ある晴れた日の午後。
紺野の探偵事務所に澪がやってきた。しかも、6人の美少女を連れて。
「随分と大所帯だな」
新聞を読みながらコーヒーで一服する紺野。澪が「わっはっは」と高笑いしながら紺野に言う。
「紺野も顔負けの美少女探偵団だ!」
「探偵団?」
紺野は新聞から澪が連れてきた6人の方に目をやった。
そしてその顔ぶれを見て気づいた。
「おやおや、君らは最近『いろは唄事件』を解決した探偵団じゃないか」
「大正解、さすが紺野さん」
リーダーらしき彼女が微笑んで言う。
「紹介するよ!」
澪が自信満々に言う。
「何で探偵団でもないお前が得意げなんだ」
「リーダーの奈那子ちゃんは私と同じクラスなんだよ! 得意げにもなるでしょ」
「どうも。探偵団のまとめ役をしております、
舞浜という名前の女子高生は礼儀正しく紺野に挨拶をする。
黒髪清楚でファンが多そうだ、と紺野は感じた。
「あたいは
白峰は金髪ギャルの見た目だ。探偵団の一員ということはそれなりに頭も切れるんだろう、と想像する紺野だが正直なところわからない。
「
冬河はツインテールのいわゆるカワイイ系女子のようだ。だが検死が得意というとんでもない特技があるようで、紺野はちょっと恐怖を感じた。
「ぼ、僕は
月丘はボクっ子で、かなりシャイなようだ。持参した本で顔を隠している。セミロングヘアーが似合っている。
「あたしは
三国はとてもボーイッシュだった。短い髪の毛はたしかに男に間違えられるが、顔立ちは整っているのでやはり美少女だ。
「私は
階堂はクールな雰囲気だった。パソコンの知識と表情の起伏の無さは探偵団随一のようだ。
「なるほど。勝手に自己紹介ありがとう。ところで、今日はどうして僕の事務所に?」
「もちろん、紺野さんに会いたいたかったからです」
舞浜がそう言う。
「僕の勘はそう言ってないがね」
「バレましたか。やはり万能ですね」
「専売特許だからな」
「嘘つけ」
澪が小声で突っ込んだ。
「実は…この事件の解決に力を貸してほしいのです」
そう言って舞浜は「事件手帳」と書かれたノートを紺野に渡した。
「1番最後のページの事件です」
紺野は1番最後のページを開いた。
「…ほう。これは今巷を騒がせている連続殺人鬼…」
「そうです。連続殺人鬼『傘の亡霊』事件です」
「傘の亡霊が殺害した被害者は全員、傘の先端が突き刺さった状態だって話だったよね」
三国が考える素振りをする。
「今まで3人が殺害されています。被害者の唯一の共通点は全員女子高生だということです」
冬河が自分の手帳を懐から出す。
「犯人は何で傘にこだわるんだろうねー」
と白峰が飴を舐めながら、口を動かす。
「君たちがこの事件を追ってるのも、同級生から不安な声が上がったからなんだろうな」
紺野がいつものように勘を披露すると、
「ご名答」
と階堂がスマホをいじりながら言った。
「お願いします紺野さん。気軽に依頼できるのは紺野さんしかいないんです」
「…代金はちゃんと頂くよ?」
「もちろんです」
「わかった。僕も捜査に加わろう」
「第1の事件の現場って4駅先の町で起こったの?」
駅のホームで澪と紺野は並んで電車を待っていた。
「昨日彼女らが依頼をしに来たあと、僕1人で基本情報は調べておいたんだ。だが、結局は現場を見なきゃわからんというわけだ」
「ふーん」
「死体が見つかったのも路地裏らしいし、事件の目撃者はいないようだ」
「第2の事件はどうだったの」
「遊歩道で死体が発見された。腹部に傘が刺さっている点は非常に酷似していた」
「第3は?」
「人通りの多いスクランブル交差点だ。人混みに紛れた間に傘で刺されて死んだみたいだよ」
「えぇえ、なのに犯人わかんないの…」
「傘が開いた瞬間を見てる人は沢山いたようだが、犯人を目撃した人は1人も出てこなかったようだ」
やがて2人の前に通勤列車が現れた。
「よし、行くぞ」
列車の扉が開いた後、紺野は乗ろうと足を1歩列車内に踏み込んだ。
「きゃああああああ」
高い悲鳴がどこからか駅内に響いた。
「そ、そこのトイレから声が…」
澪が女子トイレを指さすと、紺野はすぐに女子トイレに駆け込んだ。澪も「あ、おい変態!」とあわてて紺野の後を追う。
女子トイレに入った紺野は個室の前で腰を抜かして座り込んでいる女性を見つけた。
「どうしたんですか」
「あ、あ、あれ…」
紺野は女性が指さす先に目をやり、驚いた。
その個室の中には、腹部を傘で貫かれて冷たくなった人間がいたのだった。
その死体の顔を見て紺野はさらに戦慄した。殺害されていたのは、昨日紺野が出会った美少女探偵団の1人、冬河宙香だった…。
冬河は、個室の壁にもたれ掛かるようにこと切れていた。
死体の目はくっきりと開いて虚空を眺めており、口からは少し出血していた。そして腹部には凶器と思われる、傘が突きたっていた。
「澪、警察に連絡だ。傘の亡霊の4人目の餌食となった人間が出た、とね」