俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか? 作:佐世保の中年ライダー
空中で俺が放った烈火弾とアミキリ変異種が放った真空鎌鼬とが衝突相殺し拡がる爆炎、その爆炎が次第に晴れて行くとクリアになった俺の視界にアミキリの後方十メートル程離れた辺りにに斬鬼さんは既に位置取っていた。
「鬼刀術、雷神ッ斬!」
目測距離上空約五十メートルの高空で大きく振り抜かれる音撃真弦烈雷改、その先端の刃から大きく長く伸びる雷の紫電の刃。
それは例えるならば、最強の非ニ○ータイプが操縦するエイの様な青いモビルス○ツを撃墜した『オカルトパワーが加わり威力増々の極太ビームサ○ベル』の如くとでも例えれば良いだろうか。
まぁ、ソレをこの場で目撃したのは俺だけだからな、もし他に誰か居たならば俺とは違う例えをしたかも知れないがそれは俺の預かり知らぬことだしどうでもいいですね、ハイ。
「行っけェーーッ!!」
紫電の刃を振るい抜き気合いが込もった斬鬼さんの声が大きく響く、その響き渡る声は斬鬼さんだけでは無くこの件に関わった俺の思いとも重なり、そして不本意にも負傷によりこの件を最後迄見届ける事が出来なかったトドロキさんへの思いをも込められているんだろうと、俺はそう感じた。
振り抜かれた雷の刃がビシビシとビリビリと轟音をたてながら、遂にアミキリ変異種を捉える。
斬!
断!
紫電一閃、斬鬼さんの雷神斬が遂にアミキリの体躯を捉え切断する、しかし残念な事だけどそれは完全撃破と迄は行かなかった。
雷神斬は確かにアミキリ変異種を捉えその斬撃は奴の巨体を断ち斬る事が出来たのだが、しかしそれは奴の大きな体躯の一部。
詳しく言うとだな、長く巨大な奴の両の鋏と口部だな。
まぁアレだ鋏の部分は人間の人体で例えるなら掌だろうか、雷神斬が断ち斬ったのはそれで例えると手首から肘の間位の位置だ。
それから口部、それを例えるなら下顎から(奴にそれが着いているのかは知らんけど)鼻の辺り位だろうな、其処までを雷神斬は叩き斬ったって訳だ。
『まぁ結果は惜しかったけど、すっげぇなっ!』と声には出さず斬鬼さんの雷神斬のとんでも無い技の威力に俺は頼もしさを感じ、心の中で称賛………
「うわっアァァァァァァッ!?」
していたのだが、カッコよく技を出し終えた殊勲者たる斬鬼さんはと言うと、当然だろうが何せその技を繰り出した場所が地上からの高度が凡そ五十メートル程、飛行能力も無く空中を滑空出来る訳でも無く、ただ単に一般の人間と比較して数十倍の跳躍力があるだけだからな。
そりゃ滞空限界が来たら万有引力に依って降下する訳だわな、そんでもって斬鬼さんが降下してくる位置がと言うと。
「響鬼くーん退いてぇ〜っ!?」
空中でそれでも何とか着地姿勢と場所をどうにかしようと頑張って両手をわちゃわちゃとさせながら落下して来る斬鬼さんだったが。
「って!近過ぎだろう!!」
斬鬼さんの落下場所はおそらく今俺が立っている位置だと思われる、なので俺はその場から慌ててバックステップで後方へと回避して、何とか斬鬼さんとの合体を避けようと努力する。
「どっせぇーいっ!」
『シュタッ』と華麗に?そんなに大きな音を立てることも無く着地に成功した斬鬼さんだったが、その着地時の掛け声は何ともオッサン臭いものだった。
うん、でもその感想は俺の心の中の秘密の小箱に閉まっておこう、それもまた一種の処世術って物だろうなと俺も一高校生ながらに学んでいる訳だ、おそらくきっとそうだと思う多分。
「響鬼君、奴はどうなったっスか?」
シュタッと膝を屈めた体勢で一度顔を上げて俺に一言確認すると斬鬼さんは、返事を待たずに後ろを振り返りながら空中のアミキリの現況を自身で確認。
「完全には決めきれなかったか、くっそぉ残念っスね、ふぅーっ。」
一刀両断完全撃破とは行かなかった事を斬鬼さんは悔やんでいるが、俺から言わせてもらうとそれでも大したものっすよ。
空に浮かぶアミキリは両手をもがれて顔をぶった斬られている訳なのでそのダメージによる痛みを声には出せていないけど、ビクビクとしている様は痙攣でもしている様だ。
まぁ声ってか口から音を発する事は出来なくなったみたいだけど、その全身を覆う甲殻の関節部からは掠れている音が鳴っている。
「けど斬鬼さん、彼奴それでもかなりダメージ受けてますよ、マジ見事でしたよ斬鬼さん!」
此処まで来れば後は、奴を空から撃墜させて清めの音を叩き込むだけだ。
と言っても奴にはまだ空を飛ぶ為の翅があるし、なら俺がやるのはあの翅に砲撃をして飛べなくする事だ。
「斬鬼さん、斬鬼さんは今のでかなり体力を消耗してますよね、後は俺が奴を落としますからそれまで斬鬼さんは体力の回復に努めてください。」
雷神斬を放った斬鬼さんの呼気が乱れて少し息が荒くなっている、それも無理はなかろうだな、先の雷神斬もそうだけどその前に雷撃波を二度も放ってるんだかし。
「響鬼君、けど俺ッ……」
「理解ってますよ、ってかしてるつもりですよ斬鬼さん、だからこそですよ。
だからこそ、その時の為に斬鬼さんには気力と体力を少しでも回復しておいてもらわなきゃなんすよ。」
思わず年上の人に対して諭す様な言い方をしてしまったけど、斬鬼さんには此処は堪えて欲しい。
無言で俺を見る斬鬼さん、その心中ではきっとどうするべきかと葛藤しているんだろう、そして暫しの逡巡の末斬鬼さんは決断を下した。
「……了解っス響鬼君、急いでコンディション整えますんでよろしくっス!」
斬鬼さんは俺の言を受け入れてくれてその場から少し離れて行き、回復に務める。
俺はその斬鬼さんに対して一つ頷くと上空のアミキリの状態を再確認する、奴は相変わらず上空で痛みに身悶え痙攣ししている様だが俺はそこで少しだけ違和感を感じた、それは。
「彼奴……もしかしてさっきよりも高い位置に移動しているのか。」
そうなんだ、目測ではあるけど斬鬼さんの雷神斬を喰らった時奴は地上から五十メートル位の高度に居た筈だ、しかし今奴が居る高度はおそらく七十メートル以上は行ってるだろう、しかもまだ上昇してるっぽいし。
どう言う事だ、奴は斬鬼さんの雷神斬を喰らったダメージでのたうっていた筈だったよな、それは間違えなかった。
俺が奴から目を離したのは斬鬼さんに声を掛けたほんの数秒間、その間に奴はあの位置まで俺達に気づかれる事無く上昇したってのか。
「イヤ、多分だけど彼奴、わちゃわちゃとのたうちながらも少しずつだが上昇して行ってたんだ。
それが奴の本能によるモノか知能に依るものかは解らんが。」
不味いな、あまり高い高度まで昇られたらだだでさえ少ない此方の攻撃手段が無くなってしまう。
「チッ、だったら烈火弾の連撃だ!」
決断したなら即動く、俺は早々に気合いを漲らせると烈火を構えて烈火弾を連続三連射する、射出した後俺は急いでその場を離れ走り始める。
今放った烈火弾はアミキリに対してほぼ正面へ向けて放ったものだから、おそらく奴は回避または防御してしまうだろう、だから俺は先の斬鬼さんの雷神斬では無いけど奴に対して攻撃を当てるには後方に回り込む。
それが正解だってことはこれ迄の奴の反応から明らかになってる事だしな。
駆け出してから凡そ三秒程で俺は百メートル弱の距離を移動しアミキリの後方を取れた、その位置で俺は停止して上空に目を向けてみる。
予想通り俺の放った烈火弾はアミキリの回避行動と防御によりさしたるダメージを与えてはいない様だ。
「そらッもう一丁っ!」
サイドスローの様なフォームで掬い上げる様に更にその場から烈火弾を放つ、もう一度、更にもう一度。
上空のアミキリへと向かい飛ぶ烈火弾の連撃は六発中五発が上手い事奴に直撃してくれて、その着弾部分を焦がしまたは少しだが甲殻の一部を破砕する事が出来ていた。
「ヨシッ、まぁ翅に当たらなかったのは残念だけど少しはダメージを与えられたよな!?」
上空のアミキリを確認しながらそう口にして同時に気を練り再度烈火弾を準備する俺だったが、そのアミキリがダメージを受けながらも更に上昇して行く様を見留めてしまった。
どうやら俺の烈火弾は威力が然程高くは無いのだろう、アミキリの奴の動きを止める事も出来ていない現状がそれを物語っている。
「くっ、解っていた、解っていたけど俺にッ、轟鬼さんや斬鬼さん……いや先代や輝鬼さん位の膂力があれば。」
この間のツチグモの時がそうだったよな、俺が放った烈火弾や鬼火の威力や完成度は輝鬼さんのそれと比べるとワンランク劣っていた。
あの日の一連の出来事で俺は鬼としてまだまだ完成には至っていないんだって事を思い知らされた、いやそうじゃ無い去年の夏修行の末“紅”になる事が出来たけど、それはただなれただけ。
俺が紅になって活動出来たのは僅か三十分にも満たなかった。
その時点で解って然るべきだろうがよ俺ッ、くっそう何が最年少デビューだってんだよ。
俺はまだまだ鍛え方が足りないじゃないかよ、こんなんじゃ人助けなんか出来っこないだろう、こんなもんじゃ何処かの誰かの笑顔を守るなんて……。
そんなふうに俺が自身の不甲斐なさに打ち拉がれそうになっている間にもアミキリはその高度を上げ続けている、現在の高度は凡そ百メートル位だろう。
それ位の距離ならまだ烈火弾の射程内だけど、けど当たったとしてもその威力はさっきよりも更に減じる筈だ。
「………クッ……ん!?」
我が身の不甲斐なさを忌々しく思いながらも上空のアミキリを睨めつけていた俺だが、其処で奴の身の変化に気が付いた。
それは飛翔に使用されていなかった八枚の翅の内の内側四枚、それが開かれ展開されていた。
「まっ、マジかよ彼奴……さっきのマップ兵器をまた使うのかよ。」
あの不快な脳内を引っ掻き回される様な音波攻撃を奴はまたヤルつもりだ、さっきは地上に陣取っていて八枚の翅を使っての攻撃だったが、もし今からやるとすると八枚のうちの外側四枚は飛行の為に使うだろうから、照射範囲は狭まるだろう。
とは言っても、それでも十分な攻撃範囲を誇るである事は変わらない筈だ。
「考えろ俺ッ、どうすれば奴を落とせる!?どうすれば奴を清められる。」
敢えて口に出して打開策を考えてみるけど、悔しいが思い付かない。
その状況に俺の心は焦りに支配され、それが思考と視野を狭めさせる。
『キィー、キィーッ』
その時だった、その時俺の耳に馴染みのある機械音声の鳴き声が聴こえてきたのは。
それは頼りになる俺達の仲間、ディスクアニマルが発する音声に間違い無い。
俺が立っている位置から少し離れた場所から茜色と浅葱色の二つの閃光が空高く舞い上がった。
それはアカネタカとアサギワシだ、その二体のディスクはどうやらその背にコガネオオカミとアオイクマを乗せている様だ。
あのマップ兵器の影響で機能不全に陥っていたディスク達が復活してアミキリに立ち向かおうとしている。
「アイツら…………」
グングンと高速で上昇して行くディスク達の勇姿に俺は感銘を受けた、ディスクアニマルはそのボディは小さな機械カラクリかも知れないけど、その中には生き物の魂とでも呼べるものが宿っていて俺達をサポートしてくれる。
「響鬼君、ディスク達が!」
体力の回復に努めていた斬鬼さんが俺の元へと駆け寄ってきて声を掛けてくれる、斬鬼さんもまたディスク達の行動に思う処がある様だ。
「はいっ、凄いっすねアイツら、あんな小さな身体であんなにデッカイ魔化魍に立ち向かって行ってるんですよ…。」
俺もディスク達に負けちゃいられないよな、行くぞ気合いを込めろよ俺。
「すーう、はぁーーーっ………」
吸って吐く一呼吸から俺は気を練り始める、体内からそれを練り活性化させると共に自然界からも取り込む様に。
「なっ!?響鬼君が燃えてる!」
斬鬼さんが驚愕の声を挙げる、気合いを込め気を練り始めた俺は何時しかその身を蒼い炎に包まれる。
アミキリを此処から逃しちゃ駄目だ、奴を逃がしたら多くの人が奴に襲われるかも知れない。
俺はまだ輝鬼さんの言う何処かの誰かの笑顔なんて想像出来ない、けどそんな俺でも今すぐにでも想像出来る笑顔がある。
それは……。
小町のこの世でたった一人の妹の世界一可愛い笑顔。
一色のあざとく子悪魔的ではあるが、最近はそれも悪く無いと思い始めた悪戯な笑顔。
雪ノ下の何処か遠慮がちでだけど不器用ながらも柔らかさを感じさせる笑顔。
由比ヶ浜の人好きのする、見る者を元気に、そして優しくさせてくれる様な屈託の無い笑顔。
そして猛士の、たちばなの皆の笑顔に親父と母ちゃんの笑顔……よりかは、イカン休日の寝ぼけ眼な二人の姿が思い浮かんでしまった。
その笑顔が曇らない様に、その笑顔にまた会う為に俺は………。
「はぁーーーーーーっ………」
その蒼い炎は勢いを増して燃え盛り、やがてその炎が蒼から。
「響鬼君の炎が紫色に!?」
炎の勢いが増し、その色が変わるに連れて次第次第に力が漲って来る、それをヒシヒシと感じる。
紅の力とはまた違う感じの、これ迄の俺の力とは違うと言う事がはっきりと感じ取れる。
紫色の炎がこれ迄の俺を塗り変え、新たな力を与えてくれる。
良し、気は全身に行き渡った。
「はぁーーっ………たァーッ!」
今俺はその紫色の炎を斬り裂き再度鬼として顕現する、決意を新たにして得られたその力を振るうべく。
「なっ、響鬼君の身体の色が……その色って先代の響鬼さんと同じ、それに何だか身体も少し大きくなった様な。」
俺の姿を見た斬鬼さんが半ば呆然としてそ言う、その言葉を受け俺は己の両手を確認してみる。
その俺の目に映る、俺の腕部の体色は確かに先代の響鬼さんとほぼ同色のメタリックな感じの、光の加減によっては青や紫色に見える基調色に赤い下腕部。
「………まさか、俺が……。」
あの三年前の初夏の日に、俺の窮地に駆けつけてくれた二人の初めて出会った頼れる大人。
初めて出会った紫色の炎の中から顕た力強い命の力に満ちた太鼓の鬼、その鬼の姿に今俺は。
「……斬鬼さん、俺今本当の意味で鬼になる事が出来たんだって、そう思いますよ。」
俺は隣の斬鬼さんに自らの思いを吐露すると、縦に一つ首を振り斬鬼さんは力強く頷いてくれて、俺達はまるで示し合わせたかの様に同時に空を見上げる。
百メートルを超える上空では小さくて分かり辛いけど、アカネタカとアサギワシがアミキリを牽制してくれている。
目を凝らして確り確認してみると、その二体のディスクの背には先に乗せていたコガネオオカミとアオイクマの姿は無い様だ。
だとするとその二体は既にアミキリの身体に取り付いているんだろう、そしてアミキリの体躯の何処かにチョッカイを掛けているのかもだな。
「ディスク達のおかげでアミキリの奴が思い通りに動けていないみたいっすけど、だからってディスク達ばかりに任せきりには出来ないっすからね、俺達も動かないと。」
小さなディスク達が頑張ってくれているけどそれだって限界はあるだろうし、何たって相手は十メートルを超える巨体の魔化魍だ、だからなる早で俺達が手を打たなきゃならないだろう。
「けど、響鬼君、あの高度だと流石にもう俺達が跳躍したって届かない高さっスよ、それにあの乱戦みたいになってる最中に響鬼君の烈火弾を撃ち込んだとしても下手すりゃディスク達を巻き込むかもしれないし……。」
ハイ、斬鬼さんの懸念もご尤もで御座います。
だから考えろ!
この混戦模様の状況下で俺達が取りうる手立てを、烈火弾を放つのはちょっと厳しい。
斬鬼さんが言う様にディスク達に対するフレンドリーファイアになりかねない可能性もだけど、純粋に俺がいる此処からとアミキリがいる上空との距離も問題だ。
流石に俺の烈火弾も射速がマッハを越えるなんて事は無いし、奴に気付かれたら回避される可能性も高い。
ならばどうする、奴に接近する事だ。
そのための方策としては跳躍する事だが、百メートルを超えるであろう高度までの跳躍力は俺にも斬鬼さんにも備わっちゃいない。
俺たち二人の跳躍力を掛け算か足し算でも出切れば良いのかもだけど、そんな事が出来るわきゃねえよなぁ。
ん!?
跳躍力の足し算掛け算は確かに出来ないかも知れないけど、別に今の時点でのアミキリの高度なら何も其処までの数値じゃなくて良いんじゃね…………!?
そうだよな、そうだよその手があるじゃないかよ、何だよ気が付いてみりゃあ本当に何て事も無い答えじゃないかよ。
やるしかないよな、ああそうと決めたなら実行あるのみだよな。
「斬鬼さん、俺奴に向かって跳びますから斬鬼さんの力を貸して下さいッ!」
俺は実行にあたり斬鬼さんに向かい協力を依頼する、此れを実行するには斬鬼さんの強力が必要不可欠だから。
「けど響鬼君、流石にあの高さじゃ跳んでも届かないんじゃあないっスか?」
しかし斬鬼さんは俺の協力依頼に対して懐疑的な様だ、うんまぁ無理も無いっすよねあの高さじゃ最も跳躍力の高い管の鬼でも、紅になった俺や輝鬼さんでも届かな高度って解ってるからな。
「そうっすよね、俺でも斬鬼さんでもあの高さに迄の跳躍は無理っすけど、けど俺と斬鬼さん二人の力を合力すれば届きますよ、つまりっすね要は百式の推力とマークⅡの推力を合わせてのジャンプっすよ!」
だから俺は斬鬼さんにざっくりと簡単にだけど考えを説明した、うん簡単だよね。
「………響鬼君の言ってる事がよく解んないんスけど、でも何をしようとしているのかは大体判ったっスよ!」
そう返事を返して斬鬼さんはアミキリの位置を確認する為にその空を見上げると、「よし、あの辺だな」と一声出して頷くとアミキリの死角である奴の後方となる位置へと向かい、数秒で其処へ到着すると膝を軽く曲げて両手を前へ出して併せる。
簡単に説明すると、そのポーズはバレーボールで言うところのレシーブの体勢って言えばいいだろう。
「よっしゃ、何時でも良いっすよ響鬼君!」
おおっ!流石斬鬼さん俺のやらんとしてい事を過たず理解してくれた様だ、此れもひとえに俺のわかり易い説明の賜物だろう……違うか、うん違うな八幡知ってた。
まぁそれは置いといて、俺も斬鬼さんに合わせて移動する。
アミキリ、斬鬼さん、俺とが一直線上に並ぶ位置に。
斬鬼さんと俺との距離は五十メートル程、それは助走しながら跳躍の為の力を溜める為に必要な距離だ。
「俺の方も準備完了っす斬鬼さん、ふぅーっ、はぁーっ……そんじゃ行きますよッ!」
吸って吐くの一呼吸と、次にその場で軽くステップを刻んで斬鬼さんに合図を送る。
「しゃあぁっ、たぁッ!」
「ヨシ来いッ!!」
スタートを切る、斬鬼さんのもとへ向かって。
それを見た斬鬼さんもまた前へと差し出した両腕に力を込める。
タッ、タッ、タッ、と力を込めて岩場を踏みしめ駆け抜ける。
駆け抜けて、最適だと思われる位置まで到着した俺は斬鬼さんの揃えた両手を目掛けて小さくジャンプする。
俺の右足が斬鬼さんの手の上に乗り、間髪入れずに左足を右足と揃えて斬鬼さんの手の上に。
俺の両足が自分の手の上に乗ったとほぼ同時に斬鬼さんがグッと力を込めて俺を上空へと推し上げる。
それとタイミングを合わせて俺も斬鬼さんの両手を蹴り上げ、はるか高空百メートルオーバーの場所に居るアミキリへと向けてジャンプする。
俺の脚力と斬鬼さんの打ち上げる力とが合わさって、俺の身体は想定以上のスピードで空へと跳び上がる。
「行っけーーッ響鬼君!」
斬鬼さんの声援を受けながら俺の身体はグングンと上昇して行く、ディスク達が足止めってかこの場合は翅止めって言った方が適切だろうか。
もし適切では無いとすれば、それはかつてのア○○○国のミス○ー・プレジ○ントたるビ○・ク○○○ン氏と所謂関係を持ったモ○○・ル○○○○ー嬢との関係だよな。
兎に角俺はアミキリの居る高度百メートルオーバーの空へと砲弾の如く翔んで行き、遂にその高度はアミキリの居るその高さよりも更に高く迄到達し。
「よし、其処だっ!」
降下に移りアミキリの巨体の尾部に着地……ってのは何か変かな、この場合は着体と言うべきだろうか?
まぁ良いか、取り敢えず俺はその場から前方を目を向けて状況を確認する、相変わらずアカネタカとアサギワシがアミキリに牽制のチョッカイを掛けて、動きを制限してくれている。
そしてコガネオオカミとアオイクマがマップ兵器に使われるであろう四枚の翅の根本に取り付き二体なりにそれをどうにかしようと奮闘しているが、小さなディスクの力ではそれも適わなかった様だな。
「よし、お前達ご苦労さんもう良いぞ後は俺がやるから、もうディスクに戻ってくれ。」
揺れるアミキリの甲殻上を足元に気を付けながら俺は翅の付け根付近へ到達、二体のディスクを労うと、コガネオオカミとアオイクマは了解とばかりに機械音声で返事をし、ディスク状態に変形し俺の両手に飛び上がる。
「良くやってくれたな、サンキューな帰ったら緑さん達にちゃんと整備してもらおうな。」
手のひらの中のディスクにもう一度礼を言うと俺は腰の装備帯にその二枚のディスクを装着し、代わりに二本の音撃棒を両手に握る。
「行くぞ、はぁーーーっ……。」
尚も揺れるアミキリの体躯の上でバランスに気を配りながら音撃棒烈火の先端の鬼石に気を込める。
俺が練った気により鬼石に炎が宿り、その炎が次第に形を成して行き二本の刃を形成する。
「準備完了っと、行くぞッタァーッ、セィリャァッ!!」
両手に持った二本の剣、烈火剣を交互に振り抜き先ずはアミキリの四枚の翅を斬り落とす。
「コイツを叩っ斬ればもうマップ兵器は使えないよなぁ!」
スパッと微かな音をたてて斬り裂かれた四枚の翅が落ちて行く、其処で初めてアミキリは我が身に起こった事態に気が付いたのか、その身をビクビクと跳ねさせる。
「おぉっと危ねぇっ!?」
思わぬ強烈な揺れに俺は左手の音撃棒を装備帯に戻し、その場に残っている斬り裂いた翅の付け根を掴んでその揺れに振り落とされない様に耐える。
アミキリの奴は己の身から俺を振り落とそうと不規則な動きをする、対する俺は左手に更に力を込めて翅の残滓を掴みそれに耐える。
「っ、このままこうしてたってじり貧だよな、うおっとッ…どうにか残りの翅を片っ方でも潰せればもうコイツは飛べなく筈だけど。」
この暴れ馬の様にバタバタ不規則に動くアミキリの状態から何とかして残りの翅、左右両サイドの何方か或はその両方を斬り落としたいんだが、コイツはちと厳しいな。
そのバタバタとした動作も更に激しさを増していっているし、此れって完全に俺を振り落とそうとしてんじゃね。
「うおっ!?なっ、マジかよッ!」
アミキリが俺を振り落とそうとしているって事は、ほぼ百パーその通りと言っても良いだろう。
何故なら奴はその身を逆さまにして背面飛行へと移行したからだ、その影響で俺は今左手で断ち切った奴の羽の根本を掴んだ状態で宙ぶらりんりなってしまって、非常に不安定で何時落下してもおかしく無いって状況に置かれてしまった。
「くっ、やっべぇなぁ、コイツいきなり自分から使えない翅をパージしたりとかしないだろうな。」
減らず口でも叩いて気持ちを切り替えようと思ったんだが、いざ口にしてみるとそれがあり得ない事じゃ無いんじゃと思い至ってしまって、鬼面の下の俺の額からは今ジトリと一滴の冷や汗が滴っていたりする。
そうなる前に何か手を打たなきゃな、どうすれば落ちなくて済むかと高速で脳内勘案開始……駄目だ浮かばねぇこうなりゃ右手のもう一本の烈火も装備帯に収めて両手でアミキリに捕まるのが良いかもな。
「うん!?音撃棒か………そうかコイツを使えば!」
音撃棒を使う、其れを閃いた俺は早急に気を込め再度鬼石に炎の刃を宿す。
俺が思いついた方法、其れは烈火剣の刃をアミキリの身体に突き立てる事で足場を固定確保するって方法だ。
このアミキリの体表の甲殻がどれ程の硬さを持ってるのかは解らないけど、大丈夫だ絶対上手く行く!信じろ!
他の誰でも無えっ、俺を信じる俺を信じろ……って信じられるのか!?
「はあーっ………良し!」
気合を込めて作り上げた烈火剣、片腕でぶら下がっている状態だから不安定な体勢だし上手く力を込めて突き刺せないかもだけど、今俺が込められるありったけを!
「セイッリァーッ!」
俺の頭上の甲殻へと向けて思い切り突き上げる様に烈火剣を突き刺すべく振り上げた。
パワーアップイベント回でした。