戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ〜   作:絆蛙

52 / 59
第十話 チカラの代償

始まりはいつだっただろうか。

それは分からない。知らない間にベルトがあって、必要なキーは知らない間にあった。

いつ、どこで、どうして、なぜ、あらゆるものは分からず。記憶すらなかった。

ただわかるのはこの世界に仮面ライダーゼロワンという正義の味方が生まれ、そして光が強くなれば闇も強くなるように、仮面ライダーアークゼロという人類の敵が生まれた。

何故誕生したのか、何故突然動き出したのか、目的はなんなのか、それは誰にも分からない。

ただ---その悪意に満ちる電子世界には、映像が存在していた。

そこには仮面ライダーゼロワン、シャイニングアサルトホッパーが戦い、打ち勝ち、密かにノイズと戦うことになった日。

何処かを駆け抜け、向かおうとした姿。

必殺技(ライダーキック)を決める姿。

そして何より---()()()()()()()()()()()()()()姿。

きっと始まりは---そこだったのだろう。

あの時、仮面ライダーゼロワンが生まれなければ。あの時、ある男の子が仮面ライダーゼロワンに変身しなければ。あの時、仮面ライダーゼロワンが戦わなければ。

あの時、一人の少女のために戦う道を選ばなければ。あの時、何もしなければ。

きっと、世界は、歴史はもっと別へ動いたはず。

しかし時は既に遅く。

仮面ライダーゼロワンは誕生し、アークゼロが変わるように生まれてしまった。

あれ以降、仮面ライダーゼロワンという存在は世間から噂程度で消え、もはや都市伝説の領域。

唯一知っているのは、二課とエボルト、アークくらいなものだ。

もはや居るのかすら分からず、アークを止めることが出来る存在は、果たして居るのか---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭がクラクラして、意識を取り戻す。

うっすらと視界に映ったのは傍に居て何かをしてくれている、一人の少女の姿だった。

まだ朧気な意識で分からないが、思い当たる人物をシンの名を呟く。

 

「キャ・・・・・・ロル?」

 

「あ・・・気が付きましたか!?」

 

否。

その人物はキャロルではなく、躯体に選ばれず、欠陥を備えた劣化コピーとしてキャロルに似た容姿を持つホムンクルス---廃棄物としての烙印を押されたエルフナインだった。

 

「その声・・・エルフナインか。悪い、まだ意識が朧気で・・・ってエルフナイン?」

 

声で判断したシンは自ら体を起こそうとしたところで、ふと衝撃が全身に走り、激痛を感じるが、なんとか表に出さずにエルフナインを見つめた。

 

「よかった・・・ご無事で何よりです・・・! シンさんが運ばれてきたとき、もうダメなんじゃないかってボク不安になってしまって・・・!」

 

「・・・そうか。何があったかは流石に分からないが、悪かったな」

 

何の治療もされてなかった状態を見たのだろう。

泣きつくエルフナインをシンは背中を摩る。

そもそもの問題としては、むしろ変身したとはいえ、食べられた後に戦って生きてた方が十分やばかったりもするのだが。

 

「それで、セレナは? それとどうしてエルフナインがここに?」

 

「あ・・・えっと、セレナさんはまだ目覚めてないだけで無事で・・・。ボクはシャトーを歩いてたら偶然キャロルに会って、それでシンさんの様子を見るように言われたんです」

 

「なるほど・・・それはなんというか、迷惑かけて悪かった」

 

ある程度落ち着いたと見ると、シンは本題に入って事情をエルフナインに聞くと、一言謝罪した。

 

「そ、そんな・・・むしろボクなんかが役に立てたかどうか・・・」

 

「十分だ。ありがとうな」

 

相も変わらず謙遜なエルフナインの姿を見て苦笑すると、シンはエルフナインの頭を撫でながらお礼を述べた。

 

「・・・・・・えへへ」

 

「・・・あぁ、そうだ、悪いけど水持ってきてくれるか? 流石にあんまり動けそうになくってな」

 

エルフナインの頭を少しの間撫でると、嬉しそうにする彼女の姿にフッと笑ってからシンはエルフナインにお願いした。

まだ肉体は回復しておらず、水分が欲しくなったのだろう。

 

「あ、は、はい。すぐに持ってきます。あの・・・なので無理しないで寝ててください!」

 

「・・・・・・ああ」

 

それを聞いたエルフナインは、バッと立ち上がって振り返って一言だけ言うと、部屋を走って出ていく。

---が、すぐに大きな音が聞こえたのは気のせいだろう。

 

「さて・・・」

 

アークドライバー・・・

 

それを見届けたシンは頭痛に顔を顰めるが、朧気な視界の中、腰にドライバーを出現させる。

 

「・・・やっと、()()()

 

そのまま周りを見渡し、自分の体を見れば服が変わっており、何故か新品になっている黒いパーカーを見つけると、シンは引力を操ることで引き寄せ、ドライバーを隠すようにパーカーを着込む。

 

(セレナはオレの力が原因で取り込んだから問題ない。しかし立花響はもうこれ以上ギアを纏わせるわけにはいかないか・・・ヤツが居なくなるとオレの目的が果たせない。しかし融合を止めることは聖遺物を理解したオレでも防げない。

さて、どう侵食を消すか・・・やはり奴らが持っている()()()()()しかないか)

 

そう考えたところでアークドライバーゼロが勝手に予測し、脳内に強制的に情報を入れられたシンは軽く頭を抑え、ふと何も無いところを見つめた。

そして誰もいない場所に向かって、口を開く。

 

「おい、いつまで姿を隠すつもりだ---アダム」

 

「・・・流石と言っておこうかな」

 

呆れたような様子でシンが何も無いところに呟くと、ふとアダムがいつもの姿でその場に現われた。

何故こうも、どいつもこいつもシャトーへあっさり侵入するのか。

キャロルが居たら、間違いなくキレてる場面だった。

 

「で、何の用だ?」

 

「無事を確かめにね。キミの。心配だったんだよ」

 

「嘘つくな。絶対心配してないだろ・・・ったく。要件は知らんが、今日は任務は無理だぞ。オレも本当に肉体動かないからな。それにそんな時間はないし、エルフナインが戻ってくる」

 

もしこれでして欲しいことがあると言った瞬間、間違いなくアダムに拳が飛んでいくが、どうやら今日はそのためではなく、分かってると言いたげに頷くと口を開く。

 

「なら本題に入ろうか。君は言っていたね、()()()()()()、と」

 

「・・・それが?」

 

どうやらシンが呟いたことは聞こえていたようで、その言葉を言った瞬間、カレはアダムを睨んでいた。

 

「だとすれば、キミの肉体に()()()()()()()()はずだ。一体何を失い、何があった?」

 

「・・・さて、なんのことか」

 

睨むのをやめたシンは、ただ誤魔化すようにアダムから目を逸らした。

その姿を見てか、アダムは少し笑みを浮かべる。

 

「・・・相も変わらず、嘘が下手だね、キミは。心配せずともボクはキミの()()()()()友のことが心配なだけさ」

 

「・・・・・・はぁ」

 

がしがし、と後頭部を掻き、諦めたように息を吐いたシンはお手上げといった感じで両手を上げていた。

 

「その言葉が嘘だったなら・・・話す必要もなかったのにな」

 

「なに、例え他の言葉が嘘であったとしても、この言葉だけは嘘を付かないさ。キミはボクの友人でもあり、()()()()でもあったのだから」

 

「・・・・・・・・・」

 

何を思ったのか、シンは少し遠い目で扉の先を見ると、目を閉じて黙る。

ただ分かるのは、手を強く握りしめてることから、少しの後悔だ。

 

「・・・すまない、話が逸れたね。今はそれよりも・・・いいのかな、その言葉は話してくれると取っても」

 

「・・・ああ、そうだな、構わない。

でも何があったってキャロルだけには決して話すな。話した瞬間、お前の顔面を破壊して不細工に修復してやる」

 

「・・・恐ろしいね、それは」

 

流石のアダムも話を戻すべきだと思ったのか、話題を戻すと殺気をほんの少しだけ漏らしながら睨むシンにアダムは肩を竦めた。

それだけは勘弁して欲しいと言いたげだ。

 

「・・・()()()()()。色覚に異常が発生している。それが今のオレの現状だ。今はアークドライバーゼロを介して色覚を取り戻してるが、これがなければ全てが灰色にしか見えない」

 

あっさり語った、自分の身に起きている異常。

シンがキャロルとエルフナインを判断するために声で判断した理由が、これだ。

エルフナインはそもそもキャロルの躯体として作られた存在。

だからこそ似てるのは当然であり、違うのは髪色と髪の長さくらいだ。

そのため、意識も朧気だったシンは間違えたということ。

 

「原因は?」

 

「アークワンになったからだろう。オレはアークゼロならば何の負担も負荷なく変身出来るが、あの形態はオレですら危うい。

これは予想だが元々()()オレは正式な変身者じゃないんだろうな。だからこそオレは変身するたびに身体機能のひとつを失うのかもしれん。もしかしたら、記憶ですらも」

 

どうやら原因を理解しているらしいが、淡々と語るカレの言葉からは、興味がないといった感情が節々に込められている。

まるで、自分のことはどうでもいいと言いたげに。

 

「オレは不完全だ。不完全だからアークゼロの力を半分までしか引き出せない。全力を引き出すには吸収してきた悪意の力を使わなくちゃいけないし、制限時間もある。

でもな、アークワンは別だ。アレに変身すれば()()以外は予測できるしオレの力は不完全ではなくなる。アークだけではなく、()()()()()()()()でも本気を出せる。

だが・・・不完全な存在が完全な力を使えばどうなる? 不完全で力を引き出せない者が、強引に引き出せばどうなる?」

 

「代償を支払うことになる・・・か。なるほど、あの姿はキミにとって力の前借りを成す力。その分、力は強力だ。それこそ、このボクですら止めることが難しいほどにね。

理解したよ、だからキミは()()()()()()()()()()と言ったんだな」

 

強大な力を扱いには、それ相応の対価が必要となる。

シンにとってそれは、身体機能を捧げること。やけに自身を不完全だと言っていたのは、アークワンの力をまともに使いこなせず、代償が必要からなのだろうか。

そして、それがアダムが言われた()()()()()

あの場ではアダムはサンジェルマンたちに止めるようにと頼まれたと言ったが、本当は違う。

シンに言われたのは、殺すことだ。

 

「・・・そういうことだ。お前の力なら安心出来る。任せられる。

お前なら殺す気だったら、暴走しているオレを確実に殺せる可能性がある。()()()()()()()()()()()()をな」

 

「しかしキミは・・・」

 

「・・・言っただろ、オレは不完全だって。それで目的が達成出来るならば、安いものだ。オレにとってその目的だけは・・・絶対に果たさなくちゃいけない。けどその前に全てを終わらせたら、終わりだ」

 

あの時、いつものシンとは違った理由。

それは意識を乗っ取った()()()()()がシンの体を使っていたからだ。

だからこそ、シンはセレナを殺そうとしたし立花響やエボルトに対しても一切手加減がなかった。

 

「フッ・・・それは完全になれば解決出来るものだと思うが・・・しないんだろうね、間違いなく」

 

「・・・ああ」

 

結局のところ、それだ。

何が不完全で何をしたら完全になるかは知らないが、不完全という言葉から察するに、完全になればシンは何の代償もなしにアークワンの力を、それ以上の力を引き出せる可能性がある。

だがどうやらするつもりはないようで、アダムは分かっていたように笑みを浮かべていた。

 

「・・・終わりのようだね、もう少し話したかったのだが」

 

「・・・気配がするな。バレたら面倒なことになるぞ」

 

「帰るよ。ただ---キミはもう少し自分を大切にすべきだと思うけどね、余計なお節介かもしれないけど。でもキミを大切に想う人を忘れないでくれ。ボクだってそうなんだから」

 

「・・・気持ち悪いこと言うな。その言葉だけ聞くと変な捉えられ方をされるぞ」

 

若干頬を引き攣らせ、嫌そうな表情を浮かべたシンは近くにあった枕を掴み取って軽くスパイトネガを纏わせて投げるが、ただアダムは笑いながら枕を木っ端微塵に破壊すると、帽子を深く被って戻ろうとし---振り向いて口を開く。

 

「ああ、そうだ。最後にひとつだけいいかな」

 

「・・・手短にな」

 

徐々に迫ってくる気配に、申し訳なく思いながらシンは扉にオーラを纏わせて開かないようにしてアダムに短く返す。

 

「ならば---キミは一体、いつまで()()()であるつもりなのかな」

 

「・・・そんな偉大なもんじゃないよ、オレは。

本当の抑止力は、ヒーローはもっと別に居るからな」

 

真剣な表情で述べるアダムに、シンはただ自嘲的な笑みを浮かべて、何処か複雑な表情を浮かべながらそう返すと、アダムは一度目を伏せる。

 

「・・・そうか。悪かったね、ボクは帰らせてもらう。ゆっくりと休むとい」

 

「さっさと帰れ。サンジェルマンたちにあまり迷惑はかけるなよ」

 

「善処しよう」

 

それだけを言い、アダムはこの場から姿を消す。

どうせ変わらないんだろうな、と思いつつシンは扉を開けられるように力を霧散させるのと同時に、扉が開く。

 

「お、お待たせしました・・・!」

 

水を持ってきたエルフナインが入ってきて、駆け寄る。

それに対してシンは手を挙げることで返事し、水を受け取っていた。

 

「あの・・・」

 

「ん?」

 

「さっきまで誰か居たりとか・・・しました? 内容までは分からなかったのですが・・・シンさんの声が聞こえた気がして」

 

「あー、ちょっとシミュレーションをな」

 

「あぁ・・・」

 

エルフナインの疑問にシンは誤魔化すように理由を述べると、彼女は納得したように頷いていた。

どうやら日常的にシミュレーションをすることがあるようだ。

 

「それより、本当に助かった。また今度、なにかお礼する」

 

「い、いえいえボクは言われただけですし・・・シンさんと話せるだけでボクは十分です! こんなボクにいつも気遣ってくれて、相手してくれて、それだけで嬉しいですから」

 

「オレがやりたいからやるだけだ。何かあったら言ってくれるだけで構わない。出来ることならなんだってしてやる」

 

話題を変えたシンは恩を返そうとするが、エルフナインは遠慮する。

そんな彼女の性格を知っているシンは彼女が遠慮しないように理由を述べていた。

 

「でも・・・」

 

「いいから、な?」

 

「・・・分かりました。その、本当に何だっていいんですか?」

 

「ああ、約束は破らない」

 

恐る恐る、といった感じで上目遣いで聞くエルフナインにシンはただ頷く。

キャロルとは違い、内向的な性格を持つエルフナインにはこうでもしなければ、彼女は何も言わない。

だからこそ、さっき理由をつけたのだ。

 

「でも、流石に今は勘弁してくれ。まだやることがある」

 

「は、はい。大したことではないので、大丈夫です。それよりやることって・・・?」

 

「キャロルの元へ行く。セレナの様子見。アズに謝る。それから仮面ライダーと装者の様子見。思い出を分け与える。ミカの遊び相手、くらいかな・・・ああ、あとは依頼があればやったりとか---とにかくやることは今は多い」

 

途中で考えるのをやめたのか、大雑把に答えたシンは今出来ないことに申し訳なさそうにしながらも立ち上がり、ふらつく。

 

「ま、待ってください。その体では危険です。まだ休んでおかないと---」

 

「いや、オレはまだ止まるわけにはいかな・・・」

 

ふらつきながらもその歩みは止めず。

エルフナインの制止する声すら聞かないままシンは扉まで歩き、体が後ろへ倒れる。

 

「あ、あぶない・・・!」

 

慌ててエルフナインが駆け寄り、シンの体を後ろから支えるが、非力な彼女ではキツいらしく、必死に力を入れるが体重がかかっているのもあり、やはり支えきれずに尻もちをついた。

しかし咄嗟にシンの頭は守っていたようで、シンが無事だったことにエルフナインは安堵の息を吐いた。

 

「あ・・・やっぱり、無理していらしたんですね・・・」

 

全然そう見せようとしなかったが、シンの意識が失われていることに気づいたエルフナインは少し悲しそうにシンを見つめていた。

本人の表情も、何処か苦しそうだ。

 

「キャロルの目的・・・パパの命題・・・それから、シンさんの目的・・・。

取り返しになる前に、何とかしたい・・・」

 

無理をしてでも何かをしようとしているシンの姿。

ずっと探している答え。自分に出来ること。

それらを考えながらも---エルフナインには一つの想いだけが、気がつけば宿っていた。

 

(皆さんと・・・キャロルやシンさんたち。みんなとこれからも過ごしたい)

 

そう、エルフナインとキャロルの仲は悪くない。

エルフナインが自ら部屋に籠ってるのが原因なだけであって、話す時は普通に話す。

無論、他のオートスコアラーたちも。

だがそうやって話すようになったのは、間違いなくシャトーに変化を起こした者が居たからだ。

なぜなら本来であるならば、エルフナインという存在はチフォージュ・シャトー建造の為の労働力として限定的な錬金術の知識を与えられ、その詳細を知らされないまま装置の建造に加担する---それだけのはず。

キャロルや他のオートスコアラーたちと今みたいな暮らしなんて、なかったはずなのだ。

歴史は、現れたイレギュラーの手によって既に外れてしまっている。

しかし大きく変わらないのは、原点(原作)通りに最終的に動いてるから。

 

(本当に、本当にボクは感謝してるんです。だからせめて・・・シンさんやキャロルたちには普通に過ごして欲しい。命題に拘らずに、大切なものを見つけて欲しいって、思ってるんです)

 

例え話しても、変わらない。

だからこそ、エルフナインは探し続けるしかないのだ。

みんながこうやって、自分を含めて過ごせるように。

何もしなければ---いずれ、バラバラになってしまうから。

キャロルの目的は、そうさせてしまうものなのだから。既に、知ってしまっているから。

そう改めて自分の思いを自覚し、とりあえずカレを休ませるために枕を探したが、何故か枕は悲惨なことになっていた。

 

「どうしたら・・・あっ」

 

そして、深く考えようとして今をどうにかしようとしたエルフナインは思い出した。

ふと気になったとき、エルフナインは知識の探求のために聞いたのだ。

いつもシンの傍に居て、いつも支える一人の少女に。

その少女---アズがシンを膝枕している姿に偶然出会し、それに何の意味があるのかと。

そして返ってきたのは---

 

『勝手にしてるだけだけど、この方がアークさまが痛くないでしょ? あと地面がうらやま---じゃなくて大切な人にするものだから。この方が、大切な人の顔を見れるから・・・かな? 他にも理由はあるけど、エルフナインもしてみたら? 貴女の膝枕なら気持ちよく休めそうだけど、少なくとも私の気持ちは分かるかもね』

 

と、そう言った答えを言われたのだ。

エルフナインにとってはシンという人間は大切な人でもあり、怪我人の彼が地面に寝転ぶとなると寝返りの際に怪我が悪化するかもしれない。

理論としてはあながち間違ってなければアズの言葉も一つの意味としては正確。

故に、純粋な彼女は行動に出た。

その方が合理的と判断し、アズがやっていたのを記憶から呼び起こしながら自身の膝にシンの頭を乗せた。

 

「これでいいんでしょうか・・・」

 

間違ってないが、あくまで記憶の再現に過ぎない。

エルフナインは少し不安にしつつも、記憶の中の行動を思い出してそっと触れるように頭を撫でてみた。

いつもは身長的な意味でもされる側で、自分から出来ることはなかったのだが、意外と撫で心地がよかったようで、エルフナインは撫でるのを続ける。

暫くそうしていただろうか、ふと、エルフナインは思った。

今のエルフナインは露出は高くなく、しっかりとした服---というか会った当初はほぼ下着の状態だったのだが、後々アズやセレナに怒られて改善させられた。

今はちゃんとしたワンピースを着ている。

エルフナインに本来の性別はないが、キャロルを元に作られたのもあって誰もが女性として扱っていて、自分も自然とそう思っていた。

故に、不安もなくなって冷静になるとこの状況を分析してしまい、見る見るエルフナインは顔を赤くしていく。

目の前の男の子を一人の異性という認識をし、女の子としての感情が今のエルフナインを作り出していた。

 

「っ・・・で、でもボクがやりたいから・・・」

 

羞恥心が今更やってきたが、やめればいいだけの話。

しかし不思議と、自分でも理解出来ない胸の中で、知らない感情が何かを渦巻く。

普段あまり時間は取られないため、こうして世間一般でいうスキンシップを取ることはエルフナインは少ない。

そのせいなのか、何故かやめたくないと、続けたいという想いが芽生え、満足感のようなものが生まれていた。

シンの顔を見てみれば、彼は苦しそうにしてた時と違って、エルフナインが膝枕してからは安らかな表情で眠っている。

 

「・・・こういう、ことだったんだ」

 

あの時は会ってそんなに経ってなかったため、正直衝撃な場面ではあったのだが、エルフナインはアズの気持ちを理解したような、そんな気がした。

キャロルを元に作られたとはいえ、エルフナインは個の存在。人工生命でも既にエルフナインという人格が形成されている。

だからこそ、自分が抱くこの思いは自分のものだと気づいていた。冷静な分析が、自分の中のナニカをうっすらと理解していた。

 

「・・・ボクも、助けてみせますから。きっと、シンさんを」

 

自分に出来ることは戦いではなく、研究。

勉強し、助けるだけ。

少なくとも科学の力をアークは超越しており、何をしても無駄・・・というより、わからなかった技術などをシンに聞いたら即答で返ってきたため、可能性として考えられるのであるなら、対抗手段は錬金術のみ。

いつも助けてくれて、守ってくれて、世話してくれるカレのためにも。

何よりも胸の中に芽生える、辛くとも苦しくとも温かくて、こうしているだけで早くなる鼓動を抑え、エルフナインは一層頑張ろうという決意をしたのだった---

 

 

 

 

 

ちなみに、アズは様子見で覗いていたのだが、若干嫉妬しつつも空気を読んでキャロルの元へ向かったとか。

変わりたいという思いはあっても、彼女は自分の思いよりシン第一なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

弦十郎によって呼び出された翼と奏は呼び出された要件を聞いた。

そこには一部記憶のないフィーネこと、櫻井了子や亡も共に居り、この場にいないのは響とクリス、迅と惣一のみだ。

それはさておき、翼の手に渡されたシャーレを奏が覗くように見ると、中には何らかの石のようなものがあった。

鉱物か、それとも結晶か。

一体なんなのか分からずに二人は顔を上げると、壁面にはレントゲンが映し出されていた。

心臓を中心に渦巻く歪な影が奔っているレントゲンは、一体誰のものか。

それに関して、了子と亡が答える。

響の対組織の一部であること。

シンフォギアとしてエネルギー化と再構成を繰り返した結果、体内の侵食進度が進む---つまりは一時期の(フィーネ)と同じようなことになっていると。

つまりは、聖遺物との融合。

あれほどの爆発力を発揮出来たのも融合症例として起きたこと。

 

問題はそこじゃない。

確かに驚いたが、翼と奏はこのまま行けば響がどうなるのかを弦十郎に問いかけた。

響のガングニールの欠片は摘出は不可能。

なんの影響も与えないならばよし。与えるならばそれは---だが、弦十郎から返ってきた言葉は残酷な言葉だった。

遠からず死ぬ、と。

信じたくはない。

特に弦十郎だって思うことはあるようで拳を強く握っており、奏に至っては普段の様子からは考えられないほどに歯を噛み締めては悔しそうにしている。

翼はそんな奏の様子が心配だったが、気持ちは同じだ。

あの罪は---もう姿を現さなくなった仮面ライダーゼロワンという存在のお陰で最悪のケースは回避されたが、奏や翼が忘れられない罪なのだから。

誰が、なんと言おうとも。乗り越えた過去であっても、忘れてはならないのだから。

 

それでも、伝えねばならない。

このまま融合が進む---すなわち、ギアを纏えば纏うたびに立花響は立花響でなくなることを亡は二人に告げた。

それを聞いた翼と奏は覚悟を決め、自分たちが代わりに戦うことを選ぶ。

無論、このような状況になってしまえば立花響という存在は戦力的にも大きかった。

今のF.I.S.に対抗するには温存することも戦力を残すわけにもいかず、特にあのように冷静さを欠く迅が居ると考えればなりふり構っていられない。

亡も戦場へと駆り出されることが決まったのだが---そんな会話を、実は、それはもうこっそりと、聴いてた者がいた。

 

(やれやれ・・・一難去ってまた一難ってやつか。まァ・・・今回ばかりは俺には何も出来ないことだがな。

俺はアイツ(戦兎)にはなれないんでね)

 

部屋には侵入していないが、人間のように振舞っているというか誰にも---否。一人、二人だけ地球外生命体ということを当ててきた人物以外にはバレてない石動惣一にはこれくらいのことは造作もなく、聴くことに成功していた。

だが、聴いた程度で何も出来ない。

そもそも立花響という人間を惣一は似たタイプを何人も知っているため、止めても無駄だと理解している。

 

(だったら・・・そろそろ正体を掴ませて貰おうかね。ヤツに近づけば、恐らく俺の力も取り戻せるしな・・・なぁ、アーク?)

 

故に、惣一は何も心配していない。

ここで終わるなら所詮はここまでの存在。だが---惣一は解っているのだ。

彼女のことを頼み込んできた少年は、この自分が認めた存在。面白いと思った人間。

ならば、その少年の近くにいる少女はここで終わるはずもないし、彼女の目的が未だに達成されてないのだから死ぬはずもない。

だったら、自分がそろそろ気になっているアークの正体と()()()()()を先に知って、もし事実であるならどうにかするために動くために、惣一はついに本格的に動き出すことを決めた。

---アークの正体が、自分の知る少年なのか。はたまた別なのかを確かめるべく。

もしそうであるなら---前までの自分ならば殺すこと一択だったのに、今やどうするか分からない自分に---いや、あの少年ならば、()()()()()()()()()()()()()という感情が芽生えている自分に混乱しつつ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。