「要するに、2年前にここで起こった不可解な事件を解決しようという訳です」
頬ずえをついて欠伸をする紺野と目をキラキラさせて話を聞いている澪。
「何でこんなのに参加しなきゃいけないんだよ」
「だって面白そうじゃん」
「勝手に決めるなっての」
ここは双霊島。紺野が通う大学が様々な合宿でここを訪れる。島の中央部に位置するのが紺野たちが今いる校舎、通称双霊校舎だ。
何故こんなところに紺野たちがいるのかと言うと、はっきり言えば澪のせいである。この合宿は、大学のミステリーサークルが毎年この時期に催してるもので、紺野は所属していない。だが、どこかで噂を聞きつけた澪が勝手にサークルに頼み、こうして同行することになったのである。
「私たちの頭脳があれば今年こそ、この事件を解決できるはずです」
黒板の前に立って意気込んでいるのはサークルの部長、
「お言葉ですが部長」
「何かな御守さん」
「部長たちが全く解き明かせないこの事件を私たちが解決できるはずがありません」
サークルの新部員である
「どんな事件って言ってたっけ?」
「紺野のくせに聞いてなかったの?」
「何だお前」
「2年前にこの校舎で一人の女子大学生が死んだ。名前は
澪は一度呼吸し、再び口を開く。
「すぐに栗谷はみんなを呼びにその場を立ち去った。みんなを連れて教室へ戻る。その途中、黒瀬部長も合流して教室へ向かった。戻ったあともやっぱり扉の鍵はかかってた。後ろの扉を風屋敷が確認し、前の扉を黒瀬、窓を
「密室ってやつだね!」と興奮しながら言う澪。紺野はひねくれてる澪に少し恐怖を覚えた。
「それが未解決の事件ってわけか」
「でも、それだけじゃないんだよ」
「それだけじゃない?」
「その事件の一週間後に姉島の双子の妹、春子が殺されたんだよ」
「ここが現場の教室ですか」
「ええ。姉島さんの死体を発見したとき、黒板には『彼を愛する者より』と大きく血で書かれていた」
現場となった教室は当時のままだ。死体があったという教卓もそのまま。
「姉島さんは傍に落ちてたこのタオルで首を閉められて殺されていた。右手首からは血が流れていたから、おそらく黒板の血文字に使ったんだとう思う」
事件の当事者の一人である黒瀬は、慎重に思い出しながら話している。
「彼を愛する者ってどういうことなんですかねぇ」
富山が独り言のように口に出す。
「『彼』って誰のことかがわかれば、進展しそうなんだけどなぁ」
栗谷が言った。確かにそうだ、と紺野も同意する。
「できる範囲で姉島冬子の近辺を洗ってみたが、付き合っていた恋人がいるというような情報は一切出てこなかった」
風屋敷がメガネをくいっと上げる。
「ところで、教室が密室だったことについてですけど」
新しい話題で口火を切ったのは御守だ。
「外から鍵を使って開閉したというのは?」
「ありえないわ。第一、キーが存在しない。この教室は内側からしか鍵がかけられないの」
「つまり、栗谷先輩が死体を発見した時、教室は内側から鍵が閉まっていたんですね」
「ああ、全部の扉と窓を確かめたが、全部鍵がかかってたよ」
「完璧な密室ですよねぇ」
「それと重要なことはもう1つ」
「当時島にいた人間は黒瀬部長、風屋敷副部長、富山君、栗谷先輩の4人。つまり4人の中に犯人がいる……ってことですね」
紺野が言う。黒瀬は「どうして言いたいことがわかったの」と問うた。
「え? どうしてかですか?」
「ただの勘ですよ」