無敵の超能力者が異世界から来るそうですよ?   作:フォルテピアノ

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~前回のあらすじ~
YES!!!!


インΨドの虎・前編

―――――箱庭二一○五三八○外門。ベリドッド通り・噴水広場前。

 

『お嬢、なんか兄ちゃんの元気がないなぁ』

「……本当だね。どうしたんだろう」

 

ただの寝不足だ。気にしないでくれ

 

 

昨日の白夜叉との一件は誰にも言っていない。

あれから瞬間移動をして"ノーネーム"の本拠地へ戻ってきた僕は、当然既に風呂から上がっていた黒ウサギ達に何処へ行っていたのか質問された。面倒だったので適当に外を歩いていたとだけ答え、風呂へと向かったのだが。

 

白夜叉の言われた事は確かに衝撃的ではあったが、実のところ僕はあまり気にしていない。

というのも、僕が知ったのはただ単に『神になれば超能力をマスター出来るよ』という事だけで、超能力自体の認識は前と変わらないからだ。

デメリットや制約の原因は納得したものの、それを消す為だけに不老不死の神になる気は更々無い。

 

それより大事なのは目前に迫った"フォレス・ガロ"とのギフトゲームである。

 

 

はっきり言ってゲームに勝つのは簡単だ

 

だが、ガルドがどんなゲームを仕掛けて来るかまではわからない。予防策はなるべく多い方が良いだろう

そういう訳で僕は睡眠時間を削って準備をしていたのである。お陰で少し眠いのだが…これくらい支障はない

 

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

 

僕らは"フォレス・ガロ"のコミュニティの居住区を訪れる道中、"六本傷"の旗が掲げられた昨日のカフェテラスで声をかけられた。

 

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 

昨日の猫耳店員が近寄ってきて一礼する。

 

昨日はコーヒーゼリーをありがとう。また今度も食べに行くからな

 

「そう言って頂けて嬉しいです!それと、ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この二一○五三八○外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

ブンブンと手を振り回しながら、興奮気味に猫耳店員が応援してくれた。

久遠さんは苦笑しながらも強く頷いて返す。

 

「ええ、そのつもりよ」

「おお!心強い御返事だ!」

 

満面の笑みを浮かべていた猫耳店員は、しかし急に声を潜めてヒソヒソと呟いてきた。

 

「実は皆さんにお話があります。"フォレス・ガロ"の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

「居住区画で、ですか?」

 

猫耳店員の『舞台区画』という言葉に久遠さんが首を傾げる。

 

「黒ウサギ。舞台区画とはなにかしら?」

「ギフトゲームを行う為の専用区画でございますよ」

 

黒ウサギ曰く、舞台区画とはコミュニティが保有するギフトゲームを行う為の土地だそうだ。

他にも商業や娯楽施設を置く自由区画や、寝食や菜園・飼育などをする居住区画などが存在するらしい。

 

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

「……それは確かにおかしな話ね」

 

今まで集めたコミュニティを投げ捨てるとは…追い詰められているとはいえ少し不自然だ。勝負を最初から諦めているのか?いや、それはあまり考えられないが…

 

「でしょでしょ!?何のゲームかは知りませんが、とにかく気を付けてくださいね!」

 

ああ。ついでに、今度またカフェに行かせてもらうからな。三毛猫と一緒に

 

*****

 

それから暫くして、ようやく"フォレス・ガロ"の居住区に着いた。のだが

 

「……。ジャングル?」

 

春日部さんが言うのも無理はない。"フォレス・ガロ"の居住区は正しく森のようになっていたからだ。ツタの絡む門、鬱蒼と生い茂る木々は元から生えていたようにも見える。

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

「いや、おかしいです。"フォレス・ガロ"のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず……それにこの木々はまさか」

 

ジンが木々に手を伸ばす。少し触れた後、確信した様に呟いた。

 

「やっぱり―――"鬼化"してる?いや、まさか」

「ジン君、ここに"契約書類(ギアスロール)"が貼ってあるわよ」

 

久遠さんが門柱に貼ってあった羊皮紙に気づき声を上げる。そこには今回のゲームの内容が記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名"ハンティング"

 

・プレイヤー一覧

久遠 飛鳥

春日部 耀

斉木 楠雄

ジン=ラッセル

 

・クリア条件

ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

・クリア方法

ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は"契約"によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

・指定武具

ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の元、"ノーネーム"はギフトゲームに参加します。

"フォレス・ガロ"印』

 

あのガルドが自分の命をクリア条件にする……だと?

いや、それだけじゃない!これは…

 

「こ、これはまずいですよ!」

 

ジンと黒ウサギが揃って悲鳴をあげる

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんや楠雄さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります……!」

「……どういうこと?」

「"恩恵(ギフト)"ではなく"契約(ギアス)"によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御三人様の力を克服したのです!」

 

…これは思った以上に厄介な事になった。

ガルドの身にあらゆるギフトが効かないということは、当然僕の超能力も無力と化す。

サイコキネシスで投げ飛ばす事も、パイロキネシスで燃やす事も叶わなくなってしまったのだ。

……ちっ。考えていた方法の内、9割ほどが使い物にならなくなってしまった。

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに"契約書類"を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに……!」

 

とはいえ、ジンを責める訳にもいかない。

その場でなにも考えずに白紙のゲームを承諾してしまった僕らにも責任はあるのだから。

…しかし、超能力で手を出せないとなるとどうするか

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

簡単に言うが条件はかなり厳しいぞ。指定武具もどのような物か書いていないせいで面倒だし。

 

「ま〜、ここで勝ってくれなきゃ俺の計画が崩れるからよ。四人とも頑張れ、ってことで」

 

…つくづく自分勝手な奴だ。

昨日もジンと一緒に何か話していたようだし、やはりこの男はよくわからない。

 

「……絶対に負けません」

 

ジンは決意を新たに強く頷くと、いよいよゲームテリトリーへの門を開けた。

 

さあ、ゲームの始まりだ

 

 

*****

 

まず一つだけ、確かめておきたいことがある。

僕は三人が鬱蒼としたジャングルを観察している間に千里眼を発動させた。探すのは勿論ガルドだ。

 

果たして、僕の視界は崩れかけた一つの館を映しだした。真上から覗く形となっており、近づこうと思ってもこれ以上のズームは無理だった。

 

なるほど、『傷つける』事は無理でも見たりする事は可能、ということか。これは助かった。

 

千里眼がガルド自身を見れなかったのは、恐らく館にかけられたギフトだろう。何かしら不干渉の効果があるギフトをかけられたのかもしれない。あくまで憶測だが

 

鬱蒼と茂る森は人が通る道…それこそ獣道ですら存在しなかった。これだと僕らはともかく、ガルドも思うように動けないのではないだろうか。

 

「大丈夫。近くには誰もいない。匂いで分かる」

「あら、犬にもお友達が?」

「うん。二十匹ぐらい」

 

春日部さんの嗅覚は説得力がある。千里眼が通じたということはテレパシーも通じる筈だ。だが、何かしらのトラップがある可能性も否定出来ない。だからこそ春日部さんの嗅覚がここでは頼りになる。

 

「詳しい位置は分かりますか?」

「それは分からない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、何処かの家に潜んでる可能性は高いと思う」

 

そこまで分かるとは……感服だ。

僕は三人を止めると、簡潔に超能力で知ったガルドの居場所を伝えた。

 

「あら、それを最初から言ってくれれば良かったのに」

 

すまないな。千里眼を発動させている姿(寄り目)はあまり見せたくないもんで

 

「……本当に凄い便利。でも探す手間が省けた」

「よし!後は真っ直ぐ館に向かえば良いだけですね」

 

ああ、そうだな。

だがこんなステージを用意したガルドのことだ。このまま簡単に行くとは考え辛いが…

 

**

 

「……見つけた。本拠はあそこ」

 

見晴らしの良い所で探そうと一番高い木に登っていた春日部さんが目的の建物を見つけたようだ。

上から方向を指差した後に飛び降り、僕らを案内してくれた。

 

「確かに本拠の中にいる。影が見えただけだけど、目で確認した」

「そういえば鷹の友達もいるのね。けど春日部さんが突然異世界に呼び出されて、友達はみんな悲しんでるんじゃない?」

「そ、それを言われると……少し辛い」

 

久遠さんの言葉に、僕は元の世界を思い出す。

…父と母が心配だな。父なんかはドジを踏んでるかもしれないし、母もまた変な勧誘を受けてないか気が気でない。

 

そして友達……か。

一瞬思い浮かべた燃堂(バカ)海藤(厨二)を即座に打ち消し、僕は歩きだした。

 

……これが終わったら、元の世界へ戻る方法を考えよう。

だが、今はゲームに集中だ

 

 

侵入を阻む木々はまるで命じられたかのように絡みあって僕らの道を阻んでいる。いっそ焼き払いたい気分だが、そんな事をすれば別の問題を生み出しかねないので自重しておく。

 

(これだけの量を鬼化させるなんて……まさか彼女が?)

 

ふむ、どうやらジンはこの現象を起こした人物に心当たりがあるらしい。…後で詳しく聞いてみたいものだ

 

*****

 

「見て。館まで呑みこまれてるわよ」

 

ようやく"フォレス・ガロ"の本拠に着いた僕ら。その館も凄惨な物だった。

虎の紋様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪奢な外観は塗装もろともツタに蝕まれては剥ぎ取られていた。

 

「ガルドは二階に居た。入っても大丈夫」

 

二階の様子を覗いていた春日部さんがそう告げる。

 

 

内装もやはり酷いものだった。贅を尽くしたであろう家具は打ち倒されて散在している。

 

「この奇妙な森の舞台は……本当に彼が作ったものなの?」

「……分かりません。"主催者"側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台を作るのは代理を頼めますから」

「代理を頼むにしても、罠の一つも無かったわよ?」

「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため……でもなかった。それが理由なら本拠に隠れる意味がない。ううん、そもそも本拠を破壊する必要なんてない」

 

そう、彼女達が上げてくれた事が一番の疑問点である。

あんな利己的で外道のガルドが、何もここまで己の栄光を壊す必要が何処にあるのだろうか。

自暴自棄?確かにそれもあり得るが、このゲームは僕らのギフトが封じられた時点でガルドに若干の利がある。ましてやこの様な森を用意しておいて、本拠に待機という消極的な方法を取るのだろうか?

……考えていても仕方ない。さっさとガルドを倒すぞ

 

 

一階の瓦礫の山を捜索するが、指定武具らしき物は出てこない。そうなると恐らく、ガルド自身が奪われまいと守っている線が強いが…

 

困ったな。ガルドが守っていた場合、武器を奪う事は難しくなる。

やはりガルドを超能力で押さえられない制約がデカすぎる。そうなると取るべき作戦は自然と絞られる訳だが……

 

真っ先に思いついた方法は少し危険だった。このメンバーなら出来なくもないだろうが、必然的に片方を危険に晒すこととなる。

だが、これ以外良い作戦は取り敢えず思いつかない。今はこれで行くしかないだろう

 

僕は決心すると、久遠さん達を一旦呼び集めた。

 

 

**

 

「退路の確保は私たちがするわ。二人ともお願いね」

「……任せて」

 

作戦を簡潔に伝えた後、僕と春日部さんは久遠さんとジンを一階に残して二階へと登った。

 

 

この作戦は僕と春日部さん。久遠さんとジンのチームに分けて行う物だ。これは単純に身体能力で判断させてもらった。

久遠さん達は一階で退路を確保する役目に当たる。そして、身軽に動ける春日部さんと超能力の使える僕がガルドの様子を見る役となる。

 

物音を立てず二階に辿り着いた先には大きな扉が立ち塞がっていた。

 

透視は……駄目だな。館に無効化されている。

テレパシーも扉のせいで中のガルドに届かないのだろう。何も聞こえないのが不気味だ。

 

つまりこの中にガルド、そして指定武具があるかどうかは扉を開けないとわからないという事だ。やれやれ…

 

二人で静かに目配せした後、僕らはゆっくりと扉を開けた。

 

その刹那

 

「ギ………」

 

 

「―――――………GEEEEEYAAAAAAaaaaa!!!」

 

 

言葉を失った虎の怪物が、白銀の十字剣を背に守り立ち塞がった。

 

**

 

……っ!?これは――――!!

 

予想外の出来事に一瞬反応が鈍る。

それでも目にも止まらぬ突進をしてきた虎を辛うじて避け、体制を整えた。春日部さんも一旦距離を置いている。

 

今ギフトを使えない久遠さん達にこの狂暴化した虎は危険すぎる…!

 

僕は即座に久遠さんとジンに向かって"逃げろ"というテレパシーを発する。所謂「虫の知らせ」だ。これで逃げ遅れる事はないだろう。

ガルドと春日部さんが牽制し合っているのを確認し、一瞬だけ千里眼で久遠さん達を確認する。

……よし、何とか館から脱出出来たようだ。

何故かジンが久遠さんを姫抱っこして全力疾走してたのは少し気になったが……

 

 

ガルドの姿は先日見かけた獣人ではなく、紅い瞳を光らせる虎そのものと化していた。

 

一体何のギフトを使ったと言うのか。昨日のガルドとは余りにも違いすぎる。あれは最早怪物と形容した方が正しいのではないだろうか

 

そう考えている間にも虎は僕や春日部さんに向かって突進を繰り返していく。

 

ちっ、僕のサイコキネシスでも動きを一時的に止めるだけで精一杯だ。擦り傷もつけられずに拘束を突破されてしまう。

春日部さんは縦横無尽に部屋を走り回りながらガルドを避けている。

 

 

……さて、気になるのはあの十字剣だ。

 

白銀の色をした十字剣は聖なる雰囲気を漂わせており、一切の魔を寄せ付けない力を感じさせた。

対して、怪物と化したガルドは全身から嫌なオーラを漂わせている。それも血生臭く、不気味な物だ。

 

恐らく、白銀の十字剣(アレ)が指定武具で合っているのだろう。ガルドが最初に守っていたことからも納得がいく。

 

しかし、アレが弱点である以上、ガルドも死に物狂いで僕らの獲得を阻止してくるだろう。

 

…となると、取れる方法は絞られる。

 

僕は逃げ回っている春日部さんにテレパシーでメッセージを伝えた。この状況でテレパシーは隠したいだのと言ってられない。

彼女は一瞬驚いていたものの、今は他に方法がないと気づくと力強く頷き、そして集中の体制に入った。

 

……よし、僕も行くか

 

 

僕は手始めにガルドにサイコキネシスをぶつけて挑発する。どうせ当たってもダメージにはならないが気を引くには充分だ。

そうすると予想通りガルドは僕に向かって突進をしてくる。その隙を春日部さんは見逃さなかった。

ガルドが完全に白銀の十字剣から意識を逸らした刹那、春日部さんは真っ先に剣に向かって走りだした。その速度は人間の物とは思えず、あっという間に剣の元に辿り着くと、それを力強く手に取った。

 

 

後は僕がガルドをサイコキネシスで拘束し、その短時間の間に春日部さんがガルドに剣を突きたてれば、それで勝利が確定した。

 

サイコキネシスを発動しようと待ち構える僕へ、勢いよく突っ込んで来たガルドは

 

 

 

 

僕の目の前で急転回した(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

この時、僕は目先の事に捉われるあまり重大な事実を見落としていた。

 

一つ、テレパシーを妨害していた扉を開けた筈なのに、奴の心の声が一切聞こえなかったこと(・・・・・・・・・・・)

そして、いつも心の声で相手の行動を予測している僕にとって、今の奴は燃堂並みに行動を読めない強敵であったこと

 

 

ガルドは僕から十字剣を奪った春日部さんにターゲットを変更すると、先程よりも素早い動きであっという間に彼女へ接近した。そして

 

 

その強靭な爪を、無慈悲にも振り下ろした

 

 




予想外の強敵、出現。

ガルドのギフト無効化は"傷つける可能性のある"ギフト以外は無効であるという独自解釈をしました。
館にかけられたギフトというのは独自設定です。因みに、あれはあくまで内部を映さない為だけであり、テレパシーを妨害する効果はありません。斉木の勘違いです

次回でようやく一章が終わります
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