地球在住の協力者も楽じゃない   作:グリグリ

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一歩進んで二歩戻る。…二歩なら上出来。



助けてほしい時に誰もいない

古典装束が入っている密封ケースを前に、計画が遠退いたとげっそりした。

げっそりはしたが、まず図書館へ突撃。古典装束について資料を借りまくって、密封ケース越しにバシバシ写真を撮りまくり、第1計画を立てる。

「まず、この古典装束はどこの誰の持ち物か」

衣装の意匠はM78に似ているが、他の要素も混ざっている。被服文化があった、又は現在もある星はL77、U40。

U40の意匠はよく知っているので除外。つまりL77星。

…渡航許可、それと現地での宿に、古典装束に詳しい人とのコンタクトも手配しなくては。

ほぼダッシュに近い歩きで目的の部署から許可をもらい、出せる最高速度でL77星に向かった。

何で仕事終わった!と思ったタイミングで積んでくるんだ!嫌な上司!

 

到着したL77星で古典装束に詳しい人と会う前に周囲の確認をする。今回の待ち合わせ場所はかなり立派で緑豊かな公園。

付近の商店の出入口に裏口、建物に植え込みの位置、人の出入り。広すぎて全部調べるの時間かかったし、落ち着ける公園のはずが落ち着かない。

あとどこ見ても全員ほぼレッド族。先に調べた時に素の体色だと目立ちまくる事は予想がついたので、滅多にしない変装でラインの色が赤い以外は父親似のシルバー族になる羽目になった。

近くの小さな商店で林檎のような果物を買う。味は林檎と蜜柑を足したような、薄めの甘酸っぱい味がした。

待ち合わせ時間より少し前には公園にいたが、現れたのはレッド族護衛つき。人に傅かれ慣れてる辺りから、高官か?

「お待たせしてしまったかな?」

「いいえ、立派な公園なので先に少し散歩しておりました」

「勿論!この公園は先代の…」

よいしょするポイントくすぐり過ぎたかな。全然話が進まない。

「…という訳だが、いや!申し訳ない!喋りすぎましたな!」

「ハハハハお構い無く。でご連絡させて頂いた件ですが、こちらの画像をご覧頂いて…」

 

まさか王宮に連れて行かれるとは予想してなかったよ…。資料も唸るほど書庫にあるし、やっぱり金のあるスポンサーがいる研究者って違うな。

古典装束の持ち主と経緯も倍速くらいで判明していく。

装束の持ち主は女性、光の国から獅子座に嫁いだ花嫁の為に互いの国の意匠を組み合わせて作られた数着のうちの1つ。婚姻外交に立候補だか推薦されたなら、血筋のいいお嬢さんだったんだろうな。

「この意匠は古来より使われていてね。古典図案はお好きかな?そこの右端のを取っておくれ」

「はい、少々かじった程度ですが。こちら、あっ!」

運悪く、机の上に置いてあったデータパッドが角から落ちた上、さっき公園にいた時に描いていた図案が表示されてしまった。壊れてないかも心配だが、国外流出しちゃヤバいなら削除もあり得る。下手に抵抗する気はないが、資料を痛めるのはこの文官の堪忍袋が許さんだろうからまず外に。

「絵は荒削りだが、よく描けている。ほう、これは展開図か?」

「花のガラを分解して描きました」

「花が好きか?」

「花も鳥も好きですが…って待ってくださいこれ何の話?」

 

「陛下!衣装の件ですが!」

「背びれが痛いですってば!誰か助けて!掴んでるとこから千切れる!そこの衛兵さん笑ってないで助けて!」

「千切れたら縫ってやるから安心せい!」

「安心できる要素が無い!」

いきなり背びれを掴まれて猛烈な勢いで引きずられて来たが、内装や絵画に花瓶のような装飾品からして庶民なら逃げ出したいような金のかかり具合。

おまけに、獅子王家特有の鬣の王が重厚な机の向こう側からこっち見て……言いづらいけどぽかんとしている。

よくよく顔を見ない為に思わず跪いた。科技局で勲章授与される人の練習に付き合って覚えておいてよかった!

あとギャーギャー騒いだのでめちゃくちゃ恥ずかしい。

「お初にお目にかかります、アルス陛下」

「挨拶なぞよい!それより陛下!この者なら直せるかもしれませんぞ!」

待ってまだ何直すとか全然聞いてない!

 

「こういうケースには専門の人がいないのがまずおかしい」

「「え」」

それより普通相手の意見も聞いてほしいですね聞かないで決めて後で地獄見るのは僕じゃないけど大体僕も巻き込まれた時点で共犯扱いされる訳だし怒りをその場で表現するより溜めに溜めて大事な席で積年の恨みをぶちまけられて諸々の計画がぜーんぶ御破算とか最悪のうちの1パターンだし家族の前で延々あの時に意見聞いてくれなかったとか言われ続けて子供にお父さん最低とか冷ややかな目を向けられても動じない鋼の心があるならお止めしません是非機雷原に突撃なさってください

「陛下なら走って行かれた」

さよで。じゃ僕帰ります。

 

宿の部屋のドアに鍵を入れて回したら鍵がかかった。

今鍵がかかったという事は鍵が空いていた。

宿ぐるみの強盗、だが治安のいいL77星で?

……そういえばさっきまで対面してたアルス王は色々煩雑な手続きや開示請求を諸々跨ぎ越して「一声で」号令できる人だ。すっかり忘れてたけど。

一足飛びに近くの窓をぶち割って外に飛び出したのと入れ違いに部屋から姿を現したのは、やはりアルス王だった。

屋根伝いに飛んで跳ねて逃げる後ろから、背びれ掴まれて引きずられながら見た衛兵達がわらわら追ってくる。

鋼糸で障害物を引き倒し切り刻み、距離が空いたので初速からヴェイパーコーン叩き出して獅子座から離脱。ワープホールを手当たり次第に開いて飛び込みを3回は繰り返した後でデブリ帯に潜みながら考えてみたら、逃げる必要なかったんじゃないかとも思ったけど、逃げなかったらまた面倒ごとに巻き込まれそうだし。

そもそも、何でこんな蜂の巣案件を放っておいた?

婚礼衣装にガードもつけず、情報漏洩対策も0。

釣る為の餌にしても、もうちょっと配慮というか気配りというのが足りないを通り越して0って笑えないよな。

地球で物件見ながら戸籍どうするか考えよう(現実逃避しよう)。あと食べ歩きしたい。

 

この時、逃げたせいでアルス王に火が点いて光の国が()()()()()()()()になったとか、本国からの呼び出しで行ったら「産まれてくる予定の子供達の仕立て予約をとるか、派手な賞与授与式に参加するか」を待ち構えていた王と王妃揃い踏みの圧力盛り盛り(圧迫面接)で迫られた。

大人しく仕立て予約にしたら残念そうな顔された。

これだから権力者は!!

ついでに情報局の人にはすごく心配と同情もされた。

騒動に巻き込んだお詫びにカトルカールとケークサレ、あとレシピもあげたらがっちり食いついてきた。この食いしん坊め!自棄起こして「払ってもいい額で構わないから出せ!」と言ったら平均30万ウラー、45万ウラーもちょくちょく端末に振り込まれ…おい今しれっと300万ウラー出したの誰だ!?




1円=300ウラー換算。
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