最近では着物地で仕立てたジャケットとかコートとかもありますね。
一見、表地が目立たないような黒や灰色でも、表地の素材に裏地や縫製、ボタンの材質やかがる糸の色など、こだわるところは尽きませんね。
刀帯もかっこいいです。
久々のー1200年ぶりを「久々」と言うかどうかだがー家族団欒を終えて翌日。
たまたま買い物に行くという母親に、「一緒に行っていい?」と聞いたらそれ以降ずっとうきうき弾んだ足取りでいる。
はぐれても困るので手を繋いだら一時はスキップしていた。歩幅が違うと気づいてすぐ止めてくれたので腕の関節が抜けなくてよかった。この際だから、恥ずかしいとかそういう辺りは無視する。
今のところ買い忘れはないが、段差を踏み外したりコケたりしないか、僕はそっちの方が心配だ。
「はー、楽しかった!」
商業エリアのお店をジャンル無視で端から端まで全部制覇しそうな勢いだった母親を、どうにか途中で切り上げさせる代わりに、公園を散歩して帰ることになった。
ジジイやU40の訓練の方がもうちょっとマシに感じられる勢いだったが、どこからこんなにバイタリティーが溢れるのか。
「…ねえジェイド、
声が僅かに震えて湿っている。隣の母親を振り仰ぐと、泣きそうだが堪えている顔に痛いほど力のこもった手。
呼び出しがなければ、と言いたいが、期待している答えは違う気がした。
「あのおじいさんが来ても嫌だって言うよ。だから母さん、泣かないで」
金の瞳からぽろぽろと涙を流しながら、やや苦しいほど抱きしめてくれる母親を抱きしめ返す。
あのジジイ、しっかりとうちの母親に傷残していやがる。僕がジジイに拉致される直前まで一緒にいたのは母親だ。
≪そういう事だ、ジジイ。しばらく休みくれ≫
≪わしだって泣く子と母親には勝てんわ。落ち着くまでおればええ。こっちも今悩んでる≫
≪…晩飯のおかずの話?≫
≪お前用の武器じゃ!それにしてもこの倉庫、片付けてなさすぎる…≫
≪腰やるなよ≫
≪……………………やりそう≫
3ヶ月も経つと僕がいる事にも慣れて落ち着いたのか、最初の頃のように妙なハイテンションになる事も減ってきた。やっぱあのテンション作ってたんだな。納得した。
ハイテンションではないものの、手を繋ぐと嬉しそうな顔をするのは変わらない。
父親は拉致される前から変わらずきちんと科技局を定時退社してくるし、日頃から家事をする事は抵抗どころか楽しみらしく、調理する際にメニューを一緒に考えたり家族団欒の時間を楽しんでいる。
因みに最近になって初めて知ったが、あのジジイは父親の家系だ。思わず父親を上から下までまじまじと見て「全然違う」と呟いたほどに体の模様が違う。
体の色は銀色で、細めの青のラインが概ね骨格に沿うように左右対称に体表を走っている。
科技局、どんな事を研究するのかちょっと興味がある。いつ見学に行っていいか、聞いてみよう。
まさかの翌日OKとか警備系ガバガバすぎません?
一緒について行きながら父親に聞いたよ。
「そういうもんじゃない?」
「父さん、仕事場で盗られたくないもの、あるでしょ?」
「うん、家族写真のホロデータ」
違うっつーの!!セキュリティどうなってんだ!?
「ほら、科技局着いたよ」
色々言いたい事はあったが、通称科技局、宇宙科学技術局の前で言うのは一応、憚った。
……そりゃ何か色々パクられるのもしょうがねぇよ。