幻想の地に吹き荒れる熱風   作:うどんこ

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第2話 ひと時

 霊夢がゾゾと名乗る悪魔と出会った次の日からもゾゾはいつもの様に現れた。ただ一つ違う点があるとすれば、ゾゾから霊夢に話しかけることであった。

 

「やあやあ、おはよう霊夢。今日もいい天気だね。昨日はぐっすり眠れたかな」

「おはようゾゾ。アンタはいつも暇そうね。そんな暇そうなアンタにいい仕事があるのよ。私の畑仕事の手伝いなんてどうかしら」

「おっ、この私に働けと言うのかい! いいだろう! バリバリ手伝ってあげようじゃないか」

 

 ノリノリでそう答えるゾゾを霊夢は呆れた顔で見る。

 

「冗談に決まってるじゃないの……第一(いなご)のアンタが何を手伝うのよ」

「そうだねぇ……出来の悪い野菜に虫喰い穴を開けるとかかな?」

「害虫の発想ね。そんな事したら容赦なく踏み潰すわよ」

 

 それを聞いたゾゾは楽しそうに飛び跳ねながら霊夢の周りをくるくると回る。

 

「おお怖い怖い、まあ本当に手伝うとしたら畑の中の雑草を枯らす事くらいは出来るかな?」

「蝗のアンタが本当にそんな事が出来るの? あんまり信じられないんだけど」

 

 疑わしげな視線を飛ばす霊夢に対し、ケラケラと笑い飛ばしながらゾゾは空中で一回転しながら飛び跳ねる。それを見た霊夢は少し馬鹿にされているように感じた。

 

「忘れたのかい、霊夢? 私はこれでも悪魔なんだよ。それくらいのことは朝飯前さ。その気になれば霊夢の畑の野菜全てを枯れ果てさせるのもわけないのさ」

「そんなことしたらホントにブッ潰すわよ」

「もし霊夢が望めば、あそこにある山もハゲ山にする事も可能なのさ。どうだい? やって欲しいかい」

 

 そんな発言をしたゾゾの視線の先には天狗達が根城にしている妖怪の山があった。冗談でも口にしていいことではない。もし天狗に聞かれていたら攻撃されても文句は言えないようなことである。

 

「あんまり馬鹿言ってんじゃないわよ。そもそもそんな力持ってないでしょうに」

「まあ実際にやったとしても、天狗達に襲われちゃうだろうからなぁ。そうなると面倒だからしないけどね」

 

 ゾゾのまるで行うことは可能であるような発言に呆れながらも、霊夢はあまり信じていないようであった。

 その後も、霊夢とゾゾは他愛もない会話を続けていた。するとゾゾは何かを思い出したかのように霊夢に話しかける。

 

「そうそう! この間の答えはどうなんだい? 魔法使いになる決心はついたかな?」

「前も言ったでしょ、そんなものに興味ないって。何回同じこと聞いてんのよ」

 

 それを聞いたゾゾはガッカリした様子である。いつも同じことを聞いていつも断られているのだが懲りないようだ。

 

「いやあ、いつか心変わりするかなって……でも霊夢だったら凄い魔法使いになれる素質があるのにどうしてなりたくないんだい?」

「単純に面倒臭いからよ。色々勉強やら何やらしなきゃいけないんでしょ? そんなのするくらいだったらならないわ」

「無精者だねぇ……魔法使いになったら私が使い魔になって色々サポートしてあげるのに」

「犬とか猫とかならともかく、蝗のアンタを使い魔にするなんて嫌よ。アンタを連れてる姿なんてどう見てもショボいじゃない」

 

 それを聞いたゾゾは長い溜め息を吐いた。どうやら霊夢の言葉に不満があるらしい。

 

「前にも言ったけど、この身体は私の本当の身体じゃないんだよ。あくまでこの蝗の身体は媒体さ。憑依して霊夢と会話しているに過ぎないのさ」

「何で蝗に取り憑いてるのよ、もっとましな生き物に取り憑けばよかったのに」

「それは一番憑依が簡単だからだよ。ほんの少しの力を込めるだけで意のままに操れるからね。()()がとってもいいんだ」

「……もしかして私にも取り憑けるわけ」

「出来るだろうけどそんなの楽しくないからしないよ」

「あっそ、まあ少し安心したわ」

 

 少しホッとした霊夢の肩に飛び乗ったゾゾは、わざとらしい悲しそうな声を上げる。どうも霊夢への勧誘は諦めていないようだ。

 

「ああ、他の魔法使いだったら私と契約できるって聞いたら絶対歓喜するんだけどなぁ……まあ霊夢以外の奴に従う気はないけどね。そんな一途な私の意を汲んでくれても良いと思うんだけどなぁ……」

「しつこいわね、私は魔法使いじゃないからアンタを使い魔にできるって聞いてもなんとも思わないわよ。それに契約なんて口だけでできる訳ないじゃない。せめて契約書を持ってきなさいよ」

 

 その言葉でゾゾの目の色が変わる。それに霊夢も気づいたが既に遅かった。

 

「契約書を持ってくればいいんだね! それもそうだよね、形に残らない口約束は不安だもんね! そっかそっか、書面であれば交渉の余地はあると!」

「別にそういう訳じゃ……」

「すぐに作成して持ってこなきゃいけないねぇ! 善は急げと言うからね、今すぐ取り掛からなきゃ! それじゃ霊夢、明日を楽しみにしててね! バイバイ!」

 

 そう言い残すとゾゾは勢い良く霊夢の肩から飛び出し、そのまま遠くへ飛んでいってしまった。それを見送った霊夢は疲れた様な声を出す。

 

「はあ、明日は一段と面倒臭くなりそうね」

 

 ふと畑の方に目をやると、所々に生えていた雑草が全て枯れていた。どうやらゾゾの力ならこれくらいの事は可能らしい。

 霊夢は明日のことを考えて少し億劫そうにしながらも、何処か楽しげであった。




今回も短めです。
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