リトラって雌雄判別ついたか疑問なので、当作は雌雄(ほぼ)同体とさせて頂きます。勿論捏造です。
クジャク綺麗ですよ。5月あたりがおすすめ。
バイオハザードテロを警戒した医師により2週間隔離された、うちの前に墜落してきたレッド族。
無事に退院して、うちにお菓子を届けに来て、挨拶して帰った。
……と、ベルさんから連絡をもらった。ついでに、墜落したレッド族の名前は「ベルグ」、遠い従弟だという事も教えてもらった。
で、何故伝聞形式なのかというと、今は保養にアニマル星に来ている。
数年に1回ある定期検診で、ストレスチェックにがっつり引っ掛かった。検査した人が僕の顔とカルテのストレス値を二度見したのは覚えている。ついでに僕も自分のストレス値に驚いたが思い返せばトラブル続きだったし、仕方ない数値だ。
お世話になったスノウさん以下メンバー分の30組だけでも、手袋を自分で組み立てて渡せたのでいいや。
怪我や生息地の問題、密猟などから保護した怪獣と現地生息の怪獣がいるアニマル星。そこの共同で管理人をしている人の中に母方の叔父がいるそうで、迎えに来てくれると聞いている。
「ジェイドかい?すっかり大きくなったな!」
「エラ叔父さん!お世話になります!」
やや垂れ目気味な目と、オーバーニーの銀ブーツが母親とよく似ている。
「リン姉さんから連絡は受けたが……クマが酷いな」
子供の顔についてるもんじゃないよな、ごめんな叔父さん。
「ゲストルームがあるから、荷物を置いておいで」
小さなバンガローは、平屋でベランダ付きだ。窓からは草原と森、遠くに保護された怪獣たちが見える。
部屋は小さく家具も少ないが、クリスタルタウンの家とは違い、素朴な木目が落ち着きを与えてくれる。
木はいいよね。落ち着く。……将来、どこかに店もったらプライベート区画は素朴にまとめよう。
餌やりの前に、どんな怪獣がいて、何をしてはいけないかなどの注意事項を本部で教えてもらった。
どの子にも共通していえる事は、急に動かない、大きい音を立てない、危害を加えない。
視線は合わせてもいいが、あまりがっつり合わせるとガンつけてる事にもなるので気を付けること。
餌の牧草や野菜の分量を教えてもらいながら器に盛り、餌場に行く。
餌場には先に集まって管理人さんたちにじゃれついている怪獣たちが何体もいる。
大人ならそう圧迫感も感じないような怪獣たちだが、子供から見ればそこそこでかい。
餌やりの時間が終わると思い思いにくつろいだり、さっさと寝床に帰るドライな性格の子もいる。
不意に吹き付ける風を感じた。
「ジェイド、リトラだ!」
リトラ、の単語に慌てて腕を差し出す。インコや猛禽類ならまだしも、広げた長さが15メートルはある翼で顔を叩かれるのは、ご褒美と言えなくもないが避けられるなら避けたい。
腕に静かにリトラが停まった。艶めく緑の美しい羽をもつマクジャクを大きくしたような、といえなくもない。インドクジャクの青い頭も綺麗だったな。
≪あら、素敵な瑠璃色のオスね。彼はどこにいるの?≫
……リトラってテレパシーで思考読めた上に喋れましたっけ?しかもクール系お姉さんだけどお茶目なところもありそうな声。
≪ちょっと!≫
嘴が痛い!面積が狭い分余計に痛い。反対の手で慌ててつつかれた箇所に触れる。血は…よかった、出てない。
「痛いって!」
≪いいオスの話をしておいて無視するからよ≫
抗議につんと顔を背けるリトラは、歩いてきたエラ叔父さんの肩に停まった。その時に気づいたが、胴体を胴着のようにカバーする金属地の上に丸い発光体がセットされ、喋る度に点滅している。
「綺麗な子だね」
「ああ、今まで見てきたリトラの中では1番の美女だ。でも何頭ものオスをボコボコにしてる。好みじゃなかったみたいだ」
《話しかけても返事もしないオスは願い下げよ》
「そうだね。お話ししたいよな。私も結婚するなら話が合う人がいいなあ」
……1人と1羽がナチュラルに会話してることに驚く僕がおかしいんだろうか?
ぼんやり立っていたらアギラに頭をこすりつけられたので、お返しに角の付け根を掻いてやりながらしばらく考えこんでいた。
翌日、朝早くに起きて餌やりを手伝い、一段落したところでまたあのリトラが襲撃挨拶しにきた。前の晩に孔雀の画像はピックアップしておいたので、データパッドに表示、ループ再生。時間問わず襲撃してきた訳じゃないからイケメン画像見るくらいはしてあげよう。
昨晩聞いた話では、このリトラは何らかの実験に使われ、実験について現地で調査していたウルトラ族に救出された。実験の影響で本来の種族以上の知能とテレパシーを持っていると判明したので、双方のコミュニケーション用にあのデバイスが装着されている。
叔父さんからは「お昼まで特に用事はないから、好きにしてていいよ。散歩してもいいけど、遠くまで行かないようにね」と言われて、小腹が空いた時用におやつを渡された。
放置といえばそうだが、叔父さん達も書類まとめたり会議したり、怪我の治療やら何やら他にやる事は沢山あるから仕方ない。
ぼんやりしている間にうたた寝したようだが、起きたら顔の上には緑の地に青や金が輝く極彩色の羽があるし、隣にはアギラ。
≪あなたが呑気に寝てるから、ワタシもつられて眠くなったわ≫
アギラが何か唸り、リトラは≪お黙り!≫と冠羽を逆立てた。大丈夫、何言ってたか全然分からないから。
森近くの湖には子連れのエレキング。遠目から見るだけにしておいた。母親にどつき回されたら死ぬ。
草原にはアギラの群れ。岩山の下から響く鼾の主はレッドキング。
お昼近くになっていたので本部に戻ると、入口にピグモンがいた。「受付」と書いてある紐つきの名札を首から下げている人懐っこい子で、僕を見て手を振りながらぴょんぴょん跳ねている。思わず笑顔で手を振り返す。
訪問してくる人はあまりいないけど、受付がいないと大変だ。ただ防犯効果は微妙なところ。ゴールデンレトリーバーが番犬向きじゃないのと近い。
だがセキュリティはある程度はお金を出せば揃えられる。
後はシステムを維持する費用、人員、ブレーカーやコードなどの予備の物品をストックする場所とリスト、緊急時の対応と訓練。
だが大きいネックとして、アニマル星には対空防衛システムがない。いつ泥棒が来るか分からない地域で、鍵かけずに出かけたり寝てたりするようなもの。
田舎はいいって言う人は多いし、確かにいいところはあるけど!鍵くらいかけろ!心臓に悪いわ!
社会全体が性善説で生きてる種族って、ひょんな事から滅亡しないか不安になる。
≪あなたの種族どうなってるのよ…?≫
本当にそれな。
他のウルトラ族によれば穿ち過ぎ、考え過ぎと言われるけど、これくらい考えないと全員共倒れがちらつく。
考えすぎて眠れない夜を過ごすことなくきちんと爆睡。
三食とおやつもきちんと摂取。
草原を走り、森で障害物走というかパルクール擬き。
エレキング親子のいる湖とは別の湖で水泳。
そんな生活を1年ほど続けた結果、膝関節メインに全身が鈍く軋む。
「成長痛だね。姉さんには知らせておくから、ゆっくり寝ておいで」
進行形で痛いんですけど!!
結局、アニマル星の保養から帰っても身長はじわじわ伸びていき、7000歳頃には40メートルになった。人で換算するなら170センチくらいか?
リトラはその頃に目の覚めるような瑠璃色の頭のオスへ押せ押せの猛アタックの末、子供を授かった。希少種同士だったので孵るか叔父達は不安だったそうだ。
のんびり屋だと思っていたアギラは希少種のリトラの巣が襲われた時に群れで現れ、突進と角の突き上げで泡を食って逃げる侵入者をどつき回し、管理人達が来るまでボコボコにしていた。意外と怒ると怖い。