俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

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餓狼と魔術師のネタが思い付かないにも関わらず、別のネタに手を出してしまいました。


始まる新学期。

 鮮やかにさいかに咲き誇り人の目と心に華やかに春の訪れとを実感させ、冬の厳しさから解放されんだって事を優しく告げてくれた桜の花も、あらかた散りゆき黄緑色の葉が占める割合の方が多くなり始めた四月の上旬、この日俺は高校2年生へと進級した、まぁぶっちゃけて言えば新学期の最初の日だ。

 ウチの親父や母ちゃんが学生だった頃は、この時期でも桜の木はまだ十分にその花を付けていたそうなんだが、これもまた気象変化の影響なのかそれとも…。

 

 「…ほぉん、2年F組か…。」

 

 登校して、見ればもう大勢の生徒達が既に屯している校舎前に、去年の受験の合格発表の際にも設置されていた掲示板に記されたクラスの振り分けにより俺は今年度F組に配属されたと言う事が確認出来た。

 しかもそれによると担任はあの平塚先生だと言う事だ、いや別に先生に対して隔意がある訳でも疎んじている訳でも無いんだけど、つか個人的には話の分かる良い先生だとは思ってるんだが、あのヘビースモーカーぶりと熱血マンガ大好きなノリに若干着いて行けないなと思っているだけなんだがな。

 

 「あっ!やっはろーヒッキー、やったよ今度は一緒のクラスになれたよ、えへへ。」

 

 そう言って俺に声を掛けて来たのは、去年の入学式の日に起こった出来事により出会った二人の同級生の女子の内の一人、その名は由比ヶ浜結衣。

 小走りに俺の側まで駆け寄り満面の笑みで喜びをあらわす由比ヶ浜、まるでその頭の上とお尻の辺りには犬耳がピコピコ動き尻尾がブンブンと揺れている様が幻視されるみたいだ。

 

 「おう、由比ヶ浜おはようさん…つかそのあだ名どうにかならないモンなのかよ、お前は…。」

 

 壊滅的な料理の腕前とやはり壊滅的なネーミングセンス、そしてたわわな実りを宿した少女だ。

 何でも学年男子人気トップスリーにランクインしているらしく、まぁ俺も確かにかなり可愛いし凄えいい娘だと俺は思っている。

 その幼さを残したかの様なベビーフェイスと、それに反する様に自己主張の激しいお胸様には男の夢とロマンが詰まっているのだろうか、そしてそれはまさに男の視線を引き付ける『強い力で僕を引き付けて離さないあの娘はエレクトリックマグネット♪』なのかも試練。

 気を抜くと思わず俺の視線も其処に向かいそうになってしまうので、こいつと居ると常に自戒を強いられるので、まさに試練だ。

 

 「え〜っ、良いじゃんヒッキーって超可愛いじゃん、比企谷だからヒッキーだしそれに「ストップだ由比ヶ浜!」…あぁうんごめんね、学校では出来るだけナイショ…だったよね。」

 

 俺は由比ヶ浜が口走ろうとした、俺のあまりおおっぴらに知られたく無い秘密と言う程のものでは無いのだが、面倒だからあまり公言しないで欲しいソレを口走ろうとしたので待ったを掛けた訳だ。

 

 「ああ、頼むわマジでもう暫くの間はな。」

 

 「うん、気をつけるね。」

 

 俺に言われた事を直ぐに受入れて反省し、俺の頼みを素直に聞き入れてくれた由比ヶ浜はニコリと微笑み返事をしてくれたし。

 こう言ったところはマジ由比ヶ浜の美点だな、しかしもう自分のクラスが何処かも分かった事だし此処を離れた方が良いだろう。

 

 「おう、そんじゃ教室へ行って…」

 

 俺は由比ヶ浜へ移動を促すべく、語り掛けたその時。

 

 「あら、二人でこの様な場所で、貴方達は何をイチャついているのかしら、由比ヶ浜さん、私が居ないからと抜け駆けは卑怯よ。」

 

 と、なんだか不穏な発言をする女子の声が俺達へ向けて掛けられ、俺と由比ヶ浜はその声が聞こえて来た方へと顔を向けた。

 艷やかな光沢を放つ美しく長い濡れ羽色の髪をかきあげる仕草も華麗に極まって、その光景は見る者に一種の美を垣間見せるが如し。

 

 「よう、雪ノ下おはようさん、てかお前朝イチからそんな不穏当な発言は控えてもらえませんかね。」 

 

 「あっ、ゆきのんやっはろー!」

 

 その女子の名は雪ノ下雪乃。

 

 雪ノ下ともまた由比ヶ浜同様に去年の入学式の日に出会い、彼女と同様に親交を深めて来た。

 先程語った様に長く美しい黒髪にスレンダーな、身長は然程高くは無いがその佇まいは一流のモデルであるかの様にも感じられる。

 然しただ一点だけは由比ヶ浜に遠く及ばず、本人も由比ヶ浜の其処を見る度にその事をコンプレックスに感じている様で、偶に嫉妬の目線を向けている事を俺は見逃してはいない。

 

 「やっ…おはよう由比ヶ浜さん、比企谷君。」

 

 ぷぷっ…雪ノ下のやつ思わず由比ヶ浜流のアホっぽい挨拶が口を吐きそうになってやがんの。

 

 「あら何かしら比企谷君、何か遺言を遺すのならば私から直接小町さんには伝えておくわよ。」

 

 ……怖いわコイツ、顔色一つ変えずに平然とそんな発言をするんだからな、つか何でコイツはこうも簡単に俺の考えを読めるんだ。」

 

 「はぁ…貴方の場合は顔と口に出やすいのよ。」

 

 「うんそうだよねヒッキーってさ!」

 

 そんなにか…確かに昔中学時代は笑い方がキモいとか、色々言われてけど、今はそうでも無いと思うんですけど…つか君達が敏感過ぎなんじゃないのかと俺的には思うのですけど、まるで知覚過敏なんじゃねって位に…。

 

 「てか、いい加減此処を離れないか、男子からの嫉妬の視線がさっきから殺気を伴ったかの様に俺に突き刺さってるんですけど…。」

 

 そうなんだよ…由比ヶ浜もだが、この雪ノ下もまたこの学校の男子人気ランキングトップスリーにランクインする、いや実質的にナンバーワンの座に鎮座する美少女なんだよ雪ノ下は。

 なのでそんなトップクラス美少女二人が、目つきの悪い大してイケているフェイスでも無い男と一緒に居るんだから、そりゃあ嫉妬もされるよな…。

 

 「あら、その様な有象無象の事など気に掛ける必要などが私達に必要があるのかしら…けれど確かに何時までもこの場所を私達だけで独占している状況と言うのも、マナー違反と言えなくもないでしょうし、一旦離れましょうか、それと老婆心ながら言わせてもらうけれど比企谷君、今のダジャレはお世辞にも上手いとは言えないわね、そう酷くつまらなかったわ酷くね。」

 

 雪ノ下雪乃…コイツはマジで、俺と由比ヶ浜以外の人間に対しては異様にアタリが強いってか(いや俺に対してもそうですね)人の事を有象無象とか言い切るんだからな、学業成績学年トップの実力と常に正論を以て王道を歩む雪ノ下にとっては他人の嫉妬心なんぞ路傍の石程の障害物にもならないって事なんだろうな…けど出来れば不必要に敵を作る様な発言は控えて欲しいと八幡思うんだ。

 

 

 

 

 「けどさゆきのんはスゴイよね、去年の成績ずっとトップだったんだよね、あたしなんて下から数えた方が早いくらいだし。」

 

 掲示板の元から離れ三人揃って各自の教室へ向かうべく、コンクリートの上にリノリウム製の床材を貼り付けた廊下を歩きながら由比ヶ浜が雪ノ下の成績について賞賛し、自身のソレを顧みて自らを落す。

 雪ノ下は所謂帰国子女ってやつだ、中学時代はアメリカに留学の経験もありそうで、この総武高校には国際教養科J組と言う学科があるのだが、まぁ言ってしまえばこの千葉県内でも有数の進学校である我が校に於いて、その学科に属する生徒達は他の普通科クラスの生徒に比べ偏差値が高くこのクラスに所属する生徒はエリートと言っても過言では無いだろう、オマケにそのクラスの生徒の大半は女子と来ている。

 

 「そうボヤくなよ由比ヶ浜、お前だって入学当初に比べりゃ成績は上がってんだろ、それにお前はそうやって羨んでいるがよ、雪ノ下だってただ黙っていてその成績をキープしているって訳じゃ無ぇんだぞ、俺達の見えないところではソレを維持する為の努力は怠っちゃいないんだぞ、多分知らんけど。」

 

 「そうね比企谷君の言う通りよ由比ヶ浜さん、私は何事も努力を怠るつもりは無いのよ、例えどんなに小さな獲物を狩る為にでも自らが持つ最善を以て事に当たるわ。」

 

 獲物を狩るとか、例え話一つとってもホント何でコイツはこんなにも好戦的な性格なんだろうか、まぁ以前聞いた雪ノ下の小学生時代の経験から来る、経験則に則ったとかそんもんなんだろうが…。

 

 「…うん、そうなんだ…ね、あっそうだ今日はさ初日だからお昼で終わりだよね、三人で何か食べに行こうよ、二人共予定は無いんだよね!?」

 

 切り替え速っ!しおらしく落ち込んで見せたかと思えば直ぐさま、笑顔で昼飯に誘うとか、陽キャなのかよ…あっ陽キャでしたね由比ヶ浜さんってば、俺や雪ノ下と違ってコイツは人当たりも良いし直ぐに他人と仲良くなれるしな、まぁそのお陰で俺達三人は今こんなふうにつるんでいられるんだし。

 まぁそれは扠置いてもこの切り替えの速さたるや、まるで瞬間湯沸かし器か熱交換器かって位に速すぎるんじゃね?

 

 「ええ、私は別に予定は無いけれど比企谷君はどうかしら?」

 

 「…ヒッキー、どうかな?」

 

 雪ノ下と由比ヶ浜が俺に予定を尋ねてくる、二人して上目遣いで俺を見つめながらってオマケ付きだ、くっ美少女二人の上目遣いとか卑怯にも程がありませんかね。

 

 「まぁ、今週はローテに入ってないからな、よっぽど緊急じゃ無きゃ大丈夫だと思うし、良いぞ俺も。」

 

 そう答えるしか無いよな、実際…しかもそのせいで廊下を行く男子の俺を見る目が………。

 

 「じゃあ決まりだね、放課後三人で集つまってからね!」

 

 「ああ、けど俺今日も単車で来てんだよな。」

 

 今週はローテに組み込まれてはいないけど、緊急の要件が入らないとは限らないからな、そんな時に備えて通学にも単車を利用してるんだが。

 

 「そっか、バイクなんだヒッキー…じゃあさ、あたしとゆきのんを後ろに乗っけて行ってよ!?」

 

 おいおい、由比ヶ浜さんいくら何でも単車にサンケツは法規的に無理ですよ。

 

 「無茶言うなよ由比ヶ浜、単車ってのは二人までしか乗れないんだぞ、しかも同乗者にもヘルメットが必要なんだ。」

 

 サイドカーでもあれば話は別なんだけどな、無い物はどうしようも無いし。

 

 「…比企谷君、予備のヘルメットは有るのかしら、もし有るのだったら私と由比ヶ浜さんを交代で乗せてくれれば良いのではないかしら。」

 

 うんまぁ確かに予備のヘルメットはパニアケースに積んではいるけど、雪ノ下と由比ヶ浜を後ろに乗せての2往復とか目立ち過ぎなんてもんじゃ無い。

 

 「あっそうだよ!流石ゆきのん、ねえヒッキーそうしようよ、あたしヒッキーと一緒にバイクに乗ってみたかったんだよ、すっごく!。」

 

 雪ノ下の意見に同意した由比ヶ浜が、またしても幻の犬耳と犬尻尾をフリフリしながらせがむ。

 はぁ〜…これは俺に断るって選択肢は無い訳ですね、解りますとも。

 

 「…はいよ、了解。」

 

 渋々ながら俺は由比ヶ浜と雪ノ下の要望に了解した、と言う体を顕し返事をしたんだが、実は内心緊張で心臓がバクバクいってるのは秘密だ…いや女子を単車の後ろに乗せるとか、そんな青春映画的イベントを俺が体験する事になるとか、思いもして無かったし。

 そのアレだ…後に乗せた由比ヶ浜と雪ノ下が俺の身体にその身を預けて、それが俺の背に触れるとか…考えてなんか無いんだからね……嘘です、ものすっごい考えてしまいました。

 

 

 

 

 「それじゃゆきのんまた放課後ね!」

 

 由比ヶ浜と俺はF組で雪ノ下はJ組なので、F組の教室の前で雪ノ下とは一旦お別れだ。

 

 「ええまた後で、由比ヶ浜さん、それと比企谷君も。」

 

 「ああ、そんじゃあな。」

 

 挨拶を済ませ俺と由比ヶ浜はF組の教室内へと入室した。

 もう既に教室内にはかなりの人数が入室していて、幾つかのグループをつくり駄弁っている。

 大方一年の頃同じクラスだったとかだろうか、仲のおよろしい事で。

 まぁ何時までもそんな連中を見ていてもしょうが無いし自分の席を、とまぁ去年と同じなら最初は出席番号順に割り振られているんだろうけどな。

 

 「あっ、さがみんまた同じクラスなんだ、あっちには優美子と…あの眼鏡の娘は知らないけど、ヒッキーあたしちょっと行ってくるね!」

 

 そう言って由比ヶ浜は俺に手を振りながら金髪ドリルの派手なギャルの元へ向かって行った。

 だったら俺はやる事も無いからな、自分の席で時間が来るまで黙って寝てようかな、よしそうしよう、べっ、別にお話する相手が由比ヶ浜しかいないとかって事は無いんだからね…ぴえん。

 

 

 

 

 

 新学期初日のプログラムも恙無く終了し俺は今校内の通学車両駐輪場に居たりする、カスタムされた愛車KLX250を前にリアケースから予備のヘルメットを取り出している所だ、そこへ由比ヶ浜と雪ノ下が現れ俺に声を掛けてきた。

 

 「ヒッキーお待たせ、ゆきのんも一緒だよ!」

 

 「その、ごめんなさい比企谷君、おそくなってしまったかしら…。」

 

 雪ノ下はどうやら教室を後にする時に何かしらあったのかも知れないな、っても俺だってここへ来てから大した時間が経った訳でも無いからな。

 

 「いや大丈夫だ雪ノ下、俺もまだ此処へ来たばかりだからな。」

 

 雪ノ下と話していると、由比ヶ浜がマジマジと俺の単車の周りを彼方此方から見ている『ふ〜ん』とか『ほへぇ〜』とか言いながら。

 

 「ねぇヒッキーこのバイクってさ前にヒッキーが乗ってたのとは違うよね?」

 

 おや、気が付きましたかね由比ヶ浜さんや!そうたんだよ、実は俺は現在2台の単車を所有している。

 まぁ、正確に言うとこのKLXは俺の個人所有物なんだが、もう一台は任務の為に支給されている物なんだけど。

 

 「ああ、コイツは俺が自分で買った単車でな、前に由比ヶ浜が見たのは…。」

 

 「『猛士』からの支給品と言う事なのかしら比企谷君!?」

 

 「おっ!」

 

 流石に鋭いな雪ノ下は、彼女が今口にした『猛士』と言うのは俺が所属する、表向きは所謂NPO団体で…っとその説明は後にしておこう。

 

 「まぁ、そういう事だな。」

 

 「ほへぇ〜、でもさこの子すっごく背が高いよねシートの位置とかあたしじゃ足が地面に届かないよね。」

 

 「まぁこのKLXはオフロード車だしな、けど乗ってしまえばサスペンションが沈むからそれなりに足も付くから心配は無いけどな、よっぽど背が低いか相当な短足じゃあ無きゃな。」

 

 と由比ヶ浜に説明をしているんだが、果たしてこの娘は理解してくれているのやら『ほへぇ〜そうなんだ』とか気の無さ気な返事をしながら、KLXをシゲシゲ見ているし、てかお前さん何気に『ほへぇ〜』って何度も言ってるよな。

 

 「うん、この子の名前はエッちゃんに決定!」

 

 由比ヶ浜が左手を腰に当て、右手の人差し指でズビシっとKLXを指指し、勝手に名前を付けやがった…うわっ何そのめっちゃドヤった顔、その良い仕事しましたって感じの顔ったらもう…。

 

 「…いや、コイツにはKLXって名前が既にあるんだが、それにお前はネーミングセンスが皆無なんだから無理に変な名前付けるんじゃ無い。」

 

 「え〜っ良いじゃんエッちゃんって、可愛いでしょ!?」

 

 「いや俺はコイツに可愛さとか求めて無いし、てか可愛いのが良いなら他を当たってくれっての。」

 

 もうせっかく可愛い名前なのに…とか由比ヶ浜が不満を漏らしているが、此処は心を『鬼』にして無視だ。

 

 「まぁ…そんな事よりも速『トゥルルルル…トゥルルルル…』ん、悪い電話だちょっと待っててくれ。」

 

 速く行こうと二人に言おうとしたその時俺のスマホから着信音が響き、俺は懐からソレを取り出した。

 そのスマホの画面に表示された電番と相手の名前に俺は、どうやらこれは由比ヶ浜と雪ノ下の二人と共に今日は一緒に昼飯を食べると言う約束を果たせなくなるであろう事を悟った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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