無敵の超能力者が異世界から来るそうですよ?   作:フォルテピアノ

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~前回のあらすじ~
キャーガルドサンカッコイー


そうだ、和装ロリに聞こう

「な、なんであの短時間に"フォレス・ガロ"のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」

「しかもゲームの日取りは明日!?」

「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「準備している時間もお金もありません!」

「一体どういう心算(つもり)があってのことです!」

「そして楠雄さんは何ちゃっかりとお土産をゲットしているのですか!!」

「聞いているのですか四人とも!!」

 

 

「「「(ムシャクシャしてやった。今は反省しています)」」」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

素晴らしきチームワークだ。黒ウサギが望んでいた協力プレイだろ?

 

(うう……こんな協力プレイは望んでおりません……)

 

今日何度目かとなる黒ウサギのガックリポーズを尻目に、十六夜はニヤニヤと笑い続けていた。

 

お前、無事だったんだな

 

「たりめーだろ。俺は世界の果てまで行ってきただけなんだからよ」

 

いっそ滝からI can flyしてくれればどんだけ良かったか

 

「I'll be back」

 

殴るぞ

 

「…まあ、別にいいじゃねえか、黒ウサギ。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この"契約書類(ギアスロール)"を見てください」

 

相変わらずニヤニヤする十六夜に、黒ウサギは契約書類を突き出して食ってかかる。奴はそれを取り上げると内容に一通り目を通し、口を開いた。

 

「"プレイヤーが勝利した場合、主権者(ホスト)は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する"ーーーまあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

十六夜の言う事はもっともである。

僕らのチップは"罪を黙認する"こと。ゲームに負ければ僕らはガルドのやった悪行について、永遠に告発することが出来なくなってしまうのだ。

 

……正直、僕でも無駄なゲームを仕掛けたと思っている。その気になればテレパシーやマインドコントロールなどを使った洗脳でガルドを大人しく裁かせる事が出来るからだ。

 

だが、それをした所でどうなる?

確かに穏便には片付くだろうが、それでは人質を取られたコミュニティ、そして久遠さん達の怒りが収まらない。

 

「人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出てくるでしょう。だけどそれには時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの」

 

彼女は表面上そう言っているが、内心はガルドへの怒りで満たされている。ボコボコにしないと気が済まない、と言うところだ

 

……確かに、これはエゴかもしれない。

けれど、人の感情だけはどうしようもないのだ

それは僕がよく知っている

 

「僕もガルドみたいな悪人を逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

ジンも久遠さんと同じ気持ちのようだ。

その様子を見て黒ウサギは諦めたように頷いた。

 

「はぁ〜……仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

そうだぞ黒ウサギ。このバカ(十六夜)を参加させる気は元々無いからな

 

「……なあ、なんで俺の呼び方がバカになってんだよ?」

 

さあな。数刻前のお前の行動に問いかけとけ

 

「だ、駄目ですよ!御三人様はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

そういうことじゃないぞ、黒ウサギ。

 

「へ?」

 

怪訝な顔をする黒ウサギに十六夜はこう言い放った

 

「いいか?この喧嘩は、コイツらが売った(・・・・・・・・)。そしてヤツらが買った(・・・・・・・)。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

「あら、分かってるじゃない」

「……。ああもう、好きにしてください」

 

黒ウサギはもう既に思考を放棄し、なるようになれと思ったのだった。

 

 

「んで、さっきから斉木が持ってる袋はなんなんだ?」

「こーひーぜりー?と言う名前のお菓子らしいわ。さっき居たカフェで店員さんから、器物損壊をしようとしたガルドを押さえてくれたお礼で貰ったの」

「へぇー、俺にも分けてくれよ」

 

貴様にはやらん!!!!!

 

 

**

 

「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎する為に素敵なお店を予約して色々とセッティングしていたのですけれども……不慮の事故続きで、今日はお流れとなってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」

「いいわよ。無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」

 

ビクッとウサ耳を反応させ固まる黒ウサギ。

やれやれ、本当に隠し通せると思っていたのだろうか。

…実際問題、十六夜にもバレてるようだし。もうちょっと頑張れよ

 

「も、申し訳ございません!皆さんを騙すのは気が引けたのですが……黒ウサギ達も必死だったのです」

 

ああ、知ってた。お前達が嘘をついていたことも。そして、それ程までしてコミュニティを救いたいと思っていたことも。

 

 

ガルドの件でジンの本心をしっかり見せて貰ったからな。……それに、異世界のコーヒーゼリーと巡り合わせて貰った礼もある。礼はキッチリと返すのが筋だ

 

 

……やれやれ。結局、僕は災難に首を突っ込む運命にあるらしい。

 

 

 

「……私達は怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは……あ、けど」

 

春日部さんが思い出した様にジンへ視線を向ける

 

「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来る事なら最低限の用意はさせてもらいます」

「そ、そんな大それた物じゃないよ。ただ私は……毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、と思っただけだから」

 

"お風呂付き"

 

その単語を聞いた瞬間、ジンの表情が思考共々ピシリ、と静止した。

 

あ、これアカンやつや

 

春日部さんも己の言った禁句に気づいたのか、気を利かせて前言撤回しようとする。

だが、それより先に黒ウサギが嬉々とした顔で膝に置いてあった小さな苗木を持ち上げた。

 

「それなら大丈夫です!十六夜さんがこんなに大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから!これで水を買う必要もなくなりますし、水路を復活させることもできます♪」

 

救世主だな

この言葉にジンを始めとした女性陣の顔が一斉に輝いた。

 

にしても…

十六夜、お前はどうやって水樹の苗を手に入れたんだ?

 

「ん?ああ。世界の果てに行ったらなんか五月蝿い蛇がいたもんだから適当にぶっ飛ばした」

 

 

……ツッコミを放棄してもいいかな?

 

 

**

 

「それじゃあ今日はコミュニティへ帰る?」

「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら"サウザンドアイズ"に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹の事もありますし」

 

黒ウサギから出た新しい名前に全員が首を傾げる

 

「"サウザンドアイズ"?コミュニティの名前か?」

「YES。"サウザンドアイズ"は特殊な"瞳"のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

「ギフトの鑑定というのは?」

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

力の…起源、か。

そんな事、考えたこともなかったな。

僕の超能力がギフトだとして、それに相応の起源があるとしたら。そしてその起源が分かるとしたら…

 

僕も含め、全員が拒否する理由も無かった。

 

*****

 

"サウザンドアイズ"の支店に向かう道中、僕らは街並みを眺めていた。

石造で整備された街道の脇には、桃色の花を咲かす街路樹が植えられている。

 

「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

「………今は秋だったとおもうけど」

 

ん?と全員が首を傾げる

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ?」

 

久遠さんがヘッドフォンを知らなかったりしたあたりで何と無く想像してはいたが……

 

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」

 

そんな会話をしている内にどうやら店に着いたらしい。

商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。あれが"サウザンドアイズ"の旗なのだろう。

店先には割烹着を着た女性店員がいて、日が暮れた為に看板を下げようとしている。

 

「まっ」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

……ストップをかけることすら出来なかったな。

流石は超大手コミュニティ。押し入る客への対応も隙がない。

 

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

それは店員として正しい対応な気がするのだが

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 

現在進行形でトラブルを起こしているウサギが何を言ってるのだろう

 

「なるほど、"箱庭の貴族"であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

「………う」

 

これは痛い所を突かれたな

 

「俺達は"ノーネーム"ってコミュニティなんだが」

「ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

旗印や名前が無ければ信用されない、と言うことか。世知辛い世の中だ

…こんなんでこの先大丈夫だろうか?

 

黒ウサギは万事休すといった様子で悔しそうな顔をしながら、小声で呟いた。

 

「その……あの……私達に、旗はありま」

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」

 

 

ナンカキタ

 

 

「きゃあーーー………!」

 

哀れ黒ウサギ。着物姿の白髪少女にフライングボディーアタックをかまされ、空中四回転半を決めた後に街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

流石は超大手コミュニティ。迷惑客への追い払いもアグレッシブ……という訳ではなさそうだな。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからにきまっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

悪代官様か

 

…にしてもこの少女、頭の中まで煩悩で溢れかえっているのだが。最早エロオヤジと形容しても良いくらいだ。

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

そう叫ぶと黒ウサギ、白夜叉様と呼んだ少女を無理やり引き剥がし、こっちの方へ投げ飛ばしてきた。

くるくると縦回転してきた脳内エロオヤジを僕はひょいと避け、それを十六夜が足で受け止める。

 

「てい」

「ゴバァ!お、おんしら、飛んできた初対面の美少女を優しく抱きとめる訳でもなく、避けた上に足で受け止めるとは何様だ!」

 

人間パンジャンドラムを避けたまでだが?

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

 

足は退けずにヤハハと笑いながら十六夜は自己紹介した。

 

ここで我に帰ったのか、久遠さんが戸惑いながら和装ロリに話しかける

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

……このエロオヤジ、めちゃくちゃ凄い人だった。

そしてセクハラの働き方も大物だ

 

**

 

その後、濡れた服に黒ウサギが嘆いたり、割烹着店員が不満な顔をしたり、白夜叉が再びセクハラを働こうとしたり色々あったが、なんとか店の中に入ることが出来た。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

そう言われ案内されたのは、中庭を通った先にある和室だった。独特の香の匂いが鼻を擽る

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きい美少女と認識しておいてくれ」

 

つまり黒ウサギたちの恩人ということか。自分から言っちゃうのはなんかあれだが、取り敢えず無粋だから黙っておこう。

 

「その外門、って何?」

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若い程都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者たちが住んでいるのです」

 

曰く、箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられているらしく、数字が若いほど強大な力を持つとのこと。

因みに四桁は名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境であるらしい。

 

その上空から見た図を黒ウサギが書いてくれたのだが…

 

「……超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

的確な例えをありがとう。俄然わかりやすくなった

またしてもガクリと肩を落とした黒ウサギを他所に、白夜叉は豪快に笑いながら頷いた。

 

「ふふ、うまいことを例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞ――――その水樹の持ち主などな」

 

白夜叉の視線の先には、十六夜がワンパンで撃破したらしい蛇から手に入れたとされる水樹の苗があった。

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

そうそう。蛇神を……蛇神!?

 

「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」

 

蛇とは聞いていたが……神とは……

僕ですら神と相手出来るかわからないというのに、こいつは……

 

「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ」

 

種の頂点が神格、ということだろうか?

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

お前が親玉か

 

 

「へえ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

 

あ、このバカ、案の定食いつきやがった。

 

「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者(フロアマスター)"だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだから」

 

頼むから白夜叉も張り合わないでくれ。バカの目がどんどん輝いていってるんだが

 

「そう……ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

「無論、そうなるのう」

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

…い、いつの間に春日部さんや久遠さんの目も輝いている。そしてこの流れは非常に嫌な予感が……

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

「ふふ、そうか。…して、そこの童はどうする?」

 

白夜叉がニコニコしながら傍観していた僕の方へ問いかける。

 

……いい加減、このパターンには飽きたからな?

 

にしても十六夜め、後で覚えておけよ

 

「ふふふ、ではそこの童も参加するということで……。――しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」

 

白夜叉はそう言って着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印が入ったカードを取り出すと、壮絶な笑みで言い放った

 

 

 

 

「おんしらが望むのは"挑戦"か―――もしくは"決闘"か?」

 

 

 




斉木の天敵に十六夜が追加されそうな今日この頃
そして次回、ついに斉木のギフトが明らかに・・・?(棒読み)
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