ご指摘頂きありがとうございます。年齢は間違えてはいませんよ。1 9 万 歳 、れっきとしたジジイです。
さて、拠点から科特隊の稼働を確認したが、頑張っているようだ。資金それなりに注ぎ込んだからには頑張ってもらわないと。
そして僕は稼ぐ。
反物は紡績工場経由で幾つかの工房と話をして、卸を経由するよりはやや安くして貰えた。
買うついでに、工房の馴染みの悉皆屋ー着物専門のクリーニング兼メンテナンス業者ーにも弟子入りして、現場で落とせるシミとプロに任せるシミの見分け方、汗染みはあの工房、洗い張りはどこの工房がいい腕で、染めはこの工房、という一通りは実地込みで教えてもらった。
教えてもらいながら話が脱線して、道具の話から「この道具の予備が欲しい、あの道具が壊れそう」と他の需要まで出てきた。
僕の紡績工場で使っている道具を作ってる別の工場に話をつけ、後日顔を合わせたらじゃんじゃん繰り出される柄の微妙な角度や毛の埋め方など、ピーキーすぎる専門家同士の会話には早々に置いてきぼりにされた。
後にそいつらは飲み友達になったし、そこの子供同士で結婚した。
結婚式の着物は僕に注文が来たが、流石に新婦のみにしてもらった。ぽっと出の若造がよその需要奪ったらダメだとか適当な理由つけたと思う。
その分、依頼された色打掛の裾にふきを厚めに盛ったり、反対に腕は上げ下ろしがしやすいように中綿を少し抜いたりと改造するのは楽しかったが、躁状態でテレキネシスを使いすぎて、しばらく頭痛と倦怠感が酷かった。
アホはやったけど、後でご夫婦が来店した際に、綺麗な花嫁さんが色打掛を羽織って、幸せそのものの笑顔で写っている結婚式の写真もらったら頭痛も何も全部ふっ飛んだ。
僕の店では反物が売れたら、仕立てて衣紋掛けにかけた状態でまず1枚。
そしてお客さんに着てもらって正面、後ろ姿などを撮った写真をA4サイズで数枚、お客さんからの着心地や手触りなどについて書いてもらった手紙付きで送っておいた。
製作者としては、着心地や色とかの感想も聞きたいだろうし。「いらねぇ」と言ってた人が、僕が帰ったあとで手紙と写真を眺めてニヤニヤニコニコしているのはしっかり透視している。
店は僕1人だし、売り込みなどで圧力はかけずに「どうぞゆっくり見て行ってください」と基本ゆるめでいく。獅子王夫婦の圧迫ぶりは地球でも教訓になった。
後は着物好きから聞いて来た人の着物を、悉皆屋に繋ぎをつけて持ち込んだりしている。
『センパイ、あんたいつも忙しないな』
宿のベッドで肘枕して寝そべっていた銀赤の鮫は、結局星海から消えた。
ベリアルとは装束支援部が発足した後に寂れた星で出会った。
先にいた彼が舌打ちして去ろうとするのを掴まえ、
「見ず知らずの相手だから、
話してる途中で「そういやお前何歳だ?」と聞かれ、咄嗟に「1万9千歳です」と答えたら、「年下」という事で警戒心が低くなったのか色々溜まっているモノを話してくれた。主に愚痴と愚痴と嫉妬とたまにフラれ話。
うーん、どんだけ溜めてたんだこいつ。誰も聞いてくれなかったのか、よしよし、どーんどん言え。言ってスッキリしような。
あいつ人の話聞かない?困るよねー、わかる。
でもベリアルを探しに来た
ベリアルもベリアルで、最初に鎌かけで生年月日聞くとか、生体データ照合とかそういうアクション全っ然見せなかったからな。僕自身、威厳とかカリスマとかないのは自覚している。
「こんなちっさいのにオレやケンより年上!?嘘だろやべぇタメ口聞いちまった!」
「歳と身長とタメ口は別にいいんだけど、
「地球の店が僕1人だとてんてこ舞いになるからベリアルにも手伝いを頼んだところです。いい人ですね、彼」
「ああ、いい友人だ。だが力に溺れそうな、危ういところがある。気をつけてくれ」
「で、センパイ。どこ行こうってんだ?」
「さっきも言ったけど、呼び捨てでいいよ。失恋したなら盛大にガチ泣きしてスッキリするか、自棄酒で翌日地獄見るのならどっちがいい?」
「酒!あと喧嘩!まだ失恋してない!」
「相手の反応的には脈なしっぽいけどな」
「ぐぬぅ…」
喧嘩は強かったし、ラフファイトは銀河系では根強い人気がある。でも酒の強さはメレディス以下だった。
「あぁぁぁぁぁおぉぉぉもぉぉぉいぃぃぃ!」
6万tもある彼を宿のベッドまで運んだ時には全身汗だくな上に頭痛に倦怠感でへたばった。テレキネシスで補助かけてこのザマよ?
一瞬イラッとして膝を軽くひっぱたいた。
翌日、二日酔いで地獄を見て大人しいベリアルに選択肢を話した。
1、このまま不完全燃焼起こして爆発する。
2、心機一転して頑張る。
3、時間を薬にして、静かな場所でゆっくり考える。
「今すぐ選べとは言わないよ。住所は地球のここ。いつ来てもいいように布団と飯は用意しておくよ」
その後、未だ連絡はない。僕の事は思い出す暇もないくらい忙しいんだろう。
店の入口が開いた。
「いらっしゃいませ」
僕は待つ。