うちの前に墜落したレッド族が目を覚ました、という連絡が、シルバー族のエルから来た。
病院前で待ち合わせて病室に行ったが、行きがてらに容体を聞いたところ「風邪をひいたようですね」と返ってきた。
症状は咳、発熱、関節の痛み。症状的にはインフルエンザだが、実際に何のウイルスに感染しているかは調べてみないと分からないだろう。
そもそも、何で大体の怪我が光線照射で治るんだ…?元人間としてはどういう過程で傷が治るのか見てみたいが、まあそんな機会はない。あるなら現場で照射される側だな。
予防学、疫学、病理学は学問としてはあるが、実際にはどれほど機能しているのか疑問だ。
昔、両親が家の設計図を見せてくれて、僕にも意見を求めたが予想を盛大に裏切った。
何せ、「家入ってすぐのところに洗面所があるといいと思う!」だし。
幸い、僕はアレルギーとか花粉症とは無縁の体だからそこまで神経質になる必要は…ある!
地球に限らず、他の惑星に赴いた際に、擬態か同化するにしろ、生活習慣として身につけておかないと風邪ひいてボコボコにされましたなんていったら面目が立たない。あと単純にボロが出る。些細なとこからバレる時はバレるんだよ。逆にバラして情報の価値を0にするというカウンターはあるが、あれはタイミングが難しい。
逆の場合もある。こっちから持ち込んだ細菌で現地がパンデミックとか。
因みに今は分類が「CBRNE」、シーバーンと読む。以前は「NBC」とか表記されていた。
化学系、生物系、放射性物質、核、爆発物で分類するなら生物系。
今はこっちが攻撃されてる方だが。
「だからあの患者は隔離するべきだ!」
「お言葉ですがドクター、隔離する理由を教えてください!」
……近いこと考える人がいたらしい。
猫でいうならシャーシャー威嚇しあっている片方、ブルー族がドクター、レッド族が看護師さん。
何かこういう風に巻き込まれるパターンが多くなってきたな。顔出すのも怖いし、風邪もらっても大変なので、トイレの窓から逃げた。
ジジイから貰った鋼糸の手袋は隕石騒動で荒っぽくバラしたので、新しいものに新調するつもりで科技局に依頼を出した。馬鹿正直にも。
当然施設に張っていたスノウさん達に捕まり、使い心地や補強すべき箇所など現場発の貴重なフィードバック、即納品してほしい数、今後予想される購入数、発案者として購入金額から何割が僕の財布に入るか、という書類が積まれた。あと名前も変えたい!
「発案も何も、あれは人から貰ったもので。こういう話ならせめて親を呼んでください!僕未成年です!」
「そう言うと思って隣の部屋にいる」
そういう時ばっかり早いんだから!!
金融系の父親が間に入ってくれたので、書類に不備がないかチェックされている間にジジイに連絡する。
≪別にいいぞ。小遣いにせえ≫
≪あれ小遣いって額じゃないよ!?それに僕のパテント?って事になってるけど、先に凍結した計画の期限とかないの?≫
≪金はあって困るもんじゃない。それに期限?とっくに切れてるさ。次に使う材料はあちこちにサンプル回しても足りるくらいに集まった。後で狩場は教えてやる。そういえば知っているとは思うがあのワイヤー、あれ1本きりじゃなくあと9本、台座の中にあるからな。次の素材はもっと難物だぞ?ヒヒヒ≫
10本同時に操る?…いや、それよりジジイはマジで僕に何させたいの?あと次の素材!?これ以上にヤバいブツになるの勘弁して!
「書類に不備はないですね。では手続きを」
「ありがとうございます!」
紐つけられた。
「非力な私たち女性隊員も、とても助かってる」
ベルさんを筆頭にあの現場で頑張っていた女性隊員達だ。確かに危険な仕事だからね。
「いえ、僕も助かりました。気配りが細やかで安心できるし、文章まとめるのも早くて」
「ジェイド、もしかしてお前、年上好き?」
病院で出し抜かれた事は特に気にしていないらしいエルにそう言われたが、「違います。仕事の出来る人を尊敬してます!」と断言した。
ついでにエルはベルさんに足の小指を蹴り抜かれた。
ジジイからのハードルが上がった!