本家のジジイ相手に積年の怒りを噴火させて、少し落ち着いたところで相手から問いかけられた。
「坊主、お前は何が得意だ?」
「さあ?まだ何も掴めてないし、分からないよ」
やや
刃がついていない棒を握らされ、地面を転がる事十数回。
「握った剣に振り回され、光線は急所しか狙わない、格闘は5秒で取り押さえられ……本当に凸凹だな」
「やかましいぞジジイ。そもそも、未成年者を拉致した時点であんたが先にお縄だぞ」
言ってはみたが地面と背中が大絶賛仲良し期なので威厳も何もない。
「相当の修練は積む必要があるが、まあ何かあの倉庫にあるじゃろ。それより先に体力つけろ。どこの方向に進むにしろ、突き詰めれば体力がものをいう」
……たまにこういうマトモな事言うから、タチが悪いんだよこのジジイ。
トレーニングというより受け身の練習を終え、水場で体を洗って手当てを受けてから、ジジイから借りた通信機を操作する。
星外通信特有の長い呼び出し音に、気づいたら足が勝手に貧乏ゆすりをしていた。それよりはと、立ち上がって5歩歩き、Uターンしてまた5歩の繰り返し。
≪…もしもし?≫
母の声だ。普段の声より元気がない。
幾らか冷静な部分が分析したが、当たり前だ。子供がいなくなって、親はどんなに心配しただろうか。
「母さん、僕だよ。連絡遅くなってごめんね」
≪…ジェイド?ジェイドなの!?今どこにいるの?場所は分かる?≫
「場所は、ごめんなさい、分からない。母さん、心配かけてごめんなさい」
≪どうした?誰かからの通信か?≫
≪あなた!ジェイドからよ!≫
後ろで何かガラス質の物が壊れる音がした。…通信機の置いてある位置から逆算して、花瓶かホロスタンドか。
≪ジェイド!大丈夫か?誰かに痛いことされてないか?≫
「えと、膝擦りむいちゃった」
仮にもう十分手酷くされてます、なんて言ってみたら最後、父親がどんな反応をするか予想がつかなくて、事実の一部だけ述べた。
あとは近くで聞き耳を立てていたジジイを引っ張り出し、通信機ごしに大泣きされながら罵倒されてオロオロする姿を見ている。
実際に膝もひじも擦りむいたが、傷口をタワシのようなものでゴシゴシ洗われた上に薄いシートが貼ってある。…多分、浸潤療法に近いものなんじゃないか?
ジジイは「原始的」だとは言っていたが光の国自体、医療を始め、あらゆる技術が地球のものとは隔絶している。何せ、本格的に普及し始めたのが2001年だった浸潤療法が図書館にある医療系の本(便宜上、本と言ってるけどデータパッドの型をしている)の中に、
『古代には様々な治療法があり、小さな傷口には浸潤療法が多く使われた。だがこの療法も完全ではなかった』のたった2文しかなかった。
探すのに苦労していた僕に協力してくれた司書さんが成果にしょっぱい顔になっていたのをよく覚えている。
自棄酒ならぬ自棄ケーキ、というのも考えたが、ウルトラ族は飯食わないんだ。
元人間にはこの点が辛いが、胃腸系が退化した訳ではないから不思議だ。
……思い出したら無性に日本食が食べたくなってきた。