通信機ごしにフルボッコされたジジイを一応は庇い、両親の声音はもう完全にべっしょべしょの涙声で少し聞き取りづらいものの、週に1度は連絡する事を約束して通信を終了した。
げっそりした顔になったジジイが「週1なんて」とかぶつくさ言っていたので、ジジイの分で取り分けておいた野生の果物のうち幾つかを、渋いものにすり替えておいた。
見た目はヘビイチゴ、味は幸いイチゴだが、まだ熟し方が甘いとかなり渋い。しかも判別は表面の色彩の微妙な差しかない。真朱と銀朱なんてぱっと見はなかなか区別つきづらいよな…。最初は僕もモロにやった。
今、僕とジジイは大体人程度の身長に体を縮めている。
身長は多分1メートルちょっと。当たり前だがまだ子供だしな。ジジイは170センチメートルくらい。
でかいと目立つ上にエネルギー消費も激しいからと、星域の外に拉致された際に縮められた。
ちゃんと戻せるのか聞いたら一時的に戻してくれたけど、戻せなかったらと思うとゾッとした。
ジジイの身長が40メートルって聞いてもそんなにデカく感じないけどな。オフィスビルなら10階、マンションなら13階。
そこまで考えたところで、観測する側と当事者側との違いに気づいた。
オフィスビルとどっこいサイズに体重ウン万tの物体が、二足歩行するわ格闘始めるわ、ビームをバカスカ撃つし建物をじゃんじゃん壊す、おまけにいきなりテレパシーで話しかけてきて「地球の平和を守りにきました」とか怖い。よく集団パニックにならなかったな。
…宇宙警備隊ってそこらへんちゃんと教えてるんだろうか…?
ヘビイチゴの渋いやつに当たってのたうち回るジジイを視界から外して、イチゴの甘酸っぱさに舌鼓をうっていたがふと気になった事がある。
「なあジジイ、僕らって人間サイズにはなれるけど服ってどうしてるの?」
「ん?適当に」
全く説明になっていない。
事細かに問い詰めると、他の星に出向く事がある人は不要な消耗を防ぐために現地で体を縮めるが、その過程の途中にある「衣服を着用する」というプロセスは理解して適宜使用しているが、光の国の大部分の国民は知らないだろう、という話だった。
「何だお前、服に興味があるのか?」
「うん、多分。服に興味はあるし、食べる事も好き」
……とは確かに言った。言ったが!せめて僕の同意を得ろよ!
「修行場所はU40だ!」
朝、開口一番、挨拶抜かしての発言に「どこだそれー!?」と突っ込み入れる羽目になった。
「本当にごめんなさいね」と目の前で困り顔した、柳のような体型の優雅な女性がため息をついた。身動ぎする度に服のドレープが揺れる。
「幾ら見込みのある子供がいたからって、年甲斐もなくはしゃいで。わたしも光の国から話を聞いて大変驚いたわ」
個人的には、目の前の優雅な女性が裏拳1発で立っていたジジイを水平方向にぶっ飛ばした事の方に驚いてる。
重力操作か、打撃を増すような操作か。ぶっ飛ばされたジジイはまだ岩山に刺さっている。
「あの人を犯罪でしょっぴくのは一向に構いませんが、星に帰るのか修行をするのか、そこを聞いてからでお願いします。もし修行しろと言うなら、担当して頂ける方ともお話ししたいです」
そこまで言うと、柳のような女性は驚いたのか数秒固まってから興味深そうな顔をした。
「……本当に驚くほど早熟な子なのね。一瞬大人と話しているような気分がしたわ」
まあ人生2週目なので。