無敵の超能力者が異世界から来るそうですよ? 作:フォルテピアノ
協力プレイ
黒ウサギがようやく立ち直った頃、十六夜がニヤリと笑いながら彼女に視線を向けた。
「そんじゃ、俺らが勝ったってことで一つ、言うことを聞いて貰うぜ?」
「性的なことは駄目ですからね!!」
十六夜の視線を感じて改めて念を押す黒ウサギ
「わかってるっての。……なに、ただ一つ質問したいだけだ」
十六夜の意外な言葉に身構えていた黒ウサギは一瞬ポカンと口を開ける
「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなことは
十六夜は視線を黒ウサギから外し僕らを見回した後に天幕で覆われた都市へと目を向けた。
「この世界は……
「――――――」
静寂が支配する。他の二人も黒ウサギの答えを静かに待った。
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』
本当にその価値に合うだけのものがこの世界にあるのかどうか。それが今この時に置いて重要だった。
やがて、黒ウサギは笑顔を浮かべこう答える
「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
*****
僕は今、非常に困っている。
「止めるな斉木。ちょっと世界の果てを見に行くだけだからよ」
無茶言うな馬鹿。「スーパー行ってくるわ!」のノリで大魔境に突入する気か
現在、黒ウサギの案内で箱庭の都市へと向かっている僕ら。
結局、あれから元の世界への帰還方法を聞き出せずに今に至る。
仕方が無いだろう。あんな空気で「元の世界に帰りたいんですけど」は空気が読めなさすぎる。僕はそういう注目のされ方が一番嫌なんだ
それで渋々案内されているのだが・・・
十分ほど歩いた所で突如、十六夜がこっそりと列から抜け出そうとした。それを僕が引き止めようとして言われたのが先程の内容である。
黒ウサギはあまりのウキウキ気分に気づいてないようだし、女性二人はわかっていて完全に無視している。つまりこいつを止める厄介事は全て僕に押し付けられたと言うことだ。やれやれ…
「別にいいだろ?あの天幕を目指せば俺だけでも箱庭まで辿りつけるし問題ねぇ」
問題大有りだ馬鹿野郎
第一、迷子になりそうだからとかそんな単純な理由で止めた訳じゃない
というのも、さっきから僕のテレパシーは森の奥に潜む"何か"を捉えているのだ。それも複数
場所と雰囲気から察するに絶対人間ではないだろう。だからと言ってただの動物と言うこともあり得ない。
先程の黒ウサギの説明が正しければ精霊か悪魔か、神もあるかもしれない。
そんな危険な所にお前を行かせたらどうなるかわかったもんじゃない。僕なら大丈夫……かどうかはまだ何とも言えないが、危険な事に変わりない筈だ。
それに、行きたければ全て落ち着いた明日でも良いだろう?
「待ち切れねぇっての!こういうのは早い方が徳だぜ?」
お前は新しい島に上陸した時のル○ィか
……はあ、仕方ない。
手荒い真似はなるべくしたくないから、せめて黒ウサギに監視してもらえるよう働きかけるか。
何の根拠もないのに嫌な予感を感じる時があるだろう。僕はあれを意図的に引き起こす事が出来る。…というのも、テレパシーを使って相手の脳内にサブリミナル的に語りかければ良いだけなのだが
やれやれ、これで監視の目があればこいつも諦めるだろう。
僕はそう思って黒ウサギへテレパシーを送ろうとした。
が、僕が意識を十六夜から逸らしたその一瞬を奴は見逃さなかった。
「隙あり!」
その瞬間、十六夜は僕の目の前から消え去った。
………………………………
いや!消え去ったんじゃない!
とてつもない速さで走っていったんだ!
何を言っているんだと言われそうだが僕ですらよくわからない。
ただ、今この一瞬で僕のテレパシー範囲内(200m)から消え失せてしまったのは確かだ。
考えられるのは僕と同じで瞬間移動を使ったか、とてつもなく足が速いかだけである。
だが瞬間移動を使うとしても見た事のある場所にしか行けない制約がある(僕の場合に限った話だが)。そして一瞬目に入った予備動作――俗にいう走る体制なのだが――から見るに、奴は韋駄天の如く走り去ったということが予想される。
…あいつ、記憶力といい脚力といい、化け物なんじゃないのか?
クソッ
今すぐ追うべきか?世界の果てに行くと言っていたから、僕も頑張ればすぐにでも追いつくことは出来る筈だ。
…だが、あれだけ忠告しておきながら無視して行ったのだ。何かが起こっても十六夜の自業自得。ついさっき知り合った僕が助ける義理までは無い。
さっきは面倒事が起きそうだから止めたまでであって、自分から面倒事に首を突っ込む気はさらさら無いのだ。
…………決して、先程のゲームの恨みとかではないぞ?
と言うわけでさよならだ、十六夜。お前の事は忘れないからな
結局、僕は十六夜を追うのをやめ、素直に黒ウサギの案内に従うのだった。
……というか、気づいてない黒ウサギはともかく、春日部さんも久遠さんも動じなさすぎだろう。心配していた僕が異端みたいじゃないか
そして黒ウサギ、お前は何故気づかない
*****
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「"止めてくれるなよ"と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「"黒ウサギには言うなよ"と言われたから」
(単純に面倒臭かったから)
「楠雄さんが真理ですよね!?実は面倒臭かっただけでしょう御三人様!!」
「「(うん)」」
――箱庭二一○五三八○外門前の街道
黒ウサギと共に都市の門の前までやってきた僕らは、黒ウサギに「ジン坊っちゃん」と呼ばれる少年と出会った。そこまで良かったのだが
僕らの無慈悲な回答にガクリ、と前のめりに倒れる黒ウサギ。その哀れな姿を見て、流石に十六夜が逃亡した時点で言うべきだったかと考える。
だがそうなると、黒ウサギは僕らに待機を命じて十六夜を追いにいくだろう。そうなると十六夜の速度からしてかなりの時間がかかる筈だ。
僕としては
(不覚デス……いつもなら気づける筈なのに……。新たな人材に胸を踊らせていたばかりに…!!)
だからと言って気づかなすぎだろう。
そうやって膝をついている黒ウサギと対照的に近くにいたジンは蒼白になって叫んだ。
「た、大変です!"世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを待ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
幻獣、か。
少々想像していたのより厄介な存在だな。やはり黒ウサギにあの時点で伝えておいた方が…
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?……斬新」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
……なんだろうな、一瞬でも心配した僕が馬鹿らしくなった
「はあ……ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。事のついでに――"箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の隋まで後悔させてやります」
ようやく復帰した黒ウサギはよろよろと立ち上がると、怒りのオーラを全身から噴出させた。流石にキレたようだ
そして彼女は超野菜人の如く髪を艶のある黒から淡い緋色に染めると
「一刻ほどで戻ります!皆さんは箱庭ライフを御堪能ございませ!」
先程のドジッ娘は何処へやら。怒りに身を任せ弾丸の如くあっという間に森の奥へと消えてしまった。
……最初っからそれを見せておけば良かったんじゃないか?
「箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
ああ、サラマンダーより速いな
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」
そんなに凄い種族だったのか、黒ウサギは。
確かにあの様子なら本当に一刻で戻って来そうだが…
ふむ、ならば僕も黒ウサギに言われた通りに少し寛ぐぐらいはしてもいいだろう。
勿論、箱庭から帰還する方法を聞くのも忘れていない。場合によっては、というか高確率で止められるかもしれないが……
…まあ、彼らは
それに
(えーと、取り敢えず皆さんをカフェに連れて行けば良いですかね?美味しいお菓子もあるし喜んで頂けると思うのですが…)
うん、帰る前に異世界のスイーツを堪能するのも悪くない
*****
―――箱庭二一○五三八○外門・内壁
黒ウサギの所属するコミュニティのリーダー、ジン=ラッセルという齢十一の少年に連れられ、僕らは箱庭の中へと足を踏み入れた。
『お、お嬢!外から天幕の中に入ったはずなのに、御天道様が見えとるで!』
春日部さんに抱えられた猫がニャーニャーと興奮している。ちょっと煩いがその気持ちもわからなくない。
僕も最初は透視をしているから空が見えているのだと勘違いしたくらいだ。その為、他の人にも空が見えていると知った時はとても驚いた。
今、この箱庭の中からは輝く太陽と天高く積み上げられた巨大な都市が見えている。
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」
なるほどな。原理はわからないがかなり凄い
「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「え、居ますけど」
「……。そう」
久遠さんが複雑そうな顔をしているのは、吸血鬼が太陽の下で人間と暮らしている姿が想像出来ないからだろう。かくいう僕もあまり想像出来ない。アメリカンな吸血鬼でも夜ならまだわからなくもないが……
『しかしあれやなあ。ワシが知っとる人里とはえらい空気が違う場所や。まるで山奥の朝霧が晴れた時のような澄み具合や。ほら、あの噴水の彫像も立派な造りやで!お嬢の親父さんが見たらさぞ喜んだやろうなあ』
いつの間に春日部さんの腕から離れたのか、三毛猫が噴水広場を見回しながら春日部さんに話しかけた。
「うん。そうだね」
彼女は普段の無表情と変わって優しい声音で猫の言葉に答えた。
意味を理解しているのかしていないのか。
はたから見れば、春日部さんが鳴いている猫にただ頷いている様に見えるだろう。
だが、テレパシーで心を読める僕だからわかる。
彼女は三毛猫の言葉を
これがわかった時は正直僕も驚いた。
思えば陸地に上がって久遠さんと十六夜が一悶着を起こして居た頃、彼女は三毛猫と戯れてるように見えて、その実しっかりと意思疎通もしていたのである。
恐らく、猫――もしかしたら動物全般――と会話出来るのが彼女のギフトではないだろうかと僕は考えている
やれやれ、ここに来てから色々と驚きっぱなしだ。僕が不可思議な世界に来た事を十分に実感させられる。
「歩いているのも何ですし、お茶でも飲みながらゆっくりどうですか?」
そんな僕らを引き連れ、先頭を歩くジンがそう言って"六本傷"の旗を掲げるカフェテラスへ入って行った。
な、中々展開が進まない…
7日までは少なくとも1日に1回投稿出来そうです。