俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか? 作:佐世保の中年ライダー
アミキリ変異種が放った真空鎌鼬の衝撃波により俺は左の片口を浅くだが斬り裂かれてしまった、その傷自体は大したことは無いって程度の物だったんだが、だからって油断は出来は禁物だ、もしかしたらこの距離だったからこの程度で済んだのかも知れない、って事はヤツとの距離が近ければ威力はもっと強く怪我の度合いも違ってる可能性もあるのか。
「参ったな、何の色も無い透明な真空波じゃまともに目視も効かないしそれに飛来速度も音速近いだろうし、彼奴をどう攻略するかなぁ。」
ギチギチと口部を擦り合わせるような嫌な音とそれに依り射出されているであろう真空鎌鼬が飛来する時に発せられる音と、その鎌鼬が何処かに着弾する音が響く中に取り敢えず身を隠し気合で傷を癒す。
「斬鬼さん怪我はありませんか!?」
俺のいる場所から二十メートル程離れた岩場に同じ様に身を隠した斬鬼さんに状況を聞く、時々隠れているその場の近くに鎌鼬が着弾し岩塊を弾き飛ばす。
「大丈夫っスよ響鬼君、けどコレは厄介っスよね、アイツに近付こうと思ったらあの口から出てる鎌鼬の攻撃範囲外から回り込まなきゃっスからね、って危っねえっ!?」
この攻撃に辟易としながら応える斬鬼さんだが、跳ねた岩塊が肩に当たってしまいちょっとヒヤッとした様だ。
しかし斬鬼さんの言う様に確かに彼奴に近付くなら鎌鼬攻撃の範囲外から攻めなきゃだよな。
あの翅を拡げての音波マップ兵器よりは攻撃範囲は狭いだろうけど、目に見えない攻撃はマジ厄介な事この上ない。
「斬鬼さん、効果の程はあまり期待出来ないっすけど俺が囮になってけん制しときますから斬鬼さんは彼奴の後方に回り込んでください!」
俺には烈火弾って飛び道具があるから牽制にはうってつけだ、対して斬鬼さんは近接格闘型で遠距離からの攻めには向かない、いや厳密にはあのトンデモ威力の雷撃波があるけどそれはあと一発が限度って言ってたし、あれは地を這う系の技だから飛ばれたらアレだ。
「了解っス響鬼君、牽制頼みます!」
斬鬼さんは大きく頷くとサッと身を翻して俺から見て左方向へと大きく迂回曲線的なラインを描きながら、アミキリの後方へ回り込む為の行動を開始する。
それを目敏く見付けたアミキリは斬鬼さんを追うように身を翻す、口部を斬鬼さんへと向けてあの真空鎌鼬で攻撃するつもりだろう。
「させるかよ!そりゃあッ!」
俺はそのアミキリに対して烈火弾を連続発射しそのアミキリの注意を引く、完全に斬鬼さんに注意が向いていたアミキリはその烈火弾をまともに喰らいよろける。
「ほらほら、此方だ此方ッ!」
両手に持つ烈火を打ち付け音を鳴らしながら挑発の声を掛ける、これでまた俺に奴の注意は向く筈だ。
挑発が終わると俺はその場から右側へと数歩サイドステップ、そこからまた左側へと移動する。
真空鎌鼬の攻撃範囲がどれくらいあるかは解らないが、動かずにいるよりは動いていた方が狙いを散らせられるだろうし何よりも囮役を担うにはそうする方が良いだろう。
「おっと、よっ、はっ!」
このギリギリの緊張感、マジ怖い。
一つでも判断を誤り又は緊張感が途切れたら鎌鼬の斬撃にヤラれてしまうだろうしな、斬鬼さんも順調にアミキリの後方へと回り込んでいる様だし巧く挟み撃ちの策が嵌る、と思い込んでいた時期が俺にもありました。
俺はすっかり失念していた、ヤツの八枚ある翅のうちの外側四枚は既に展開していた事を。
さっきは音響兵器として使われた翅を今アミキリは本来の用途に使用した、それは即ち。
「しまっ……奴は飛べるんだった!」
超高速で振動する二対四枚の翅を駆使してアミキリは空へと浮上する、こうなってしまうと斬鬼さんには奴に対する攻撃手段が無くなってしまう。
此れは完全に俺の読み違いによるミスだ、斬鬼さんの初実戦とは思えない程の身体能力と技の威力に俺はその斬鬼さんの力を当てにし過ぎてしまった。
幸いとは言えないけど今はまだアミキリの奴は地上から然程離れていない位置でホバリングの様に滞空して、その場所から真空鎌鼬を撃って来ている。
この高さならば俺の烈火弾も届く範囲だからまだ良いが、もしその烈火弾の射程範囲から逃れられたら……。
「取り敢えず、今は出来る事をやんなきゃだっ、第一目標は烈火弾を彼奴の翅にブチ当てて落とす!」
俺は意を決してその場から軽く跳躍するその高さはアミキリの其れよりも五メートル程高い位置、そして狙いを定めて空中で音撃棒烈火を上段より下方へ向けて大きく振るう、二本の音撃棒から放たれる火炎弾が斜め前方眼下のアミキリへと傾斜角をつけて向かい飛んで行ってるんだが、其処で奴は意外な行動を起こした。
「なっ!?マジで!」
その行動には俺も思わず呆気にとられてしまい何とも間抜けな声を漏らしてしまった。
そのアミキリが何をしたかと言うとだな、何と奴は俺の放った烈火弾を上手いこと躱したんだがその躱し方が何とも意外と言うか何と言うか、まぁ簡単に表現するならば対空状態からいきなり(俺の烈火弾の飛来に気が付いたからだろう)横滑りでもする様に回避しやがった。
まさか目算で十メートルを超える巨体の魔化魍が空中でそんな機動を見せるなんて、正に『夢にも思わなかったわ』だよ。
そして滞空限界が訪れ俺は空から地へと降下に移る、降下しながらアミキリの動きを追いその時気が付いた。
「不味い!斬鬼さん上からの攻撃に気を付けてッ!!」
アミキリの横滑りによる滑空移動、しかもそれが更には次の行動に繋がっていたんだからなアミキリ変異種恐るべしだわ、それは即ちその横滑り滑空が俺からの攻撃回避と逃走と体勢の立て直しと次のターゲットとして斬鬼さんを自身の攻撃射程内に捉える事を同時にやってのけた様な物だった。
「なっ!?」
俺の声が届き現況確認をした斬鬼さんが驚愕に声を漏らす。
横滑りし尚且若干のカーブを描きながら、回り込もうとしていた斬鬼さんの進路を上から抑える。
抑えたうえで己は頭部を下方に向け尾部を上方に向け、その状態で鋏を振るい斬鬼さんに攻撃を仕掛ける。
鋏による物理的な攻撃と目に見え無い鎌鼬による衝撃波の二段攻撃が斬鬼さんへと迫る。
「くっ、セイッ!タァッ!」
その鋏を斬鬼さんは烈雷改を以て迎撃するも、鎌鼬による衝撃波により身体の数ヶ所にダメージを被っている様だ。
全くなんて厄介で狡猾な戦法を使ってくるんだよ、コイツってもしかして知能とか備わってるんじゃないだろうなと思えてしまう。
だとしたら此方ももっと上手く立ち回らないと此れって只でさえヤバイのに更にヤバさ増々じゃね?
「おっと、こうしちゃいられない、早く斬鬼さんの援護に向かわないと!」
斬鬼さんとアミキリが対峙する場へと俺も駆けつけるべく走り出す、いくら斬鬼さんが丈夫な肉体を持っているとしても流石に鋏と真空波の連撃を捌き続けるのは至難の業だろうしな。
「はぁーっ!」
駆けながら再度烈火に気を込める、若干遠間ではあるが援護する分には十分だろう、気力充電完了。
「はあーァッ!」
左右両サイドから前方へ向けて水平方向へ撃ち込む様に音撃棒を振るい、烈火弾をアミキリへと向け放つ。
斬鬼さんへの攻撃に気を取られ過ぎていたのか俺が放った烈火弾はアミキリの左の鋏の付け根に着弾、多少ではあったがアミキリの体躯はその威力の前に流されてしまい鋏と鎌鼬の攻撃が斬鬼さんから逸れる。
「今だっ、セイッ!!」
流されるアミキリの左側の鋏に追撃を加える様に斬鬼さんが振るった烈雷改による斬撃が加わり、そのアミキリの鋏の刃先から数十センチ程を叩き斬った。
そのダメージに口部から奇異な音を発するアミキリはまるで『此れは痛くて堪らないわ』とでも泣き言を言っているかの様で、其れを示すかの如く更に高空へと上昇してしまった。
「響鬼君、助かったっス!」
それに依り危地を脱した斬鬼さんが右手を上げて礼の言葉を掛けてくれて、直様に此処が好機とアミキリを追いかけていく。
俺もまた斬鬼さんに続いてアミキリを追って駆ける、走りながら更に三連続で烈火弾を放つと俺は再び今度はさっきよりも高く跳躍する。
「はあぁーーっ………」
跳躍しながら次は烈火剣を形成する為に気を練る、俺が放った烈火弾の着弾の影響でアミキリは宙に浮きながらもバランスを崩し被弾した右側方へと身を傾けている。
此れはまたと無いチャンスだ、このまま高空からの落下速度を加えた斬撃を奴の翅に叩き付ければアミキリの翅を切り裂ける筈だ、そうすれば奴ら飛ぶ力をうしない墜落する。
「良し行くぞ、だァぁりゃぁぁっ!」
空中で大上段に構えた炎の剣を生成した烈火を落下のスピードを加えて振り降ろす、このまま綺麗に決まれば上手く奴の翅を斬れそうだ。
傾斜が付いた落下によりアミキリの体躯に接近、あともう少しであの忌々しい翅を思いっ切りぶった斬れる。
行けると俺はそう確信していたしこのタイミングなら絶対にそうだと思っていた、だが。
「なっ、何ぃ!?」
アミキリはまるで最初から俺が攻撃して来ることを知っていて、そのタイミングまで読んでいたかのようにその巨躯を横捻り回転を披露し俺の斬撃を回避してしまった。
俺はもしかして奴の策にまんまと嵌められてしまったのだろうかと、そう思えてしまう程にさっきの横滑り滑空と言い今の横捻り回転と言い、絶対狙ってたよね君と問い質したくなるわ。
「ウォぉっ、っとおっ!?」
その結果は……まぁ言わずと知れたであろう、空中で空振ってしまいあわやそのままバランスを乱して落下仕掛るも辛うじて着地には成功したが、上空を見上げると奴は先程よりも更に高い位置へと上昇していた。
地上からの高さ凡そ三〜三十五メートルと言ったところだろうか、その高さからだと鋏を用いての攻撃は無理だろうが真空鎌鼬による攻撃ならば、頭部を振ったりだとかすればより広範囲に対して真空波を降り注がせる事が出来るだろう。
「ジャンプ攻撃をすればさっきみたいに回避されるし黙っていれば攻撃を受けてしまうし、どうするよコレ……。」
まだ俺には鬼火や烈火弾があるから何とか攻撃手段はあるけど、近接戦闘主体の斬鬼さんは果してどう対抗するか…くっ駄目だ思い付かない。
ならもう悪足掻き程度にしかならないかもだけど烈火弾を連発して奴の翅を狙い撃つか、片方だけでも翅を奪えばあの巨体を空に浮かせ続けるなんて無理だろうしな。
いや、待てよ其れだけじゃ無いよな先ずは奴の攻撃手段から検証しよう、第一に最初に喰らった翅を擦り合わせてのマップ兵器、第二に今使ってきている口部から発せられる真空鎌鼬だな。
この二種は近接戦も遠距離攻撃にも使用出来るかなり優れた兵装と言えるだろう、そして第三に鋏を使った攻撃だ。
この鋏を用いた戦法はその巨大さを利用しての強烈な打撃、まぁ単純な物理的攻撃とも言えるな。
それから此れは巧く使えていないがその鋏で目標を捉えて挟み込み、力を込めれば其れを切断する事も出来るだろう。
そう考えれば何も翅だけを攻撃目標とせずに奴の攻撃手段を潰すって手も有るよな、例えばあの真空波を生み出す口部を潰せれば少なくとも鎌鼬攻撃って手段を封じる事が出来るって訳だしな。
そう考えればだ、あらま此方の攻撃の幅も拡がとっても拡がるじゃあないですか、良し行けるかも知れん。
そう判断し俺は斬鬼さんに呼び掛けようとその名を呼ぼうとした、その時斬鬼さんの方から俺に呼び掛けてきた。
「響鬼君、俺に試してみたい技があるんっスよ、でもその技を使うのに気を練らなきゃだし何よりぶっつけ本番で試そうって思ってんスよ、だから申し訳ないっスけどまた囮になって貰えないっスかね!?」
斬鬼さんはアミキリの鎌鼬を避ける為に不規則な動きを取りながらその様に俺に要請して来た、と言っても流石に全ての鎌鼬を避ける事は無理だった様で斬鬼さんの身体には無数の小さな裂傷が刻まれているのか僅かながら血が滴ってる。
やっぱり斬鬼さんにかなり負担を掛けてしまっていた様だ。
これはマジで申し訳無い、だから此処からは俺が責任を持って受け持つ事とする。
「了解っす斬鬼さん、思いっ切りデカいの一発お願いします!」
斬鬼さんとバトンタッチををして、と言っても実際にタッチをした訳じゃ無いけども現在アミキリの囮役は俺が受け持っている。
海岸の岩場を走り跳び時に立ち止まって烈火弾を放ち、また走る跳ぶ。
そんな事を繰り返し行う事数十秒、先の斬鬼さん程では無いけど俺もそれなりに奴の真空波により裂傷を負ってしまったが、此れ位いならばまだまだ大丈夫。
それに何より俺が放つ烈火弾も高い割合で奴に当たっている、ってか俺がジャンプしてからの攻撃を二度に渡り回避したアミキリがこの攻撃に対しては上手く回避出来ずに直撃を喰らっているのは一体どう言う訳なんだ。
攻撃方法の違いとかだろうか、空からと陸からと言う攻撃を放つ場所の違いとかだとしたら何が原因だろうか…はっ!
もしかして奴の視界とかだろうか、例えば奴の身体の構成上上方への視界はかなり広いが下方の視界はそれ程でもないとか。
奴は鎌鼬の真空波を放つのにどう言う体勢を取っていたかを考えろ、それは頭部を下方へと向けて尾部を上方へと傾斜を付けて。
それは単純に鎌鼬を空対地攻撃よろしく下方へ放つ為には下を向かなきゃならない、その攻撃を放つ口部は宇宙戦艦ヤ○トの波動砲と同様最先端部から撃ち出すものだから。
「そうだよ、馬鹿なの俺何で今迄気が付かなかったかなぁ…奴の腹部には目が付いていないんだから当然其処は奴の死角でしょうがよ!」
なら俺がやるべきは斬鬼さんが此れから放つだろう一撃を奴の死角である腹部へと喰らわせられる様に誘導する事。
「ちっ、しっかりしろよ俺、集中力が鈍ってるたって証拠じゃあないかよ。」
今俺がやらなきゃならない事は何だ、魔化魍を清める事。
「すうぅ……はぁーーーっ……」
その為に囮となり時間を稼ぎ斬鬼さんに繋ぐ事だろう、チラッと気を高め続ける斬鬼さんを見る。
気合を込めて呼吸を続ける斬鬼さん、その傍らには刃を岩に突き立てた烈雷改がある。
幾度度なく繰り返されるその呼吸により次第に斬鬼さんの身にビシビシとスパークが迸っている、此れだけ離れた位置からでも凄い気迫とエネルギーの奔流を感じる、もう間もなくだな。
「ハアーーぁッ!」
その迸る電撃のスパークが斬鬼さんの体内に収斂して行き、そして遂にその時は訪れた。
「良し!響鬼君準備完了っス、最後の牽制お願いします!」
斬鬼さんが岩に突き立てていた烈雷改を右手で持ち上げて合図をくれた、了解っすよ斬鬼さん。
囮としての俺の最後の一撃、本日最大威力の気を込めて精々派手な目眩ましに一発でっかい烈火弾を撃ち出すとしますかね。
アミキリへの挑発行為を行いながら俺は斬鬼さんの声に頷き、それまでの様に駆けながら跳びながら真空波攻撃に注意しつつ徐々に気を練る。
注意はしていても目に見え無い真空波を完全に感知など出来る訳はなく、けど何となくだが空間の揺らぎとかをほんの少しだけど感じられる様になって来たからか当初よりは被弾は少なくなっているし、アミキリを誘導しつつ俺と斬鬼さんが奴を挟んで直線上になる位置に割りかし順調に移動出来た。
「此処だッ、ハア〜っ……」
時間を稼ぎながら練り上げた気を烈火の先端の鬼石に集約、この日最大に練った気力をこの一撃に込める。
まぁ、その目的は囮としての目眩ましみたいな物もなんだけどな、だからこそ精々派手な花火として打ち上げれば其れだけ奴の目を眩ませる効果は絶大になるのかな、やって見なきゃ解らんけど。
燃え盛る巨大な炎が二本の烈火の先端に宿る、それは今か今かと俺がその音撃棒を振るい射出するのを待ちわびているかの様に、待たせたな烈火弾今撃ち出すから。
「だぁあぁりゃあぁぁっ!」
俺は音撃棒烈火を大きく振るい、五十メートル程の高度に位置取るアミキリへ向けて地対空砲弾を放つ気持ちで特大の烈火弾を放った。
アミキリの方も流石にこの大きさの烈火弾が己にブチ当たればかなりヤバい状況になるとでも思ったのか、迎撃の為に俺の烈火弾の射出角にその身を合わせて真空鎌鼬を放った様だ、ほぼ対角線上に並んでいるから奴がいつ放ったかは解らんけど中空で烈火弾と真空波が衝突して弾け飛んだことが確認出来た。
「よっ…シャーッ!」
思わず俺は大きな声で歓声をあげてしまった、コレこそが俺と斬鬼さんが待っていた瞬間。
この派手な花火の爆裂こそが斬鬼さんの行動をアミキリから覆い隠す為の隠れ蓑だ、此の時既に斬鬼さんはアミキリを撃つべく空へと飛翔していた、そして両手で烈雷改を握り。
「はぁーッ、鬼刀術ッ雷神ッ斬!」
右側から左側へとその身体ごと烈雷改を振るい横薙ぎの一閃を放った。