死体出現事件が起きました。解決しがいがありそうですね。by紺野
「何回も言ってるように、俺には死体の運搬なんてできませんよ」
七村は言った。彼は眉間に皺を寄せている。
「廊下には出てないし、隣と繋がってるこのドアも開かないですよ」
「じゃああなたは2人を待たせて何をしてたんだ」
「着替えですよ。パジャマの格好で誰かと会えるわけないでしょう」
「しかしあの時間に部屋に呼び出したのはあなたですよね」
「忘れてたんです。嘘じゃありませんよ。まぁ疑うのは自由ですが、俺はやってません。そもそもできません」
足を組んでソファに腰掛ける七村に、紺野は話しかける。
「あなた、金に欲望そうですね」
「何ですかいきなり。あなたは誰です? 刑事さん?」
「いえいえ、僕はただの勘探偵ですよ」
「へぇ勘ですか。たしかに俺は金が大好きですよ。当たってるようですね」
伊達に勘探偵をやっているわけでは無いようだ。
「僕の勘ですと吉井さんを殺した犯人は……七村さん、あなたですね」
「勘で物を語るのはやめておいた方がいいですよ。たしかに金の欲望は当てましたが、人間のほとんどが金に貪欲です。当てずっぽうに過ぎない」
「鬼立警部。七村は鍵を持っています」
「なっ」
「鍵?」
七村は突然狼狽え出す。
「何を言って……」
「大人しく出しなさい。逃げるようなら取り押さえることになる」
「俺はそんなもの持ってない!」
七村がソファから飛び上がって廊下のあるドアの方へと駆け出す。
しかし鬼立の部下の刑事2人が七村を取り押さえた。
「ありました警部」
片方の刑事が七村の着ているジャケットのポケットから鍵を取り出し、鬼立に渡した。
「本当に鍵を……。何でわかったんだ紺野君」
「勘です」
「君の勘はすごいな……」
「その鍵があのドアの鍵ですよ」
鬼立はそう言われドアに駆け寄り、鍵穴に鍵を差し込んだ。
ガチャッという音がする。
「しかし紺野君よ。おかしくないか」
「何がです」
「先程現場の部屋からこのドアに体当たりしたが、鍵が閉まってるだけならあそこまで頑丈じゃないはずだ。俺も刑事だ。それなりの力はある」
「うーん、それも勘でいいですか」
「勘ばかりだなぁ、まだ若干心配してるよ」
「まぁそのドアを開いて頂いたほうが早いかと」
「……わかったよ」
そして鬼立はドアを開けた。
そこには暗い空間が存在していた。
「な、何だここは。隣の部屋じゃないのか」
「やっぱり勘は合ってました。この空間が、現場となった吉井さんの部屋と七村さんの部屋の間にあったんです」
「ここにドアがあるな。本棚で塞がれている。これが現場の部屋の開かずのドアか」
「そうです。そしてこの空間の先に秘密の部屋があるはずです」
「ん? 本当だ……」
「こ、ここは……」
「見ての通りです」
空間の奥にあったのは金貨の山だった。
「吉井さんがいつもあの部屋に止まっていたのは、この秘宝を狙っていたからです」
「ということは七村は……」
「……ちっ、そうだよ。俺はこの金貨をあの男から守っただけだ」
「守った?」
「この夕闇荘を建てたのは俺の父親だ。父は俺にこの財産を託して死んだ。俺はこの財産を父のいいつけ通り守ると決心した。だから毎週ここに来ていた。だが、どこでかぎつけたのか知らないが、あの吉井とかいう男が現れたんだ。あいつはこの秘密の空間の存在に気付いていやがった」
「だから殺したと」
「そうだ。父の財産を誰かに渡すわけにはいかなかったからね」
鬼立は七村の肩を叩いて、
「署まで行こうか」
と言った。
「今日も冴え渡ってたね。勘が」
「あはは、まぁそういうことになってるね」
「私が優一と初めて会った時、普通に推理してたのにね」
「普通に推理するしか無かったからねぇ」
「でも今回も、昨日の女学園花壇踏み荒らし事件もほとんど勘だったね」
「……僕は普通に推理をしたくないからね。そんなことしたら、また不幸なことが起こってしまう」
「大丈夫だよ。私がさせないからさ」
「期待してるよ、澪」