバイスを取り出した隊長陣に対して政人は静かに宥めた。
「変態どもは後で絞めるとして、早速注意事項へと入る。まず全体に言える事だが俺に関するありとあらゆるデータはアーリア社の所有物になっている。任務後のデブリーフィングには戦闘映像は提供するが、基本的には外への持ち出しは禁ずる。あと、地下格納庫への立ち入りは隊長陣の誰か若しくは俺の立会いが無い下での立ち入りは禁止する。もし1人で入ろうとした場合、実弾を撃たれたとしても文句は言えないからそのつもりで。次に実戦部隊に対してだが、滑走路でのランニングをしても良いが何も落とすな。もしそれが原因で事故が起きたらいろいろと大変なことになるからな。最後に、俺に関しては正式な局員ではないので任務や訓練中で無い限りそれぞれが楽な態度で俺に接してくれ。以上」
政人は注意事項を伝えると敬礼をして壇上を降りた。
「それでは六課設立式をこれで終了します。さっきの5人はちょっと部隊長室に来ような?」
はやてが設立式の終了を宣言したがその顔はドス黒い笑顔に染まっていた。
設立式の直後、早速訓練を始めるべくなのはは六課のメカニックであるシャリオ・フィニーノと共に訓練場へと向かっていた。
「それにしても、驚きました。まさかあのアーリア社から出向してきた方がなのはさんの幼馴染だったなんて」
「あはは、私も、まさかこっちで再会するなんて思ってもいなかったんだけどね」
シャーリーの言葉になのはは苦笑いを浮かべた。そして、彼女達が訓練所へと到着すると青髪の少女がキョロキョロと当たりを見渡していた。
「ふふっ、どうやら訓練スペースに何も無い事に驚いているようですね」
そんな少女の姿を見てシャーリーが微笑むが、なのははそんな少女の行動に心当たりがあるのかその少女に声をかけた。
「スバル、誰か探しているの?」
「あ、なのはさん!」
なのはに話かけられた少女、スバル・ナカジマは驚いて尻餅をついていしまった。そんな彼女になのはは手を差し出して彼女が立ち上がるのを助けた。
「ス、スバル何やってんのよ!」
立ち上がったスバルに怒鳴ったのは彼女の相方であるティアナ・ランスターだった。
「あはは、ご、ごめんなさい」
「まぁまぁ、スバルが探していたのは高槻政人大尉かな?」
「は、はい!? でも何でそれを?」
探し人を言い当てられ困惑をしめしたスバルに対し、なのはは微笑みながらスバルの質問に対して答えた。
「政人大尉が此処に来たばかりの時に昔お世話になった方の娘さんがこの部隊に来るって言ってたからもしかしてって思ったんだけど、正解だったみたいだね」
「は、はい。マサ兄には昔、めちゃくちゃお世話になってたんですけど、ここ数年は全く会ってなくてそれで」
「そっか、スバルも政人大尉にお世話になってたんだ」
「え? なのはさんもなのですか」
「うん、まだ魔法の存在さえ知らなかった頃だけどね」
スバルの言葉に懐かしそうにそう答え、一度目を瞑った後、訓練所に集合している4人のフォワード達を見渡した。
「スバル・ナカジマ二等陸士」
「はい!」
「ティアナ・ランスター二等陸士」
「はい!」
「エリオ・モンディアル三等陸士」
「はい!」
「キョロ・ル・ルシエ三等陸士」
「はい!」
スバルとティアナに続いて呼ばれたライトニング分隊の隊員である赤髪の少年、エリオと桃髪の少女、キャロも彼女達に続いてその見た目からは考えられないような力強い返事を返した。
「それじゃ、さっそく訓練を始めようか」
「え、でも、ここでですか?」
「うん、そうだよ。シャーリー」
「はーい。見ててね、これが六課が誇る最新型シミュレーター」
なのはに頼まれたシャーリーは手元にコンソールを呼び出してすばやく各種データを入力し始めた。
「す、すごい」
「な、何もなかったのに」
すると、海上に浮かぶ人工島に都市が浮かび上がった。
「それじゃ、あっちに移動しようか」
「え? マサ兄は?」
ゴォォォォォォォ
訓練が始まる直前になっても政人が現れないことを疑問に思ったスバルがなのはに問いかけた瞬間、低く、唸るような轟音が聞こえてきた。
「こ、この音は?」
「もしかして」
「そ、政人大尉はあそこだよ」
そう言ってなのはが指で示した先には2つの白き尾を引きながら上昇していくノスフェラトの姿があった。
なのは達が訓練所に集合している頃、設立式を終え、ブリーフィングルームでウェザーブリーフィングを行った政人は午前の飛行訓練に入るべくノスフェラトの最終チェックに入っていた。
「1番チェック、異常なし。2番チェック、左、右、上、下、ラダー、左、右、異常なし。3番チェック、左、右、上、下、異常なし。4番チェック、アクチュエーター異常なし。5番チェック、フラップダウン」
プリタクシーチェックを終え、政人から機体止めを外すハンドサインを確認した機付長が他の整備員に合図を送ると機体止めが外され安全地帯へと退避した。それを確認した機付長が機体を地上へと運ぶエレベーターを操作する整備員に合図を送るとノスフェラトは地上へと運ばれていった。
「Control. Volmeteus01 Check in. Data link clear.」(司令室、こちらヴォルメテウス01、準備完了、データリンク正常)
ノスフェラトが地上へと運ばれる中、政人は司令室へと通信をつなげた。
『Volmeteus01, Control. Departure runway 36.』(ヴォルメテウス01、こちら司令室、出発滑走路は36番滑走路です)
政人が被るヘルメットに内蔵されているスピーカーから司令室からの指示が流れてきた。
「Volmeteus01, roger」(ヴォルメテウス01、了解)
機体がエレベータに乗せられ地上へと運ばれつつある中、政人と司令室はやり取りを続けていた。
『Volmeteus01, Wind 325 degrees 5knots. Climb angel 30, contact channel 1. Read back』(風向325度、風速5ノットです。高度30,000フィートへと上昇後01チャンネルで交信せよ』
「Volmeteus01, Wind 325 degrees 5knots. Climb angel 30, contact channel 1.」(了解、風向325度、風速5ノット。高度30,000フィートへと上昇後01チャンネルで交信を開始する)
『Volmeteus01 read back is correct .Advice when you ready 』(ヴォルメテウス01、その通りです。地上に出たら教えてください)
「Volmeteus01 roger」(ヴォルメテウス01、了解)
ここで通信が一旦終了し、その間に政人は
「Control, Volmeteus01. Ready」(司令室、こちらヴォルメテウス01、地上に出た)
『Volmeteus01, Wind 330 degrees 5knots. Clear for take off runway 36 .Read back』(了解しました。風向330度、風速5ノットです。36番滑走路からの離陸を許可します)
「 Volmeteus01, Wind 330 degrees 5knots. Clear for take off runway 36」(ヴォルメテウス01了解、風向330度、風速5ノット。36番滑走路から離陸する)
『Volmeteus01 read back is correct .Good ruck』(ヴォルメテウス01、その通りです。幸運を)
司令室から最終的な風向と離陸後の指示が出される中、政人は司令室の指示に従い機体を離陸位置へと進ませていった。
「Thanks Flight Control Volmeteus01 CFA-44出るぞ!」
離陸位置まで来ると政人は周囲に人や飛行中の航空機がいないかを確認し、両足でブレーキを踏み込んだ。そして、左手で握り締めた2つのエンジンにそれぞれ割り当てられたスロットルを同時に前へと押し倒した。そしてスロットルが押し倒されると、数秒のラグの後2つのエンジンの回転数と出力は大幅に上昇し、数秒間ふかし続けているとエンジンが安定し始めた。それを音で確認した政人がブレーキを離すと機体はいっきに加速した。
「V1......VR」
滑走路の半分も行かないうちに機体の速度が機首上げ速度に達し、政人は右手で握り締めている操縦桿を手前に引き、機首を持ち上げた。
「ギアアップ」
機首が持ち上がり、後輪まで完全に浮くと政人はスロットルについているボタンを操作してランディングギアを収納した。
「そう言えば、なのは達も訓練をしているんだったな。ちょっと楽しませてやるか」
『マスター!?』
「ハイレートクライム! ナウ!」
烈風の静止の言葉も聴かずに政人は更にスロットルを前へと押し倒し、滑走路端で操縦桿を手前へと引いた。急激に機首を持ち上げたため、主翼とガナードを包み込むように水蒸気が発生し、ノスフェラトは翼端から2本の白線を引きながら上昇していった。
『今度飛行予定に無い行動を取ったら隊長に言いつけますからね』
「げっ!? チェンネル1にコンタクト」
目標の高度に達し、機体を水平に戻した後、烈風から小言を言われ、政人はヘルメットの下に苦笑いを浮かべながら離陸前に指示された周波数へと無線を合わせた。
「Arelea control, Volmeteus01. Air born』(アーリア社司令室、こちらヴォルメテウス01。離陸完了)
『Volmeteus01, Arelea control. Transponder cntact』(ヴォルメテウス01、こちらアーリア社司令室。トランスポンダーにより捕捉しました)
レーダーに探知されにくいステルス機であるノスフェラトをレーダーで捕捉するのは困難である事から、アーリア社ならびに機動六課では、ノスフェラトに搭載されているトランスポンダーから返信される情報の中にある、GPS位置情報によってノスフェラトの飛行位置を認識する方式を取っている。
『今日の訓練は
「ああ、敵機の機種は?」
『それを判別するのも訓練のうちに入っていますので此処ではお教えする事はできません』
「了解、ACM訓練に入る。シミュレーター機動」
訓練の内容を確認した政人はシミュレーターを起動させた。このシミュレーターは六課にも配備されているシミュレーターの派生型で、インテリジェントデバイスである烈風の高速並列計算能力を活かし、HMDに仮想の敵を表示させ、更には搭乗者の網膜に仮想の敵の姿だけではなく自分や敵が放った各種兵装の姿も映し出すことが出来る。また、安全を考慮し、機銃であったとしても自機を掠めた場合すぐさま撃墜と処理されシミュレーターは停止し通常の飛行状態に戻る。ただし敵機には命中判定が出ない限り撃墜扱いにはならない。
{ノスフェラトのレーダーには機影なし、今回はAWACSとの交信は無いからコイツの探索範囲外にいるか、それともステルス機って事だな}
HMDにレーダー画面を表示し、機影を探す政人だったが、画面上には自身を示す緑色のフリップしか表示されておらず、ステルス機からの攻撃に備え周囲に目を配らせた。
『WRNING! WARNING!』
政人が警戒を始めてから数分後、ミサイルによる攻撃をノスフェラトが感知したため政人が被っているヘルメットに搭載されているスピーカーから甲高い警告音と警告文が政人の耳を襲った。
「ブレイク! チャフ、フレア、リリース!」
警告音が鳴り響く中、政人は操縦桿を勢い良く左に倒し、その直後には手前へと引き、それと同時にスロットルについているボタンを押した。すると、機体は政人の操縦どおりに左へと急旋回を行い、さらに機体後部に付いているディスペンサーからチャフとフレアがばら撒かれ自機を狙うミサイルへと送信しているであろう敵機のレーダーとミサイルに積まれている赤外線画像装置を誤魔化そうとする。
『もう1発来ます!』
「チッ、ブレイク!」
最初のミサイルはチャフとフレアによりあさってな方向へと去っていったが、回避行動を終えた瞬間にもう1つのミサイルが放たれ、政人は再び回避行動へと移らざるを得なかった。
「タリホー! 8オクロック、ハイ!」
2発目のミサイルも何とか回避した直後、ほぼ真後ろに居る敵機を見つけた政人はすぐさま、機体をロールさせ背面状態にすると操縦桿を引き機首から真っ逆さまに急降下を開始した。そんなノスフェラトを追いかけるように敵機も急降下を開始した。
「チッ! これだから対ステルス機戦闘は嫌いなんだよ!」
急降下中に自身を追いかけてくるもう一機の機影を見つけた政人はもう一度再び操縦桿を引き機体を水平に戻した。
「グゥッ! 機種はF-22Aが二機!」
政人は急激な機首上げによるGに耐えながらすれ違った瞬間に機種を特定した。
『ATTENTION! ATTENTION!』
『ロックオンアラート! ブレイク!』
コックピット内に再び警告音が鳴り響きロックオンされたことを報せるのと同時に烈風から回避行動の指示が出された。それを聞いた政人はエンジンの出力を絞り、さらにはエアブレーキを作動させながら左上方へとシャンテルを開始した。2機の敵機もノスフェラトを追って同じようにシャンテルを開始した。だが、政人はシャンテルの途中でラダーペダルを左へと踏み込んだ。すると、ラダーとスラスターが左へと傾き、機体が横滑りを開始した。そのままペダルを踏み続けていると、エンジン出力を絞った事に加えエアブレーキと機体自身の空気抵抗によって失速速度まで減速していた機体はまるで空中でドリフトするかのように機体をほぼ水平にしたまま旋回をした。
敵機もエアブレーキを作動させて旋回を開始するが間に合わず、ノスフェラトの前へとオーバーシュートしてしまった。敵機が自身の前に出たのを確認すると同時に政人は操縦桿のスイッチを押して短距離ミサイルと機関銃のレティクルを自身が被るHMDに表示させた。だが、敵機もすぐさま二手に分かれるように左右へと急旋回を行った。
「逃がさねぇよ」
政人はスロットルをミリタリー出力へと押し込み、さらに左へと旋回したF-22をHMDの能力を活かして首を左へ向けてロックオンしながらさらには機首を右へと旋回したF-22へと向けた。
「Volmeteus01 Fox2! Fox3!」
ミサイルと機関銃のレティクルがそれぞれのF-22を捕らえた瞬間に政人はミサイル発射のボタンと機関銃のトリガーを引いた。その瞬間、コックピットの左右後方に2つ搭載されている機関銃が唸りを上げ弾丸を前方へと向けて発射し、機体上面についている兵装担架のハッチが開きその中から短距離ミサイルが発射された。ノスフェラトから発射されたミサイルはコンマ数秒だけ機首方向へと直進したあと、急激に左へと旋回を行いF-22に迫った。狙われたF-22はチャフとフレアを撒き散らしながら更に急激に旋回を行ったがミサイルは何者にも惑わされず敵機のエンジン部分へと直撃した。
「Volmeteus01スプラッシュ!!」
『敵機、ミサイル命中、撃墜を確認』
機関銃による攻撃をバレルロールによって回避したF-22の後を取りながらも視界の隅で爆発を確認した政人はすぐさまキルコールを宣言した。その後も残った敵機は左右へのブレイクや上昇、下降を繰り返しながらロックオンされまいと必死に回避機動を行うが政人もしっかりとその機動に付いて行っていた。
{速度がかなり落ちてきている......そういう事かよ!?}
政人が度重なる高G旋回により速度が著しく低下している事に気がついた瞬間、目の前のF-22が機首を持ち上げ視界がF-22の制空迷彩の色に染まった。政人はF-22がノスフェラトの真上で背面状態になった瞬間にノスフェラトの機首を先ほどのF-22と同じように持ち上げ、先ほどから表示させたままであった機関銃のレティクルとF-22が重なった瞬間再びトリガーを引こうと指に力を込めたが、ノスフェラトのコンソールに装着されている烈風がF-22との距離が近すぎて撃墜したとしても破片をエンジンが吸引する可能性が高いと判断し機関銃から弾丸が発射される事は無かった。
「チッ、やっぱ近すぎたか、それでも! Fox2!」
2機はそのまま宙返りを終え、F-22はすぐさま
『訓練終了、ヴォルメテウス01は直ちに現空域を離脱し基地へと帰投してください』
「ヴォルメテウス01、了解。これより帰投する。RTB」
『高度10,000フィートへと上昇後、方位180へと左旋回をしてください』
「了解」
六課の司令室から指示が出されるとその通りに機体を操りそのまま六課の滑走路へと向かった。