戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ〜   作:絆蛙

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お久しぶりです。待ってる方居るか知りませんけどお待たせしました。
いつの間にやら赤から落ちてるようで。
さて、正直ぶっちゃけるとウルトラマンの方にイメージ持っていかれててこっち想像しても映像浮かびませんでした。
もっと言うと、リアル忙しくて何とか書き終えたくらいです。ほんと、スイッチ入れば関係なく終わるんですけどね・・・。
まぁ、次回もいつになるか分かりませんが、気長にお待ちください。
それでは、長々語ってもあれなので本編どうぞ。



第七話 世界中の愛を言葉にして

突如としてカラオケ大会の場に姿を現した調と切歌。

当然そうなると、敵対している二課所属の者たちは皆、警戒していた。

 

「翼さん、奏さん、惣一おじさん。あの子たちって・・・」

 

「あぁ、だが何のつもりで・・・」

 

「流石にここでおっぱしめるってことはなさそうだけどね」

 

「まあまあ、下手に動かずに見てみようじゃないの。一体何をするのか、な」

 

僅かな警戒する装者と面白そうだと笑みを浮かべて見つめる惣一。

だが言ってることはまともだった。

ここで下手に動いたりすれば、生徒全員が人質になる可能性もあるのだから。

 

「響、あの子達を知ってるの?」

 

「え・・・うん。 あのね、未来・・・」

 

「彼女達は、世界に向けて宣戦布告し、私達と敵対するシンフォギア装者だ」

 

響がどう説明すべきか悩みながら未来に言おうとした時、翼が自分達と敵対する存在するだと言う事を代わりに説明した。

 

「じゃあ、マリアさんの仲間なの? ライブ会場でノイズを操って見せた・・・」

 

「そうなるな。でも流石にあたしらの存在を知ってるかどうかは分からないけど、二人しか居ないなら分が悪いにも程があるが・・・」

 

「案外、戦いのために来たんじゃねぇのかもなァ・・・あの様子だと」

 

ただただクリスの歌に触発されて出てきたのでは、とでも惣一は推測しているのだろう。

その答えは一応当たっている。

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、港近くの倉庫内にて、フィーネの所有する飛行機は隠されていた。

アジトを抑えられたマリアやナスターシャにとって、今や隠れられる場所はこの飛行機しかない。

 

『マリアが力を使う度、フィーネの魂が強く目覚めてしまう。

それは、マリアの魂を塗り潰してしまうってこと。そんなのは、絶対にダメ!』

 

『アタシ達がやるデス! マリアを守るのは、アタシ達の戦いデス!』

 

その中で、マリアは自分の為に戦うと言った調と切歌の言葉を思い出していた。

 

「後悔しているのですか?」

 

俯いていたマリアに何かを感じたのか、ナスターシャが口を開く。

 

「大丈夫よ、マム。私は、私に与えられた使命を全うしてみせる」

 

そんなナスターシャにマリアは大丈夫だと首を横に振りながら言うが、その直後にアラームが鳴り始めた。

即座にナスターシャがモニターを起動すると、モニターに4分割された映像が投影され、銃で武装した人間達が映っていた。

 

「今度は本国からの追っ手・・・」

 

「もうここが嗅ぎ付けられたの!?」

 

そう、彼らは米国からナスターシャ達を拘束する為に送り込まれた特殊部隊だ。

 

「異端技術を手にしたとしても、私達は素人の集団。訓練されたプロを相手に立ち回れるなどと思い上がるのは虫が良すぎます」

 

「どうするの?」

 

「踏み込まれる前に、攻めの枕を抑えにかかりましょう。 マリア、排撃をお願いします」

 

「排撃って・・・相手はただの人間・・・! ガングニールの一撃をくらえば・・・!」

 

ナスターシャの排撃という命令に躊躇するマリア。

いくら敵でも相手は人間だ。シンフォギアの攻撃を受ければ確実に死ぬ。

それは大半の人間に当てはまること。

 

「そうしなさいと言っているのです。ライブ会場占拠の際もそうでした。マリア、その手を血に染めている事を恐れてるのですか?」

 

「マム・・・私は・・・・・・!」

 

マリアは何も言わずにただナスターシャの目を見つめていた。

そしてその会話を、部屋の外から聞いている者たちが居た。

 

「雷・・・行くぞ」

 

「ああ、覚悟はいいのか?」

 

「当然だ。罪を被るのは俺たちだけでいい」

 

腰に携える刀に手をやりながら、滅は敵が待っているであろう場所へ歩んでいく。

その後ろを雷がついていった。

 

 

 

 

 

 

 

明かりの灯った会場にて、調と切歌の二人が階段を降りてステージに向かってくる。

そして、切歌はクリスに向かって目の下を引っ張って舌を出した。

 

「べー!」

 

「ッ!」

 

完全にこちらを馬鹿にしている行為にクリスは思わず頭にくる。

しかしここで暴力に訴えかける程彼女も愚かではない。

 

「切ちゃん、私たちの目的は?」

 

「聖遺物の欠片から作られたペンダントを奪い取る事デース」

 

「だったら、こんなやり方しなくても・・・」

 

調が切歌に自分達が来た目的を聞くと、その返答に調が呆れたように言う。

その一方で、納得したような反応を示す人物が居た。

 

「ふん、なるほどな」

 

「え?」

 

「正直、アークさまのいない偽っているフィーネ側、装者三名と滅と雷。フィーネ本人にエボルト、装者四名と亡と迅がいる陣営。第三陣営として、アークさま。

どっちが優勢かなんて簡単でしょう? いくらノイズを召喚出来ても所詮ノイズ。ぶっちゃけアークさま一人で殲滅出来るからね、フィーネ側。で、ここで戦わないってことは---」

 

「シンフォギアを纏うために必要な聖遺物の欠片を奪えばいい。お前が付けているペンダントと同じな。そうすれば戦わずして相手の戦力を減らすことができる」

 

「なるほど・・・確かに」

 

キャロルとアズの言葉に理解したようにセレナは頷くと、ステージを見る。

特に何かが変わったような様子はないが、セレナは少し悲しそうにしていた。

 

(あの子たちもライブ会場に居た・・・どうして争わないといけないんでしょうか。装者同士、話し合えば変わると思うんですけど・・・まあシンさんのことだって、誤解してる人が多いですもんね。本当はとても優しくて、良い人なのですが。

そう簡単には行かない・・・のかな)

 

話し合えば良い。

言葉だけでは簡単だが、それはとても難しいことだ。

だが少なくとも、この時だけはセレナの思ったことが立花響と似たようなことだったというのは誰も知らない。

ただ誰もが言葉だけで繋がれたなら、争いもないのだろうか。

 

「聞けば、このステージを勝ち抜けば、望みを一つ叶えてくれるとか。このチャンス逃す訳には・・・」

 

「面白ぇ、やりあおうってんならこちとら準備は出来ている」

 

「あ、やっぱり受けるんだ・・・だよね」

 

切歌に対してクリスが勝負を受けて立つと宣言しているところを迅は聞こえたのか、呆れた様子で眺めていた。

一応、なにかあったら駆けつける準備はしてたのだが。

 

そんな中で、調の溜息が一つ。

 

「特別に付き合ってあげる。でも忘れないで。これは・・・」

 

「分かってる。首尾よく果たして見せるデス!」

 

切歌が不敵に言って見せる。

そうしてマイクを手にステージの上に立つ調と切歌。

 

「それでは歌っていただきましょう! えーっと・・・」

 

「月読調」

 

「暁切歌デース!」

 

リディアンの生徒ではないため、名前を知らない司会が困ったように言葉を濁すと、二人は自身の名を晒した。

 

(あっ、名乗るんですね)

 

(名乗っちゃダメなんじゃ? あぁ、でも二人は名前は大丈夫なんだっけ。アークさまのことじゃないからあんまり覚えてない・・・)

 

そこへ思わずセレナとアズが心の中でツッコミを入れていた。

一人だけ曖昧な記憶のようだが。

ちなみにキャロルは特に何もなく無表情である。

 

「オーケー! 二人が歌う、『ORBITAL BEAT』! もちろんツヴァイウィングのナンバーだ!」

 

司会の声が響き渡り、流れる前奏に、観客席の響達は驚く。

響たちだけではない。この曲は、知っている人々も多いはずだ。

 

「この歌・・・!?」

 

「翼さんと奏さんの・・・」

 

「あぁ、あたしらの曲だ・・・まさかここで歌わられるなんてね」

 

「なんのつもりの当て擦り・・・!?」

 

「挑発なのかもな。あえてツヴァイウイングの曲を歌うことで」

 

そして、調と切歌による、二重奏(デュオ)が始まる。

チャンピオンに挑戦するチャレンジャーの実力は以下なものなのか、それは今分かるだろう---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ナスターシャ達が身を潜め、飛行機を隠していた倉庫が爆破されると、特殊部隊が突入してきた。

 

「始まりましたね。さぁ、マリア!」

 

モニターを見ていたナスターシャがマリアに呼びかけるが、マリアは動けずにいる。

まだ覚悟が足りていない様子に、ナスターシャは自身の感情を押し殺して再び口を開こうとして---

 

『その必要はねぇよ。俺たちでやるからな』

 

『ガングニールを纏うにもLiNKERが必要だろう。俺たちで十分だ』

 

「雷に滅!? どうして・・・!」

 

『分かりました。頼みますよ、二人とも』

 

ナスターシャの言葉を聞いてから通信を切ると、滅と雷は特殊部隊を見下ろす。

倉庫内は既に火の手が上がっており、明るさが確保されていた。

これなら双方ともに戦いやすいだろう。

 

「さて・・・何人殺せばいいか」

 

「とにかく殺るしかねぇとしか言えないな。けど、出来るなら殺すなよ」

 

「分かっている。それはマリアが嫌がりそうなことだ」

特殊部隊は銃を持っていたり、ちゃんとした防具を身につけている。

一方で、こちらは仮面ライダーの力がなければ一般人。

人の身でありながら、ノイズの攻撃を回避出来た何処ぞの誰かとは違う。

それでもここでやらなければ、間違いなくマリアが戦うしかなくなるだろう。

だからこそフォースライザーを身につけて、いつでも迎撃出来るように警戒しながら、滅と雷は話していた。

 

「ん? あれは・・・」

 

「・・・ウェルだと?」

 

戦う前に別部隊が居ないかどうかもしっかりと周囲の警戒していた二人だったが、ふと視線の端で捉えた人物に驚いたように視線を送る。

ウェルも気づいたのか、ふっと笑みを浮かべてから手に持つ杖を構えた。

その動作で、何をするつもりなのか理解する。

ノイズを召喚する気なのだろう、と。

それを理解した瞬間、ノイズは既に召喚されていた。

ソロモンの杖の効果は、完全聖遺物なために誰でも扱うことが出来る。やろうと思えば無限と言えるほどのノイズを召喚することすら可能なのだ。

 

「ノイズ!? 撃て! 撃てぇてえええええ!」

 

「チッ、行くぞ」

 

「あぁ」

 

兵士たちが銃を発泡し始め、いつまでも同じところに居られない滅と雷は即座に跳躍し、地面に着地する。

既にウェルによって召喚されたノイズが発砲していた兵士のうちの一人へ触れると、兵士が真っ黒な塵となって消滅した。

その光景は、モニターで見ていた監視カメラの映像で彼女らも捉えており、見覚えがあった。

 

『炭素・・・分解・・・・だと?』

 

繋がれた通信から聞こえるマリアの声。

その通り、ノイズが触れることによって起きる炭素分解。

そもそも戦闘員たちを炭素分解させられるものなど、この世に一つしか存在しない。

 

『でしゃばり過ぎだとは思いますが、この程度の敵、僕一人で十分ですよ』

 

通信越しに聞こえる、ウェルの声。

生身で兵士たちの意識を奪っていた滅と雷にも聞こえており、どちらかというと隠密している滅と雷よりも、兵士たちは姿も見えていて狙えるウェルに向かって集中砲火する。

しかしその放たれた弾丸はノイズたちによって阻まれ、また別のノイズが彼らに近付き、そして触れた瞬間から一気に炭素分解していく。

モニターから聞こえくる声に、マリアが歯を食いしばって、必死に耐えて見ているのも知らず、滅と雷、そしてウェルとノイズによって特殊部隊の戦闘員たちは殺戮---

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、本当に---でしゃばりすぎだ』

 

される、はずだった。

凄まじい威圧感がゆっくりと、ゆっくりと歩んでくる。

兵士も、ウェルも、ノイズも、滅と雷も、モニターから見ているマリアとナスターシャですら、全員が動きを止め、全員からの視線が降り注ぐ。

その中を、一人仮面で顔隠しながら火に照らされる黒いボディを持つ人物が堂々と歩いてくる。

 

「あ・・・」

 

誰が漏らしただろう。

たった一言。

その一言だけで、プロである彼らに明確な()()を与えた。

片方しかないアンテナに左目が剥がされたかのようなマスク。

片目のみ禍々しく輝く赤い瞳を、兵士に向けた。

それだけ。

()()()()()()()()だというのに、向けられた兵士は恐怖のあまり『殺さなきゃ殺れる』と手に持つライフルで弾切れになるまで連射した。

 

『無駄だ』

 

短な言葉。

単純で、簡易で、無機質な発言。

まるで言霊にでもなっているかのように、銃弾が直撃する直前で時間が止まったように停止し、ぐにゃり、と空間ごと歪んだ。

 

『滅、雷。戻れ。さもないと---殺す』

 

興味を失せたように兵士たちから視線を逸らすと、今にも変身しようとしていた滅と雷に警告する。

死にたくなければ、戻れと言っているのだろうか。

 

「そんなこと言われて引き下がるとでも・・・」

 

「いやここは戻るぞ。滅、俺らが束になっても今のままでは敵わねぇ」

 

「・・・」

 

仮に攻められると、殺すことになるのはマリアしかいない。

だからここで全滅させるまで引き下がるつもりはなかったが、雷に言われて渋々と滅は一緒に戻っていく。

視線を一瞬移すと、既に赤い瞳を兵士たちに向けていたのを滅は見た。

 

(やはり・・・目的が分からない。何のつもりだ、アーク)

 

そう、その姿の全貌は、左半身が胸部装甲を貫くように銀色のパイプが伸びており、配線や内部パーツが剥き出しになっているなど、ライダモデルを無理やり剥がされたかのような痛々しい外見をしている---この世界の、人類の悪。

仮面ライダーアークゼロだった。

 

「アークゼロを撃て! 奴は敵だ! 殺せぇ!!」

 

少し経ったからか、部隊長と思われる者が兵士たちに指示を出す。

上司の命令に恐怖を多少柔いだのは流石プロと言うべきか、次々へと恐怖に取り込まれていた兵士たちが意志を取り戻し、拭おうとすべくアークゼロに向かって一斉射撃する。

 

『ふん』

 

左手を横に振るい、右手でパチン、と音を鳴らせる。

左手から放たれた凄まじい衝撃波は人間を無視し、ノイズだけを炭化。

そして音。

それだけで、兵士たちが一斉に全て倒れた。

 

「これはこれは・・・」

 

『死んではいない。記憶と意識を奪っただけだ。お前も戻れ、ノイズは邪魔だ』

 

「素直に従っていた方が良さそうだ。ですが、一つだけ質問させていただいても?」

 

アークゼロの危険性は知れ渡っている。

だがこうやって間近で目撃すると、その強さは噂以上。

ノイズでは太刀打ち出来ないどころか、ただ殺されるだけとウェルも理解させられた。

だからこそ、素直に従う選択をしたのだが、気になったことを尋ねようとするウェルにアークゼロは暫し沈黙すると、口を開いた。

 

『・・・答えられることなら、いいだろう』

 

「それでは、貴方はどうしてここへ?」

 

限定的ではあるが、許可されたウェルは少し悩み、真っ直ぐ見て問いかける。

 

『私が何処へ行き、何処へ現れ、何処で何をしようが、私の勝手だ』

 

「それはそうですね。ええ、それでは戻らせて貰いますよ」

 

『・・・ふん』

 

目的は聞けそうにない、と素直に諦めたようで、振り向き、出ていくために歩むアークゼロを飛行機へ戻ろうとしながらウェルはその後ろ姿を横目で見た。

隙だらけ。

ノイズを使役して攻撃すれば、間違いなく攻撃を与えられる。

しかし不思議と、ウェルは通用するとは思えなかった。

まるで何が来ても対処出来る、そう言った雰囲気を感じさせる。

 

(ですが、素晴らしい力。シンフォギアだろうが、ノイズだろうが何もかも避け付けないあの力は英雄たる僕に相応しい・・・!)

 

愚かで、滑稽。

その選択だけは、間違いでしかないことをウェルは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

調と切歌の歌が終わりを告げ、会場からクリスの時と同様の歓声があがる。

その歓声に調は呆然とし、切歌は素直に受け取っていた。

そんな二人の様子に、彼らは戸惑いを隠せなかった。

 

「翼さん・・・」

 

響が翼に尋ねる。

 

「・・・何故、歌を唄う者同士が、戦わねばいけないのか・・・」

 

「・・・譲れない信念が、それぞれあるもんだ。あたしがシンフォギア装者になった時のように」

 

その切実な想いに、奏がどこか分かるような、分かってしまうような表情で調と切歌を見ていた。

話して分かるものじゃない。

やらねばならない。

自分たちが---と。

人間とは、簡単に分かり合えるものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁ。今のって・・・」

 

そう言って、倉庫の中を影で怯えた様子で見ていた子供たちが居た。

 

「は、早く練習に行かないと」

 

「そ、そうだな。監督に怒られるし、気のせいだって。早く行こうぜ」

 

怯えてはいたが、すぐに離れるべきとこの場の誰もが判断していた。

互い互いに頷き合い、見なかったことにして自転車で逃げようとすると、何かが、路地裏から出てきた。

次々と山のように積もる灰。

さらに隣には人間が積もっており、ゆっくりとアークゼロが歩んできた。

 

『死にたくなければ逃げろ。そして---忘れるといい』

 

「え?」

 

唖然と自身を見つめる子供たちに、アークゼロはただ手のひらを翳す。

そして子供たちが球場へ向かうのを見届けると、アークゼロは変身を解いた。

 

(・・・子供たちは帰った。でも、犠牲者が多すぎたな)

 

積もる灰は、風に流されて散っていく。

かなりあった灰からして、数十人は間違いなくノイズに殺られた。

生き残っている兵士たちも最初に比べて少数だった。

 

「・・・・・・」

 

最後に兵士たちを見ると、シンは無言で歩いていく。

そうしてシンの姿が監視カメラでは捉えることの出来ない場所へ着くと、監視カメラは復旧した。

 

 

 

 

 

歓声と拍手が収まらぬ中、その中心人物である調と切歌に、司会が賞賛を送る。

 

「チャンピオンもうかうかしていられない、素晴らしい歌声でした! これは得点が気になる所です!」

 

確かに、クリスの時もそうだったが、彼女ら二人の歌もすさまじかった。

クリスの歌が野原のように穏やかなものであるなら、彼女らの歌はまさしく烈火の如き勢いのあるもの。

対極ではあれど、その凄まじさはクリスのものと引けを取らない。

特にソロとデュエットではパートナーとの協調性が大切なのだから、凄さが分かるだろう。

 

「二人がかりとはやってくれる・・・!」

 

一方のクリスもそれは認めていた。

その事に得意気になろうとした所で、二人の通信機に連絡が入り、連絡を聞き逃さないように耳を抑えた。

 

『アジトが特定されました』

 

「「ッ!?」」

 

『襲撃者を退ける事は出来ましたが、場所を知られた以上、長居は出来ません。私たちも移動しますので、こちらの指示するポイントで落ち合いましょう』

 

「そんな、あと少しでペンダントが手に入るのかもしれないのデスよ!?」

 

『緊急事態です。命令に従いなさい』

 

有無を言わせぬ言動で、通信を切られる。

それに、二人は悔しそうに俯く。

まだ採点結果も聞いていない。

これで勝っていたら、彼女たちの目的は達成されるというのに。

 

「さあ、採点結果が出た模様です・・・ってあれ?」

 

結果発表といったところで、観客も視界も含めて調が切歌を連れてさっさと壇上から降りていくのを目撃する。

 

「ッ!? おい! ケツをまくるのか!?」

 

思わずクリスが言葉を投げかけるが、その声に目もくれず、二人はさっさと出ていこうとしていた。

 

「調!」

 

「マリアや滅さんと雷さんもいるから大丈夫だと思う・・・。でも、心配だから・・・」

 

千載一遇のチャンスではあるが、それは調も分かってはいるのだろう。

しかしアジトがバレたということは怪我をした可能性だってある。

だからこそ、そう言われると、切歌は何も言えなくなってしまった。

 

「追わなくていいのか?」

 

「いや、追う。翼、響、行くよ」

 

「無論だ」

 

「分かりました・・・未来はここにいて」

 

惣一が会場から出ていく二人を見ながら、奏や翼に向けて言うと、彼女たちは立ち上がり、響は未来にここに居るように言った。

 

「もしかしたら、戦う事になるかもしれない」

 

「う、うん・・・」

 

そんな彼女たちを見送り、惣一がやれやれ、と言った様子でついて行く姿を見ながら、未来は両手を合わせて呟く。

 

「響・・・やっぱり、こんなのって・・・・」

 

俯いて呟く未来の声は、誰にも届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

学園の敷地内を走る調と切歌。

その前をふと、大きなくじらの模型が通り過ぎている。正確には運んでいるのだが、二人は、それを茫然と見る。

 

「くそ・・・どうしたものかデス・・・!」

 

通ることが出来ず、悩むことも増えた切歌が、悔しそうに言う。

そうして運ばれていたクジラの模型が通り過ぎると行こうとしたろを、翼と奏に遮られ、後ろからクリス、響、惣一と迅の四人が塞ぐ。

 

「・・・切歌ちゃんと調ちゃん・・・だよね?」

 

響がそう尋ねる。

先ほど、そう名乗っていたから当然なのだが、確認のためだろうか。

 

「六対二・・・。数の上ではそっちに分がある・・・だけど、ここで戦う事で貴方たちが失うものの事を考えて・・・」

 

そう言って、調はこの場に来ている民間人を見る。

家族連れの人や、カップル。

大勢のなんの力も持たぬ一般市民を。

 

「お前、そんな汚い事言うのかよ!? さっき、あんな楽しそうに歌ったばっかで・・・!」

 

(そうするしかないから、だろうな。この場面だと)

 

惣一は元々人質を取れば大人しくなるやつも居たことを知っている。

正義のために戦っている彼女たちには効果が絶大だということも。

だから一人だけ察していたが、切歌はクリスに言われたことにしばし考えた後、苦し紛れにある事を言い出す。

 

「ここで戦いたくないだけ・・・」

 

そしてびっとクリスたちの方を指差して宣言する。

 

「そうデス! 決闘デス!」

 

「どうしてそうなったんだ!?」

 

「しかるべき決闘を申し込むのデス!」

 

思わずツッコミを入れる迅が居たが、確かに彼の言うとおりなぜそうなったのか分からない。

 

「別に会えば戦わなくちゃいけないって訳でもない訳でしょ?」

 

「どっちなんだよ!? う・・・」

 

「どっちなんデス!? あ・・・」

 

被った事が恥ずかしいのか顔を赤くするクリスと切歌。

よくありがちな、恒例行事だった。

 

「決闘の時はこちらが告げる。だから・・・・」

 

調は切歌の手を取って、さっさと行ってしまう。

そこを誰も追うことはせず、見逃したのだった。

もしここで戦えば、調の言っていた通り民間人が危ないからこそ、下手に追うことも出来なかったわけだが。

 

 

『六人ともそろっているか?』

 

その時、ふと彼女たちが携帯しているインカムから連絡が入り、弦十郎の声が聞こえた。

耳に手を当て、話を聞く。

 

『ノイズの出現パターンを検知した。まもなくして反応は消失したがな。念のために周辺の調査を行う』

 

「その方が良さそうだな」

 

「だね」

 

「「はい」」

 

「ああ」

 

「分かった」

 

六人は指示を聞いて、了承の声を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところかわって、カラオケ会場。

すっかりチャンピオンとチャレンジャーが離脱して、このままでは盛り上がったのが無駄になる。

さらにチャンピオンがいなければ優勝者が誰もおらず、イベントとしても成り立たない。

その前にチャンピオン候補となっていた人達は既に会場を後にしており、呼び戻すのは難しい。

そして彼女たちの歌を聴いた後に、そんな自信満々にやりますなどと宣言出来るはずもないだろう。

 

「はい、出番」

 

「え?」

 

「オレも聴いてやる。早くしないと終わるぞ」

 

「え、えぇええええええぇぇ!?」

 

そんな中、手を挙げさせられたセレナに向かって、スポットライトが彼女を照らす。

助けを求めるようにキャロルに視線を向けると、これはまた面白いと言わんばかりに笑みを浮かべるだけ浮かべるキャロル。

アズを見れば、彼女はニコニコと楽しみにしてるような表情。

しかも既にスポットライトに照らされているせいで、ここでやめますと言えば会場はより白ける。

 

「安心して、アークさまも聴いてるから」

 

「え・・・ッ」

 

逃れることは出来ないため、仕方がなく立ち上がるセレナはアズの一言で一瞬固まった。

そんな様子を無視して、軽く背中を押され『頑張って』というアズの一言を背中に受けながら、緊張した面持ちで仕方がなくマイクを手にステージへ立つ。

 

「はーい! まさかのチャンピオン候補がいなくなってしまいましたが、此処で新しいチャレンジャーの登場でーす!!」

 

司会の人の言葉で、一斉に向けられるスポットライトと視線の雨。

手に握るマイクを強く握り、乾いた笑みを浮かべていた。

ステージの上に立つセレナの脳裏を支配するのは後悔という二文字。

 

(こうなるのは分かってたような気はしますけど・・・)

 

視線を上げれば、大勢の視線が向けられる。

そのことに、ふと既視感をセレナは感じとってしまった。

全身が硬直し、脚が自然と僅かに震える。

冷や汗を流し、何かがフラッシュバックする。

会場ではない、別のどこか。

知らないはずの場所だが、視線の雨に晒されながらただ恐怖という感情があったことだけを思い出していた。

それが誰なのか、自分だったのかすらも分からない。

ただ恐怖を感じていたことだけを思い出して、無意識にこの視線の雨から逃れようとセレナは一歩下がる。

別にやる必要はないと、降りればいいと、自分の中の弱い感情が口を開き、その誘惑に負けるようにマイクを置こうとして---

 

 

 

 

 

 

『歌え』

 

「ッ……!?」

 

頭の中に響いてきた声に逃げようと、置こうとしていた体が戻り、ふと顔を上げる。

セレナが視線を向ける先には、キャロルとアズが居た。

遠くて聞こえないが、アズの口からは頑張ってという言葉を読み取ることが出来る。

 

『歌えば恐怖なんぞ無くせる。特に、お前たち装者はな』

 

『キャロルの言う通りだ。

セレナ、お前が歌いたいなら歌えばいい。無理なら退けばいい。

ただひとつ、お前の本当の心に従え。

歌が好きなら、歌いたいなら歌えばいいんだ。そこに居なくとも、オレは聴いてるからな。

歌わなかったとしても、誰も文句は言わない。

ただ自分で選択した答えなら、それはお前が選んだ選択だ。自分を信じろ』

 

『・・・普通に念話(テレパス)に割り込むな』

 

それ以降、聞こえてくることはなくなったが、最後に諦めたようなため息が聞こえたのはキャロルのものなのだろう。

まぁ、一人を対象にやったというのに錬金術師でもないただの仮面ライダーが軽々割り込んでるのだから仕方がないといえる。

ただそれでも---

 

(シンさんも聴いてくれる・・・。私は歌いたい? 歌は好きだけど、別に無理してここに立つ必要はなかったのに。じゃあ、なんで私は今、この舞台に・・・? それはきっと、私は---)

 

不思議と恐怖感は薄れ、恐怖という暗い感情が明るい世界へと変わっていく。

脳裏には、暖かな光を感じさせる映像が浮かんできた。

みんなが居て、笑っている世界。

そこに欠けて居るものなんて、誰一人いない。

さらに---

 

 

 

 

「頑張って! シアちゃんッ!」

 

立ち上がって応援するのは、小日向未来。

不思議そうに見詰めてくる人々の視線など気にした様子もなく、応援するその姿は勇気がある行動だ。

 

「頑張れ、シアちゃん!」

 

「頑張ってください! ファイトですよ!」

 

「敗退したあたしらの分の仇討ちをあんたに託すよ! だから頑張って!」

 

その未来の行動を見ていた安藤に寺島や板場が頷き合うと、未来と同じく立ち上がって、声援を与える。

驚いたようにセレナが見ると、セレナは自然と笑みを浮かべていた。

 

(このまま行けば、彼女たちとも敵対するかもしれないけど、今は・・・。今だけは、敵味方関係なく、私の歌を届けたい。

シンさんに情けないところを見せないために。何よりも、シンさんに私の想いを届けたい。

だから・・・ッ!)

 

マイクを強く握り、セレナは俯いて表情を引き締めると深呼吸をひとつ置き、顔を上げると誰もが静まった。

降り注ぐ視線の中を、セレナは真剣な様子で口を開く---

 

 

 

 

 

 

 

 

「---聴いてください、世界中の愛を言葉にして」

 

 

誰かを想い、一人のための歌を、独りにしないという思いがある歌を、セレナは歌い始める。

観客全員を魅了する、感情が強く籠った歌を。

誰にも止めることの出来ないその、秘められた想いを。

 





いつものやつはなしで余談:君の夢は私の夢(玉藻前CV:堀江由衣)てしたが、こっちの方が合ってるなということで変更しました。
ちなみに前者は幻想神域ってゲームですが、知ってる人居んのか・・・?
歌詞は前者も割とリンクしてましたけど気になる方はそちらへ。確か元は初音ミクだったかな。忘れた。

番外編(時系列にあったキャロルやオートスコアラー、他のキャラと主人公の日常)

  • いる
  • いらない
  • 二期行こう
  • アークワンはよ
  • うるせぇ、尊くさせろ。暗殺するぞ
  • もっとイチャつけ
  • 息抜きは大事だからね仕方がないね
  • で、IF編まだ?
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