2年前に事件が起きた。僕の勘ではおそらくこれは…2年前の事件だby紺野
最初の教室へ戻った紺野たちは再び議論に入った。
「一つ些細な疑問を感じたのでよろしいですか」
紺野が挙手し、黒瀬は「どうぞ」と言う。
「犯人は被害者を絞殺し、そのあと手首を切ったと推測できますね」
「そうね。わざわざ手首を切ってから絞め殺す人なんていないでしょうし。警察が後日捜査したけど死因は絞殺だったわ」
「手首を切ったのは血文字を書くためと想像できます。ただ気になったのは、最初から血文字を書く気だったなら何故被害者から血が出る方法で手を下さなかったのか、ということです」
「た、確かに」
「なんでなんでしょうねぇ」
「その疑問は考えたことなかったわ」
「だから、犯人には何かその方法で殺すことができなかった理由があるんだと思います」
「うーん、普通にそうしてれば、わざわざ手首なんて切らなくてもいいだろうしなぁ」
富山が天井を見上げて考える。
「あ、あのぉぉ……」
突然の今にも掻き消えそうな声に全員が振り向く。
そこには今まで喋っていなかった女子がいた。
「私も気になることがあるんですけど……」
「言ってみて、葵さん」
「は、はい……」
彼女、
「血文字の件なんですけどぉ……『彼を愛する者より』ていう文句じゃないですかぁ……。『彼』と言っているということは、犯人は女なのかなぁと思って……」
「でもあの容疑者の中で女性なのは黒瀬部長だけです」
「確かに私だけ。でも、女性とは断定できないわ。カモフラージュのために『彼』と付けた可能性もある。いえ、その視点でいくと私目線確実にカモフラージュね」
「それに、愛する者って言っても恋人以外にも兄弟とか、血に繋がった親族の可能性もあるんじゃないのか」
「断定難しいですかぁ……お騒がせしましたぁ……」
そう言って雛美は椅子に座った。
「……議論もひと段落ついたようだし、夕食まで自由行動とします」
黒瀬が言い、何人かの気だるげな返事が聞こえた。
「どうだよ勘探偵」
「勘はそんな万能じゃないんだよ」
「え、それ言う?」
「今感じてる勘は、血が出ない殺し方には意味があるってこと、密室トリックはさほど難しくないってことかな」
「何そのわかった風口調。やっぱ万能でしょ」
「うるさいぞ澪」
「じゃあ私も適当に勘言っちゃお。『彼』は絶対この合宿参加者の誰かだと思う!」
「……まぁもしかしたら間違いじゃないかもしれない」
「私も勘探偵になれそう」
「勘は僕の特権だ」
「違うよ? w」
「……来ましたよ?」
声が教室内に反響する。中は薄暗いが誰もいない。声の主は電気のスイッチを押した。
中は明るくなった。が、そこには人の姿は無い。昼に見たときと同じ景色だ。
「あの……御守ですけど……」
教室に入る。そして二、三歩歩く。
その瞬間だった。御守の背後へと何かが近づいた。そして彼女の首にタオルがかかる。
「!?」
声が出なかった。声にならない悲鳴。彼女の首にくい込むタオル。
彼女は朦朧としながらも自分の首を締めている相手の顔を見た。
「な、何であなたが……!」
だが、すぐに御守の意識は無くなった。