蝕む思いは年の瀬を越える   作:水瓶トロワ

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#3

 

 シチューは良い。

 短時間で出来、野菜も暖も取ることが出来る。

 それにミルク、水、チーズ。スープも使う食材によって顔を変える。

 ということで今日の昼食はシチューだった。

 

 別に手を抜いたわけではない。

 夕食はニューイヤーバーティーなのでほどほどに済ませようと料理担当のニュルンベルクが考え抜いた故の判断だ。

 みんなそれを理解しているのか、苦情は全くなかった。

 

 そして夜は待ちに待ったニューイヤーパーティー。

 食卓に並べれるだけ並べられた料理たち。ニュルンベルクの得意料理であるブロットシェンも並んでいる。

 

 

「ほとんどがクリスマスの残りものですけどね。ごめんなさい」

「そんなことないよ。ニュルンベルクちゃん、ありがとう」

 

 

 グラスを片手に談笑するライプツィヒ級の二人。

 その一方、指揮官は子供のツェッペリンちゃんと共に肉を頬張っていた。

 その食べ方は品があるとは言いにくく、二人は少し呆れる。

 

 

「うまい! うまい!」

「わっしょ――」

「指揮官さん、それ以上は禁句ですよ」

 

 

 ニュルンベルクは指揮官をたしなめる一方、ライプツィヒは指揮官の真似をするツェッペリンちゃんの口回りを拭いたりサポートをしていた。

 

 結局、料理が多いだけでいつもとあまり変わりない晩餐だ。

 艦船三人はそれで十分なのだが、デザートタイムに指揮官はモンブランを頬張りながらふと愚痴を漏らす。

 

 

「しかしクリスマスの時もそうだけど、親戚や友人誘ったんだけど誰も来てくれないんだよな~。挙句、返信もなし。私ってもしかして人望ない?」

 

 

 その一言にライプツィヒとニュルンベルクの動きが硬くなる。

 急に不穏になる部屋の空気に流石にツェッペリンちゃんのスプーンも動きを止めた。

 

 

「ライプツィヒ……?」

 

 

 ツェッペリンちゃんはライプツィヒに問いかける。するとライプツィヒは優しく笑った。

 

 

「ううん、なんでもないよ」

 

 

 それでもその笑みはどこか寂しく見え、未だ少女の不安は拭えない。

 その不安を察したのか。今度はニュルンベルクがいつもの調子で指揮官に悪態をつく。

 

 

「もー、そんなことないですよ。これも毎回言ってますけど当日に届くように送るのではなく、あらかじめ――」

「はいはい、こんな時に小言言ってお疲れ様ですー」

 

 

 その中で唯一態度を変えない指揮官に違和感を覚える。

 

 

「むー!」

「ふふっ」

 

 

 だが二人は先程の雰囲気はどこ吹く風か。すっかり普段の調子に戻っていた。

 

 なら我も――。ツェッペリンちゃんは息を呑む。

 

 

「でも我はこうやって四人でパーティーをするの好きだぞ! 変に気を使わないで済むしな!」

 

 

 なら我も笑おう。皆が笑うなら。

 

 

「来年もこうできたらいいな! 再来年も、その先も!」

 

 

 なら我は未来を語ろう。過去のしがらみで曇るなら。

 

 

「……そうだね。来年も再来年も、ね」

 

 

 指揮官は嬉しそうだが、少女からはやはりどこか寂しそうに見えた。

 その態度に少し疑問を抱いたが、少女の脳をフル回転させてある答えに辿り着き、自己解決する。

 

 

「あっ、でもそのうち指揮官の家族もここに加わるのか? というか、もう想い人がいるとか?」

「ブッ!」

 

 

 無論、それは考え過ぎと言うものであり、それを聞き指揮官は思わず飲み物を吹き出す。

 

 

「ちょっ、指揮官さん。汚いですよ!」

 

 

 真横にいたニュルンベルクは指揮官をたしなめるが、気持ちはくすくす笑うライプツィヒと同じだろう。

 

 

「いや、だってさぁ!」

 

 

 またコントを始める二人。その傍ら、ライプツィヒはツェッペリンちゃんの目線に合うよう膝を折り、話しかける。

 

 

「そうだね。私やニュルンベルクちゃんもいずれ家族を持つかもしれない。ツェッペリンちゃんもそう。もしかするとこの軍港を出ていくかもしれない」

「え……」

 

 

 よもやそのような方向に会話が進むとは思わなかったツェッペリンちゃんの表情はまた曇りだす。

 子供には少し難しく、厳しい話をしていることは理解している。

 「でもそれは幸せの一つでもある」なんてきっと理解してくれないだろう。

 

 どう話せばよいのだろうか。彼女もまた表情を曇らせる。

 

 

「でもね。家族はどれだけ離れてても一緒だと思えば一緒なんだよ。それだけは忘れないでね」

 

 

 そこにニュルンベルクが救いの手を入れる。

 その言葉を聞き、ライプツィヒはたちまちツェッペリンちゃん――ではなく指揮官の顔を見た。

 

 

「……うん!」

 

 

 その約束にツェッペリンちゃんは大きく頷く。

 その子供らしい可愛い仕草に指揮官も笑みを絶やさないでいた。

 

 それを見て、ライプツィヒはほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「やっぱ家族は良いな。久しぶりに両親に会いたくなってきたよ」

「家族って……ここには女性しかいませんよ」

 

 

 ニュルンベルクのツッコミに指揮官の表情が曇る。

 無論、冗談でだ。先程のような深刻さはない。

 

 こうして四人は何事もなく新年を迎えた。

 

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