俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか? 作:佐世保の中年ライダー
仁志さんの奥さんはみどりさん、トドロキさんの奥さんは日菜佳さんと言う事でご了承下さい。
イブキさんと香須実さんもそうすべきかなと思案中です。
だとすると猛士の皆さん職場恋愛率高過ぎ問題。
はぁ〜、どうしてこうなった。
俺は東京都葛飾区柴又は甘味処『たちばな』へと同級生の女子二人と後輩一人そして妹と共に此処へとやって来た。
この葛飾区柴又と言えばかつて国民的映画と言われたフーテンの寅さんで有名な『男はつら○よ』の舞台としても有名だけども、それは俺には関係無い。
このたちばなの外観は如何にも純和風建築物って様相で、外からこの建物を見ているだけでも何となくこの国の歴史に思いを馳せるって気持ちを喚起させられるって感じになりそうなんだが、その内側は外からは判らないけどまるで時代劇に出て来そうな忍者屋敷もビックリなからくり仕掛けが随所に施されていて、知らない者が迂闊に何かに触れようものなら…。
まぁ甘味処としての店舗スペースはそんなこと無いから大丈夫なんだけどね、てか雪ノ下なんか家業が建設業だからなのかこう言った建造物にかなり興味が有るみたいで、此処へ来る度になんかちょっと色っぽく溜息吐いていたりするんだよな、アレかもしかすると雪ノ下は建物フェチとかなの「比企谷君、貴方自重と言う言葉を知っているかしら、ふふふ」善処する……。」
はて俺はまたしてもそしてどこら辺りから声に出していたのやら、怖いからその目は止めようねゆきのんさん……。
しかし雪ノ下だけで無くこのたちばなへ初めて訪れた一色もまた純和風の外観に感じる所がある様で『先輩こう言う和風の建物のお店ってのも案外暖かい雰囲気があっていい物ですね♡』などとあざといキャラを作りながらではあるが、がたちばなの外観から醸される暖かな雰囲気には素直に感銘を受けた様だ。
「あざといやり直し! だがまぁ気に入ってくれたんなら俺としても連れて来た甲斐もあるってかモンだな。」
「……もう先輩は私の扱いが雑すぎるんじゃないですか、もっと待遇の改善を要求します!でもそうですね、素敵な建物だと本当に思ってますよ。」
まぁその様な戯れの後俺達はたちばなの暖簾をくぐり店内へと入って行き、皆さんに挨拶と持参した土産物を渡し席へと案内された其処で暫しの歓談タイムと相成った。
「あのはじめまして、一色いろはと言います先輩に先日魔化魍から助けてもらいまして、それと私のお父さんの事も皆さんご存知みたいですし私も挨拶に伺いました、よろしくおねがいします。」
たちばなの皆さんとは初対面の一色を紹介すると、意外な事に一色はきちんとした言葉で挨拶をしやがった。
一色ってば、やろうと思えばごく無難に礼儀正しく話す事だって出来るんじゃないか、コイツは普通に高レベルのルックスしてるし素のままでも十分イケると思うんだがな、てかあんまりあざといキャラ作りをやり過ぎると勘違いヤローから危ない誘いを受けたり同性からは忌避されたり敵対したりする結果になるんじゃないのか。
まぁ所詮は他人事だし一色があくまでもそれを続けるってのなら俺の方から何かを言う必要もないだろうし、どう言った選択を一色がしようともそれは本人の意志って事ですハイ。
けど俺は一色警部には何かと気に掛けてもらってるし、そこの所を考えりゃ知らん顔も出来ないしな、はてどうするべきかな。
「おっ、こりゃまたゆきのんちゃんやガハマちゃんやこまっちゃんにも劣らぬ可愛い子じゃないかヒビキ、何だかんだとお前も隅に置けないヤツだなハハハハッっと俺は日高仁志、八幡の前の先代の響鬼だったおじさんだよ、よろしくなシュッ!…ええっと、いろはすちゃん。」
仁志さんが何時もの挨拶の後に命名した一色のニックネーム、それは何処ぞのメーカーが発売した飲料水の商品名だった、敢えて口には出しませんけどそのネーミングセンスは如何な物でしょうかね先代、言っちゃ悪いっすけど由比ヶ浜のセンスとあまり変わらないと思います。
何せカガヤキさんの恋人?の持田さんの事を『モッチー』って呼んでるし、やっぱどう考えても由比ヶ浜レベルだよな仁志さん……。
「……はぁ、よろしくおねがいします日高さん。」
ぷふっ、一色のやつどう反応すれば良いのか戸惑ってんな、口調が戸惑ってます感に溢れてんじゃないかよハハッ(乾)
「一色、ハッキリ言って仁志さんのネーミングセンスは由比ヶ浜並だからな、こう言うもんだと諦めろ。」
なので一応先輩として後輩に助け舟を出しておく事にする、まぁ俺程度でも泥舟よりかは多少マシだよな……てか俺言っちゃったよ言うつもりがなかった事までさ。
「なっ?ちょっ!?ヒッキーどういう事だしッ!!」
由比ヶ浜がプリプリとお怒りモードで身を乗り出して俺に問い質す、くっ怒り方まで可愛いんだよなコイツは。
「そうだぞヒビキ!俺は兎も角ガハマちゃんまで落としちゃ駄目だぞ、男として其処は女の子をアゲとかなきゃな。」
それに便乗するかの様に仁志さんも俺を諭すんだが、てか俺は兎も角ってもしかして仁志さん自覚があるんですかね。
まぁそんなこんなで掴みはOKって感じで和気藹々と我が総武高校勢プラス小町と猛士メンバーたちばな勢との歓談は始まった。
「ふふふ、そうなんだヒビキ君って最近は学校じゃそんな感じなのね。」
「はい、教室じゃいっつも寝たふりしてるからあたしがヒッキーに話し掛けて寝させない様にしてるんです、ねっヒッキー!」
この様に店内では今、由比ヶ浜と雪ノ下による俺の学校内での生活ぶりをたちばなの皆さんに暴露している所でした。
因みに現在店内には他のお客さんが居ない為に、香須実さんと日菜佳さんにおやっさんの親子三人と仁志さんとみどりさんまでもが俺達が案内された座敷席に集まっている次第だったりする。
「寝たふりしてんじゃ無くてマジで俺は寝むいんだけどな、それにあれだぞ諺にもあるだろう春眠暁を覚えずってな、だから俺は季節的には当然としてだな生理学的に人として正しく過ごしているのであって悪いのはそれを妨害しようとする由比ヶ浜達の方だと俺は断言する。」
まぁ今言った事は紛れも無き俺の本心ではあるんたが正直に言って気恥ずかしさもある訳なんだわこれがな、いや由比ヶ浜や雪ノ下クラスの女子から休み時間の度に話し掛けられるとか嬉しく無い訳じゃ決して無いんだが、基本が人の目が気になる元ボッチの陰キャ男子としてはだなあまり悪目立ちはしたくは無いと何度も言ってるんだけどな………。
「あははっ、いやぁもうヒビキ君の理屈屋ぶりは独り立ちしても健在なんですねぇ、もうお姉さんいっそ感心しちゃったわ。」
「いや日菜佳さん、俺はただ単に人間の生態を含む学術的な観点からの見解を述べただけであってです「そう言うのが理屈屋って言われる原因なんだよなお兄ちゃんはさ、もう高校二年生なんだからもう少し社交的になろうよ。」……。」
日菜佳さんに反論しようと試みていた俺だったが、その言葉を小町がさえ切りあまつさえお説教まで頂戴してしまったよ小町だけは俺の味方だと思っていたのに、お兄ちゃん悲しい。
「いやぁでもねぇわたしもヒビキ君の言う事が分からなくも無いんだよね、この時期は寒くも無く暑くも無い心地良い季節だからね、公園へでも出掛けて芝生の上に横たわろう物ならもう直ぐにでも心地良い眠りに誘われる自信があるよハハハハ。」
しかしここに頼り甲斐のある強力な援軍が現れた、おやっさんが俺の言葉を肯定してくれたのだ、そして。
「うん、俺もおやっさんに同感だな、この時期の昼下がりの公園の芝生はまさに青空のもとに敷かれた天然の布団の様な感じなんだよな。」
仁志さんもまたおやっさんの後に続きこの季節の睡眠の心地良さについて語ってくれた、うん、お二人の発言に俺も大いに賛成だわ。
「そっすよね、ええっと何てんですかね、爽やかで心地良い春風の吹く草原で草の上に大の字に寝っ転がってその風を受けながら黙って目を瞑って陽の光を受けながら静かに眠るって風情があって最高ですよね。」
おやっさんと仁志さんに続き俺も持論を開陳しお二人はうんうんと頷き肯定してくれた、俺はまさに二人が作った流れに乗ったって訳である、だって乗るしか無いだろうがよこのビックウェーブに!って言う事だ。
でもって俺はその波に更に乗って由比ヶ浜達にドヤッとした表情を、俺なりにつくり勝ち誇ったかの如くに宣言する。
「ほら見ろおやっさんと仁志さんもこう言っているんだ、俺が何も間違っちゃいないって事がここに証明されたって言う訳だ、フヒッ!」
………宣言したは良い物の、俺を見る由比ヶ浜達の視線と表情は何かこう酷く残念な物でも見るかの様な、何とも形容し難い物でその表情を見ていると……ちょっと止めてくれるその表情で見られると何だか悲しく切ない気分になっちゃうでしょうってか何さ、何なの?
「はぁ…ねえ比企谷君、貴方はさっき言ったわよね“この季節は眠くなる”と、けれど私達が知る貴方は季節など関係無く常に放って置くと休み時間は机に突っ伏して居るじゃない、今貴方はまるで私達に勝利宣言でもするかの様な顔をして宣ったけれど残念ながら貴方は、春眠暁を覚えずなどと口走った瞬間から既に敗北していたのよ。」
雪ノ下は俺の発言の穴をあっさりと指摘し今度は逆に俺に対して勝ち誇った様に笑みを見せる、まさにそれはしてやったりとでも言っているかの如くに。
そして両手で湯呑みを抱えて静かにお茶を飲む雪ノ下、くっこう言った所作が矢鱈と絵になるんだよな雪ノ下は、流石は千葉でも有名な建設業社社長令嬢なだけはあるな、しかしおにょれ雪ノ下奴ッ痛い所を突かれてしまったぜ全く。
「くっ…相手に対して勝ち誇った時、そいつは既に敗北しているってのは真実だったのかよ……。」
「ハハハハッ、ゆきのんちゃんに掛かっちゃ猛士最年少デビューの記録を塗り替えた太鼓の鬼も形無しだなヒビキ。」
仁志さんのその一言によりたちばなの店内は皆の朗らかな笑声に包まれた、俺ともう一人初めてこの店を訪れた一色を除いてだが。
俺は雪ノ下に撃墜された事により消沈しているんだが、一色は初めてこのたちばなへ訪れた故にだろうかこの場に馴染めて居ないのかも知れない。
いや、厳密に言うと一色も笑っちゃ居るんだが、その笑顔は何処か不自然な作り笑いの様な感じなのだ、まぁそれに気が付くのは多くの経験を積んだ大人か俺の様に過去に人の悪意を向けられ、それが為に人の言動を観察する癖が付いている様な奴位だろうけど。
「あっそだ、ヒッキーが最年少デビューってどういう意味なんですか?」
その様に俺が一色を気に掛けていると由比ヶ浜がたちばなの皆さんに俺のデビューに付いての質問を発した、つか何気にデビューとか言ってると何か歌手とかアイドルとか俳優かと思っちゃいそうだけど、俺じゃそう言った所からお誘いなんかあるわきゃ無いしなそんな勘違いはしないよ。
「ああ、それはですねヒビキ君がこの猛士にこれ迄所属していた、または現在所属している鬼の中で独り立ちした時の年齢が一番若いって事でして、それ迄の最年少記録は先代響鬼である仁志さんの若干十六歳だったんですよ。」
其処に空かさず説明解説を務めてくれたのは日菜佳さんだ、ご丁寧な解説痛み入り申し候、てか何気に日菜佳さんって口調が敬語なんだよな。
その解説により俺と仁志さんに総武高校女子達の熱い視線が注がれる、うはぁこりゃ何か気恥ずかしいわ。
「その仁志さんは鬼としての修行を始めてから最短期間でのデビューの記録を今でも保持しているんだけどね、ヒビキ君が修行を始めたのが中学二年生の夏からで、デビューが高校一年の夏だったから期間は約二年で、対する仁志さんは修行期間一年程でのデビューだからねこれは驚異的な記録と言っても過言じゃ無いのよ。」
更に香須実さんが追加で補足を加え皆の視線に尊敬の念が加わった様な感じとなった、うんやっぱり凄えんだよな仁志さんって俺自身体験したから物凄く理解出来るが、一年で独り立ちなんて実際無理だよマジでさ。
「へえ〜、日高さんは勿論ですけど先輩も実は凄い人だったんですねぇ、やっぱり私の目に狂いは無かったんですねっせ〜んぱい!」
一色が甘ったるくて居て更にあざとさ増し増しの声音を作り上げパッチンとウインクまで加えて俺や仁志さんを持ち上げる様な発言をしているが、それはオマケであってその発言の肝となっているのは一色自身の『どうですか、こんなに私って可愛いでしょう』と言う計算の元に発せられた台詞だと俺は解釈しているしそれは強ち正解から遠く離れてはいないと思うが。
「はぁ……お前は一々あざといんだっての、もっと普通にしてろよお前はそれでも十分なんだからよ。」
俺がそう言うと『むぅ〜っあざとく無いですぅ』と頬を赤らめながらも不満たらたらって感じで、文句をたれる一色だがその言い方からして既にあざといんだよ。
「あの、さっき先輩と日高さんの事を太鼓の鬼って言いましたけど、もしかして鬼ってまだ太鼓以外にも別の物を使って魔化魍を退治する鬼の人もいるんですか。」
唐突って訳でも無いだろうけど、暫し間を置いて太鼓の鬼ってワードに疑問を感じた一色は俺達に問うてくる、その一色の問に乗っかるように由比ヶ浜と雪ノ下もまた知りたいかった様で、俺達鬼についての説明が開始された。
「と言う訳で鬼が魔化魍に清めの音を叩き込む為に使うのが響鬼君や輝鬼君の『太鼓』の鬼で轟鬼君達が『弦』の鬼、これはギターなどの弦楽器を模した物でね、それと息吹鬼や淡唯鬼君が『管』の鬼所謂管楽器、フルートだとかトランペットだね。」
と、この様に猛士関東支部長である立花勢地郎氏自らが雪ノ下達に説明をしてくださっている、因みに説明すると立花勢地郎氏とはおやっさんの本名である。
『勢地郎』と書いていちろうと読む、別にキラキラネームだとかDQNネームじゃ無いからな、そこのところよろしくなシュッ! って誰に向かってやってんだよ俺は。
「……そうだったのですね、ですが鬼の方々が使う清めの武具にそれだけの種類があると言う事は、もしかすると鬼それぞれに得意不得意とする魔化魍の種が存在していると解釈してよろしいのでしょうか。」
流石だな雪ノ下は、ほんの少し鬼や清めの武具の事に触れただけなのにそこへ行き当たるとか、本当にコイツは頭脳が優秀に出来ているんだな。
それとも或いは雪ノ下さんから聞いたとか……いやそれは無いだろうな、何せあの人と来たら自分が“アワユキさんに弟子入りした事内緒にして”とか俺に言ってきたくらいだしな、まぁそれは最近雪ノ下にバレたそうだけどそれよか俺としては雪ノ下さん弟子入りに際してあのおっ母さんと揉めたりとかしなかったのかって事が気になるんだが、それこそ他所様の家庭事情に口を挟んだりしゃしゃり出たりする訳にはいかんしな。
それは兎も角として雪ノ下の質問に対しておやっさん達が更に詳しく説明を付け加え、雪ノ下達もまんぞくがいった様で猛士や鬼に対して感心仕切りって感じでまたしても尊敬の眼差しで俺達を見つめる、いやまぁ何てかな俺はそれがとても『うれしはずかし朝帰り』って気分だわ………スマン外したわ。
「おっ、其処に気が付くとは流石だなゆきのんちゃん!いいトコ突いてるよ、そうだな例えば飛行型の魔化魍が相手だと管の鬼が得意だな、俺達鬼がってもう俺は違うけどその鬼が清めの音色を魔化魍に叩き込む為の力の源になる『鬼石』を音撃管で銃弾の様に射出して魔化魍に撃ち込み、其処に清めの音を叩き付けるって訳だな、うん。」
仁志さんが先ずは管の鬼に付いて説明する、それに続けて俺は弦の鬼に付いての説明を加える。
「対して弦の鬼は外殻の硬いタイプの魔化魍や両棲類型の魔化魍を得意としているんだ、音撃弦ってのは斬撃用の武具で重量もあるし硬い甲羅を持つバケガニとかに対して特に有効なんだ、轟鬼さんやその師匠の斬鬼さんなんか鬼としての特性が『雷』だから水生生物型なんか雷撃で感電させたりも出来るからな、つっても俺は斬鬼さんの現役時代とか知らないんだけどな。」
その様に弦の鬼について例として斬鬼さんと轟鬼さんをあげて説明をしていたその時、ガラリと店の扉が開かれる音が店内に響き渡り続いて俺としては馴染みのある元気な声が響く。
「こんにちはっす!皆さんいらっしゃいますか、トドロキっすけど日菜佳さん香須実さん、おやっさ〜ん?」
まさにタイムリー、つてか絶対に何かしらの作為があるとしか思えないタイミングでこのたちばなに来店の挨拶を下のは……件のトドロキさんその人だった。