勘で謎解き? 紺野探偵の勘事件簿   作:MOGIぴー

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第24話 氷川澪と復讐教室(激白)

 喫茶店を訪れた澪は八原という弓名高校の教師から話を聞くことになった。

「紺野から話は聞いたよ」

 澪が席につくと開口一番にその言葉が飛んできた。

「はい。教えてほしいんです。このペンダントのことを」

 机の上にペンダントを置く。

 八原はしばらくそのペンダントを眺めた。

「…アミか…。となるとそのペンダントは自殺した彼女のことだろう」

「自殺…。友人が言っていましたがそれが…」

「朱冥亜美というとても良い子だったよ。担任だったから分かる」

「担任だったんですか」

「そうだ。それで、そのペンダントはどこから入手したんだい」

「新野という大学生くらいの男性がわざとか分からないんですけど落としていきました」

「何…?」

 澪の言葉を聞いた八原は首をかしげた。

 八原の微妙な反応に澪も首をかしげる。

「さっき刑事が自分のところに来た時に、朱冥亜美が当時付き合っていたと思われる恋人のことを教えたんだが…」

 歯切れの悪さに訝しげな表情で八原の次の言葉を待つ。

「その新野という男は何か言っていたか?」

 質問を投げかけられる。

「そうですね。『こうなる前に自分に出来ることがあったんじゃないか』みたいな…」

「…やっぱりそうか」

「え、やっぱりとは…?」

 八原は手元のコーヒーを一杯口へ運ぶ。

 そして一息ついて澪を見る。

「朱冥の恋人について教えるよ」

 そう言った八原は、続けて澪に詳細を話した。

 時間が経過するにつれ、澪の顔は青ざめていった。

「そんなはずは…」

 受け止めきれない事実を耳にした澪はただそう呟くしかなかった。

 

 

「紺野…」

「…その様子だと確信したようだね」

「何だか世の中って上手くいかないね。最悪だよ、何もかも」

「そうだな。世界はそんなに都合よく形成されていない」

「うん…。私には探偵の真似事なんて向いてなかった。ずっと、先入観にとらわれてたから」

「君は私情を持ち込んでいるからね」

「もう私情は持ち込まない。私が決着をつけたい」

「わかったよ。君がそうしたいなら僕は止めないさ」

 

 

 萱松(かやまつ)は廃ビルの屋上に来ていた。

 士堂、飛藤が殺害され、内心は恐怖に慄いていた。

「あんな簡単に二人が殺されるなんて、おかしい」

 自分に言い聞かせるように萱松は反芻する。

 そこに近づいてくる音がする。

 鉄階段を一段一段上がってくる音だ。

 その音の主は萱松の前まで現れる。新野だ。

「…死ぬ準備はできた? 萱松」

「待ってくれ。何でもするから、謝るから。許してくれ」

「今更命乞いしても無駄だね」

「頼むよ、許してくれ」

 じりじりと距離を縮めてくる。萱松は一歩下がる。

「駄目だよ」

 突然の声に新野はびくっと反応した。

 先ほど新野が通ってきた鉄階段をのぼって姿を現したのは澪だった。

「これ以上罪を重ねちゃ絶対に駄目」

 諭すような口調で澪は続ける。

「晴季さんの発言、そして八原さんから聞いた話で確信したんだ」

 拳を握りしめる。

「士堂、飛藤、そしてそこの萱松の壮絶なイジメによって、朱冥亜美さんが屋上から身を投げて自らの命を絶った。亜美さんの恋人だった貴方は絶望に打ちひしがれた。そして両親の離婚。離婚によって通う学校も名乗る名前も変わった」

 月に覆いかぶさっていた雲が動き、月の光が少しずつ屋上を照らす。やがて新野の顔が月明かりによって照らされた。

 

「二人を殺したのは君だよね…? 美南雨佳ちゃん」

 

 澪は、新野──美南に言い放った。

「…だから首を突っ込まないでって忠告したのに…」

 美南は足元に視線を落として小さな声で言った。

 先ほどの萱松に詰め寄るときの威圧感は消え去っていた。

「殺す気なんて最初はなかったんですよ。でも気づいたら…士堂は血まみれでした。それから自分を止めることはできなかった」

 美南は澪と決して目を合わせようとはしなかった。

 ただ淡々と罪の告白をしていた。

「晴季さんは雨佳ちゃんのお兄さん…だよね?」

 澪が尋ねると美南はこくりと頷いた。

「私を庇って警察に連行されていったんだ。でも庇う必要はない。兄が無実だってことを証明するために、最後の標的を殺そうと思った」

「…刑事たちは八原さんの話から、亜美さんの恋人がてっきり()()だと思い込み、晴季さんを捕らえた」

「そう、そしておまけに兄は私が殺人をしたことを知っていた。だから、おとなしく兄は…」

「お兄さんの無実を証明するなら何もその人を殺す必要はないよね?」

 美南は無言になる。

「雨佳ちゃんが自首すれば、お兄さんは解放される」

「それは、萱松を殺してからかな」

「ひい!!」

「…どうしてそこまで…」

「三人が私と亜美の関係を罵ったんです。女同士は気持ち悪い…なんて」

 美南の目から涙がこぼれだす。

「だから何だっていうの。お前らには関係ないだろって思った。でも亜美はとっても傷ついてた。気づけば亜美は屋上から…。あの三人が亜美を殺した。そして、亜美の苦しみに気づけなかった私も亜美を殺したも同然。こいつらに生きる意味なんてないし、私にも意味はない」

 声がかれながらも彼女は叫んでいた。

「これはただの自己満足。亜美を死に追いやった奴らは自分の手で地獄に落とす。士堂を手にかけたときそう誓った。ただそれだけ」

「…でもこんなことをしてちゃ、亜美さんはずっと苦しいままだよ」

 優しい口調で澪は言い聞かせる。強い言葉で逆撫でしてはだめだ。十分な注意を払う。

「そんなこと言われなくてもわかってます。言ったでしょう、自己満足だと。私が殺したいから殺しただけ。…こいつを殺したらもう亜美が苦しむことが無いように一緒にいるよ」

 澪はその時頭に電撃が走るような衝撃があった。

 美南はやっぱり萱松を殺害した後に命を絶つ気だと気づいた。

「…バイバイ。氷川先輩」

 澪は駆けだすが、既に遅かった。

 美南と萱松の体は宙に浮いていた。

 本当にスローモーションだった。自分の足も、落ちようかという美南の表情の切り替わりも、すべてが遅く感じた。

 ただ自分の意志に背いて周囲の時空がゆがんでいるように思えた。

 屋上の壊れたフェンスから、美南は萱松と一緒に空中へ飛び出した。

 

「…え…?」

 

 美南の声。

 彼女は何が起きたのか理解ができていなかった。

 それもそのはず、美南は屋上から落ちた後、大きなシートに身を包まれた。

 そのシートの周りには複数の男たち。

 

「…間に合ったんだね。刑事さん、紺野」

 屋上には澪のほかに二人の人間の姿が増えていた。鬼立と紺野だった。

「とっくの昔にスタンバイしていたよ。犯人がいつ飛び降りたり、澪に危害を加えるか分からないからね」

 紺野は言った。

 どうやら鬼立と紺野は前から廃ビルの屋上で誰にも見えないところで待機しており、ほかの刑事たちはビルの下を包囲して備えていたようだ。

「我々がポンコツだった。だが、氷川君に助けられたな。…ありがとう」

 鬼立が礼を言う。澪は「いえいえ」と返す。

「じゃあ紺野、ご褒美に今度パフェ奢ってね」

「おねだり早すぎだろ」

 

 

 

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