勘で謎解き? 紺野探偵の勘事件簿   作:MOGIぴー

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第22話 氷川澪と復讐教室(衝動)

「え? 雨佳ちゃんそうだったの? 知らなかったなぁ」

「そうですよ!」

 氷川は最近仲良くなった後輩の美南雨佳(みなみうか)と共に下校していた。

「やっぱり転校って親の都合とか?」

「いえ…私が父に相談したんです。転校したいって」

「どういうこと?」

「その高校、治安が悪いことで有名で…。カツアゲとかは日常茶飯事というか」

「ええ…」

 美南の話に氷川は顔を青くする。

「しかも…耐えきれずに自殺してしまった生徒もいたようで」

「自殺…。そんな…」

「だから私はここに転校して来ました。自分自身が危ない…と思ったので」

「英断だよ本当に」

「今でもあの事件は忘れられないんです。自分の中に刻み込んでいます」

「なるほどね。私も色々あってさ、よくわかるんだ。その気持ち」

「先輩もですか…?」

「うん…こういうことがあってね…」

 

 

 

「あれ、新野(しんの)じゃねぇかよ」

 閑静な住宅街。大柄な男にその人物は名前を呼ばれる。

「お前は…士堂豪二(しどうごうじ)…」

「ほう覚えててくれたんだなぁくくく…」

 新野は自分を見てニヤつく士堂に嫌気がさす。

「何の用だ」

「おいおいまだ怒ってんのかよぉ? 恋人が死んだのは俺らのせいじゃないぜ?」

「お前らのせいだ。お前らがイジメを繰り返すから…亜美は命を絶ったんだ」

「そいつは逆恨みだなぁ。俺らはクラスの皆の意見を代弁してやっただけだぜ。命を絶ったのはあいつ自身さ。ああもしくは…新野が俺たちを説得できなかったのが原因かもなぁ? ハハハハ」

 士堂が高笑いをする。

 その言葉に新野はカチンとくる。そしてそばに落ちていた木の枝を拾い、士堂に目掛けて突き刺した。

「うっ」とうめき声が上がる。

「お、お前…」

 士堂はその場で崩れ落ちる。

 新野は血のついた枝を見つめた。

 すぐに枝をバッグの中に押し込み、足早にその場を立ち去る。

(こうなりゃ全員殺してやる…!!)

 

 

 

 朝、登校中の澪の目の前に人だかりが現れた。

 気になった澪は野次馬をかきわけて最前列にやってきた。

 するとすぐ前に「警視庁」の文字が印字されたバリケード、そしてその向こうに男が倒れていた。

「もしかして…事件…?」

 よく見ると男の腹部が真っ赤に染まっている。刺されたようだ。

 遺体の傍らに見覚えのある顔がかがむ。

「被害者は学生かね」

 鬼立は麻倉刑事に問う。

「はい、士堂豪二といって、弓名高校に通う高校3年生です」

「弓名高校? 以前、自殺者が出たあの高校か」

 弓名高校という名前は澪も知っていた。

 このあたりで一番治安の悪い高校。そして、後輩の美南が転校する前通っていた高校である。

「今まで傷害事件やらなんやらでろくなことが無かったが、ついに殺人事件が起きてしまうとは…」

「士堂と対立しているグループがあるようですし、そこがまずは疑わしいかもしれません」

 澪はそこまで聞いて、再び通学路へ戻った。

 そのすぐそばで2人の男が話していた。

「おい、あれ士堂じゃねえか?」

「こ、殺されたっていうのかよ」

「畠中グループの仕業か…許せねぇ」

「待て。ここに血痕があるぞ」

「え? なんでだ。結構離れた位置だぞ」

「しかも、こいつは文字だ。…な、これは…!」

「…『アカクラアミ』だと…」

「犯人が残したメッセージってことなら…次に狙われるのは俺たち…」

「ば、馬鹿な…」

 

 

 

「弓名高校の人が?」

 学校の廊下で偶然会った氷川と美南。氷川は今朝の殺人事件のことを美南に話した。

「士堂っていう名前みたい。そう聞こえた」

「士堂か。グループの頭でよく問題起こしてたやつですよ。ついに誰かに恨まれて殺されたんだと思いますよ」

 美南はそう言った。

「例の自殺。あれも士堂が関わっていたって聞いたことありますし」

「なるほどねえ。ちなみに雨佳ちゃんは犯人に心当たりある?」

「探偵の真似事ですか? …士堂のグループと対立していた畠中グループとか怪しいと思いますね」

「畠中グループ?」

「ええ、畠中岳史(はたなかがくし)。彼もよく問題を起こす問題児です。士堂とは仲が悪くて」

 美南は鬱陶しいと言わんばかりの表情でそう続けた。

「…氷川先輩もしかして事件に首をつっこもうとしてますか」

「え」

 氷川は驚く。

 美南の指摘は的を得ていた。

「もしそのつもりなら、絶対にやめてくださいね。命がいくつあっても足りませんから」

 その言葉に圧倒された。

 冗談で言っているわけではない。美南は真剣な顔で氷川を見つめていた。

「わかったよ」

 氷川が答えると美南は笑顔になって、

「約束です」

と返して、廊下を歩いて行った。

「…雨佳ちゃん。本気で心配してくれたみたい」

 

 

 

「ったく誰の悪戯だ」

 飛藤是治(とびふじこれはる)は深夜に公園へやってきた。

 とある手紙を受け取ったが、その署名はアカクラアミとなっていた。

「ボコボコにしてやる。俺は士堂みたいに簡単に死んだりしねぇからな」

 静まり返った公園内には今のところ彼一人。

 待っても姿を現さない手紙の主。段々と苛立ってきた飛藤は池の周りを歩き始めた。

「くそ」

 その場に転がっていた石を蹴り、池に落とす。

 突然飛藤に背後に影が現れる。

 飛藤はその気配にすぐ気づいたが、既に遅かった。

 飛藤の体はその影に押され、足は地面から離れ、水面の上にあった。

「うわああ」

 ざっぱーんと豪快な音を立てて飛藤は池に転落した。

「た、助けてくれ」

 飛藤は力を振り絞って顔面を水面から出して、自分を落とした人物の顔を見て絶望した。

「新野…! お前…!」

 飛藤を突き落とした主…新野はただ無表情で、池の中でジタバタする飛藤を見ていた。

「次はお前が死ぬ番だ」

 そう言い残して新野は踵を返して、消え去る。

 意識が遠のいていく飛藤。数分後、飛藤の体は池の底へ沈んでいった。

 

 

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