とある道中にて。
珠世の使い猫、茶々丸の案内で縁壱は炭治郎組を連れて移動していた。
黒死牟「信じられないモノを見た……」ゾクゾクゾクッ……!
縁壱「……鬼。いや、まさか兄上………?」
善逸「じょ、じょじょじょ上弦の鬼!?それも上弦の壱じゃないか!?ど、どどどどどうしてここ、こんな夜道に居るんだよぉおおおおぉ~!!?」
炭治郎「構えろ善逸!さすがに俺達じゃあまだ太刀打ちできない!縁壱さんの援護に努めるんだ!」
善逸「でも炭治郎~!いくら縁壱さんが強くても、一人で上弦の壱を相手するなんて無理だよ~!」
炭治郎「だから援護するんだ!もう煉獄さんの時とは違う!それにいつまで経っても眺めているばかりだったら、鬼舞辻の首は斬れない!」
黒死牟「ずいぶんと賑やかしい事だ……。しかし、お前は本当に縁壱か…?その容姿から見るに、私がお館様の首を獲った頃に思える…。それに何より、私は老い果てたお前を切り捨てたはずだ……」
縁壱「如何様な話をしているのか見当つきませぬが、やはり兄上なのですね?お労しや……」
黒死牟「まぁいい……。本人なのか、はたまた偽物か。それらは立ち会えば分かること…」スッ…
スパッ!
黒死牟「!?」片腕ポロー
縁壱「竈門家の惨劇や無惨の悪行、そして鬼殺隊の瓦解と兄上からの見限りは全て私の不出来致すところ。だからこそ、今ここで断ち切らせていただく所存です。たとえ兄上の首を斬ることになろうとも」コォオォオォォオォォ………!!
炭治郎「す、凄まじい気迫だ……!ずっと隣に居ても底が分からないとは思っていたけど、俺の想像を遥かに超えているのは間違いない…!これが本当の日の呼吸…!」
黒死牟「ど、どどどどどおぉお…どうっどうやら、縁壱本人のようだなななな…!し、しかしかし、老体のお前を切ってから約三百と二十年の月日!あれから私は更なる研鑽を重ね、比較ならない実力を…!」
縁壱「日の呼吸…」スゥ…
黒死牟「むぅ!?月の呼吸、拾肆ノ型 兇変・天満繊月!!」ズォオォオォオオオ!!
伊之助「おいおい!みんな離れやがれ!」
縁壱「安心しろ。私の目が届く場所である限り、もはや誰も傷つけさせない」
ズッシャアアアアァァアァ!
スシャ!
黒死牟「くぅう!?私の血気術のみならず、同時に刃まで
縁壱「兄上。どうか落ち着き下さい」シャッ…
スパァン!
炭治郎「瞬く間に上弦の両肩を斬り削いだ……。凄い。本当に凄いけど、何か違和感が……?」
黒死牟「お前……もしや、この期に及んで何のつもりだ!あの方から聞いているぞ!お前の太刀は再生を許さず、鬼の肉を内から焼き焦がし続けるものだと!もしや手を抜いているのか!?」
縁壱「兄上、私は自身の手で貴方様を斬るおつもりでした。しかし、あの少年……竈門炭治郎は妹が鬼になったにも関わらず、人間へ戻そうとしているのです」
黒死牟「唐突に何を言い出す!?」
縁壱「また竈門炭治郎の妹は、兄を心から慕い、人々と仲良くしていると周りの方々が口を揃えて仰っているのです。ですから、兄上……」
黒死牟「まさか、お前……この俺に同じ事をしろと!?お前はそれでも武士の端くれか!お前の過った判断で人々が死んだことに、面目が立たないと思わないのか!?」
縁壱「鬼に堕ちた兄上が面目を語らないで下さい」キッ!
黒死牟「む……、それは確かにそうだ。しかしな、そう軽々しい覚悟で道を変えるつもりなど無い…。私は常に全てを賭し、全てを捨てて来た。なのに今更、一言誘われた程度で元の道へ戻ろうなど都合が良い話だろう…」
縁壱「全ては鬼舞辻無惨の策略。兄上に落ち度は………ほんの少しばかり…いえ、言葉に表し難いほど数多くありますが、これからを良くする機会までは奪われておりませぬ」
黒死牟「…いや、やはり無理な話だ。私という存在はあの方の力に囚われて…」
縁壱「鬼舞辻による呪いは、つい先ほどの太刀で切り捨てました」
黒死牟「なに?………
縁壱「これでもまだ、心動かされませんか…?」
黒死牟「本音を告げるならば、私はお前を殺したくて仕方ないのだ。だから、どれだけのお膳立てせようとも私は修羅の道を捨てる気は…」
縁壱「そうですか。では、ここで斬らて頂きます」チャキ
黒死牟「よし、ならば人間の道を進もう!」
善逸「…へ……?なになになに?今の俺の聞き間違い?」
黒死牟「見方を改めれば、人間の道でもお前を越えられる可能性が途絶えたわけでは無い。痣による早死にだけが心配だが、今この場で死ぬより遥かに利口というもの」
炭治郎「え……どういうことだ?これは上弦の壱が投降した、って事になるのか?でも確かに上弦の鬼、その中でも無惨の血が一番濃い鬼だから、これで人間に戻す薬が一気に進展するかもしれない!よかったな禰豆子!」
禰豆子「むぅ!」キョウノ竹ウメェナー
善逸「よく分からないけど助かったよぉおぉぉお!本当に何の話をしていたのか、大部分が分からなかったけどぉおおお!」
伊之助「へ、へへへっ、あの野郎。あっさりと上弦の鬼を子分にしちまいやがった。でも親分は俺だ。つまりあの鬼は、俺の子分ってことだな!」
黒死牟「ということになった。皆の者、深く馴れ合うつもりは無いが、しばらく同行させていただく」
炭治郎「よろしくお願いします!えっと名前は…」
黒死牟「人間としての名は別にあるが、今の身はまだ鬼だからな。黒死牟と呼ぶといい」握手ギュ
炭治郎「分かりました、黒死牟さん!早めに黒死牟さん用の籠を作っておきますね!」
禰豆子「なるべく気品溢れる、武家に相応しい荘厳な籠を頼む……」
善逸「いやいやいや、誰がこんなおっさんを背負うんだよ。しかもこの鬼、すでに慣れ親しみすぎだろ。ずっと握手しているし……」
炭治郎「俺が背負うよ。…あ、試しに禰豆子の籠に入ってみませんか?禰豆子が喋れない分、いつも居心地とか心配だったので」
黒死牟「うむ、任せるといい。………うむうむ、悪くない狭さだ」
善逸「う、うわぁ……。小さな籠におっさんが居座っている光景も恐怖だけど、顔が凄く怖いから余計に恐怖が増しているよ……」
縁壱「…あの自暴自棄気味だった兄上が人と馴染むため、あれだけの行動を咄嗟に……。さすが兄上です。感服します」
こうして黒死牟は仲間になり、ひとまず彼も人間へ戻すことが目的の一つとなるのだった。
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オマケ
黒死牟「ほぅ、私の子孫か……。このように子孫と相見えると、私も縁壱同様に時代を移動したように感じてしまうな…」フラフラ……
時透無一郎「(……凄い威圧感だ。でも、なんだこのおじさん。もしかして酔っぱらっている?)」
不死川実弥「うぉおい、新しい包帯をくれー。…ったく、蝶屋敷の奴らはどこ行ったんだ?」
黒死牟「どぉれ、私が剣術を見てやろう。私の子孫が如何なる者か、是非とも知りたい」フラフラフラ…、体カラ刃シャキン!!
時透無一郎「(ほろ酔い全身に刃生えているおじさんか…。こんな形で先祖と邂逅するなんて嫌だなぁ………)」