ニジガクの二次創作も書いていますが、μ'sの作品も書きたかったためこの度執筆しました。
よろしくお願いいたします!
議題0 音ノ木坂学院、生徒会役員
「――以上、これを最後の議事録として記す。三月一日、音ノ木坂学院前生徒会書記・
カタカタとキーボードを打ち込み、Enterキーを静かに押下する。
そして……保存。
「――終わり、か」
長々と纏めてきた議事録も今日で終わり……。
俺はノートパソコンを閉じる。
それと同時に、俺の頭の中に様々な思い出が過る。
俺の三年間の高校生活。
友人たちとの生活。
生徒会書記として活動していた日々。
そしてなにより――。
そのすべてがまるで昨日起こった出来事かのように鮮明に思い出される。
「充実した……よなぁ」
俺は椅子の背もたれにダラっと寄りかかる。
――楽しかった。
入学した当時は程々の高校生活を送るものだと思っていた。
程々に通学して、程々に友達を作って、程々に遊んで……。
程々に勉強して運動して、程々に卒業して……なんて。
そんな程々な予想。
しかし今、振り返ってみれば程々なんてものではなく――。
とても……充実したと言える高校生活だった。
「それも……今日で終わりか」
生徒会室に一人座る俺は、窓の外を眺める。
外では桜の花が舞い散り、桃色一色の景色が今日というめでたい日を祝っていた。
今日は……三月一日。
――卒業式。
俺たち三年生は今日……卒業する。
同級生たちは校庭や教室で高校最後の時間を名残惜しみながら過ごすのだろう。
俺は……というと。
「……やっぱ、懐かしいな。ここは」
生徒会室を見回す。
この学院で思い出深い場所は沢山ある。
教室はもちろん、中庭だったり……
沢山あるけれど……やはり俺は、この生徒会室が思い出深かった。
始めは半ば強制的にやらされた生徒会だったけど……。
今思えば、生徒会に入って良かったと強く思う。
なぜならば。
生徒会に入ったおかげで、俺は彼女たちと出会えたのだから――。
「彼女たち……か」
廃校の危機に瀕していたこの音ノ木坂学院を救った九人の女性生徒。
この学院に……いや、日本中に奇跡を巻き起こした九人の女神。
俺は……そんな奇跡を目の前で見てきた。
例え彼女たちが全員この学院から卒業して、いつしか忘れられてしまっても。
この学院から彼女たちが残した奇跡の証明が無くなってしまっても……。
俺だけは……決して忘れない。
彼女たちと過ごした……この奇跡の一年間を。
「……よし」
俺は椅子にしっかり座り直し、テーブルに置いているノートパソコンを再び開き、一つのファイルをダブルクリック。
ファイル名は――。
『音ノ木坂学院 生徒会議事録』
そこには、俺がこの一年、学院で経験したすべてのことを記している。
俺は最初のページを開き、一度深く深呼吸をした。
今日が最後だからこそ……改めて全部話そうと思う。
俺、篁昴の物語を――。
そして。
彼女たちが――。
μ'sが残した……奇跡の物語を。
# # #
『本日の議題:部活動の予算について。
部活動として相応しくないもの、あるいはしっかり活動しているかどうか怪しいものなどなど、細かい部分を見れば考えるべき部分は多くある。
そういった部分の予算は削減するべきなのではないか?
削減した分を他の部活動に回すべきなのではないか?
会長:生徒会役員として一つ一つ部活動を回り改めてチェックするべき。
副会長:それも一つの方法としてはアリだが、時間がかかるし確実性も欠けるかもしれない。
会長:活動報告書のようなものを求めても嘘を書く可能性はある。
副会長:まずはその方法で試してみて、上手くいかないようなら直接出向いても良いのではないか。
生徒会役員:各部活動の部長を集めて会議は?
会長:それもアリ。
……。
いかん。眠くなってきた。キーボード打つ手が止まってしまった。なんだこの退屈な時間は。
この感じだと会議が長引きそうだ。面倒くさい。
……あ、やばい。会長と目があった。欠伸したのバレた。めっちゃ睨まれた。
黙っていればめちゃめちゃ美人なんだけどなぁあの人。
実際は怖いし……怖いし、恐ろしいし……。
うわ、またこっち見てきた。絶対俺が失礼なこと考えているのバレたわ。
どうせ会議の後怒られるんだろうなぁ……などと思いつつ、本日の議事録としよう。
結論:生徒会長は怖い。
議事録担当:篁昴』
# # #
――会議後。
音ノ木坂学院生徒会長、
うーむ……俺の議事録レベルもまだまだだな。どうすればもっと意識高い系みたいな文章を書きあげられるのだろうか。
あれか? 横文字とか沢山使えばいいのだろうか?
えっと……アジェンダがレジュメでパーフェクトなリスケを……。うん、全然意味分からん。
さては、俺のレベルをもっと高めてくれるアドバイスのために俺は今会長の前に立たされているのだろうか。
さすが我らが会長、優しい。
「……はぁ」
うん、違うよね。知ってた。
会長は俺の議事録と読み上げると同時に盛大な溜息をついた。
「……篁君」
「なんでしょう会長」
「なぜあなたはいつもふざけた議事録を提出するのよ!」
会長は手に持っていたノートパソコンを俺に向ける。
まぁまぁ、そんなに怒るとその美しい顔が台無しですよ会長。
絢瀬絵里はロシア人のクォーターのようで、綺麗な金髪に女子としては長身、スタイル抜群とそれはもう日本人離れの容姿をしている。
しかしその実態は鬼、悪魔、鉄の生徒会長。特に俺にめっちゃ厳しいし。
なんなの? 俺のこと好きなの?
「……気持ち悪い」
「ちょっと、勝手に人の思考を読んで勝手にドン引きするのやめてもらいます?」
「真面目に聞きなさい」
「はいごめんなさい」
ギロリと睨まれたことで俺の背筋が伸びた。
……マジで怖いわこの人。
怖くて目を合わせられない俺は会長から目を逸らして言い訳タイムを始める。
「いやほら、今日の会議いつもより雰囲気が重めだったので……。せめて議事録で癒しを……と思いまして……ね?」
「……は?」
こわっ。
会長は不機嫌そうに指先でテーブルをトントンと叩く。
「あなた、いつから生徒会にいるのかしら?」
「……去年からですね」
「役職は?」
「ずっと書記ですね、はい」
「だったら……どうしてまともな議事録を一度もあげてこないのよ! それに最後の方はただの私に対する悪口じゃない!」
「なんなんですか!? 俺が悪いんですか!? もうやってられませんよ! 帰らせていただきます!」
「その逆ギレした振りをして帰ろうとするのやめなさい!」
会長は踵を返そうとした俺の腕を掴む。
やべぇバレてた。さすがは会長。欺けないぜ。
俺の秘技、逆ギレすればどさくさに紛れて帰れるんじゃないか作戦が失敗するとは……。
反省する気ゼロの俺と、そんな俺に呆れて再び大きなため息をつく会長。
なんかもう……俺絶対この人に嫌われてるよね。それだけは分かるわ。
「まぁまぁエリチ」
この状況から逃げ出す手段を考えていると、救いの手が差し伸べられる。
生徒会室に残っている最後の一人で、会長の隣に座っていた女子生徒が口を開く。
生徒会副会長、
紫がかった長い髪を首の後ろで二つに束ね、大人っぽい雰囲気を醸し出す女子。
特にその……具体的にどことは言わないが二つの夢と希望が発育の良さを証明していた。
いや、別にどことか言ってないからね? 変態じゃないからね? 昴君は清純派だから。
「……篁くん、どこ見てるん?」
エセ関西弁を話し、ジトっと俺を見る東條。
俺はかっこつけるようにして前髪をかきあげる。
「幸せな未来を……夢見ていた」
「はいはい、そういうのは大丈夫やで」
「……うす」
華麗にスルーである。
生徒会の仲間……俺がどういう人間かよく分かってやがる。
東條は俺から視線を外し会長へと目を向ける。
「篁くん、いつも会議後に改めてちゃんとした議事録をあげてくれるやん? なんだかんだで仕事はちゃんとやってくれるの分かってるやろ?」
「そうそう。さすがは東條! いつもありがと――」
「そうやってすぐ調子に乗らないの」
東條は俺を見てビシッと指差す。
「はいごめんなさい」
うーむ……なんか俺……この二人にはいつも謝ってばかりではないか?
気のせい……ということにしておこう。うん。
会長は東條の言葉にまだ反論したそうではあったが、「まったく……」と口を閉じた。
そしてその視線が再度俺へと向く。
「それより篁君」
「なんでしょう」
「凄く今更なのだけど……」
会長は俺と東條を交互に見る。
一体どうしたのだろうか?
「どうして希には普通に接するのに……私には敬語なのかしら?」
「あー……」
本当に今更だな。
俺と会長の付き合いも結構長いぞ?
「私たち同じ三年生よね? ましてや私とあなたは同じクラスよね?」
「俺の記憶が正しければそうなりますね」
「なのにどうして敬語なのよ」
会長は少し不機嫌そうに言った。
確かに会長の言う通り、俺と会長、そして東條は皆同じ三年生である。
そして俺と会長に関してはクラスも一緒である。
東條に対しては普通にタメ口なのに対して、会長には敬語。
それに対しては会長の疑問もごもっともだろう。
そんな俺たちの会話を聞いて東條がニヤリと笑った。
「エリチは篁くんから距離が置かれているみたいで寂しいんやねぇ?」
「えっ!? ちょ、ちょっと希なに変なことを――!」
へぇ?
俺も東條と同様にニヤリと笑う。
「なんですか会長ー! 初めからそういってくれれば良かったのに。まったくもう、かわいい――」
「は?」
「ちょっと反応違いすぎません!? どうして俺が言ったら真顔になるんですか!」
東條が言ったら少し焦った感じだったのに、俺が言ったら真顔である。
というかその『は?』って言うのやめて。本当に怖いから。
「いや……まぁ、アレですよ。なんか会長に対しては敬語がしっくりくるんですよ」
「しっくりって……どういうことよ?」
「しっくりはしっくりですよ。別に会長が嫌いだからとか、会長と距離を置きたいから……とかそういう理由じゃないんで」
「よく分からないわね……。まぁもう今更だから別にいいけれど……」
本当はちゃんとした理由があるのだが……正直今は言えない。
恥ずかしいし……色々あるのだ。
とりあえず今は会長も納得してくれたし良しとしよう。
「ふふっ、よかったね? エリチ」
「もう……茶化さないで希」
普段はクールで近寄りがたい雰囲気マックスの会長だけど、東條に対して柔らかくなる。
さすがは親友同士……と言ったところだろうか。
美少女同士の絡み……うむ、尊い。
なんて考えていると――。
「さて……と」
パン、と手を打つ会長。
その音で俺と東條の視線が会長へと向いた。
「そろそろ帰りましょうか」
壁に掛けられている時計を見て時刻を確認する。
おお……話し込んでいたから全然気が付かなかった。
そろそろ帰る時間だな。
俺たちは会長の言葉に頷いた。
# # #
「それにしても……」
俺たち三人は教室に戻るために廊下を歩いていた。
同じクラスだから俺と会長は一緒で、東條は隣のクラスだから結局皆道は一緒である。
真ん中に東條、左右に俺と会長という並びで歩いていた。
現在は放課後ということもあり校内に残っている生徒は少ない。
勉強をするために残っていたり、文化部だから残っていたりと……どちらにしても校内の生徒は少数である。
――とはいったものの。
「改めて……生徒数が少なくなったって感じるよなぁ」
歩きながら俺は言った。
「……そうね」
「……うん」
二人も寂しそうに頷く。
ここ、音乃木坂高学院はここ数年生徒数の減少に悩まされている。
俺が入学したころにはもう減少が進んでいたようで、俺たち三年生は三クラス。
二年生はニクラス。そして……今年入学してきた一年生に至っては……一クラスしかないのだ。
そのクラス数が生徒数の減少をなによりも証拠づけている。
一年生のころは活気があった校内も……気が付けば寂しい雰囲気へと変化していた。
仕方のないことなのだが……やはり改めて思うと寂しく感じるものである。
「なんとかならないものかね」
「……なんとかしたいわよ私も」
悔しさを感じる会長の呟き。
会長はこの学院が大好きなのだ。
だからこそ生徒会長になって、この学院をより良くするために日々努力をしている。
しかし……それが良い結果につながっているのかと言えば……正直なんとも言えないだろう。
去年から生徒を増やすためになにかできることを考えていたが……所詮一生徒の俺たちには限界がある。
結局大したことはできずに、現状に繋がってしまっているのだ。
「どうやったら生徒が増えるんやろうねぇ……」
「やっぱりここは学院一のイケメンである俺が――」
「「それはない」」
「……」
まったく同じタイミングで俺の言葉を遮る二人。
ここ、音ノ木坂学院は共学ではあるものの男女の比率に偏りがある。
分かりやすく言えば、男子二割の女子八割……といったところだろうか。
圧倒的に女子が多いということは男子生の母数が少ない。
特にクラス数が少ない一、二年生には男子がそれはもう絶望的に少ない。合わせて数えるくらいしかいないのではないだろうか。
と、いうことはつまり――。
俺が学院ナンバーワンのイケメンになれる日もそう遠くないということだな!
……え、違うって? うん違うね。
「まぁ……とりあえず、現状を維持しつつ上手いことをやっていくしかないな。焦っても仕方ないだろ」
「そう……なのかしら」
「学院を救うヒーローが現れてくれたら面白いんやけどね」
冗談っぽく笑う東條。
しかし会長は俺たち違ってその表情は曇っていた。
会長は俺たち以上に、生徒数減少について深刻に受け止めている。
言い出したのは俺ではあるが……この話題を出さないほうが良かったかもしれないな。
それを察した東條が、冗談っぽく茶化すことで話題を変えようとしてくれたのだろう。
さすがは東條だな。
だったら俺も便乗して――。
「ふっ、やはりこの女子人気ナンバーワンのこの俺が――」
『……』
「……。な、ナンバーワンのこの俺が……」
『……』
無視!
これは芸術的な素晴らしい無視である。
ここまで綺麗な無視はなかなか見ないだろう。
美少女二人に無視されるという悲しさからその場に立ち尽くす俺。
しかし二人はそんな俺を気にせず、スタスタと歩いて行った。
「……まったく、もう」
俺が付いて来ないことにため息をつく会長。
二人は足を止めると、同時に俺へと振り向いた。
「早くしなさい。置いていくわよ?」
「ほら、行こ? 篁くん?」
会長は呆れ顔で。
東條は笑顔で。
二人は俺が追い付くのを待っていた。
廊下に差し込む夕日が、彼女たちをより魅力的に映し出す。
「……おう」
俺は小さ笑い再び歩き出す。
先ほどは人気ナンバーワンなんて冗談を言ったけれど――。
この学院の美少女トップツーは――。
誰よりも魅力的な二人は――。
「間違いなく……お前らだよ」
誰よりも真面目で、誰よりも学院が大好きで――。
誰よりも優しくて、誰よりも周りをよく見ていて――。
そんな二人とこうして同じ時間を過ごすことが……。
いつしか俺の中で、とても心地の良い楽しいものへと変わっていた。
「なにか言ったかしら?」
俺にはめちゃくちゃ厳しいけど……!
もう少しだけ優しくしてほしいけど……!
でも……まぁ、それが俺たちらしいといえばらしい……か。
「いえ、なにも言ってませんよ! さぁ行きますか!」
俺たちは三人並んで歩きだす。
容姿端麗頭脳明晰。生徒会長、綾瀬絵里。
正にみんなのママ。副会長、東條希。
やる気ゼロモチベゼロの問題児。書記、篁昴。
そんな……生徒会三年生組。
後にこの学院に最大の危機が訪れることなど知らずに――。
俺は、俺たちは……今日も生徒会として活動する。
# # #
『――いうわけで、今日もいつもと同じ生徒会活動だった。
それにしても会長がタメ口か敬語かなんて気にしていたなんて、正直意外だった。
それも不機嫌そうに言うものだから、案外思っていた以上に引っかかっていたのかもしれない。
会長も可愛らしいところもあるなぁ……なんて思った。本人には絶対に言えないけど。
そして、生徒数の減少問題……。
理由はないけど……俺自身よく分からないけど……。
なぜか嫌な予感がするのだ。
もしかして……この感覚が東條がよく言うスピリチュアルパワーというものだろうか?
なんにせよ、俺はなんとなく思った。
もしかしたら今後……俺たちに厳しい試練が訪れるのかもしれない……と。
――確証はないけど。
なんて、匂わせみたいなことを書きつつ、本日の議事録とする。
とにかく明日もまた頑張っていこう』
×月〇日
生徒会書記:篁昴』