戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ〜   作:絆蛙

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シンフォギア10周年、おめでとうございます!
あと、あけおめことよろです。もう心の声を諦めて『()』使うことにしました。すでにたぶん、全部修正しました。その時に気づいたんですけど・・・ヤンデレ要素マジで消えてるな。まぁ、四期ぐらいから再発するのでご安心を。
ここからだんだんと、どちらかというと機械的だった主人公の本当の思いや人間性?人間味?が出てきます。
前半は・・・ただのヒロイン回なんであまり気にしなくてもいいですけどね。ちなみにアークワンもうすぐ出ます(ネタバレ)








第六話 あたしの帰る場所

 

秋桜祭。

私立リディアン音楽院で開催される学祭であり、共同作業による連帯感や、共通の想い出を作り上げる事で、 生徒たちが懐く新生活の戸惑いや不安を解消することを目的に企画されたものだ。

しかしながら一般開放もされていて、規模としては街中の人は勿論、遠くの方から来る人までいる位だ。どちらかと言えば街の大行事みたいな盛り上りなのだが、その理由はリディアンが国家が保証している学校だから、というのが大きいかもしれない。

だが、視界一杯に映る華やかな飾り付けや嗅覚を刺激する出店から漂う多種多様な美味しそうな香りなど、学校でやるものと思えないほど豪華なのもあるのかもしれない。青春を思い出すことも出来るから、来る人も多い可能性だってある。

そこへ普段は学生と関係者しか入れないリディアン音楽院の校門を通り抜けた二人の男女が居た。

 

「これが学祭ってやつか・・・なるほど、悪意を全く感じない」

 

「・・・・・・」

 

「オレのところはここまで大規模じゃないし、休むことは多いからな。こういうお祭り行事は初めてかもしれない。とりあえず何かを買って食べ歩きでもするべきか・・・あんまり立ち止まってると目立つかもしれないしな」

 

「・・・・・・」

 

大勢の人々が避けながら続々と露店へ向かっていく中、立ち止まっている二人の男女はなんだかんだ目立っていた。

理由としても単純。

男女の容姿が明らかに良すぎるのだ。

黒いパーカーを着た男性と何処にもありそうな私服を来た女性。

はっきり言って服装は普通だが、それを着ている人物が服をより際立たせていた。

そんな男性はさっきから話しかけるように喋っていたのだが、女性の方は口を噤みながら機嫌が悪そうに見える。

 

「カップルかな?」

 

「ちょっと険悪な感じがする・・・」

 

「お似合いだけどねー」

 

目立ってるせいか、時々そのような声が二人の耳に入る。

他にも褒めるような言葉や男性を咎めるような声が聞こえるが、それは善意でのことだろう。

悪意を一切感じない言葉に男性---シンは苦笑した。

 

「で、どうしたんだ? キャロル?」

 

「どうしたもこうかもあるか。何故オレを連れてきたッ!」

 

何も言葉を発さない傍にいる女性---キャロル・マールス・ディーンハイム。

実は何百年とも言えるほど生きている高度な錬金術を扱うことの出来る錬金術師だ。

そんな彼女は綺麗な金髪の髪を靡かせながらシンの襟元を掴み、激しく揺らして怒鳴っていた。

 

「ち、ちょ・・・ぐ、ぐる・・・じい・・・! め、めだ・・・ってる!」

 

「チッ!」

 

勘弁してくれ、というように両手を挙げるシンに対し、キャロルは舌打ちしながら突き放すように離すが、さらっと離す時に歪んだ襟元を直していた。

そんなキャロルに困ったような表情をしながらシンは近づいた。

 

「だって仕方がないだろ? オートスコアラーのみんなは無理だし、ガリィとミカは問題起こしそうだ。ファラとレイアは問題なさそうだが、何か引っかかるものがあるかもしれないからな。てか、人間なら殺りそうで怖い。そしてアズとセレナは既にいるわけで、だからといってアダムは嫌だしサンジェルマンたちは報告しにいった・・・キャロルしか居なかったんだよ」

 

「オレじゃなくてもよかっただろう。お前なら一人でも問題なかろう?」

 

「オレも人間だから寂しく思う時だってあるんだぞ? まあ、純粋にキャロルとだから、キャロルじゃないとダメだったってのもある」

 

あまり聞こえてはならない単語なため、小声で話す二人だが、キャロルは鋭い目付きでシンを睨み、ふと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ほう、その理由とは? チャンスを与えてやる」

 

「・・・ちなみに外すと?」

 

「心配するな。吹っ飛ばすだけだ」

 

「割と洒落にならないやつじゃねぇか・・・」

 

その言葉の裏を四大元素(アリストテレス)を使うということを理解したシンは頬を引き攣らせたが、キャロルの表情からして本気だということが分かるとひとつ、ため息を吐いた。

 

「まぁ・・・なんだ。もっと世界や周りを知って欲しいのもあったんだが、目的としてはデートだな」

 

「・・・は?」

 

言いにくそうに呟くシンの言葉にキャロルは呆気に取られる。

はっきり言うと、シンから発されることがなさそうな言葉だったからこそ、驚いたのだ。

そんなキャロルの様子を見たシンは目の前に立つと、両肩を掴んで見つめた。

 

「じゃあ正面から言ってやる。オレは()()()()()デートがしたい」

 

「なっ!? お、お前急に何を---」

 

「よし! じゃあ今日は()()()として楽しもうか」

 

思わず顔を赤くしたキャロルに笑いかけると、シンはキャロルの手を取って握ると走り出した。

シンに引っ張られる形でキャロルは走るが、シンはそれも想定したように速度を遅めにしていて、それが理解できないキャロルではない。

彼女は相変わらず目の前の、考えがよく読めない存在を後ろから見ながら、何処か嫌な気持ちを抱いていない自身に違和感を持ちつつ---今はいいと、頭を横に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央区にまで行くと、やはり一番買う人が多いからか、露店と屋台、模擬店、ミニゲームなど、とにかく文化祭でありそうなものは全部あれば並ぶ者も多い。

教室に至っては展示もしているらしく、見て回るだけで大変そうだった。

 

「随分たくさんあるな・・・何か食べたいやつとかあるか?」

 

「特にはない。お前こそ何かないのか?」

 

「うーん・・・ま、たこ焼きとか定番なのにするかな。ロシアンでもいいが、オレがロシアンすると不正になるからなぁ」

 

すっかりと気を取り直したキャロルと()()()()()()()シンは歩いていると、ふと視界に入ったたこ焼きが目に映る。

ロシアンルーレットもあるらしいが、自身の力を知っているシンは何とも言えなそうな表情をしながら視界から逸らした。

 

「オレはこの手のものがよく知らないが・・・それはなんだ?」

 

「ロシアンルーレット。元々は回転式拳銃(リボルバー)に1発だけ実包(弾薬)を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭---特に顳顬に向けて引き金を引くゲーム。たこ焼きはそれの派生で、1つだけハズレがあるというルールは流用したまま、命の危険性が伴わないようにアレンジされたものだな。食べ物だと香辛料、基本的にはわさびとか・・・からしを大量に入れたもの、風船ならば水などといった風にしている。人によるが、ハズレを当たりだと思う人も居るしハズレはハズレだと思う人もいるよく分からんゲームだ」

 

全く知らない様子のキャロルにシンは人間版ウィキペディアみたいな風に説明をしていた。

元々、キャロルはこう言った経験はないため、知らないのは仕方がないだろう。

シンの方もお祭りなど行く時間もなければ暗躍ばかりしていたので、自由な時間はほとんどなかった。然しながら知識はインターネット以上にあるシンは脳内から引っ張り出したのだろう。

 

「・・・バカなのか?」

 

「実際本家では死者が出たことがあるらしい。こればかりはオレもそう思うよ。それでも人類は自身で生み出したもの安全化して、今も楽しめられるようにされている。その辺でプラマイゼロになるかな」

 

聞いていたキャロルが呆れた表情をするが、同感と言うようにシンも頷いていた。

最後には人間のフォローをしていたが。

 

「それにしても・・・なるほどな。だからお前は不正になるということか。お前のここが原因で」

 

「そういうこと。百発百中で当てることが出来て、回避出来るオレが相手でいいなら、やってもいいが?」

 

キャロルがシンの顳顬を指で突き、正解とでも言うように頷く。

 

「誰がやるか。普通のやつを食うぞ」

 

「だよな。オレもそれの方がいいと思う。正解が分かっているのにやっても面白くないし。普通に買うか」

 

そう言うと思っていたようにシンはキャロルの手をそっと引っ張りながら店に並ぶ。

既に何人か買い終えていたからか特に時間がかかることもなく目の前まで来ることが出来た。

そのため、一歩前にシンが出る。

 

「たい焼き六個入り一つお願いします」

 

「わー・・・」

 

「・・・あのー」

 

客側なので敬語をしっかり使いながら注文するが、何故かぼうっとした様子で見つめてくる学院の生徒らしき女性に見つめられてシンは困惑しつつ声を発する。

 

「あっ、は、はいっ! 六個入りですね、少々お待ち下さい」

 

「・・・なんだったんだ?」

 

「・・・はぁ」

 

ハッとした女子生徒が慌てた様子で箱に入れてたのを見たシンは首を傾げるが、キャロルは理解してるのかため息を吐いていた。

 

「お、お待たせしました。ありがとうございました!」

 

シンがたこ焼きの箱を受け取りながら値段ちょうどで払い、会釈してから背を向けて歩き出す。

手に持つ箱から開けてないのにも関わらず、香ばしい匂いが溢れ出てることから美味しいのには間違いないだろう。

 

「そういえば、認識阻害ちゃんと効果あるんだな」

 

何故普段は幼い見た目をしているキャロルが今回は何も言われないのか、カップルだと思われたのか、不思議なことではあろう。

それはキャロルが腕に付けている腕輪が認識阻害の効果を持っているからだ。太い腕輪ではなく、違和感のないように薄く細い腕輪で黄色のもの。

 

「ふん、当然だ。誰が作ったと思っている? ただ玩具程度の効力であるのとオレ自身どんな姿になってるかは分からないがな」

 

「オレにもいつも通りなキャロルにしか見えないが、他の人の反応から察するに高校生くらいなのかもな」

 

カップルだと思われた点からして、シンの見た目通りの年齢と同じと思っていい。

なので、そう予想を立てた。

一般人からすると、キャロルの体は高校生くらいなのだろう。シンからすれば、いつもと変わらぬ幼い少女にしか見えないのだが。

 

「まぁ、問題ないなら良いだろう。それよりたこ焼き食べてみるか。ほら」

 

「・・・何故近づける?」

 

シンは箱を開けると串を指し、たこ焼きをひとつ食べるのではなく、キャロルに近づける。

キャロルはたこ焼きとシンを見て疑問をぶつけた。

 

「この方がデートっぽいだろ? 知識内では恋人同士はこういう風に食べさせたりするらしいからな」

 

「わざわざ実践しなくてもいいッ!」

 

「そう言わずに、な?」

 

「自分で食べられ---んぐっ」

 

シンはふぅふぅと息を吹きかけ、冷ましたたこ焼きをキャロルが口を開けたタイミングで入れる。

口の中に入れられてしまえば、捨てることも出来ずにキャロルは素直に咀嚼する。

それをシンは優しそうな表情で見ていた。

 

「どうだ?」

 

「・・・まぁまぁだな」

 

「そうか・・・うん、美味い」

 

顔を背けながら言うキャロルにフッと笑い、自分も食べる。

当然ながらプロと比べると味は落ちるが、学祭で出すには十分な焼き加減と味。

それからしっかりと掛けられたソースなど一般的なたこ焼きだが、美味しいと断言出来るものでもあった。

 

「ほら、キャロル」

 

「んっ」

 

喋らずとも理解しているように火傷しないよう冷ましたたこ焼きをもう一度近づけると、諦めたような表情をしてキャロルが一つ頬張る。

それを、シンは満足げに微笑んでいた。

 

「な、なんだ?」

 

「いや、やっぱりキャロルと来れて良かったな、ってな」

 

「そ、そうか・・・」

 

視線に気づいたキャロルは疑問をぶつけるが、シンはなんの恥ずかしげもなく言ってみせ、キャロルは複雑な表情をしつつ周囲に視線をやる。

そんなふうにたこ焼きを食べさせる感じで3個ずつ食べ終えたシンはゴミ箱にしっかりと捨て、キャロルの手を簡単に取っては繋ぐ。

 

「さて、次はどうしようか」

 

「この際手を繋ぐことはもうツッコムことはせんが、何も決めていないのか? お前らしくない」

 

「アークゼロとしては正しくないだろうけど、さっきも言った通り今のオレとキャロルはアークでも錬金術師でもないただの男女だ。一般人だからな。見て回って、やりたいのを、食べたいのを食べる。それがいいんじゃないかと思ってたんだ。・・・こういうのは基本的にアズが引っ張ってくれたから正直分からないし

 

最後の部分を僅かに小さい声で呟くが、キャロルには当然聞こえたようで、その光景がありありと浮かんでいた。

 

「とにかく、それなら見て・・・ん?」

 

考えても仕方がないため、とりあえず移動しようとしていたその時、ふと大声が聞こえてきた。

 

「響! このままじゃ板場さんたちのステージに間に合わないのは分かるけど、危ないよ!」

 

「ちょっと響ちゃん。俺の歳を考えてくれてもいいんじゃない?」

 

「だ、だってお腹が空いてて・・・!」

 

背後を見てみれば、まだ遠いがリディアンの制服を着た二人の生徒らしき人と、サングラスを掛けた中年の男性が走ってきていた。

周りの何の騒ぎかと視線が集中しているが、キャロルは自身の体が覆われるのを感じた。

 

「お、おい・・・!?」

 

「静かに」

 

ふと顔を上げれば、シンがフードを深く被ってキャロルを隠すように抱きしめていた。周りから見れば抱きしめてるようにしか見えないが、認識阻害が発動しない二人にとってはキャロルがシンのお腹辺りに顔を埋めて抱きしめ合っているような状況。

だが、シンの至って真面目な様子にキャロルは何も言えず、自身の顔が熱くなるのを感じながら言われた通りにしていた。

そうしていると、走っている女子生徒と中年の男性は二人を通り過ぎていった。

 

「・・・そういえば装者居たんだったな。危なかった」

 

シンは思い出したように軽く片手で頭を抑えるが、バレなかったことに安堵の息を吐く。

正体を見せてないとはいえ、いつバレるかは分からない。認識阻害も装者たちに効果を見せるか分からないため、キャロルの顔や体を隠すためにも抱きしめたのだろう。

 

「っと。キャロル、ごめん。大丈夫か・・・?」

 

「っ・・・あ、あぁ」

 

「・・・?」

 

気づいたようにキャロルの体を離すが、顔を合わせることなく体を後ろに向けたキャロルにシンは意味が分からずに首を傾げる。

シンからして、キャロルの顔は見えない。

だからこそ頬を赤めていることも、何処か、ほんの僅かにだが温もりがなくなったからか寂しげにしていたのは見えることがなかった。

 

「もしかして、何処か打ったか?」

 

「な、なんでもない! 行くぞ!」

 

「あ、ちょっ」

 

心配するような様子で伺おうとすると、キャロルがシンの背中に回って体を押していく。

最後まで表情が見えることがなかったが、シンは従うように押されるのだった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてフードを被った男性と同じくらいの身長を持つ女性を通り過ぎたリディアンの生徒---響と未来は何故か止まり、背後を見ては周囲に視線を送っていた。

突然の様子に怪訝そうに中年の男性---惣一が話しかけた。

 

「響ちゃん、未来ちゃん? 何か落し物か?」

 

「あ・・・う、ううん気のせいかも」

 

「す、すみません。分からないんですけど、なんだか・・・懐かしい感じがして・・・でも気のせいだったみたいです」

 

「そうか。ちなみにだが、止まったせいであと5分だ」

 

二人も理解していないが、懐かしい感じがして止まったという。

気のせいだと結論に至った二人に対し、惣一は注意するように最悪か状況になりかねない一言を述べた。

 

「う、うわぁーん! や、やばいよー! 待たせてる奏さんにも申し訳ないし!」

 

「もう! 響がずっと食べてたからでしょ!」

 

「まったく、飽きさせない二人だな。それにしても・・・懐かしいもの、ねェ」

 

慌てて走り出す響と未来を見て惣一は笑うと、二人が感じた気配の先を見るが、何も無い。

考え得る選択が複数浮かんだが、惣一は次の言葉で思考をかき消した。

 

「惣一おじさん、早く!」

 

「間に合わなくなりますよ?」

 

「おっと、悪い悪い」

 

響と未来の言葉に惣一も駆け出す。

少なくとも、誰も気づくことはなかった。

しかし何の問題もないだろう。

彼ら、彼女らが交差する運命は、もっと先の未来なのだから---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何故か合流出来たわけだ。バラバラに動いてなんか悪かったな」

 

ただ行き先を決めるわけでもなく、色々買って食べ歩きしていたシンとキャロルだったが、キャロルの口元に付いたクレープのクリームを取るというちょっと事件だけは起きたものの、何事もなく偶然にもアズとセレナと合流していた。

 

「こっちはこっちで楽しんでたから大丈夫よ。それよりキャロルが来てるなんて意外だったけど・・・」

 

「連れてこられただけだ」

 

平気というように首を横に振るアズは隣にいるキャロルに視線を送るが、キャロルはぶっきらぼうに顔を逸らして言う。

そんな様子に苦笑いしつつ、シンはセレナに視線をやる。

 

「セレナも・・・楽しめたようで何よりだ」

 

景品を当てたのか落としたのかは分からないが、やけにたくさんのぬいぐるみを抱えるセレナがいた。

シンは彼女の頭を撫でると、セレナは照れたように笑う。

 

「はい。愛乃姉さんと遊ぶのは楽しかったです」

 

「そうか。でも、ちょうど良かった。キャロルを任せていいか?」

 

「それはいいけど、アークさまは?」

 

「ちょっとした仕事・・・だな。そういえばカラオケ大会はあるみたいだから、二人も出てみたらどうだ? 二人なら優勝出来るだろ?」

 

シンはキャロルを託してから先ほど歩いていた際に眼鏡を掛けた知り合い二人の場所を把握し、思い出したかのように言う。

 

「オレの歌は高くつくぞ。こんなところでやらん」

 

「わ、私も緊張してしまうと思うので・・・」

 

「キャロルは想定内だが、セレナは意外だな。いい歌声なのに」

 

「あはは・・・そう言われるともっと恥ずかしいです」

 

心の底から思っているのか、少し残念そうな表情を見せたが、シンはすぐさま意識を切り替えた。

 

「じゃ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい、アークさま」

 

「頑張ってくださいね」

 

「・・・気をつけて、な」

 

「・・・ああ」

 

まさかキャロルから素直にそう言われると思わず、少し驚くが笑みを浮かべて返事を返すと、シンは見送られながら走っていった。

 

「それじゃあ、セレナ。カラオケ大会、行きましょうか?」

 

「え?」

 

「オレは観戦に回るとしよう」

 

「え? え? えぇぇえええぇぇ〜!?」

 

にっこりとした可愛いらしい笑みを浮かべながらアズはセレナを連れていくために手を握る。

確かに出ないとは一言も言ってないが、まさかの状況にセレナは困惑し、止める様子のないキャロルと助かる道がなさそうな状態に驚きの声を挙げるしかなかったのだった---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことが行われていることも知らずして、シンは眼鏡を掛けた知り合いに追いついてみせた。

ちょうど校舎の近くの木々に居て、近づくと声が聞こえてくる。

 

「私たちの任務は学祭を全力で満喫することじゃないよ、切ちゃん」

 

「わ、分かってるデス! これもまた捜査の一環なのデス!」

 

「・・・捜査?」

 

「人間誰しも美味しいものに引き寄せられるものデス。学院内の美味いもんマップを完成させることこそが捜査対象の絞り込みには有効なのデス」

 

明らかに言い訳のような言葉だが、約一名引き寄せられていたことから間違ってないことの証明になる。

しかし結論であり、そもそも出会ってないことから結局意味は無いといえる。

そんな切歌に調は頬を膨らませながらじーっと胡乱げに見つめていた。

 

「わ、分かってるデス。この身に課された使命は一度も忘れてないデス」

 

「なんで居るんだと思ったら、そういうことだったか」

 

「わっ!?」

 

「あ・・・シンさん」

 

納得した様子でシンが声を掛けると、切歌は身体をびくっと震わせて驚きながら振り向く。

調もまさか居るとは思わなかったのか、少し驚いた様子だ。

 

「で、何をしようとしてるんだ? 手伝う前に情報が欲しいんだが」

 

「いいの?」

 

「そういう契約だ」

 

「助かるデス! えっとデスね---」

 

シンの言葉を聞いて、二人は事情を説明する。

あの後、アジトを抑えられたせいでネフィリムに与える餌である聖遺物の欠片が残り僅かとなってしまったこと。

ウェルの提案から二課の装者たちのギアペンダントを餌としようとなり、フィーネに魂を塗り潰されかねないマリアの代わりに二人が任務を成そうとしていること。

雷と滅には念の為にマムの傍で待機してもらっていること。

マリアを守るため絶対に失敗できないこの任務であること。

学祭の賑わいに紛れペンダントを掠め取ろうと意気込んだはいいものの、予想以上に人が多くてこの中から特定の人物を探し当てることができていないこと。

ついでに切歌が美味いもんマップを完成させようとしていたこと。

 

「・・・なるほど。だから学祭に来たわけだな。それと切歌、美味いものなら後で食わしてやるから今は我慢しろ」

 

「うっ・・・わ、分かってるデス」

 

「それにしてもペンダントを取るか・・・中々難しい任務だ」

 

二人がいる理由について納得し、切歌も目を逸らしながら頷いたのを見たシンは心の中で困っていた。

 

(流石にシンフォギアのペンダントを餌にされるのは困るな・・・キャロルの計画に支障が出るしオレも困る。正直フィーネは生きてるから絶対有り得ないんだが、表向きは死んだ扱いになってるし信じられないだろう。となると・・・二人の任務的にも回収した際に複製して複製品を食わすしかない。大丈夫だ、アガートラームを既に作成したしそれと同じように・・・)

 

「でも、やらないと行けない」

 

どうするか心の中で決めていたところで、真剣な調の様子を見てシンは安心させるように頭に手を置いた。

 

「そんな気負うな。オレも手伝うし、な?」

 

「・・・うん」

 

「よし、じゃあ装者を探そうか」

 

調の頭を撫でると、シンは切歌と調に視線を送りつつ、軽く気配を探る。

すぐ近くに()()()の反応があり、一瞬疑問に抱くが学院だということを思い出して納得する。

 

「あ・・・シンさん、切ちゃんカモネギ!」

 

「って、おい!?」

 

調が何処かへ歩いていく翼の姿を見つけ、向かおうとしていたところを慌ててシンが抱き寄せることで影に隠す。

 

「さ、作戦も心の準備も出来てないのにカモもネギもないデスよ調・・・!」

 

「もっと慎重に行こう。危険しかないし、仲間と合流するかもしれない」

 

「・・・確かに。ごめんなさい、二人とも」

 

見つからなかったのが幸いだが、相手はシンフォギア装者。

戦場(いくさば)で戦い続けた戦士なのだから、警戒に越すことはない---のだが。

 

「・・・(何なんだろうか。オレ一人でやった方がいい気がしてきた)」

 

木の影から建物の影に隠れた二人についていきながら、翼が歩いていった場所を覗き見して、慌てて隠れる姿を見て心の中で呟く。

そもそもアークの力さえ使えばシンフォギアを纏わせる前に気絶させることくらいなら出来そうであるので、あながち間違ってないのかもしれない。

 

「ギアのペンダントだけ奪うなんて土台無理な話かもしれないデス・・・」

 

「だったら・・・いっそ力づくで」

 

「いやいや、そんな短時間で出来るものじゃないって」

 

いきなり物騒な思考になるのを苦笑しながら止める。

 

(というか・・・ここでされると一般人が巻き込まれる。流石に死人を出されるのは困るんだが)

 

心の中ではぁ、とため息を吐きながら、シンはとりあえずストッパー役として二人に着いておく。

そんなふうに隠れながら動きを観察していると、向こうの方で変化があったようだ。

 

「うわっ!?」

 

真っ直ぐ歩いていた翼だが、突然視界の横から何かが飛び出して真正面から衝突したのだ。

 

「いってぇ・・・」

 

「またしても雪音か。何をしてそんなに慌てているんだ?」

 

相手はクリスで、同じ相手なのもあって翼は以前にもあったことを思い出しながら、疑問をぶつける。

その疑問にクリスは警戒しながら答える。

 

「っ! 追われてるんだ! さっきから連中の包皮網が少しずつ狭めまれていて・・・」

 

「雪音も気づいていたか・・・! 先刻よりこちらを監視しているような視線を私も感じていたことだ」

 

(流石二課の司令の姪だというべきか、風鳴の人間というべきか・・・。それにしてもオレが言えることじゃないが、しっかりと会話するべきじゃないか? 話が食い違ってるような気がする)

 

いよいよ実力行使に出るしか、みたいなことを言い出した二人を手で制しながら心の中では呆れるシン。

そして三人ほどの気配が迫ってくるのを感じながら、問題ないと判断して動かない。

すると---

 

「見つけた、雪音さん!」

 

「げっ」

 

クラスメイトと思わしき三人が調や切歌、シンに一切気づくことなく翼やクリスの元へ走っていった。

 

「お願い! 登壇まで時間がないの!」

 

それを聞いて、シンは思い出す。

というより自身には興味が無いものだったので視野から外れていたのだろう。

カラオケ大会があり、そこで優勝すれば景品として生徒会権限の範疇で何でもしてくれるとか生徒からの声を聞いた記憶が残っていた。

そんなふうに思い出していると何やら会話していたようで、クリスはクラスメイトたちに背を向けながら俯いていた

 

「一体どうしたんだ?」

 

「勝ち抜けステージで、雪音さんに歌って欲しいんです!」

 

「だから、なんでアタシが・・・!」

 

「だって雪音さん、凄く楽しそうに歌を唄ってたから」

 

隠れながら聞いていたが、果たして自分たちが居ていいのだろうかと思ったのだろう。

調と切歌が困ったような表情をして、シンは無意識に唇を噛み締め---二人の手を取って移動を始める。

 

「シンさん?」

 

「ど、何処に行くデスか?」

 

「ステージかな。どうせ装者は行くみたいだから先回りしていた方がいいだろう」

 

「それもそう」

 

「流石デス!」

 

最もなことを言っているが、それは所詮出てきた言い訳に過ぎない。

それでもこの場から離すためにも、三人は移動した。

 

(・・・本当に。全部救えるなら良かっただろうな。アイツも)

 

ただ一瞬、後ろの方に居る二人には気づくことは出来ないが、シンは何処か悲しそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってカラオケ大会が開催されているホールにて。

 

「さあて! 次なる挑戦者の当時です!」

 

司書と書かれたリストバンドを腕につけた少女がマイクを片手にテンション高めに言っていた。

その会場の席には友人である板場たちのステージを見るために来ていた響と未来の姿があり、惣一と変装している奏もいるが二人は連れてこられただけだ。

ちなみに、板場たちの結果は惨敗である。

実は離れた位置にもシンや調と切歌。さらに別の場所ではアズとセレナ、キャロルが居るなど会ってしまったら争いが起きそうな面子ばかりが集まっているのだが、綺麗に出会うことなく何の争いも起きてはいなかった。

人が多いのもあるのだろう。実際、会場内は歓声に包まれていた。

そんな歓声の中、出てきたのは一人の少女。

その姿を見て、響と未来は驚き、惣一と奏は興味深そうにしていた。

 

「響、あれって!?」

 

「うっそぉ!?」

 

「へぇ・・・」

 

驚く未来と響、興味深そうにする惣一に対して答えるものがいた。

 

「私立リディアン音楽院、雪音クリスだ」

 

「翼・・・そうか。アイツも歌ってくれるようになったんだな」

 

「うん。きっと雪音の声はみんなを魅力するはず」

 

隣に座る翼に視線を送り、頷いた姿を見た奏は何処か安心したような、期待するようにステージへ視線を向ける。

彼女たちは、クリスの歌を知っている。クリスが本当は歌が好きだということも。

だが一方のクリスは顔を赤くしたままその場で佇んでいる。

既に曲が流れているにも関わらず、どうにも歌い出せでいる。

 

「よかった・・・間に合った!」

 

そこで走ってきたのか息を整えつつ会場内に迅が駆け込む。

彼も学祭を楽しんでいたらしく別行動していたのだが、ステージで唄う綺麗な白髪の子がいるとの噂を聞いてもしかして、と思ったのだろう。

しかし異変に気づく。

既に歌は始まっているのだろう。それでもクリスはまだ歌い出すことをしていなかった。

 

(やっぱり、いきなりなんて・・・)

 

横眼でステージ横にいるクラスメイトの方を見る。

そんな彼女たちは、頑張れ、とクリスを応援しているが、どうにも歌い出さない。

どうすれば、などと考えていたその時---

 

「クリス---!」

 

クリスの耳に聞きなれた声が聞こえる。

ふと見上げてみれば、そこには急いだのだろう。汗を掻いた迅の姿があり、その声はクリスの耳によく届いていた。

 

「じ、迅!?」

 

来るとは聞いてなかったため、目を見開いて驚くクリス。

 

「クリスの歌の良さは僕が一番よく分かってる! だからクリスはクリスの好きなように歌えばいいよ!」

 

まるで勇気を与えるように、笑顔でそう言って見せた。

この場で、大勢の人々が居る中で歌い出せないクリスのための応援。

その声にクリスは恥ずかしがって---そして、ほんの少しの勇気を貰った。

 

「---誰かに手を差し伸べて貰って」

 

少し遅れてからの、歌い出し。

しかし一度歌ってしまえさえすれば、全て関係ない。恥ずかしさなど、もうなかった。

ただひとつ、ここはもうクリスの独壇場---雪音クリスという少女の世界(ステージ)なのだから。

 

「---傷み(いたみ)とは違った傷み(いたみ)を知る」

 

その綺麗な歌声が、一瞬で会場を魅力する。

普段の彼女の歌を知るものですら。

 

「---モノクロームの未来予想図」

 

徐々にリズムに乗るように動き始め、歌に乗り、自分の世界を広げるように、夢中になるように歌も加速していく。

 

「---絵具を探して…でも今は---」

 

その最中でふとクリスはリディアンに来た時のことを思い出した。

何故かは分からないが、今浮かんできたのだ。

 

『学期の途中ですが、編入してきた生徒を紹介します』

 

『ゆ、雪音クリス・・・』

 

初めてのことで、何処か慣れず緊張しながら初々しい感じが出てしまいながら自己紹介をした。

 

 

 

---何故だろう、何故だろう

 

 

 

 

----色付くよゆっくりと 花が虹に誇って咲くみたいに

 

 

 

唄えば唄うほど、初めての学園生活のことが呼び起こされる。

 

『雪音さん!』

 

『一緒に食べない?』

 

学期の途中で編入してきたというのに、話しかけてくれたクラスメイトが居た。

自身をここへ連れてきてくれたあのクラスメイト三人だった。

 

『悪ぃ・・・用事がある』

 

そんな彼女たちを前にして、クリスは用事もないのに思わず逃げてしまった。

 

 

---放課後のチャイムに 混じった風が吹き抜ける---

 

 

 

本当のことを言えば、一緒に食べたかった。

でも気まずくて、複数人で食べる---そんなことに慣れていなかった。

一人で黙々とあんぱんと牛乳を頬張る日---

 

 

 

---感じた事無い居心地のよさにまだ戸惑ってるよ---

 

 

歌を唄うほど自分の想いが表に出てしまう。溢れてしまう。

歌を唄ってるときだけが、素直に本当の自分を出せる。音楽に嘘をつくことなんて出来ず、こうして笑顔でいる。

歌の授業で歌にめり込んで、いつの間にか体を動かして見られたのは恥ずかしかった。

それでも---

 

 

 

---ねぇこんな空が高いと 笑顔がね…隠せない---

 

 

 

 

 

いつもそうだった。

捨てられたくなくて、必死に縋り付くように、人形のように命令を聞くしかなかった自分。

だけど、傍に居てくれた人がいた。いつも、勇気を与えてくれた人が居た。引っ張ってくれた人がいた。それはかけがえのない仲間となった者達よりも前から、ずっと居てくれた。

それは今も、変わることなくこうしてまた勇気を貰って唄うことが出来ている。

笑顔なんて浮かぶことも、歌を嫌いと自身がどれだけ言っても---

 

『クリスが嫌いって言うなら、僕がクリスの歌を好きって言うよ。ずっと、何があっても。クリスが自分の歌を本当に好きで唄う、その瞬間まで』

 

何も出来ない自分が悔しいと言っているのに他人のことばかり気にして、肯定して、笑顔を向けて、それは何処か嫌な気持ちになることなかった。

何故か隠せない笑みをただ背けることしか誤魔化せなかった。

それは果たして、今も変わらずに好きと言ってくれるのだろうか。

もう隠すことなんて出来ない、心の底から歌が大好きだとバレてしまう自分を見ても。

だけどやっぱり、この気持ちは抑え切ることなど出来なくて---

 

 

 

『---笑ってもいいかな 許してもらえるのかな---』

 

 

 

その結果が、これだ。

抑え切ることなんて出来ず、全てを解放してしまっている現状。

だが、クリスが大好きなその歌は、全てを出してしまっている歌は会場を魅了していた。

響を感動させ、未来を震わせ、翼を漲らせ、奏を高揚させ、離れた位置にいるシア---セレナを興奮させる。

さらに調と切歌は目的のために来たはずなのに目的を忘れさせるまで魅了させていた。

唯一感情に大きく変化がないのは惣一とシン、アズ、キャロルのみだが、シンとキャロルの二名を除いて、惣一は笑みを浮かべ、アズは目を離せず。

キャロルは無表情で、シンはただ---拳を強く握っていた。

そして何より、迅はクリスの歌を誇らしそうに、嬉しそうに見ていた。

 

 

「---あたしは、あたしの---」

 

 

だから、この想いは届かせるべきなのだろう。

 

(ずっとずっと、歌を肯定してくれて、傍に居てくれたことへの感謝と---)

 

 

 

「---せいいっぱい、せいいっぱい…こころから、こころから…---」

 

 

 

『雪音は歌、嫌いなのか?』

 

 

翼が、あの場で尋ねたこと。

もし嫌いって言えたなら、どれだけ楽だったのだろうか。

それでもあの場で言えなかったのは、変えられたからだろう。好きと言ってくれた人の存在を、思い出したからだろう。

それに否定出来なかった理由のひとつは---

 

 

 

(アタシは・・・歌が、心の底から大好きだから---)

 

 

 

「---あるがままに---」

 

 

 

何よりも、例え理解されてなかったとしても、この想いは---

 

 

「---うたってもいいのかな…!---」

 

 

 

(一度も変わることなく、迅が好きって言い続けてくれた、この歌が、私は---!)

 

 

 

歌の力が、想いの力が、爆発する。

 

 

 

「---太陽が教室へとさす光が眩しかった---」

 

 

 

その瞬間、会場にいる全ての人間に、ある光景を映した。

晴天の空の下、赤い花々が咲く、野原。

 

 

「---雪解けのように何故か涙が溢れて止まらないよ---」

 

 

それはきっと、彼女の心の世界。心象風景。悲しみひとつない、曇ることもない平和の世界。

彼女が歌うことで、会場に見せている彼女の幻想。

 

歌に乗せられた、想いの力。歌に込められた、言葉のひとつ。

ただ綺麗で、美しく、凍らされた心を優しく、そっと溶かすような暖かな世界。

まるで全てを許してしまうような、そんな世界。

現実を塗り替えるほどの、秘められた想い。どれだけ難しくて、どれだけ遠いか分からないが、その風景こそ---理想郷。

 

 

 

「---だからこんな暖かいんだ…---」

 

 

 

 

赤い花々の花弁が、風に舞い、風に乗せられて彼女の周りを花吹雪となって飛び回る。

その光景は、その風景は、その姿は、その様子はまさしく---

 

 

 

「---あたしの帰る場所---」

 

 

 

彼女の、彼女だからこそ合う光景と歌なのだろう。

 

 

 

「---あたしの帰る場所---」

 

 

 

飛び回っていた花が彼女の足元から拡散するように上空へ上がっていき、人際大きな歓声が会場を包み込む。

 

(楽しいな・・・)

 

その花は、まるで客の歓声を示すかのように最期まで使命を果たしていた。

 

(アタシ・・・こんな楽しく歌を唄えるんだ・・・)

 

曲が終わったからか、会場を魅了した彼女の幻想世界は消え去ってしまった。

それでも、全てがなくなったわけではない。ステージを見てきた者たちには、しっかりと記憶に深く刻み込まれ、余韻がすぐに消えることなどなく残り続けるのだから。

 

(そうか・・・)

 

この会場に連れてきてくれたクラスメイト三人がステージ横で感動し、この会場にいる響や未来、翼、奏、惣一たち仲間が、友人関係であるセレナが、敵対関係にあるはずの調や切歌までもが激励を持ってクリスを拍手する中で、ただ一人安心したような寂しいような、何よりも自分の事のように得意げに笑った迅の姿をクリスは口角を上げながら見上げた。

 

(ここはきっと・・・アタシが、居ても良い所なんだ・・・)

 

その余韻の嵐に吹かれながらも、クリスはひとり、そう思った---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歓声が止み、余韻に浸かる時間を開けた後。

結果が発表される。

果たして、その結果は---

 

「勝ち抜けステージ! 新チャンピオン誕生!」

 

スポットライトに照らされたクリスを見れば、結果は分かるだろう。

当の本人であるクリスは呆気に取られていた。

 

「さあ! 次なる挑戦者は!?」

 

冷静になると、こんな大勢の中であのような歌を唄い、スポットライトに照らされたままというのは恥ずかしいだろう。

しかし当事者ではないからか司会はクリスの事情などお構い無しに進めていく。

 

「飛び入りも大歓迎ですよー!」

 

そう司会の少女が叫ぶ中、シンはただ真っ直ぐに見つめ、頭を抑える。

間を挟むように隣にいる調と切歌は頷き合っていた。

あのような歌を聴いてしまっては、触発されてしまうのは無理もなかろう。

 

「切ちゃん、行こう」

 

「もちろんデス! お兄さんはどうするデスか?」

 

「いや、頭が痛いから遠慮しておく・・・。二人で行ってこい」

 

元々装者でもなければ歌が特別得意というわけではないシンは楽器なら問題なくとも、歌は無理だろう。

まぁそれも言い訳で、本当の理由は別にあるのだから。

 

「分かった」

 

「お大事にデスよ」

 

「ああ」

 

頭を抑えたままこっそりと立ち、シンは身を屈めながら出口を目指す。

それを見送った調と切歌は再び顔を見合わせ、切歌が手を挙げる。

 

「やるデス!」

 

位置が分かったからか、スポットライトに当てられ、照らされる。そのお陰で暗い会場でも姿がはっきりと分かった。

立ち上がった人物は金髪と黒髪の二人の少女。

 

「アイツらは・・・!?」

 

当然、視界に捉えたクリスが驚愕の表情を顕にする。

何故ならその人物こそが自分たちと敵対している組織のメンバーの二人---

 

「チャンピオンに」

 

「挑戦デース!」

 

暁切歌と月読調。

先程まで掛けていたメガネを取り、立ち上がって堂々とクリスに挑戦するという言葉を叩きつけた。

それを会場を出る前に、頭を抑えることなく無機質な目でシンが見ると、ため息を吐く。

その理由は切歌や調に対するものではなく---

 

(本国、米国軍がマリアたちを見つけたか・・・間に合うか?)

 

自身が見た、予測による未来(みらい)

それに対してのため息であり、切歌や調に一言も言わなかったのはあのような表情を見たシンの気遣いなのかもしれない。

彼は即座にアズに通信を繋げながら、マリアたちが隠れているであろう場所へ急いでいた---

 

 

 

 

 

 

 





〇亜無威 心/アークさま
デート繧偵@縺ヲ縺?◆縺キャロルを諤昴▲縺ヲのこと。
実は・・・・・・■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■------(閲覧不可能)

〇キャロル
無理矢理来させられたが、認識阻害で周りから見たら高校生(シンより少し低い程度)の身長でカップルにしか見えない。
色々と一緒に過ごすうちに今日だけで自分の心情に疑問を抱くことが多かった。
クリスの歌のとき無表情だったのは厄介になりそうだ・・・みたいな感じ。たぶん。

〇鶴嶋愛乃/アズ
セレナたちをなんとなく強制連行したが、悔しいことにクリスの歌を良いと思っていた。

〇セレナ
連行された子。
しかし来てよかったと興奮した。

〇ひびみく
ナニカを感じた。しかし、それがなんなのか分からなかった。
もしぶつかったり、もし顔を見ることがあったなら---変わっていたかもしれない。

〇クリス
ちょくちょく過去を明かされてるが、ここまで来たら分かる通り一応迅のヒロイン。
というのも、この時空では滅亡迅雷がいるために主人公が関わることが出来る要素がなく、仮に主人公のヒロインにするなら並行世界しか無理(居なければ主人公が全部解決していた予定だった)

〇迅
実は来ていた人。
クリスが歌を!?と駆けつけたら唄えてなかったので、応援。
クリスの歌はフィーネと暮らしていた時代に一度聞いてから好きになったまま変わらない。
余談だが、滅亡迅雷の中でも、滅と迅は裏の裏の裏の裏の主人公みたいな感じである

番外編(時系列にあったキャロルやオートスコアラー、他のキャラと主人公の日常)

  • いる
  • いらない
  • 二期行こう
  • アークワンはよ
  • うるせぇ、尊くさせろ。暗殺するぞ
  • もっとイチャつけ
  • 息抜きは大事だからね仕方がないね
  • で、IF編まだ?
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