地球在住の協力者も楽じゃない   作:グリグリ

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お久しぶりです。投稿遅れました。
休憩会。……本当に休憩?
休憩会の方が本編より文字数が増えるという逆転現象。
誤字脱字などありましたら、お知らせください。




3兄弟の休み

≪ジェイドー、休暇届と旅程表出してOKもらった≫

「そりゃ良かった。こっちは宿の手配と足の手配は終わった。データ送ったから確認してくれ。着替えは道中で買う方式で行こう。その方が荷物は少ない」

≪はーい≫

 

送られてくる買いたい物リストが、まあ長いこと長いこと。

適当に1枚拾ってみたが、裁断器と本本本本…こりゃウルトラマンだな。小説から論文に画集や料理本に辞書とジャンル問わずにラインナップしているが、裁断器とセットという事は自炊するのか、スキャンから翻訳して輸入か。それより、圧縮宅配サービスの枠を増やせるか業者に聞いておこう。

セブンは希望リストは何も送ってきてないけど、花は地球で買うつもりだろうな。……長官や参謀、キリヤマ隊長達のことは忘れてはいないだろうが、念の為に確認しておこう。アンヌさんしか目に入ってなさそうだし、美しいからと拾った宇宙産の鉱石や植物は検疫でアウトだ。

後に迂闊にも「アンヌに似合う着物を1着!」と言ったばかりに、n時間ぶっ続けの正座で着物講義を受講したセブンだった。

というかゾフィー、経済を回そうという意気込みは嬉しいが、星系外貨だから回らない訳じゃないが一体何を買う気なんだ。為替で億単位とかそうホイホイ出すな。

 

「久しぶりだね、ウルトラマン、セブン。体調はもういいのか?

こうして直接会うのは初めてですね、ゾフィー隊長。装束部兼支援部、地球支部のジェイドです。地球では長川翡翠と名乗っています。よろしくお願いします」

星域の外で合流、事前に入手した衛星やレーダー、航空機による警戒網を抜けるコースを投影表示で共有。

着陸地は町外れ。先に生体検知はしておいたので目撃者は0。停めておいたレンタカーに乗って目的地へ移動する。

レンタカーについては乗る前に「これ、クラウンエイト…本物?」「雑誌で見た」と地球組がはしゃぐ脇で、ゾフィーが弟2人のはしゃぎぶりに首を傾げていた。

 

「こうして地上を移動するのもいいものだね」

「空路だと一瞬だからな」

ゾフィーは助手席で地図片手に爆睡。ついでに助手席の後ろのセブンもがっつり寝ている。

「休みとるからってゾフィー無理してなかった?」

「しそうだったから、我々で捌いた」

「お疲れさま。ウルトラマンも寝てて」

「そうする…」

ほどなく寝息が三重奏になって、エンジン音と高速道路のギャップをタイヤが乗り越える時の振動だけが車内に満ちる。

 

服を買う際にも問題だった。ハヤタ…に擬態したウルトラマン、ダンに擬態したセブン、あと見た事ないけど何か見覚えがあるような顔の青年に擬態したゾフィーが、異性からの熱い視線をガンガン集め続けている。

僕は幸い、擬態した顔の印象が薄いので視線が素通りしていく。最初は無視していたが徐々にげんなりし始めた3人の代わりにレジを何回か通り、両腕に服の入った袋を鈴なりに提げて戻ったら、何故か3人はロシア語で会話していた。やや距離を開けて女性達が三々五々集まりながらちらちらと視線を投げかけている。

「どうしたの?」

『助かった!早く行こう!』

『怪獣と戦う方がマシになるとは思わなかった』

話しかけた途端に、3人が素早く立ち上がってーあまりに早くて思わず上体を反らしたー袋を1つ2つ持って、早足で別方向へバラバラに逃げた。後を追う女性達。

…車の場所はわかってるからいいか。

 

「大変だった…」

「疲れた」

そういえばこの3人、人で分類するなら【イケメン】枠だと今の今まですっかり忘れてた。顔がいいのも大変だな。

近くの市内をぐるぐる回って追跡されていないか確認してから、市外近くの雑木林に入る。

道路幅は車1台が通れる程度の、長い林道をひたすら通り、通路の突き当たりの小さな旅館が2泊3日の宿。

規模は小さいが、静かで落ち着けるので予約した。

「おー」

「静かだな」

「いいとこだね」

車のトランクに先に仕込んでおいた圧縮サービスの箱から荷物を取り出していると、旅館からのっそりと大柄な男が出てきた。

髪はやや長めの枯野色、捲った袖から覗く右腕はみっしりと筋肉がよくついている。やや猫背だが、ぱっと見ただけでも威圧感を与えるような背の高さと筋肉のつき具合。だが僕達を見て、髪の下の羊羹色の目がくしゃりと笑み崩れた。

(あに)さーん!お連れ様もよういらっしゃいました!どうぞどうぞ!」

犬で言うなら尻尾が千切れそうな勢いで笑顔を振りまく相手に、目を白黒させていたセブンがやっと「……どういうこと?」を絞り出した。

「この旅館の未来の若旦那。気は優しくて力持ちな人だよ」

 

「兄さんには危ないところを助けてもらった上に、落ち着いた職場と可愛い嫁も紹介してもらって。一生かかってもご恩はお返しします」

「いいよいいよ。それより奥さんの体調は?病院にはきちんと行けてるかい?」

「まあまあです。調子がいい時は起きてくるんで。兄さんが来るのは嫁も楽しみにしてまして」

「そうか。体調はその日によって変わるからね、僕も会いたかったけどこればかりは難しいよな。こっちは自分達でやるから、君は奥さんのお世話に行っておいでよ」

部屋から若旦那をさりげなく追い出し、ウルトラマンが盗聴機発見装置片手に部屋を捜索後、机の上にゾフィーが部屋の中の音と反作用する波長の音を発生させて打ち消す遮音機をセット。起動。

「で、()はどこの宇宙人だ?」

「ナックル星人。名前はリーだ。種族的には荒っぽい奴が多いが、彼個人はまともな一市民。ただ、()()()とばっちりで左手を親指以外失くした上に住むところもなかったから、後継者のいなかったこの旅館を紹介した」

その不幸の元凶である、碌でなしの又従兄弟を生きたまま捕まえるのに苦労はしたが、管理人が常駐してくれるセーフハウスが出来たと思えば苦労も少しは報われる。人がいないと建物は早く傷むし、整頓されていた方が物品の取り出しも補充もしやすく、温かい食事は緊張の緩和にいい。後はたまに部外者が滞在しても近隣住人に強く意識されずに済む。

「仮に彼が何か企んでいるとしたら?」

「企んでいたら少なからず挙動不審になるし、機会なら今日までに何回もあった。計画に必要な駒が整うまで待っていた、と言うならいつ僕らが来るかまで把握していないと動けない。

外的要因の線も捨てきれないが、一応この近辺は動体感知と熱感知センサー、あとは罠でカバーしている。この旅館を中心に、罠エリアがここからここまでのライン3つ。全防衛ラインが抜かれた際に備えて、非常用脱出路がここにある。出口はこう通ってここの車ですぐ高速に乗って逃げられる」

「……そうだな。いいプランニングだ」

「ありがとう」

互いに笑顔になっていたら、「策士2人が揃うと面倒な会話ばかりする」とどちらかがぼやいた。

 

 

「いいお湯だー」

「…効く…」

初めは温泉の濁り湯にビビっていたゾフィーも、湯船に浸かって数分後には手足を伸ばしてリラックスしている。

「ここは僕達以外は知らない方が良さそうだな」

「機密性を考えるとそれがいいかな。でも、この近辺で同じような効能の宿なら何軒かあるからそっちはどう?部屋に戻ったら地図に印つけてあげるよ」

「ありがとう。ついでにお勧めのお土産はあるかい?」

「消え物以外で?土地柄で木工が多いけど…」

「そういえば…」

お土産から話が脱線したが、意外と話が続くな。

 

風呂から上がると昼食の時間だ。

先付に始まり、山菜を使った和え物、刺身、川魚の焼きもの、漬け物にご飯と味噌汁、果物。まだ日が高いからお酒は抜きだが、酔って湯船で溺死とか冗談じゃない。

「お風呂の湯加減はどうでしたか?」

「とても良かったです!」

「それは良かった。ご飯のおかわりはそちらのお櫃に入っています。ではごゆっくり」

リーが部屋から出ていき、箸使いが覚束ないゾフィーに箸の使い方を教えた後は魚を解しておいた。ウルトラマンとセブンは旺盛な食欲で綺麗に平らげていたのでまあ平気だろう。僕の席の隣にあったお櫃からご飯を勝手に盛っている。

「やっぱり日本の食事が一番だね。特にお米が美味しい」

「この味わい深さを知るともう、味気ない光エネルギーが辛い」

…………飯目当てに来る人もいそうで、僕はもう可能性を考える事を止めた。

 

 

昼食後、温泉街をぶらぶら流してお土産を山と買って、あちこちのお店で饅頭や軽いお菓子を買い食い。そんなに食べて晩御飯が入るのかと心配になってくる食いっぷりだ。

川向こうまでぐるっと歩いて、お寺に御詣りもした。

本国ではとうに絶滅した木造建築が珍しいとしげしげ見ていたゾフィーが、たまたま掃除か何かで出てきたお寺の住職さんと噛み合っているようで噛み合っていないでも噛み合っている会話をして。

「いやぁ面白い話が聞けたね!」

「疲れた…」

「冷や汗で背中と脇が冷たい」

「もう慣れたよハハハ」

宿に帰ってからお茶を淹れていたら、饅頭と湯もちが来た。どっちがどっちから来たのかは分からない。

 

翌日、朝食を食べた後に作ってもらったお弁当を持って宿の近くの雑木林の中で軽くスパーリングしていたら、つい本気になったウルトラマンやセブンから八つ裂き光輪やウェッジ光線が来て冷や汗かいた。擬態の手先から出していい技じゃない!!

僕は無事に避けたが何本かの木をうっかり伐採したので、証拠隠滅だと鋼糸を使って更に薪サイズに分割。

……え?僕は鋼糸有りでもう1ラウンド?

じゃんけんした結果の先攻、ウルトラマン。

「鋼糸、厄介な武器だ。例えば背後からの急襲、どう対策する?」

「厄介だな。スラッガー1つでは対応が間に合わん」

「いっそ回るか?回転で無力化出来るかもしれない」

普通そういう話は本人がいないところでやるもんじゃないかな。というか回るって何???

 

「回転する凶器に飛び込んだらいきなり回転止まった上に真下からアッパーとか、何て初見殺し」

「こっちは飛び込んできた事に慌てましたよ」

本当に鋼糸を回転させているところに飛び込んできたから、慌てて回転を止めながら丸めて束にして、ほぼ死角の真下からアッパー。辛うじてと言えど攻撃をかわした事には驚いたが、ウルトラマンはそこで時間切れ。

「おーし、行くぞ」

ヤル気満々のセブン。連戦は結構辛いんだけどな。

 

「ロープ4本でキリキリ舞い。避ける先にも置くとは動きの先読みが凄いな」

「懐に飛び込んだらあの拳のラッシュ。顔からボディまでガードの上から連打で。どこの流派なんだ?」

「しかし、あの連打の嵐の中からいきなりセブンのエメリウム光線は驚いた。あれで形勢逆転したな」

「あと何秒か残っていた場合、どっちが勝っていたか予想がつかないぞ」

端から聞いてると完全に僕が悪役みたいだ…。地味に効くぞこれ。

「あのラッシュ、見た目ほど威力はなかったが?」

「そりゃこの後もご飯と温泉があるから控えたよ。宿の温泉は打ち身にも効くって効能にあったから、何もしない時よりは回復早いかもね。

第一、顔に痣を作って本国帰ったらそのままクリニック直行だし、休暇先で何やってんだって監督不行き届きで僕も吊し上げ食らうし」

「それもそうか」

いや、そもそも誰かに教えるなら稽古の時の気配りはないとダメだろうというか下手に首の骨折ったら首から下が不随か最悪死人。武道系の最初はひたすら受け身って教わったけど、地域差?教える教師の差?正直僕だってジジイの伝手っつーか何も説明なしに連れて行かれて「後よろしくー」とだけ言われたあの場の雰囲気と来たら……。

 

 

「クッッッソムズい」

「どうやって扱うのか分からん」

「これ複数扱う上に格闘も出来るって、どういう頭の切り替えしてるの?」

「揃いも揃ってぼこぼこにしてくるのは流石にキツい」

物は試しに僕の鋼糸を1本、2m程度に長さを調整して貸したらまあ酷い言われっぷり。放物線で投げた薪の端を掠めたりして変な方向へ薪を飛ばしている。

「スラッガーは使いやすいね。思ったところに素直に飛んでくれる」

代わりにと借りたスラッガーはとても扱いやすい。飛ばして回転、その場で逆回転しながらバック、角度つけて投げてー、セブンの頭に戻す!よしドンピシャ!

いきなり後ろからスラッガーを戻されて、反動で上体がややつんのめったセブンが驚いた顔で振り向く。

鋼糸といい、ディノゾールの舌といい、今までがとんでもないじゃじゃ馬を扱っていたんだな、と理解した。基本が糸だから風や身動き1つに流されるし、当てよう(斬ろう)と思えば相手の動作行動より先に置くか、風に乗せる、テレキネシスや手で繰る。

後は()()()置く事で視線と思考に負荷をかけて誘導という手もある。

「予備とかない?」

「2つとか正気かよ…」

またとんでもない物を見る目をされた。

 

お弁当食べて小休止した後は、ウルトラマン達に技を教えてもらう。

ウルトラ水流は僕のパワーが足りずに空中を水の玉がぷかぷか浮かび、八つ裂き光輪は小指ほどの大きさ、だが遅れて投げた薪や小石を反対側から戻ってきて真っ二つとアンバランスな出来。

「光線の圧縮率と回転数を調べるから、あと何発か打ってくれ」

結論から言うと、僕の八つ裂き光輪は異様に高い圧縮回転率からのミニマムさに執念深さ。たまたま射入角が悪かったのか、欠片しか切断できなかった石を2度3度と追い討ちしていた。

殺意高過ぎだな、とは自分も思う。

 

程々に疲れて宿に戻ると夕飯の支度の最中らしく、調理場の方では板前さんとリーの声に加えて包丁と俎板の刻むリズミカルな音、油に食材が入れられてパチパチジュワジュワと弾ける音、炭が小さく爆ぜる音。

「や、流石に全員で覗いたら相手が萎縮するんじゃ」

「「出来るとこ見たくない?」」

「ぶっちゃけ見たい!!」

秒で掌返すゾフィー。こうなったら反対1対賛成3。

「しょうがない、ちょっとだけな。見て満足したら風呂で汗流すぞ」がせめてもの抵抗。

尚、板前さんに見つかってビビられた。

 

夕飯が終わり、明日帰る前に荷造りしようと腰を上げたところで荷物に埋もれていたデータパッドに着信が入った。

相手はと確認し、画面の【ウルトラマンキング】にそっとカバーを閉じた。

「誰から?」

「間違い電話」

「ちょっと待ってキングだよ!?出ないと!はいもしもし!」

【おや?どうしてウルトラマンが出るんだい?】

「我々ちょっと出先で。何かありましたか?」

【緊急なんでの、ちょっと本人と代わってもらえるか?】

そう言われては代わるしかない。

「はい、代わりましたジェイドです」

 

「大丈夫?お茶飲む?湯もち食べる?」

「じゃあ、お茶だけ」

ぶっちゃけ断りたいこの仕事。多分断らせてくれないだろうけど。

キングからの通信は、L77星の王子2人分の式典用装束の依頼。

あんたは可愛い初孫にフィーバーしてるじいちゃんか何かか。一体箪笥にして何棹分作らせる気なんだ。

ついでに元々請け負う筈の専属業者からは異例の推薦。これ裏で絶対何かある。

「次に地球に来るのはジャックなんだが……しっかり者だから大丈夫だろ」

「そういうのに限って大丈夫じゃないんだよ。それに、こっちも気がかりがある。地球での環境調査を申請して来たメイツ星人が1人、所在が不明なんだ。でも乗ってきた宇宙船が地球の外に出た記録はない。防衛組織に(ハッキングして無断で)調べてもらった」

「何か間から抜けてない?」

「最後に目撃された辺りは?」

「地球人と見た目では区別出来ないタイプの星人だから透視にしろ何にしろ現地に行くしかないが、現地のどこを探せばいいかの手がかりがない。というか僕が当該地域に入ろうとすると近隣住民に止められた。

侵入するならミクロ化か、ナノドローン投入がいいと思う」

「もしくは“顔の割れてない新人”とか?」

「新人にやらせる仕事じゃないけど、調査員の君がL77星に行くなら仕方ないよね。私とセブンも様子見に来るから」

「あ、そういえばL77星行った事あるんだって?どうだった?」

圧迫面接と背鰭千切られそうになった事しか覚えてない。

 

「帰ったら荷解きする間もなく荷造りして近隣に連絡してあぁぁぁやる事が多い」

「荷物詰めるの手伝うよ」

「帰りの車、運転代わるから少し寝たらどうだ?」

「行きは運転してもらったし、そもそも今回の集まりを企画してくれたからね。寝なさい」

帰る日になって、朝食の厚焼き玉子をつつきながら溢した一言に返ってくる優しい言葉。

「兄さん、お連れ様もまたいらしてくださいね。お待ちしてます」

「ありがとう、また来るよ」

 

 

車を返して戻る間に、手伝ってくれるというウルトラマン達に「在庫の白絹と白の木綿地、あとはこの際、手土産代わりになるか分からんが在庫を全部出す」と言っておいた。

残念な事に人間サイズだから尺は絶対的に足らないけど。

「ジェイド、セブンは脱走したよ」

「予想してた。反物はこの圧縮サービスの箱に。これごとL77に持って行く予定」

小物まで総動員で店内の棚をすっからかんにして、一旦光の国にウルトラマン達の荷物を置いてからL77星に向かう事にした。

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