戦姫予測シンフォギア 〜未来へのREAL×EYEZ〜   作:絆蛙

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どうも。
期間開きすぎだけど今更すぎて需要あるかどうか分からないしこの小説覚えてる人いるかすら分からないんですけどゼロスリー記念に急いで書き上げました。
もうガッチャードやってますからね、なんならガッチャード終盤に差し掛かりかけてますからね、アホか?
需要あると、嬉しいなぁ・・・





第十三話 失われしサンシャイン

 

 

 

 

 

二課仮設本部の潜水艦のメディカルルーム。

そこに翼、奏、クリス、迅、惣一が集まり、目を覚ました響の様子を見に来ていた。そして、後からやってきた弦十郎がスキャン画像を使い、響の身体の状況を伝える。スキャン画像に映っているのは、何かの臓器で、至る所に鉱石のようなものが埋め込まれている。これがガングニールの浸食によってできたものだ。

 

「これは響君の身体のスキャン画像だ。体内にあるガングニールがさらなる浸食と増殖を果たした結果、新たな臓器を形成している。これが響君の爆発力の源であり、命を蝕んでいる原因だ」

 

それを見たクリスが悔しそうに顔を歪め、誰もが静かになる中で響の笑い声が聞こえてきた。

 

「あは・・・あははは・・・つまり、胸のガングニールが活性化するたびに、融合してしまうから、今後は、なるべくギアを纏わないようにしろと・・・あはは・・・」

「いい加減にしろ!!!」

 

呑気そうに笑っている響に翼は彼女の腕を掴み、怒りの形相を浮かべている。

 

「"なるべく"だと? 寝言を口にするなッ! 今後一切の戦闘行為を禁止すると云っているのだッ!」

「響、悪いけど今回ばかりはあたしも翼の味方だ。このまま戦えばお前は死ぬんだぞ!分かってんのか!?」

 

感情のままに怒鳴った翼の眼には涙が滲んでいた。

奏は強くは怒鳴ることはしなかったもののその表情は何処か苦しげで響を思いやる目だった。

翼もそうだが、この場でもっとも本人以外に辛いのは奏だろう。

元はと言えば一般人だった響を巻き込んでしまうことになった負い目がある。

 

「待って待って。二人とも一旦落ち着いて!」

「迅の言う通りだ。この馬鹿だって、分かってやってるんだ」

「・・・悪い」

 

迅とクリスが止めに入り、翼はさっさと病室を出ていく。

誰も声をかけられない中で、奏は拳を強く握りしめながら響を一瞥すると一言言ってから翼を追いに行く。

一人にするわけにはいかないからだろう。

惣一はやれやれ、と肩を竦めると考え込むように画像をみていた。

 

「医療班だって無能ではない。目下、了子くん主導の下対策をしている最中だ」

「師匠・・・」

「治療法なんて、すぐに見つかる。そのわずかな時間を、ゆっくりしててもバチなど当たるものか! だから、今は休め」

「分かり、ました・・・」

 

響の頭の手に置き、頼もしい笑みを浮かべながらそう言う弦十郎。

響は沈んだ表情で俯きながら何とか言葉を絞り出した。

 

 

 

 

 

 

 

数刻が過ぎ、惣一以外が退出すると彼はどこから取り出したのかコーヒーメーカーとコーヒー豆を使ってコーヒーを挽いていた。

何も喋らない響に何かを言うことも無く、黙々と作業している。

 

「・・・惣一おじさん」

「なんだ?」

 

耐えれきれなくなったのか、響が声を掛ける。

惣一はそれでも顔を向けることも無くコーヒーと向き合っていた。

 

「私・・・どうしたらいいのかな」

「さぁな。それを決めるのは響ちゃん自身だ。お前が戦わなかろうが戦おうとも勝手だ」

 

冷たいといえば冷たい返答だった。

しかし惣一は響のような人物をこの目で何度だって見てきた経験がある。

だからこそ、その答えも正しさも全部知った上で何も言わない。

言ってしまえば本人の成長には繋がらない。

 

「ただまあ・・・自分の心に従えばいい。悩んで考えて、その上で出した答えなら誰にも文句は言えねぇだろ。俺から言えるのは、どの選択を取ったとしても後悔をしない選択をしろってことだ。あの時のように、取り返しのつかないことにはならないようにな」

「っ・・・アルトくん・・・」

「まっ、旦那も言ってた通り休むって選択もある。どうするかは休んでる合間に考えりゃいい」

 

思い出したのか、顔を曇らせる響を一瞥するとそれだけ言って気遣いだろうか、淹れたコーヒーを置いてから扉の方に向かう。

 

「俺は調べ物があるんでね、そろそろお暇させてもらう。ただこれは俺の独り言だが、俺はお前は死なないと思っている。いや死ねないだろう。響ちゃんの中に、思い出の中にそいつがいる限りな。どちらも取れないならどちらも取って抗えばいい。俺が見てきた連中はどんな絶望の中でも抗い続けていたよ---チャオ」

 

背中越しに手を振りながら、それだけ告げて惣一は扉から出ていく。

響は見送りながら、胸もとで手を握りしめる。

 

「私は・・・アルトくんなら・・・どうするのかな・・・? こういう、とき。傍に・・・傍に居て欲しいよ・・・アルトくん・・・。あの温もりに・・・触れたい・・・」

 

もう消えてしまった温もり。無くなった感触。

思い出という記憶の中にしかない大切なものを握りしめるように、手を包み込んだ響は蹲る。

無くなったものでも、唯一残っている大切なもの。

 

「・・・私は・・・絶対に死ねない・・・絶対に会うって、見つけるって決めたから・・・」

 

死ぬつもりはない。

自身が生きる理由と目的を改めて再確認しながら、それでも響は求めてしまう。

ずっと会えなくなった、大切な人を。

その場に残ったのは、響とブラックホールのように真っ黒で白い湯気を出すコーヒーだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調と切歌をエアキャリアの元へ連れていったあと、合流はせずにやることがあるとだけ伝えたシンは離れた。

もし戻れば存在がバレる可能性がある。

いくらアークの力で認識を誤魔化したとしても、あの場で違和感を感じたものはいるかもしれない。

少なくとも物事を俯瞰して見られるものならば、正体には簡単に行き着くだろう。

何より、倒れていた期間の状況をもっと把握する必要があった。

それらは()()()()()()()からドライバーを介して抜き取ることで解決はしたものの、あまり芳しくない。

 

(さて、ここからどうするか・・・二課に直接乗り込んでフィーネの記憶を戻す手もあるが、そうなると全てが暴かれて無意味になる。

それにあくまで奪った記憶はF.I.S.やオレの力や関係性といった人格に影響を与えないものだ。ヤツ自身は違和感に気づいてるだろうし、間違いなく戦闘になるだろう。となると、この案はするべきではない。

第一、しばらくは戦いをするつもりはないしな・・・不完全のオレではアークワンの力を使うと色覚を喪ったような代償を支払う。仮に戦うとしてもアークゼロの本来の力を引き出した状態でするべき、か・・・)

 

「---い」

 

(しかし謎なのはエボルトの存在・・・何故ヤツがこの世界に?『仮面ライダービルド』がこの世界に存在しないならば、エボルトの役目はこの世界には無いはず。だというのに存在している・・・この辺りはどう思考しようと分からないな)

 

「お---しろ!」

 

(立花響が戦える回数は数える程度しかない。新たな臓器を形成するところまでいっているが、解決策はある。ナスターシャたちの方は予想通りフロンティアの封印を解除するには出力は足らなかったようだし、調と切歌のオーバードーズの影響は消えたみたいだから向こうの心配はない。……まぁナスターシャたちは米国政府のエージェントと講和を結ぶつもりらしいが、どこでやる気だ?興味は無いからいいか…どうせ失敗する)

 

「いい加減にしろッ!」

「いてっ!?」

 

時折ドライバーから情報を抜き取りながら考えていると、頭を思いっきり殴られたシンは後頭部を擦りながら顔を上げる。

アークドライバーゼロがなければ世界の色を見れなくなったカレはずっと上着の下に付けているが、そのせいで余計に考え込んでしまっていた。

相手からすると永遠と放置されてたようなものだ。

 

「にしても、殴るって酷くないか、キャロル」

「オレは何度か呼びかけたが?」

「・・・悪かった」

「それよりもなぜまたオレを連れてきた?」

「仕方がないだろ。こんな水族館にフードを深く被ったヤツが一人で来るなんて怪しさ満点だし入場前に捕まる自信しかない。アズはまだセレナに着いてるし、そのセレナも目を覚ましていない。アークの力を直接受けたようなものだから仕方がないが、他にオレが気を遣わずにいられる相手はいないからな・・・エルフナインでもよかったが、好奇心がありすぎて保護者みたいになりかねなかったし」

 

そう、ここは水族館。

シンとキャロルはスカイタワーに併設されている水族館に赴いた。

都心、休日、さらには近辺に水族館が存在しないということもあり、館内は人だらけだ。

 

「にしては視線が多いな・・・何故だ?」

「・・・・・・」

 

白髪に赤い瞳というこれぞ厨二心を掴むような外見を持つシンに謎の金髪美少女といった外見を持つキャロル。

身長差はかなりあるが、兄妹に見えるほど顔立ちも似ていない。優れた容姿を持つ二人は、さぞカップルに見えているだろう。

それがなくとも、見た目だけで男女から視線を集めるのは当然といえる。

 

「何故だと思う?」

「オレに聞くな」

「インターネットにも特に乗ってないな。そんな視線を集めるようなことはしていないはずだが・・・まぁいいか」

 

実際どうでもいいらしく、もとより興味がなさげなキャロルと興味を無くしたシンは気にしなくなっていた。

 

「せっかくだし見て回ろう。魚の知識も十分にあるからな」

「・・・はぁ、来たからには仕方がない、か。帰ったら帰ったらで面倒なことになりそうだ、付き合ってやる」

「ああ、ガリィ辺りがなんか言ってきそう・・・言ってくるな、間違いなく」

 

主にオレが被害を受けるんだろうなぁとシンは心の中で思った。

少なくとも煽られるだろう。

 

「じゃあ」

「・・・」

 

気を取り直してシンは手を差し伸べる。

普通に歩こうとしていたキャロルは足を止めると、無言でシンを見上げた。

手と顔を何度か往復している。

 

「ほら、行こう」

「・・・ああ」

 

そんなキャロルに苦笑したシンは、キャロルの手をそっと取ると優しく引っ張る。

キャロルの目にはいつものように引っ張ってくれるシンの背中が見えて、何かを言おうと口を開こうとしてまた閉じ、無言で付いていく。

水槽の中に様々な魚が泳ぎ、シンはそれらの魚を詳しくキャロルに説明するように話していた。

その道中で聞き覚えのある大きな声が聞こえたような気はしたが、声の主の姿は人が多くて捉えきれなかったので首を傾げつつもキャロルと歩いて普通に楽しんでいた。

普段なら何かと考えたりはするが、純粋に楽しんでキャロルと喋っている。

さっきもそうだったが、どうやら今日はオフ中らしい---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって身を隠している森林近く。

エアキャリアの中には色んな施設がある。

調理場で、調がエプロンを付けながら料理の味見をしていた。

 

「うん、思った通りの味ができた」

「これでいいか?」

「ありがとう」

 

今は雷が居るらしく、調に皿を差し出していた。

それを受け取りながら出来上がった料理をよそっていく。

行方不明だった協力者の、物資を提供してくれたシンのお陰で調はこうやって料理が出来ている。

というよりも料理を出来るのがほとんど居ないためやってるのだが。放っておけばナスターシャは肉しか食べないだろうしマリアは忙しさから不可能。

滅や雷はそもそも食べれたら何でもいい上に摂らなくたって問題ないと判断する。

切歌はお察しの通りで、調が居なければインスタント系統に染まっている姿が想像出来る。

調にとっては役に立てることでもあるので、やることに文句はないのだが。

 

「結局あいつは戻ってこなかったんだな」

「うん、やることがあるんだって。シンさん忙しそうだし・・・」

「まぁ、あの力があるなら引っ張り凧か・・・」

 

ただの一般人ではないというのは誰もが分かっている。気になる点は多いが、深く干渉をしないというのが手を貸す条件であり、分かっているのは超能力が使用出来ること。

簡単に接触してきたことから裏の社会で生きている人間というところまでは察することが出来る。

しかしカレがいなければ今頃ひもじい思いをするしかなかったと思ったら、出会えて良かったと調は改めて思っていた。

 

「でも無事でよかった」

「そうだな」

「調?・・・あ、それに雷のお兄さんも」

 

タイミング良いというべきか、会話が一区切り着いたところで覗くように切歌がやってきて二人の名前を呼んだ。

そこで二人も気づいたらしい。

 

「切ちゃん、ちょうど良かった。ご飯の支度出来たよ」

「本当デスか!?さっそく食べるデース!」

「おう、食べろ食べろ。でないと育たねーからな」

 

無邪気に喜ぶ切歌に雷はふっと笑うと背中を軽く叩きながら、勧めると早速と言わんばかりに運ぶために切歌は皿を持っていた。

 

「全員、ここに居たか」

「滅か」

「料理出来ました」

 

今度は滅が来て、今いるメンバー全員が集うことになった。

 

「・・・嗚呼、感謝する。だが、悪いな。後で食べさせてもらう」

「? 今じゃないのデス?」

「マリアとナスターシャの所に行く。ウェルがどこにも居ない上に胸騒ぎがするからな」

「分かった、こっちは任せろ」

「すまない」

 

話が早く、滅の行動を雷が許可すると頭を一度下げてから滅はプログライズキーとベルトを装着して出ていく。

それを見届けると、調は雷に声をかける。

 

「いいの?」

「全員で行く訳にも行かないだろ?いざとなった時に手薄だと、帰ってくる場所がなくなっちまう。何よりも滅は例外を除けば俺らの中で一番強いだろうしな・・・それよりもお前らの話聞かせてくれよ。あのシンってやつとこういう関係になる前よりも知り合いなんだったか」

「・・・うん、分かった」

「お兄さんのことデス? お兄さんはお兄さんデス」

「・・・そうじゃないよ、切ちゃん。シンさんは---」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってスカイタワーの会議室らしき場所。

ナスターシャと米国エージェントの講話交渉は問題なく進みマリアがナスターシャから受け取ったメモリーチップを黒スーツの男に渡す。

 

「異端技術に関する情報、確かに受け取りました」

「取り扱いに関しては別途私が教授します。つきましては---」

 

ナスターシャが取り扱いについての話をしようとした時、エージェントたちがマリアたちに向けて拳銃を向けてきた。

 

「マムッ!?」

「貴方の歌よりも、銃弾は遥かに速く、躊躇なく命を奪う」

 

リーダー格と思われる男が、不敵に笑ってそう言って見せる。

これが一人なら制圧だって出来るかもしれない。

しかし複数人いるとなると、マリアも下手には動けないだろう。動いた瞬間、必ず銃弾が二つ以上放たれてしまう。

 

「初めから、取引に応じるつもりはなかったのですか・・・」

 

この状況下で交渉の余地はもうない。

必要なチップが相手の元へ渡った以上、マリアとナスターシャは用済みでしかない。

悔しそうに歯噛みするマリアは限られる時間の中で状況を打開する方法を模索するが、そう簡単に思いつくならば既にやっている。

 

「必要なものは手に入った。あとは不必要なもの片付けるだけ---」

 

その時だった。

男が何か違和感でも感じたのかマリアたちから目を外す。

有利性があるとはいえ、相手から目を離すだなんて隙だらけでしかない。

だが駆けようと足に力を入れたところで、甲高い音が聞こえた。

その音は全員の意識を向けるのは十分なものがあり、その視線の先。

窓の外にはノイズが存在していた。

 

「ノイズ!?」

 

それは誰が発したか。

外からノイズが入ってくる。

位相差障壁があるノイズにとって物体の透過など取るに足らないもので、窓から侵入してきた飛行型ノイズはそのままエージェントたちに襲い掛かる。壁や天井からも、至る所から、ノイズが侵入してきた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから遠い場所、スカイタワーを見れる喫茶店に、ウェルはいた。

 

「誰も彼もが好き勝手な事ばかり・・・」

 

そう言ってカップに入れられた飲み物を飲むウェルの傍らには、ソロモンの杖があった。

そこから差し向けたのが誰なのか推測するのは容易いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、エージェントたちが一人残らず炭化された所で、マリアが聖詠を唄う。

 

『---Granzizel bilfen gungnir zizzl(溢れはじめる秘めた情熱)

 

次の瞬間、マリアの胸のガングニールが輝き、その身を黒き戦闘装束へと切り替える。

マリアが歌を紡ぎ、調律によって位相差障壁に干渉することで無効化したノイズを切り払い、薙ぎ払う。

たちまちマリアの攻撃を受けたノイズはその身を炭素へと変え消えていった。

制圧を完了したのち、地面に落ちて残ったメモリーチップを踏み砕く。

今は脱出が最優先だ。

ナスターシャを抱き抱える形で駆け出す。

その行き先をノイズは拒むが、ただのノイズなど相手になるはずもなく斬り捨てて走る。

そんなとき、あちこちで爆発しているというのにエレベーターから武装した米国の兵士が出てきて、マリアたちに向かってアサルトライフルを連射する。

それをマリアはマントを盾代わりとし、そして伸ばして彼らを弾き飛ばす。

しかしそれでも倒せたのは二人程度、なおも発砲され飛来してくる弾丸を盾でガードしつつ突き進み、一人を蹴り飛ばす。

 

「マリア。待ち伏せを避けるため、上の階からの脱出を試みましょう」

 

地上から脱出することはさっきの光景から待ち伏せされてると考えるのは容易い。

だからこそナスターシャの言葉に従い、階段の隔壁を蹴り破り、そのまま上の階に向かって走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカイタワーの中ではノイズが度々入ってきて建物を爆破していた。

一体何が起きているのか、少なくともこのままではスカイタワーは崩れてしまうかもしれない。

それがなくとも人々は炭素分解されて何人もの人が死んでしまうだろう。

窓側には何体いるか分からないノイズが浮遊しており、一般人の避難はまだ終わり切っていない。

慌てて逃げるように避難していく人々の姿を見ながらフードを被った男がため息を吐いた。

 

「・・・最悪だ」

 

どこか不機嫌そうにノイズを睨む。

その隣には金髪の少女がいるが、彼女は特に気にした様子もなく辺りを見渡していた。

 

「知らなかったのか?」

「常時予測をしているわけじゃないからな。処理能力が高かろうが、人間のオレの脳では耐えきれん」

「そんなものか」

 

カレが持つ”アークドライバーゼロ“にはラーニングした膨大な量のデータをリアルタイムで解析することで何億通りもの『事象に対する結論』を導き出すという個人が持っていいような能力ではないものがある。

しかしこれは本来、ただの人間が扱うような代物では無いのだ。人間の脳が何億通りもの未来をリアルタイムで更新されるものを処理し切れるはずないだろう。

常時でなくとも、AIの力を使わず使えるカレがおかしいだけだ。

 

(にしてもこんな展開はなかったはずだが・・・歴史が変わったか・・・?)

 

目の前に降りてくる複数のノイズを興味なさげに見ながら男は思案していた。

何故か知らないが、周囲にはノイズが集まってきている。

まるで男を殺そうとしているように見える。

 

「それより集まって来ているが・・・なにした?」

「多分、アークワンに変身した影響だろうな。なぜかノイズはオレを狙っているようだし、こいつらはソロモンの杖の操作からも外れている」

「・・・面倒だな」

 

少女がノイズに向かって手のひらを向ける。

それだけじゃ何をする気なのか分からないだろうが、突如として緑色の巨大な魔法陣が浮かび上がった。

 

「いや、いい」

「・・・なに?」

 

しかしその手を男が下げさせると、少女は睨む。

男は苦笑して、前に出る。

腰に巻かれたドライバーが赤く光る---が、邪魔だと言わんばかりに男はドライバーを体内に戻した。

また即座に出現したが。

 

「ここには立花響と小日向未来が居た。監視カメラは妨害したが、錬金術を目撃されるのはまだ早い。なにより---」

 

錬金術。

それが少女が発動しようとしたものなのだろう。

だが二課所属であるその二人がさっき迷子らしき男の子を連れて行ったのを見ていたカレはここにいることを知っていた。

しかしそれらはあくまで建前だ。

男は拳を握り、ノイズの一体が飛び出す。

位相差障壁がある限り、ノイズを殺すことは出来ない。

存在比率が増す攻撃の瞬間にタイミングを合わせることで撃退した例や、 効率を考えず間断なく攻撃を仕掛けることで駆逐した例もあるが、現実的では無いのだ。

何より、ノイズに触れた瞬間待つのは炭素分解。

シンフォギアシステムの持つバリアコーティングがなければ無効化も出来ない。

ただし『仮面ライダー』と呼ばれる者たちは例外らしいが。

それでもここにいるのは子供らしき男女。

即ち、この場においてノイズは猛威を振るいには十分で---

 

「せっかくのキャロルとの時間を邪魔されたからな」

 

振られた拳が、向かってきたノイズを消し飛ばした。

特別、何かをしたわけではない。

魔法もなければ錬金術も、聖遺物もシンフォギアシステムもあるわけではない。

男は人間だ。

だというのに、その拳はノイズを倒していた。

存在比率が増す一瞬を狙った訳では無い。いや男なら可能ではあるが、そういったわけではない。

やったのはただ何の能力も纏っていない拳がノイズに触れたというだけだ。

 

「お前・・・普通にノイズに触れられたのか?」

「ノイズ如きにオレを殺せたら誰も苦労してないだろ? ”アークゼロ“がノイズにやられるくらいなら、今頃脅威にすら思われないし錬金術師はオレを簡単に始末出来る。変身前を狙えばいいんだからな。アルカノイズだろうがノイズだろうがオレを殺すことはできない」

「人間は触れたら死ぬんだがな・・・」

「そこに関しては失われた記憶の中に秘密があると思うんだが・・・そこまでの記憶はないからわからん。とにかく変身したら面倒なことになりかねないし念力も目立つと言えば目立つし今日は徒手空拳でやるのが一番だ。とりあえずキャロルを巻き込んだこいつらは消し飛ばす」

 

そういって男は自らノイズの中へ突っ込むと、ノイズは一瞬にして殲滅された。

男以外の、キャロルを狙おうとした瞬間ベルトから生成された剣らしき武器がノイズをあっさり貫くし、ノイズの強みである位相差障壁が無効化されているのだからどうしようもないだろう。

あっさり殲滅した男のベルトが一度赤く輝き、悩むように考えてからすぐにキャロルの元へ帰ってきた。

 

「どうした?」

「いや・・・お前と居ると驚くことばかりだ」

「それは褒めているのか・・・?」

「知らんッ!」

「あ、ちょっ・・・」

 

そっぽ向いたキャロルが歩いていくのを男は後ろから何も分かってなさそうな様子でついていくとすぐに追いついてキャロルの手を取った。

反応してか、振り向く。

 

「お、おいっ!?」

「何か分からないけど悪かったって。それよりもほら、他にも行きたいところがあるんだ。せっかくの休日なんだから、もう少し一緒に居てくれないか?」

「っ・・・好きにしろ。だから離せ」

「よし、じゃあ行こうか」

「人の話を聞けッ!」

 

そのまま手を繋いで前を歩く男にキャロルは不満を漏らすが、強く抵抗はしていない。

そのことから嫌では無いというのは察せられるものの---そのうち諦めたようにそれ以上言うことも無く、誰も気づかないまま二人はスカイタワーから抜け出した。

ついでに、道中人間を襲そうとしたノイズや外に出て襲っていたり襲ってきた”ノイズだけ“を体内から放出した悪意のオーラによる風圧だけで消し飛ばしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷子らしい子供を確保した響と未来。

もしその行動をしなければ、ある男と少女と邂逅する可能性はあったが、可能性の話は今は不必要だろう。

それよりもこの状況となったのは、戦いに行こうとした響を止められはしたが、迷子の子供は放っておけなく、胸のガングニールを使わなければ大丈夫だという言葉に未来は止めることが出来ずに一緒に子供を避難させるべく階段の方向へ歩いていた、というのがこの状況の経緯だ。

 

「ほらほら、男の子が泣いてちゃみっともないよ」

「皆と一緒に避難すれば、お母さんにもきっと会えるから大丈夫だよ」

 

慰めながら歩いていると、職員らしき男が階段で待っていたらしく彼女たちに気付くなり、すぐに駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!? 早くこっちへ! 貴方たちも急いで!」

 

そう言い残して子供を抱え、すぐさま階段へ方へ向かっていく。

それに従って二人も走り出した。

しかしそこで外からノイズが突入してきて、爆発と共に天井が崩れ落ちる。

 

「危ない!」

「え・・・」

 

その真下には爆発に驚いて立ち止まってしまった響。そんな響を未来は咄嗟に押し退けて下敷きになるのを一緒に辛うじて免れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサルトライフルの銃口から放たれた弾丸の嵐をマントで防ぐマリア。しかし、その場に居合わせたスカイタワーの入場客が、奴らの弾丸の餌食となり倒れる。

 

「ッ---!?」

 

それを見て、マリアは一瞬、息が詰まる。

それでも奴らは犠牲つきものとでも思っているのか銃弾をその銃口から吐き出させる事をやめない。

それに対してマリアは、マントを翻して奴らを叩き伏せる。

そうして立ち上がり、巻き添えとなってしまった一般人の死体を見る。

 

「マリア・・・」

 

そんなマリアを、ナスターシャは心配そうに見上げていた。

それでも奴らは、やってくる。

 

「私の・・・せいだ・・・」

 

複数人の増援部隊が銃を構える。

その瞬間、マリアが吠える。

 

「全ては、フィーネを背負いきれなかった私の所為だぁぁぁああぁぁああああ!!!」

 

その絶叫と共に、マントが彼らを襲う。

かろうじて躱したそれを見やるも束の間、こちらに向かって突撃してくるマリアが飛び掛かり、奴らの一人に飛び蹴りをくらわせ、槍を叩きつける。

血が付着するも、斬ったわけではないため死んではいないだろう。

残りの兵士に攻撃しようとしたところで、突如として倒れた。

 

「ッ!?」

『・・・すまない、遅くなった』

 

姿を現したのは、バイオカラーのスーツに最低限の装甲を纏う仮面ライダー滅だった。

何処か申し訳なさそうにしている滅の手は赤く染まっており、返り血だと思われる。

ここに来る前にも戦ったのだろうか。

だが、謝った理由はそれだけではないのだろう。

それを理解しているマリアは、悔しさからか双眸から涙を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でどうにか瓦礫の下敷きになることを回避した未来と響は座り込んでいた。

 

「ありがとう未来・・・」

「うん・・・あのね、響---」

 

一人だったら間違いなく潰されていた。

助けてくれたことに感謝を述べる響に未来は頷き、何かを言いかけた時だった。

突如としてスカイタワーが大きく揺れる。

元々かなりの被害を受けていたのもあってスカイタワーがボロボロになっていたのもあるのだろう。

響のすぐ背後の床が崩れ、それによって響がバランスを崩し、そこから落ちそうになった。

 

「響っ!!」

 

間一髪の所で未来が響の手を掴む。

しかし響は宙吊りの状態となってしまい、まさしく絶体絶命の状況が出来上がってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先行した滅がアタッシュアローと呼ばれる弓の武器で銃を破壊し、兵士たちを素早く制圧した。

だが、いくら加減をしようとも仮面ライダーの力やシンフォギアの力は人間を遥かに凌駕する。

廊下はもう、血がそこら中に飛び散っていた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「イヤー!助けて!助けてー!!」

「狼狽えるな!」

「・・・」

 

血が飛び散った廊下で息を荒げるマリアを見て怯える一般客。

特に隣にいる滅の見た目が、見る者によっては人に見えないというのもあるだろう。

 

「ひぃっ!」

「狼狽えるな!行けっ!」

「ぅわぁ!ひぃぃー!」 

 

マリアの発破を描けるような声に、一般客は怯えながらその場から逃げていく。

滅は何も言わずに一般客を見届け、マリアを見た。

 

『狼狽えるな!』

 

マリアの頭にはかつて世界の前で革命を起こした時に観客に言った事が脳裏をよぎる。

 

(あの言葉は・・・他の誰でもない私に向けて叫んだ言葉だ!)

 

「・・・マリア」

『・・・行けるか?』

「ええ・・・」

 

こういうとき、なんと声を掛ければいいか分からない滅は確認するように告げると、マリアは迷いを振り切ったように頷く。

それを見て走り出そうとした滅の腕を掴んだ。

 

『・・・どうした?』

「このまま行っても同じように増員されるだけ。だから一気に駆け抜ける!」

 

そう言ったマリアはナスターシャを抱え、槍を回転させてマントで包みドリルの様に回転しながら上を目指した。

意図を理解した滅は壁を次々と蹴ることで開いていく穴から二人を追っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛り、傾くスカイタワー。

ここまで半壊して持ち堪えているのが奇跡なくらいだ。

その崩れた崖にて、響の手を掴む未来に響は言う。

 

「未来! ここは長くは持たない! 手を放して!」

「ダメ! 私が響を守らなきゃ! もうあの時のように・・・失いたくないから!」

 

しかし未来は拒む。

かつて居た、もう一人の幼馴染。

居なくなってしまった幼馴染の姿が、二人の脳裏を過ぎる。

 

「未来・・・」

 

必死に響の手を掴む未来。

だが、子供一人持ち上げるのにかなりの力がいるのに同じ高校生の女子を引き上げるなんて力は、未来にはない。

自分自身が落ちないために踏ん張る必要もあるのだから、力がどうしても分散してしまう。

しかしこのまま行けば、待つのは二人とも落下するという未来(みらい)だ。

響は落ちてもガングニールを纏えば助かるだろう。未来はそれを解っている。

解っているからこそ、シンフォギアを纏うことを避けさせたいのだ。

響も同様に、ガングニールを纏えば問題ないことは理解している。

だからこそ必死に掴み続ける未来の顔を見上げて、響は無理に笑う。

 

「---いつか、本当に私が困った時、未来に助けてもらうから」

 

未来に掴まれている手の力を、緩める。

片方の力が弱まれば一体どうなるのか。

そんなの、考えるまでもない。

 

「今日はもう少しだけ、私に頑張らせて」

 

響の重さに耐え切れず、手がどんどんずり落ちていく。

そんな響の言葉に、未来は涙を流す。

必死に強く握りしめていようとも、現実は変わらず。

 

「私だって・・・守りたいのに・・・!!」

 

その言葉を最後に---ついに響と未来の手が離れた。

 

「響ぃぃぃぃいいぃぃぃいいぃいいい!!!!」

 

重力に従って落下していく響に未来が手を伸ばしながら叫び、そんな未来に響は微笑むと仰向けで落下していく。そして---

 

『---Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

その胸の歌を、歌った。

歌ってしまった、というべきか。

紡がれた聖詠により、響の姿は黄色の戦闘装束に切り替わり、両足で着地するように体勢を変えると地上へ着地と同時に落下速度が加わったのもあって巨大なクレーターを形成する。

 

「未来、今行く!」

 

響は未来がいるスカイタワーを見上げ、そう叫んだ時だった。

 

---未来のいた場所で、爆発が起きた。

 

「ぁ---ッ!?」

 

一気に血の気が引く。

あそこには、未来がいる。ギアを纏う力も、仮面ライダーの力もない。

そんな彼女が爆発に巻き込まれたなら、どうなるのか。

最悪の考えが簡単に浮かんで---二度目の爆発が起き、フロアが吹き飛んで黒煙が舞う。

 

「未来ぅぅぅぅううぅぅううううぅう---ッ!!!」

 

響の絶叫だけが無慈悲に辺りに響き渡る。

そう、この瞬間。このとき、響のひだまりが消えた瞬間だった。

唯一残っていた、響を支える大切な存在のうち二人が、今度こそ手元から消え去った瞬間でもある---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ゼロスリーどんな感じでしょうねー投稿時は配信されてないので分かってません。
ちなみに作者も見た目は違ったけどゼロスリーは出すつもりでした、並行世界編の並行世界の最強フォームでした。
予告見た限り多分作者と同じ考えだったのでちょっと嬉しい。実際には見ないと分かりませんけど。


そしてここで、この作品においての報告があります---

























ぶっちゃけ失踪考えてたけど作者がガッチャードとレジェンドのお陰でゼロツーとアークゼロとアークワンにテンション上がってやる気出たからこの小説続けるゾ♡
ただ三作品以上書くのは難しいので、時間は掛かりますけどね。外出ずに稼げたらずっと書けるのにね

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