魔法少女リリカルなのはStrikers~二つの翼を持つもの~ 作:ジェナス
ACM訓練を終え、シャワーを浴びてから食堂へと向かった政人が見たものは机で蹲(うずくま)っている新人FW陣、4人の姿だった。
「4人とも、さっさと食わないと午後からの訓練を乗り切れないぞ」
カウンターから自身の食事とFW陣の飲み物を持ってきた政人はスバルの隣に座りながら疲労困憊状態の4人に話しかけた。
「あ! マサ兄、ひさしぶり」
政人に気がついたスバルが返事をするが、声が尻すぼみに小さくなっていった。他の3人も政人がやってきた事には気がついて、頭を上げたが返事をする体力も残っては居なかったようだった。
{何か、何処かで見た事のある風景だな}
そんな4人の様子を見て政人は苦笑いを浮かべた。そして4人に政人が用意した飲み物を配ると4人は政人に御礼をした。その後、4人を代表してティアナが政人に話しかけた。
「始めまして。ティアナ・ランスター二等陸士です」
「あ! エリオ・モンディアル三等陸士です」
「お、同じくキャロ・ル・ルシエ三等陸士です」
ティアナに続いてエリオとキャロが敬礼をしたのだが、スバルだけは配られた飲み物を飲み干した後、再び机に蹲っていた。
「コ、コラッ! スバル、何アンタはまた蹲ってんのよ! 失礼でしょ!」
「大丈夫だよ。ティア、マサ兄はこんな事じゃ怒らないよ」
ティアナはそんな彼女に容赦なく拳を叩き込むがスバルからは気の抜けた返事しか返ってこなかった。
「だからって、蹲ってて良い理由にはならないでしょ! すみません、高槻大尉」
そう言ってティアナは政人に頭を下げた。政人はそんな彼女に苦労人だなと思いながら言葉を返した。
「まぁ、気にしてないさ。俺もウチの訓練を始めた頃は休憩時間になっても食堂にすらたどり着けなかったから」
「ほらねぇ。言ったとおりでしょ? ティア?」
そう言ってドヤ顔を決めるスバルに対してティアナは無言で彼女の顔面に拳を叩き込んだ。
「ナ、ナイスストレート」
ティアナの拳によって動かなくなったスバルを見て政人は少し訓練時代のトラウマが呼び起こされていた。
「ふぅ。ま、スバルが元気みたいで安心したよ」
「そう言えば、高槻大尉はスバルとは知り合いだったんですか?」
溜息と共に後ろ向きな思考を追い出した政人の言葉を聞いたティアナが訓練前にスバルが言っていた事を思い出し政人に問いかけた。
「そうだよ。ティア、マサ兄は昔は良く私の家にも遊びに来てくれたんだ。アーリア社の訓練校に入ってからは全く会ってなかったけどね。かれこれ6年ぶりになるのかな?」
「そうだな。正確にはコイツの親に半ば無理やり連れて行かれたんだけどな」
懐かしむように話す2人に他の3人は少し置いてかれたような気分になった。
「そうなんですか?」
「ああ、アーリア社に入る前は局員としてスバルの親が居た部隊、207陸士部隊にいたからな。当時、俺の両親はすでにアーリア社で働いていたから家に帰っても1人だって何処からか知ったあの人に連れて行かれたんだよ」
「で、それで私と私のお姉ちゃんのギン姉はいろいろとマサ兄にお世話になっていたんだ」
「そだ、おやっさんとギンガの2人は元気か?」
「うん、2人ともマサ兄に会いたいって言ってたよ」
「......時間が出来たら久しぶりに挨拶に行くか。っとそだ、お前らに1つ言っておく事がある」
今までの空気から一変して何処か張り詰めた空気になった政人に対してスバルを含め4人は背筋を伸ばして政人の言葉を待った。
「俺のことは堅苦しい呼び方で呼ばなくてもいいぞ。つか呼ぶな、これ上官命令」
政人の何処か完全にずれている命令を聞いたスバル以外の3人は驚きで声を出す事が出来なかった。
「まぁ、命令つっても無理強いはしないから、お前らが呼びやすい呼び方で呼んでくれや。もちろん非公式な場だけでだけどな」
「な、なら、高槻さんと」
「ぼ、僕は政人さんで」
「私も、高槻さんで」
「おしっ、これから俺のことを呼ぶときはそれでな。本音を言うと出来れば必要以上に堅い敬語も無しが良いんだが、まぁそれはおいおいだな。俺はお前らを呼ぶときはティアナ、エリオ、キャロ、そしてナカジマ二等陸士でおk?」
「ちょ、なんで私だけ他人行儀なの?」
「冗談だ。これからよろしく頼むぜ」
「「「「はい」」」」
政人からの激励に4人は元気良く返事を返していた。
「そう言えば、マサ兄は午後からどうするの? 私達と合流?」
「いや、午後からは午前中の訓練のデブリやって、整備班長から機体の状態を聞いて、書類仕事もあるから、今日は無理だな。予定としては飛行訓練と魔導訓練は交互にやってくから明日は合流できるぞ」
「そうなんだ。それじゃあさ」
「今はFW陣での連携を重視しろ」
「はぁ~い」
「ま、軽い組み手ぐらいならやってやるから、まずは体力付けろ」
スバルが何を言おうといたのか直ぐに理解した政人は彼女が言い切る前に言葉を切った。そしてしょぼくれるスバルを見て少し微笑むと政人はトレーを持って立ち上がり彼女の頭を撫でると返却口へと向かった。
「休むのもいいが、少しはエネルギーを蓄えて置けよ。特に年少2人組み、ちゃんと食べとかないと明日以降、今日以上の地獄を見るぞ」
そう言って政人は食堂を後にした。
「なんか、本当にお兄さんみたいな人でしたね」
「うん、フェイトさん達とは違った暖かさを感じたよ」
「うん、昔もさっきみたいに私やギン姉の頭を撫でてくれたんだ」
{兄みたい、か。確かにそうかもしれないわね}
政人が去った後、3人がそれぞれの感想を漏らす中ティアナだけが誰にも気付かれないように溜息をついていた。
昼休みも終わり、デスクワークとデブリーフィングを終えた頃には既に陽は地平に沈み、時計の長針と短針が重なろうとしていた。だが、そんな時間にもかかわらず政人は先日なのは達に愛機の説明を行った部屋で自身のノートに今日のACM訓練での航跡図を描いていた。ノートの見開きを訓練空域と置き、自分の機体を△で、敵機を▲で表し、烈風によってモニタリングされていた高度、速度、Gなどを自分の機体の右に描いていく。先制攻撃にさらされた事や、安全装置によって機関銃が発射されなかったことなどを事細かに書き記していた。
『マスターがこのように航跡図を描くのは飛び始めてからずっと続いていますよね』
「まぁな、父さんもやってたって言うし、何よりこうやって毎回ノート上に描いているとデブリでは気付かなかった反省点や改善点が見つかるからな、多分俺がパイロットを辞めるまでこの癖と言うか自己反省会は終わらないだろうな」
烈風が政人に話しかける頃にはすでにノートの見開きは曲線で埋め尽くされていた。反省会ともいえる政人のこの癖はアーリア社での訓練生時代から続いており、既にノートの数は二桁を超えていた。
「ま、もしかしたらそれも今日『マスター、それ以上は駄目ですよ』...そうだったな。忘れてくれ」
ノートを閉じ、デスクワークによって固まった体をほぐしながら呟く言葉を烈風がとめると苦笑いを浮かべながら椅子に掛けてあった上着を手に取った。
「明日は早朝から訓練だし、今日はもう寝るか」
『そうですね。マスター』
その後、隊舎に戻った政人が見たのは今日の訓練に疲れ果てたのかロビーで重なり合って寝ている新人FWの4人の姿だった。
「たっく、風邪引くぞ」
そんな4人を見た政人は夜勤についている女性隊員にスバルとティアナを任せ、自分でエリオとキャロの私室へと送り届けてから自室で眠りに付いた。
前回更新してから半年以上、本当に放置してしまい申し訳ありませんでした。
主に部活や学校の卒研に手間取っているうちに気が付けば年明け間近なこの時期まで放置してしまいました。部活のほうが何とかなったので、漸く更新できました。
しかし、また直ぐに忙しくなってしまうので今回並みに更新が遅れてしまうことになってしまうかもしれない事を先にお詫びさせていただきます。