地球在住の協力者も楽じゃない   作:グリグリ

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文中の飛行ルート云々は、ウル銀とかの背景のアレです。番号は適当に振りました。
あれもやっぱり、通勤退勤時間帯にはみっちみちになるんだろうか?


休み?

「何じゃ、先生辞めたのか」

宿に戻ると、巻物に何か書きつけていたジジイが顔を上げて僕を見た。

「長居は嫌がられる事に気づいたんだ」

未練は0ではないが、寄贈した記録が全部ゴミ箱行きにならなければ、暫くは困る事はないはず。

「では行くか」

重力に逆らって飛び立つ時ですら、最後まで鼻の奥が痛む事はなかった。

 

久しぶりに本来の銀色の体で宇宙を飛ぶ。

ジジイは顔と肩のライン、両手足が手袋とショートブーツを履いたように銀色な以外は青い。

「わし忘れ物した。光の国に戻るぞ」

…そういえばジジイが何歳だか聞いてないけど、やっぱり長寿だと認知症の発症する時期も遅くなるんだろうか。

「わしが連絡するまで実家におれ。連絡つかなくてお互い気を揉むのも疲れるしな」

確かに何も言わずふらっといなくなる事はあった。最初は心配していたが、数回いなくなる事で慣れた。嫌な慣れだが。

たまには家に帰るのも悪くはないか。

 

緑色の貴石のように光り輝く街並みが目に痛い。

地面ーこっちもガラス質光沢だーに足を着けて早々に顔をしかめたが、目へ入る光量を絞ろうとしただけで決してガンつけた訳じゃない。

誰へともつかない言い訳を胸中にしながら、朧気な記憶を頼りに家へ向かおうと少し歩き、はたと考えた。

家に一時とは帰る訳だから、とりあえず両親に連絡しておこう。ただ、前の通信ではいつ帰るとは言ってなかったので驚かせてしまうから、どこか時間をつぶせる場所も聞いておこう。

《はい?》

「やあ母さん、今大丈夫?忙しくない?」

《ジェイド!大丈夫よ》

「U40での修行が終わったから、母さん達の顔を見たくて。帰っても大丈夫かな?」

《まあ!帰ってくるの!迎えに行くわね。どこにいるの?U40かしら?》

…ヤバい。予想以上の食いつきだ。母親の性格はおっとり系だとばかり思っていたが、結構な期間離れていたからな。週1で通信してても心配なもんは心配だったところへ、今の連絡だからがんがん食いついてくる。

「迎えって、今から?」

《ええ!》

「母さん、その、今クリスタルタウンにいるんだけど」

《えぇぇ…すぐそこじゃない…》

今度はめちゃくちゃ落ち込んだ声になったぞ…。テンションの上下激しいな、うちの母親。

「いや、その、クリスタルタウンだけど厳密にどこって住所は分からなくて。そういえば、うちの最寄りはまだ飛行ルート12番?」

《ええ、そうだけど…?》

「じゃあ、飛行ルートで。なるべく外側を飛ぶから、それなら見つけやすいでしょ?」

《そうね!うふふ、会うのが楽しみね!じゃあ待ってるわ!》

 

飛行ルートは、クリスタルタウン内でもそこそこ速度を出してもOKな、言うなれば高速道路のようなものだ。都市内を概ねカバーしているルートにはそれぞれ番号が振られていて、その12番からだと家の近くまで行ける。

ルートにスムーズに乗り、周囲とペースを合わせて飛行する。

いつ見ても結構な人数が乗っているが、総人口180億人、都市数は300とくれば納得だ。

「坊や、そこだと危ないぞ。もう少し内側に寄りなさい」

見知らぬシルバー族の男性が場所を空けてくれたが、内側に入ると出るのが少し大変になる。

「ありがとうございます。ですが、母が途中まで迎えに来てくれているので、見つけやすいここで行きます」

「そうか。それならいいが。坊やは小さいのにしっかりしてるなぁ」

シルバー族の男性のように声はかけないまでも、子供が1人で飛行ルートに乗ってきたので心配していたらしい周囲の人からは、「しっかり者ね」とか色々囁いている声が少しの間、聞こえていた。

 

飛行ルートに乗ってしばらく飛んでいると、ルート沿いの建物近くに浮かんでいる人が遠くに見えた。まだゴマ粒サイズだが徐々に近づくにつれ、緩やかなラインが走る青い体、銀色の手袋とオーバーニーのブーツ、やや垂れ目気味の金の瞳の女性が周囲を見回していたがふとこっちを見て、笑顔になってぴょこぴょこ飛び跳ねながら手を振っている。

「母さんはしゃいでるなぁ…」

「可愛いお母さんね」

「幾つになっても子供は可愛いもの」

最初に声をかけてくれた男性とは違うシルバー族の女性が言い、隣のよく似た女性も一緒にころころと笑っている。

「ありがとうございました!」

「さよなら!」

「気をつけてね!」

やや恥ずかしくなって逃げた後ろからの声に、少し振り向いて手を振った。

「おかえり、ジェイド」

「ただいま、母さん」

 

夕方に帰ってきた父からはやや力の足りないベアハッグを食らった。

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