無敵の超能力者が異世界から来るそうですよ?   作:フォルテピアノ

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~前回のあらすじ~
コーヒーフレッシュ


ガルド、Ψ悪の選択

―――――魔王

 

この箱庭において"主催者権限(ホストマスター)"という特権階級を持つ修羅神仏。彼らにギフトゲームを挑まれたら最後、誰も断ることが出来ない。

 

そのため、ジンや黒ウサギたちのコミュニティは、魔王のゲームに強制参加させられ、その結果コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまったのだ。

 

それは名前や旗印……更には共に過ごした仲間たちですらある。

 

ならばもう一度改めて結成し直せばいいじゃないか。という話だがそうはいかない。

改名は則ちコミュニティの完全解散に繋がる。仲間たちの帰る場所を守りたい黒ウサギたちはそれが出来なかった。

 

なんとしてもコミュニティを再建させたい。

ならどうするか?名前や旗印を取り戻すにはそれ相応の力が必要だ。

でもこんな名無しの落ちぶれたコミュニティでは有能な人材はまずこない。

 

じゃあどうしよう。

そうだ、事情の知らない箱庭の外から強い人材を呼び出そう

 

 

 

(モニュモニュ)単純(モニュモニュ)すぎるだろう

 

 

**

 

「名も、旗印も、主力陣の全ての全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。もしもこの時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

「…………」

 

ガルドはさも可哀想といった様相で僕らに話を続ける。ジンは話が真実の為に何も反論出来ず、先程から俯いたままだ。

 

「そもそも考えてもみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができます?商売にしろ主権者にしろ名も無き組織などでは信用されません。ではギフトゲームの参加者ですか?ええ、それならば可能でしょう。では優秀なギフトを持つ人材が、名誉も誇りも失墜させたコミュニティに集まるでしょうか?」

「そうね……誰も加入したいとは思わないでしょう」

「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 

相変わらず品の無い笑いをジンに向ける。ジンは悔しさを滲ませながら怒りで身を震わせていた。だが、何も言い返せない。

 

ガルドの言うことは(モニュ)全て真実だ。

そしてジンの様子から(モニュ)見るに(モニュ)僕らへそれを隠し続けようとしていたのも(モニュ)真実。

 

 

いずれバレるにしても、その前に僕らとコミュニティに参加する契約を結ばせてしまえば、後はなし崩し的に再建計画に協力せざるを得なくなる。というのが黒ウサギの計画だったらしい

 

勿論これは三人とも知らない事実なのだが……超能力者の僕に隠し事は通じないぞ?

 

やれやれ、全くもってムカつく計画だ。僕らの意思すら踏みにじっていると考えても良いだろう。

こんな詐欺みたいな形で面倒事に巻き込もうとするコミュニティに手助けする義理も、参加する義理もない。

 

「私は本当に黒ウサギの彼女が不憫でなりません。ウサギと言えば"箱庭の貴族"と呼ばれるほど協力なギフトの数々を持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられるはず。コミュニティにとってウサギを所持しているというのはそれだけで大きな"箔"がつく。なのに彼女は毎日毎日クソ餓鬼共の為に身を粉にして走り回り、僅かな路銀で弱小コミュニティをやり繰りしている」

 

……個人的には、散々煽ったりドジったりする印象が強すぎて同情しづらいのだが。

 

「そう……。事情はわかったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧にしてくれるのかしら?」

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 

……やれやれ、そう来たか。

まあ、ガルド曰く"奪うに値しない弱小コミュニティ"の現状説明を、タダ好んでするとは思えなかったからな。この展開は予想出来た。

 

「な、何を言い出すんですガルド=ガスパー!?」

「黙れ。ジン=ラッセル。そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材はコミュニティに残っていたはずだろうが。それを貴様の我儘でコミュニティを追い込んでおきなから、どの顔で異世界から人材を呼び出した」

「そ……それは」

 

正論だな

 

「何も知らない相手なら騙し通せるとでも思ったのか?その結果、黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら……こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」

 

キャーガルドサンカッコイー

 

…という冗談はさて置き、どうやらガルドは"ジンに騙されようとしている僕らと黒ウサギを救う"名目で僕らを勧誘しようとしてるようだ。

 

全く、これだけならいかにも"いい人風"なんだがな。

 

けれど、だ

 

「……で、どうですか皆様。返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴女達には箱庭で三十日間の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達"フォレス・ガロのコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」

 

いかんせん勧誘する相手が悪かった

 

**

 

「は?」

 

ジンとガルドが揃ってぽかんとしている様を他所に、彼女は紅茶を飲み干すと春日部さんに笑顔を向けた。

 

「春日部さんは今の話をどう思う?」

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」

「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外と仲良くやっていけそうな気がするの」

「……うん。飛鳥は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」

『よかったなお嬢……お嬢に友達ができてワシも涙が出るほど嬉しいわ』

 

そう言ってホロリと泣く三毛猫から察するに、彼女は動物の友達はいても人間の友達がいなかったのだろう。

……昔の僕と同じだな

 

「なんなら楠雄君も友達二号に立候補したらどうかしら?春日部さんも友達が多い方が良いでしょう?」

 

と、僕に話がまわって来たか。正直に言うと友達を作るのは嫌な方なのだが……

 

…だが、そうだな。君となら仲良くなれる気がする

 

「……うん。二人とも、改めてよろしくね」

 

春日部さんは初めて優しい笑みを浮かべていた。

 

 

「えー、ゴホン。失礼ですが理由を聞かせてもらっても?」

 

おっと、ガルドを忘れていたな。

 

「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り友達を作りに来ただけだから、ジン君でもガルドさんでもどちらでも構わない。そうよね?」

「うん」

「私、久遠飛鳥は―――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね。このエセ虎紳士」

 

素晴らしい切り返しだな。流石はお嬢様と言った所か

 

 

「は、はぁ・・・(こんの小娘がァ……紳士的に誘ってやってるというのに、どれだけ無礼を働く気だ……!)」

 

無礼はお前だろう。変態と言う名の紳士

 

(そもそもこの小僧もさっきから話を聞かずに呑気にコーヒーゼリーを食べやがって……俺の事を舐めてやがる……!)

 

ああ、舐めてるぞ。だがそれ以上に僕のスイーツタイムは重要だからな。そして、話はしっかり聞いていた

 

 

……その上で、先程から流れ込んでくるお前の本心(・・・・・)が、僕は不快で不快で仕方ないんだ。

 

 

お陰で折角箱庭で食べた初コーヒーゼリーを心行くまで堪能することが出来ないじゃないか

 

 

ジン達は確かに僕らを騙そうとした。

だけど根底にあるコミュニティへの想い、そして願いは表裏なく真実だった。例えそれが夢物語だとしても。

 

対してお前はどうだ?ガルド

表面上は良い顔をして、裏ではそれ以上のドス黒いことを考えている

 

僕はそういう取り繕ったクズが大嫌いなんだ

 

 

「お、お言葉ですがレデ「黙りなさい(・・・・・)

 

ガチン!

 

勢いよく口が閉まるガルド。

必死に平静を保って再び話しかけようとした奴は、しかし久遠さんの一言により不自然に黙り込んだ。

 

(な、なんだこれは!!!口が、開かない……!?)

 

内心動揺しているガルド。自分の意思で口が動かないことにパニックになっているようだ

 

「私の話はまだ終わってないわ。貴方からはまだまだ聞き出さなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って(・・・・・・)私の質問に答え続けなさい(・・・・・・・・・・・・)

 

久遠さんの言葉に力が入り、ガルドは椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込んだ。

 

……凄いな。これが久遠さんのギフトか

相手を自分の言葉に従わせる。何処まで効くかはわからないがかなり強力だ。あの巨体のガルドですら動けなくなっているのだから相当だろう。

 

「お、お客さん!当店で揉め事は控えてくだ―――」

「ちょうどいいわ。猫の店員さんも第三者として聞いていって欲しいの。多分、面白いことが聞けるはずよ」

 

トラブルだと思ったのか、慌ててやって来た先程の猫耳店員を久遠さんが制する。

 

ふむ、どうやら久遠さんはガルドが隠している闇に気づき始めているようだ。真実を解き明かすのは久遠さんに任せて、僕はコーヒーゼリーの残りを頂くとしよう。

 

 

**

 

「貴方はこの地域のコミュニティに、"両者合意"で勝負を挑み、そして勝利したと言っていたわ。だけど、私が聞いたギフトゲームの内容は少し違うの。コミュニティのゲームとは、"主権者"とそれに挑戦する者が様々なチップを賭けて行う物のはず。……ねえ、ジン君。コミュニティそのものをチップにゲームをすることは、そうそうあることなの?」

「や、止むを得ない状況なら稀に。しかし、それはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」

 

そう。久遠さんが気づいたガルドへの疑問点がそれだ。

奴は以前、「このあたりの中流コミュニティは全て支配下」だと言っていた。コミュニティを吸収するには当然、ギフトゲームで奪うしか無いだろう。

しかし、相手が余程無謀でない限り、そうそう己のコミュニティを賭けるとは思えない。

なぜならコミュニティは生きる為に必要なものであり、負ければ全てを失うものなのだから

 

「そうよね。訪れたばかりの私達でさえそれぐらい分かるもの。そのコミュニティ同士の戦いに強制力を持つからこそ"主催者権限"を持つ者は魔王として恐れられているはず。その特権を持たない貴方がどうして強制的にコミュニティを賭けあうような大勝負を続けることができたのかしら。教えてくださる?(・・・・・・・・)

 

ついに王手をかけられたガルドは必死に支配から抗おうとしていた。だがそれも内心だけの話。

久遠さんがの命令は"絶対"なのだ

 

 

「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」

 

………………

 

 

「まあ、そんなところでしょう。貴方のように小物らしい堅実な手です。けどそんな違法で吸収した組織が貴方の下で従順に働いてくれるのかしら?」

「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」

 

……胸糞悪いな。

流石に予想はしていたが、本当にそんな非人道的なことを平然と行っていたとは。

 

「……そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されているのかしら?」

 

 

 

「もう殺した」

 

 

 

…………は?

 

その場の空気が一斉に凍りつく。ジンも、春日部さんも、久遠さんも、僕ですら一瞬耳を疑い思考を停止させた。

 

 

静止した時の間にも、ガルドは命令に忠実に、ただ言葉を吐き続ける

 

 

「初めてガキ共を連れて来た日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食

 

 

黙れ(・・)

 

ガチン!と先程より勢いよく口が閉ざされる。

 

「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら……ねえジン君?」

「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」

「そう?それはそれで残念。―――ところで、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質を取ったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」

 

ガルドが逃げ出せば、その時点でフォレス・ガロの崩壊はほぼ確実だ。ジンの言った通り、ただの烏合の衆なのだから

…でも、そのことに納得する輩は恐らくこの空間では誰もいない

 

「そう、なら仕方がないわ」

 

久遠さんが苛立たしげに指を鳴らす。それを合図としてガルドを縛り付けていた力は霧散した。

 

「こ………この小娘がァァァァァ!!」

 

自由になったガルドは怒りの雄叫びと共にその体を激変させた。

タキシードは弾け飛び体毛は変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。

 

変身能力(トランスフォーム)

その姿からして虎人間(ワータイガー)、と言ったところか。

 

「テメェ、どういうつもりか知らねえが……俺の上に誰が居るかわかってんだろうなァ!?箱庭でも第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!!その意味がわかんのかァ!?」

 

ガルドはそう咆哮すると、怒りに任せテーブルを叩き壊そうと手を振り上げた。

 

 

久遠さんが身構え、春日部さんがガルドを止めようと手を伸ばす

 

 

 

そして、次の瞬間。ガルドの体は宙を舞っていた(・・・・・・・)

 

 

「………え?」

 

ズガン!!と音をたてながらガルドは店の外の道に叩きつけられる。相当勢いが強かったのだろう、道にはヒビが入っており、ピシピシと嫌な音をたて続けている。

全身に響く痛みと突然地面に叩きつけられたショックにガルドは混乱した。しかし暴れようにも体は動かず、言葉を発しようにも口が動かない。

 

「な、今のは……」

 

ジンが慌てたように久遠さんの顔を見た。

 

「違うわ。私はそんな命令までしていない」

「………私も。止めようとしたら吹っ飛んでた」

 

春日部さんも首を振る。

 

じゃあ、と三人の視線が一様に僕へと集中する。

…そして、僕の形相を見て息を飲んだ。

 

 

……怒りに身を任せて机を破壊することは構わない。惨めに吠え続けることも構わない。

 

 

だが、僕のコーヒーゼリーまで破壊しようとした罪は重いと思え。外道

 

 

 

*****

 

「さて、ガルドさん。私は貴方の上に誰が居ようと気にしません。それはきっとジン君も同じでしょう。だって彼の最終目標は、コミュニティを潰した"打倒魔王"だもの」

「……はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。今さらそんな脅しには屈しません」

「そういうこと。つまり貴方には破滅以外のどんな道も残されていないのよ」

 

僕のサイコキネシスによって道に縛り付けられているガルドは、久遠さんに見下され屈辱を味わされていた。周囲の目も合わさっていい気味である。

 

(く、くそ……!!こんな、こんなことがッ……ぐあ!?)

 

おっといけない。ついついサイコキネシスを強めてしまった。力加減が難しいんでな

 

先程まで驚いていた久遠さんだったが、地に這うガルドに幾らか溜飲が下がったらしい。それはそれは素晴らしい笑みでガルドに話を切り出した。

 

「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。貴方のような外道はズタボロになって己の罪に後悔しながら罰せられるべきよ。―――そこで皆に提案なのだけれど」

 

久遠さんの言わんとすることはわかる。

 

やれやれ、面倒事は本当に嫌いなのだが……

まあ、今回ばかりは僕もムカついている。この猫科動物を気が済むまでぶちのめしたい気分だ

 

 

だから、久遠さんのその提案。喜んで乗させてもらおう

 

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の"フォレス・ガロ"存続と"ノーネーム"の誇りと魂を賭けて、ね」

 

 

 




斉木が人前で超能力を使うことについてのフォローは後ほど

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