地球在住の協力者も楽じゃない   作:グリグリ

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感想ありがとうございます!大事に読ませてもらっています。
ギャラファイのタルタロス、味方なら有能だけど敵だと厄介という例ですね。そして星ぶっぱはアカン…。


買い物

2、3日置きに来るジジイからの報告では、本家の倉庫の片付けはなかなか終わらないようだ。どんだけ溜め込んでたんだろう…。あんまり酷いなら、整理するのに人を雇うという手もある、とは伝えておいた。

こっちはたまたま父親の休暇に同行して訪れた都市で、毎年開催されるという蚤の市に行った。

母も一緒に来たのだが、出店している知り合いに「代打お願い!」と担がれていった。……不安だ。

父親に肩車されながら、通路の左右にある数々の店先で玉石混淆の品々を見ている。

正直、目も脳も何個あっても足りない。視界全部の情報が欲しい。

売る側も異星人なら買う側も異星人が多い。地球人のようなタイプは見ている範囲ではいない。

箱一杯の黒ずんだ宝飾品、家具、宝石の原石、何だか分からない機械の部品、エリアによっては宇宙船を丸ごと売っているところもある。

布製品、特に絹は物と保存状態にもよるが、100年から頑張っても150年くらいが限度と言われている。博物館に保存される文化財クラスなら徹底して管理するからもっと長期間の保存は可能だが、場合によっては持ち上げただけで崩れるので修理できないこともある。着ようとして破いたりとか、ね。

それはそれで古い衣装には歴史的な価値があるから箪笥に入れたままにしておくが、嫁入りで箪笥を何棹も担いでくるというのは財力を見せる分かりやすいパフォーマンスだ。あとは食卓外交も材料を揃えられる財力と料理人の技術力、柔軟な発想力を見る。要は()()()()()()()()()()()

「100年縛りはやっぱキツいかもな…」

だが!裁縫道具ならチャンスはある!金箔家紋ギラギラタイプじゃないのがいいです!!

骨董市は直感と経験磨きにもいい。

しかしすごい人混みだ。交通整理しようにも整理する人員が足りていない。歩いていたら父親と確実にはぐれていたな。

近くでは、お釣りを誤魔化したしてないで店主と出前の配達人が揉めていたが、父親が話を聞いて今日の主要星間為替レートを教え、誤魔化しなしの値段とお釣りだと証明した。

主要星間為替レートは、数々の星の固有貨幣の価値が極端に上下しないようにコントロールしている。この制度が発足する前は酷い状態だったと、少し前に父親が新聞を読みながら教えてくれた。

1週間分の為替レートを暗記、おまけに僅かな訛りや言葉の抑揚で出身星まで言い当てて言語も使い分けて対応した父親の株がどんどこ上がる上がる。

「父さん、かっこいい!」

「いやぁ、照れるな」

「いやぁ、旦那、ありがとうな。お礼にどれか1つ割り引きするよ!」

出店している異星人に促されて、店先の商品をざっと眺める。

黒ずんだ銀の土台に色石が埋め込まれたブローチ、ルビーにしては色が濃すぎる指輪、不自然なまでにクラックのないエメラルドのネックレス、色艶の悪い不揃いの真珠。

「お邪魔しましたー。父さん、行こう」

「そうだね」

「待ってー!ごめんて!試すような真似してほんとごめん!」

僕の足元に店主がスライディング土下座してきたのを、父親に抱き上げられて間一髪避けた。

「わたしは鉱石系は門外漢ですが、もう少し『丁寧に勉強』したほうがいいですよ。あまりにあからさまだ」

土下座を起こすふりして父親がそっと耳打ちしたが、完全に店主から力が抜けてぐにゃぐにゃになっている。適当に道の端に転がして移動させた。通行人の邪魔はダメだよ。

 

「ああも分かりやすいと、仕事も楽だけどね」

「ねー」

もしかしたらブローチ「は」少しは値段ついたかもしれない。ただ、あの色石が本物なら、という但し書き付き。

しばらく歩いた先で、薔薇の絵付けのティーセットを見た。

「あ、ティーセット10客のフルセット。しかも欠品なし、砂糖壺とトングに…父さん、これ何だっけ割るやつ」

「工房どこだ?…猫?それはクルミ割りだよ。わぁ、隣にブドウ用の鋏まである」

「猫?…確かに威嚇してる猫だね」

「それは正真正銘の獅子印ですよ」

声から察するに壮年らしいメフィラス星人の口から出た単語に、薔薇の絵付けと金の縁取りが美しいカップをひっくり返して印を見ていた父親と顔を見合せた。

獅子の印を製品に冠する工房は獅子座のL77星でしか製造されない。おまけに審査も厳しいと聞いている。王室御用達(ロイヤルワラント)は伊達じゃない。

本物なら目玉が飛び出る価格だし、普通はこういうところには出てこないが…素人なら十把一絡げで出すかもな。

仮に本物なら、下賜や譲渡を証明できるような手紙や書類の開示を求める?「買わない癖に?」と却下される可能性の方が90パーセントはかたい。

ついでに証明書類付きなら値段もえげつない高値になる。

宇宙船の客室で父親から初心者用にと手渡された薄いパンフレットには、獅子は確かに掲載されていた。

緊張して冷や汗が滲む。盗品だったらどうしよう。

「どうしました?汗かいて。まあ、坊やのお小遣いを考えたら汗出ますよね。存分に見て経験になさい」

冷や汗を緊張からのだと勘違いしているメフィラス星人が鷹揚な仕草で中へ入るように勧めてきたので、これ幸いと居座る。父親は静かに姿を消しているが、目の前のメフィラス星人は気づいた様子がない。本当に気づいていないのか、気づいていて無視しているのか。

 

獅子揃えから見るとそこそこの品を見ながら、ダメ元で聞いてみた。

「おじさん、絹糸は扱ってませんか?」

「絹糸?あんな脆い繊維は……いえ、いますね。しかも山のように溜め込んで」

「山?」

「山です。呼びますか?今日は来ているはずですよ。ああ、忘れるところでした。扱うには裁縫道具も必要ですね。持って来させます」

……藪をつついてもいないのに上からアナコンダが降ってきた場合はどうしたらいいんだ。骨をバキバキ砕かれた上で丸飲みされるか、こっちが一撃入れられるか。

 

「ボス、持って来やした」

「ご苦労さま。こちらのお若い方が見たいそうです」

若いマグマ星人が、艶の美しい絹糸の山をレッドキングとブラックキングに背負わせてきた。マジで大量だ。

「あ゛?…おめぇか坊主。ほれよ」

木目が美しいよく使い込んである裁縫箱を、見た目を裏切る丁寧さで置いた。…ん?何かこのマグマ星人おかしい。

「は、拝見します」

「おう」

目測でだが、高さと幅が約30センチメートル、奥行きが20センチメートルくらい。引き出しは3段だが、一番上の蓋を開けて物を収納できるので4段と考える。

引き出しはつかえる事なくスムーズに開け閉めできる。

中には縫い針とまち針が針が刺さっている針山をはじめ、裁ち鋏と小型の鋏、指貫などの裁縫の必需品が入っている。後は可愛らしい小花柄の布でやりかけの縫い物も入っていた。

「中の品はどうしますか?お返しします?」

「いらね、全部持ってけよ」

売り込むでもなく、こっちに背中を向けてつっけんどんな対応。ちょっとつついてみるか。

「この裁縫箱、()()()()のお母さんの物ですか?」

「うっせぇな!売るって言ってるだろ!」

「糸は頂きます。でも裁縫箱は買えません」

怒りに目を吊り上げたマグマ星人からガチめのビンタを食らったが、ふらつくのを耐えた。

 

山のような絹糸を下ろしてやると、ずっとオロオロしていたレッドキングとブラックキングはあのマグマ星人を追いかけていった。

「あの子の性別、どうして分かったんです?見抜いたのはあなたが初めてですよ」

本当に初めてなんだろうか?メフィラス星人の声の感じは完全に面白がっている。

「企業秘密」

「おや手強い。ではお詫びにあの獅子揃えを」

獅子揃え以外の品がいいです。あの青い香水瓶とか」

「げ!?ぐぬぬ…ええい持ってけドロボー!」

「どうもー」

緩衝材で丁寧に香水瓶を包んで店を出る。ざっと見た限り、糸は予想以上にいい状態だ。会場のドローンサービスで出入口まで運んでもらったら、後は圧縮宅配サービスにお任せ。

落ち着いたら頬が痛くなってきた…。飲み物買おう。

 

と一筋縄で行けば良かったが、父親の通報で駆けつけた警察官数人とメフィラス星人の取っ組み合いを観戦していた。決め技は警察官のブレーンバスター。

勿論、両親には「危ないことをして!」と怒られた。

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