無敵の超能力者が異世界から来るそうですよ?   作:フォルテピアノ

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~前回のあらすじ~
サラマンダー


三毛猫と猫耳と虎とあとコーヒーゼリー

突然だが、僕は甘いものが嫌いではない。

 

行きたくない団体カラオケなんかにパフェで釣られクマーしてしまうくらいには嫌いではない。

パフェやあんみつ、いるまんじゅうなどといった甘味には目がない方とだけ言っておこう。

 

コーヒーゼリー

 

そんな僕が唯一無二にして最高のスイーツだと考える物の名である。

 

 

*****

 

ジンの案内でカフェテラスに入った僕たちは、店員に案内され席に座った。

 

各々が軽食や飲み物を取ろうとメニューを覗いている中、僕はただ一つの表記を探してメニューを凝視していた。

 

(……楠雄さん。なんか顔が怖いです)

 

おっと、必死すぎるあまりジンを引かせてしまったな。これではいけない。

ところでここのカフェ代はどうなるんだ?身一つで飛ばされたせいで僕らはお金を持ってない筈だが

 

「あ、すみません!!料金については僕が払いますのでお気になさらず」

 

そうかわかった。なら好きな物も頼んではいいという事だな?

 

「え、ええ……流石に高すぎるのは駄目ですが……」

 

そんなに頼むつもりはないから安心しろ。僕が頼みたいのはただ一つだけだ

 

僕は再びメニューの"スイーツ"欄を凝視し

……そして、一番下に書かれたその名を見て思わず顔を綻ばせた。

 

『ちょ、あの兄ちゃんが笑み浮かべとるで!えらいこっちゃ!』

 

余計なお世話だ、猫

 

 

僕は即座に顔を真顔に戻すと、簡潔にジンへ注文を伝えた。

 

 

**

 

やがて店の奥から注文を取るために猫耳の少女がやって来た。

 

「いらっしゃいませー。御注文はどうしますか?」

「えーと、紅茶を二つと緑茶を一つとコーヒーを一つ。あと軽食にコレとコレとスイーツのコレを…」

『あとネコマンマな!!』

 

さり気なく注文をするな。春日部さんに頼まないと伝わらないだろう。

 

「はいはーい。ティーセット4つにネコマンマですね」

 

………ん?今彼女はネコマンマと言ったか?

僕を含めて久遠さんとジンが首を傾げているが、それは突然出て来たネコマンマという単語への疑問だろう。

僕の疑問は二人以上に驚いている春日部さんと同じものだ。

 

「三毛猫の言葉、わかるの?」

「そりゃわかりますよー、私は猫族なんですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスもさせてもらいますよー!」

『ねーちゃんも可愛い猫耳に鍵尻尾やな。今度機会があったら甘噛みしに行くわ』

 

おいおっさん。セクハラだぞ

 

「やだもーお客さんったらお上手なんだから♪」

 

それを猫耳店員は気にすることなく笑顔で対応。

ふむ、きっと店の教育が良いのだろうな。それか単に猫同士のスキンシップという認識なのか

先程は一瞬、コスプレ喫茶の類だと勘違いして悪かったな。

 

 

注文を受けて店内に戻る猫耳娘を見ながら、春日部さんは嬉しそうに三毛猫を撫でた。

 

「……箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に三毛猫の言葉がわかる人がいたよ。」

『来てよかったな。お嬢』

「ちょ、ちょっと待って。貴女もしかして猫と会話できるの?」

 

気品ある久遠さんが動揺している。これは珍しい

 

「うん。生きているなら誰とでも話は出来る。……えっと、雀や鷺にホトトギス、水族館でペンギンやイルカとも友達になった」

 

これには流石の二人も絶句したようだった。

 

しかし、生きているなら誰とでも、か。僕も動物に関しては意思疎通が可能だが……

 

 

ということは、だな

 

君はもしかして、いや、もしかしなくても

 

 

「……一度、三毛猫に仕留められたアレの断末「やめて!それ以上は言わないで!!」

 

 

……その時、全員の脳裏には一致して黒くて生命力の強いアレが思い浮かばれていたのだった。

 

 

**

 

「し、しかし全ての種と会話が可能なら心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言語の壁というのはとても大きいですから」

 

先程流れた気まずい空気を払拭するようにジンがそう切り出した。

すまない、僕が好奇心を出したばかりに……

 

「そうなんだ」

「はい。一部の猫族やウサギのように神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通は可能ですけど、幻獣達はそれそのものらが独立した種の一つです。同一種か相応のギフトがなければ意思疎通は難しいというのが一般です。箱庭の創始者の眷属に当たる黒ウサギでも、全ての種とコミュニケーションをとることはできないはずですし」

「そう……春日部さんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

 

やはり幻獣は動物とは一線を超えた存在ということか。

……あの箱庭の外にあった森。僕がテレパシーで感じ取った存在が幻獣だとしたら。

 

……なんとなく、春日部さんに申し訳なく思えて来た。

 

 

「久遠さんは」

「飛鳥でいいわ。よろしくね春日部さん」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私?私の力は……」

 

春日部さんの問いに久遠さんは表情を曇らせる。

 

「…まあ、酷いものよ。だって」

 

 

「おんやぁ?誰かと思えば東地区の最底辺コミュ"名無しの権兵衛"のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

 

その時、上品ぶった声が僕らに投げかけられた。振り返った先にいたのは2mを超える巨体をピチピチのタキシードで包んだマッチョな変態

 

「…おい、お前今失礼なことを考えなかったか?」

 

滅相もございません。

 

「僕らのコミュニティは"ノーネーム"です。"フォレス・ガロ"のガルド=ガスパー」

 

顔を顰めながらジンがそう答える。

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ―――――そう思わないかい?皆様方」

 

ガルドと呼ばれた巨体ピチピチタキシードの変…紳士は僕らのいる席に遠慮なく腰を下ろして愛想笑いで尋ねた。当然、二人の視線はブリザードのように冷たいが

 

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

「おっと失礼。私は箱庭上層部に陣取るコミュニティ"六百六十六の獣"の傘下である」

「烏合の衆の」

「コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!!」

 

素晴らしいノリツッコミだ。おっさん

 

「口慎めや小僧ォ……紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ……?」

 

ジンの言葉にブチ切れたのか、ガルドは怒りと共にその姿を変化させる。

 

耳元まで裂けた口、鋭い牙とギョロリと剥かれた瞳。その姿は何処か肉食獣を想像させた。

 

「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの二一○五三八○外門付近を荒らす獣にしか見えません」

 

「ハッ、そういう貴様は過去の英霊に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」

 

「ッ………」

 

息を飲むジンを見て勝ち誇ったようにガルドは口元を上げた。

 

 

 

さて、ここまで見てきてわかる通り、ジンは僕らに重要なことを隠している。

恐らくこの状況だと、非常に鋭い久遠さんの事だ。ジンを問いただして……場合によってはガルドを使ってこの事を暴くだろう。

 

 

ぶっちゃけよう。僕はもう、ジンが隠しているコミュニティの現状。そして僕らを呼び出した本当の理由について、黒ウサギやジンからテレパシーで把握している。

 

 

そして、これこそが僕の元いた世界に帰りたい一番の理由なのだ。

 

 

……丁度、飛鳥さんがジンの動揺を見逃さずに畳み掛けて追及し、ガルドがこれ幸いと解説役を買ったところだ。

ガルドに僕らのギルドの現状を解説してもらいつつ、僕は奴が襲来して来る直前に届いた"コレ"を頂くとしよう

 

 

**

 

「まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によって違うでしょう。人間はその大小で家族とも組織とも国ともコミュニティを言い換えてますし、幻獣は"群れ"とも言い換えられる」

「それくらいわかるわ」

「はい、確認までに。そしてコミュニティは活動する上で箱庭に"名"と" 旗印"を申告しなければなりません。特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう?あれがそうです」

 

……まずはコーヒーから頂くとしよう

匂いからしてコーヒー特有の苦味や心地よさが感じ取れる。異世界のコーヒーとはどのような味なのだろうか

 

「六本の傷が入ったあの旗印は、この店を経営するコミュニティの縄張りであることを示しています。もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、あの旗印のコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうやって大きくしましたから」

 

なるほど、基本的には僕の世界と変わらないようだが、味の深みが異なる。言葉に表すのは難しいが、美味しいことは僕が保証しよう。

……これは本命の方も期待出来るな

 

「その紋様が縄張りを示すというのなら……この近辺はほぼ貴方達のコミュニティが支配していると考えていいのかしら?」

「ええ。残念なことにこの店のコミュニティは南区画に本拠があるため手出しできませんが。この二一○五三八○外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て私の支配下です。残すは本拠が地区か上層にあるコミュニティと―――奪うに値しない名もなきコミュニティぐらいですが」

 

コーヒーをある程度飲んだ所で僕はついに本命に取り掛かる。

 

―――コーヒーゼリー

 

日本以外ではあまり一般的ではないと言われるこれをすぐに見つけられたことは幸運だった。

 

「さて、ここからが皆様達のコミュニティの問題。実は貴方達の所属するコミュニティは……数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

「あら、意外ね」

「とはいえリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた、東地区最強のコミュニティだったそうですから」

 

コーヒー液を冷やす際に急冷しないと白濁してしまうことから考えるに、このゼリーは艶のある黒をしていてとても美しい。

そのまま食べるも良し。だが側に添えられているコーヒーフレッシュをかけることにより更なる深みを味わえる。

 

僕はコーヒーフレッシュをかけたコーヒーゼリーを前に静かにスプーンを持つ。

 

そして……一掬い

 

「まあ、様々な幻獣や悪鬼羅刹が認め、箱庭の上層に食い込む程その先代コミュニティは凄かった訳ですが……」

 

「快挙を遂げ続けるそのコミュニティはしかし!……敵に回してはいけないモノに目をつけられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされてしまったのです。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

「天災?」

 

 

「此れは比喩にあらず、ですよ。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災―――俗に"魔王"と呼ばれる者達です」

 

 

**

 

コーヒーゼリーうめぇ




コーヒーゼリー>>>越えられない影>>>現状

今後の展開の為、独自解釈タグを追加しました。
・・・生命の目録って虫にも有効なのでしょうか?かなり曖昧なので間違っていたらご指摘よろしくお願いします。
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