俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

28 / 42
見舞う病室。

 

 明けて日曜日の午後ニ時をいくらか過ぎた時刻、昨日負傷したトドロキさんを見舞うべく俺達は千○大医学部附属病院へと訪れた。

 何故この正午を過ぎ昼食も終え腹も熟れてきてもうすぐ三時のおやつの時間帯に見舞いに来たのかと言うと、単純に午前中はトドロキさんがレントゲン撮影などの予定があった為だ、決して俺が朝の鍛錬を終えた後にうたた寝をしてそのまま午後まで寝過ごしていたとかそんな理由じゃ無いからね、いやマジ本当だからねハチマンウソツカ………ごめんなさい本当は寝過ごしました。

 

 「これ位の荷物どうと言う程の物では無いわよね、貴方にとっては。」

 

 涼し気な顔をして雪ノ下が言う、その表情はまさに名は体を表すを地で行くかの如く、今が漸く迎えた麗かな春の日であるにも拘わらず季節を逆行させ再び厳寒の冬の日に引き戻されたかの様な、そんな気持ちを抱かせるに足る恐ろしい氷の笑みである、但し俺に対してだけ。

 

 「うん、そうだよねヒッキーは力持ちだから平気だよねこれ位。」

 

 由比ヶ浜が雪ノ下の言に続けて言う、その表情は普段なら由比ヶ浜は何と言うかぽかぽかとした小春日和って感じの笑顔を見せてくれるんだが、今はその彼女らしからぬ雪ノ下にも引けを取らない程に俺の心胆寒からしめる微笑を浮かべている、だって顔は笑っていても目が笑ってないんだよ(怖)

 

 「いやぁ、雪乃さん結衣さんうちのゴミィちゃんがゴメンナサイでした、今後このような事が無いように小町が確りとこの愚兄を管理しておきますからどうかお見捨て無き様にお願いしますね。

 ほらお兄ちゃん約束の時間に気が付かない寝坊助さんへのペナルティなんだからそんな不満そうな顔しないの!。」

 

 迂闊にも寝過ごして約束の時間に間に合わなかったってか、集合場所に来なかった俺を心配して雪ノ下が小町に連絡して、その結果俺が家で寝こけている事を知った二人がたいそうお怒りになったが為に今俺はこうして皆が用意したトドロキさんへの見舞いの品を全部持つ羽目になっているって訳だ。

 雪ノ下が用意した物はフルーツの詰め合わせと手作りクッキーで由比ヶ浜が用意した物は菓子折りとささやかなかわいい花束だ。

 実は由比ヶ浜も手作りの菓子を用意しようとしていたらしいんだが、それを雪ノ下が全力を以て説得し由比ヶ浜の母ちゃん(通称ガハママ)がやんわりと言葉巧みに諭してそれを思い留まらせたのだそうな。

 因みに昨夜は雪ノ下が由比ヶ浜宅にお泊りをしており、その関係で雪ノ下は由比ヶ浜家のキッチンを借りてクッキーを作ったと言う事だと。

 ナイスだ雪ノ下、よくぞ昨夜は由比ヶ浜家にお泊りしてくれた!おかげで再びこの世界に謎の黒い物体Xを再誕させずに済んだのだ。

 まぁ由比ヶ浜に思い留まらせるに当たり雪ノ下の精神力はかなりの消耗を免れなかったであろう事は想像に難くない。

 なので雪ノ下にはそのうちリポビタン○でも奢ってやろうと思う、何と言っても雪ノ下は基礎体力が壊滅的だから精神力と共に体力もガリガリと削られた事だろう、例えるならガード上からでもお構い無しに此方の体力をゴッソリと削り取る格ゲーのラスボスの必殺技によって削られたかの如くだ。

 全くな、画面全体に攻撃判定があるとかって何なのあれってさ理不尽にも程があるよな、しかも此方の体力ゲージが底を尽きかけてんのをわかった上で削り殺しとかして来るとか本当勘弁してくれよな。

 へっ、それってお前の腕が悪いだけだろうって!?そうだよ下手だよ悪かったなッ。

 

 「へいへい、寝坊かました俺が悪う御座んしたね、つか別に不満があるって訳じゃ無いぞこの眼はデフォルト装備だからな、何なら最近のETC標準装備の大半の大型二輪と同じまである。」

 

 小町による俺の顔つきに対する苦言に反論をしてみたものの、それは小町による『はいはいそんなの良いからとっとと行くよ』の一言で片付けられ、雪ノ下と由比ヶ浜もその言に同意であるとばかりに頷く。

 

 「くっ、女子の数の暴力の前にはいくら俺が鍛えたからっても無力だって事なのか。」

 

 四人分のお見舞いの品を抱えて俺が己の置かれた状況に打ち拉がれている間にも雪ノ下は病院の受付で来院理由等を伝え病室なども聞き出していた、まぁこう言ったところは流石は千葉の名家のお嬢様だけはあるし頼りになるわ、これで壊滅的な方向感覚さえどうにかなれば良いんだが果してどうなるやら、つかその方向音痴もまた雪ノ下のキャラの肉付けだろうからそれが無くなればそれはもう雪ノ下じゃ無い別者か。

 

 「あら比企谷君何か私に言いたい事でもあるのかしら?」

 

 俺の思考をまるで読み取ったかの様に雪ノ下は言う、ハァ俺の周りの女性陣はユニバ○サルセンチュリーを迎えてもいないし宇宙移民も始まっちゃいないのに何でニュータ○プみたいに思考を読めるんだよ、人類の革新が既に始まっちゃってんのかよ何それ凄いってより怖いよ、もしかしてラ○ラスの箱が開いちゃってんのかな!?

 何、もしかすると宇宙世紀はビ○ト財団では無く雪ノ下家が裏で色々やらかしてんのか。

 まぁそれは置いて、俺は雪ノ下の問に何も答えずに無言でゆっくりと首を横に振るだけに止める、今何か言おう物ならどんな反撃を受けるか解った物じゃ無いし俺は石橋を叩いて渡る事が出来る慎重派な日本人だ、でもまぁ時として叩き過ぎて石橋自体を壊してしまう事も無きにしもあらずだけどな。

 

 

 

 

 エレベーターに乗り目的の整形外科病棟階へ上がり小町と由比ヶ浜を先頭に雪ノ下、そして最後部に俺の縦列で廊下を進みトドロキさんの病室へ到着する。

 エレベーターを降りて最初は雪ノ下を先頭に進んでいたのだが、此処でも雪ノ下がお約束をかましトドロキさんの病室とは反対方向へと歩み始めたので先頭を小町と由比ヶ浜にチェンジした訳だ。

 

 病室は四人部屋の様だが病室前のネームプレートにはトドロキさんの本名である『戸田山登巳蔵』の名だけが記されている、俺達鬼にはそれぞれに鬼としてのコードネームがあり普段はその鬼の名で読む呼ばれているが流石に保険証や免許証などの公的な証明証には普通に本名が明記されている訳だから病院などの受診の際には本名で受けるのが当然だ。

 病室へと到着した訳だから事ここに及んで雪ノ下がその方向音痴属性を発揮する事などあり得る筈も無く此処で先頭を雪ノ下に代わり病室の扉をノックする。

 小町や由比ヶ浜にやらせると二回しかノックをしない可能性が高いからな、こういう時は礼儀作法を弁えている雪ノ下に任せるのが一番だ。

 

 「失礼します、雪ノ下ですトドロキさん御加減は如何でしょう……!?」

 

 入室許可を得て扉を開き軽く頭を下げ挨拶の言葉を述べていた雪ノ下だったが室内のカオスな状況を見留めその言葉を失ってしまう。

 

 「おっ、いらっしゃいゆきのんちゃんガハマちゃん小町ちゃんにヒビキも、遅かったね。」

 

 いの一番にカガヤキさんが俺達に声を掛ける、室内を見渡すとトドロキさんの病室には大勢の猛士関係者が詰め掛けていてそれなりの広さがある筈の四人部屋が手狭に感じられる程だった。

 カガヤキさんに続いて室内に居る皆さんが俺達に声を掛けてくれる、此処で少し室内の様子を説明するとしよう。

 先ず入り口から見て左側の窓際のベッドにトドロキが寝かされていて左腕と左足を装具により固定されベッドを少し傾けた状態だ。

 トドロキさんは笑顔で無事な右手を上げて俺達に挨拶をしてくれて俺はその様子に少しほっとした、この様子ならトドロキさんは案外早く退院し復帰出来るんじゃ無いかと思えたからだ、しかし同時にこの際だから暫くトドロキさんにはゆっくりと静養もして欲しいって思いも当然ながらある。

 

 「うっす、てか何すかこの状況。」

 

 カガヤキさんに応えながら室内を見渡す、文字数は多くなるしちとくどいかもだが説明を続ける。

 トドロキさんのベッドの側には日菜佳さんと敏郎が陣取り日菜佳さんがトドロキさんの世話をしていて、敏郎は日菜佳さんが切ったと思われる小皿に盛られたフルーツを爪楊枝に刺してトドロキさんに食べさせている、敏郎も負傷した父ちゃんの事は勿論心配ではあるんだろうけど、こんなふうに自分の親父の世話の手伝いが出来る事が案外嬉しいのかも知れんな。

 

 「もう遅いですよぉ先輩、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩、あっお米ちゃんも来てたんですね。」

 

 続いて俺達よりも先に到着していた一色が声を掛けてくる、流石に場を弁えているのか何時ものあざとさは当社比0.7倍位に薄められている様だ、しかし一色のやつ雪ノ下と由比ヶ浜には名字プラス先輩呼びなのに何で俺だけ名無しなのん、しかも小町にはお米ってお前な…。

 

 「おう、遅れてすまん。」

 

 俺の寝坊が原因での遅れだからなここは素直に謝罪する、記者会見の席では無いから深々と頭を下げはしないし、マ○ゴミによる一斉フラッシュも無いのは幸いだ。

 てかあれはテレビ中継見ていて気持ちの良い物ではないよな、加害者側からすると取り敢えず誤っときゃ良いよな的な臭いがするし、それを報じる○スゴミは恰も自分達が正義であるのだから加害者は我らに対して謝罪と釈明の義務があるって声高に宣言している様で、俺はあの手の報道が始まるとチャンネルを変えるかテレビ自体のスイッチを切る。

 

 「やあ、ヒビキ君こんにちは妹さんと雪ノ下さんと由比ヶ浜さんだったね、はじめましていろはの父親の一色薫ですよろしく。」

 

 一色警部の挨拶に俺は頭を下げ、雪ノ下と由比ヶ浜と小町が挨拶と自己紹介を始めるのを俺は静かに見守っていたのだが、此処で突然のトラブルが俺を襲う。

 

 「きゃあ、もうヒビキくん久し振りだねぇ元気だったみたいだね、お姉さん君に逢いたかったぞっ!」

 

 音も無く俺の左側方からムギュ〜っと俺を抱き締めて来たのは暖かく柔らかくふくよかな膨らみの感触とふわっとした鼻孔を擽るいい匂いと、一色以上にあざとさを感じさせる声音だ。

 

 「ちょっ、止めてもらえますかね雪ノ下さん離れて、離れて下さいお願いします俺はまだ死にたくありませんからッ、本当マジでお願いします!」

 

 その正体は、現在は猛士に所属し現在は数少ない女性の鬼で元威吹鬼さんの弟子で管の鬼である淡唯鬼(アワユキ)さんの元、鬼の修行を行っている若干二十歳の女子大生、雪ノ下の姉。

 

 「姉さんッ、何をやっているのかしらこんな場所で不謹慎よ、早く、いいえ早急に比企谷君から離れなさい!」

 

 「そうですよ陽乃さん、ヒッキーが嫌がってるから離れて下さい!」

 

 「むぅ、ですです場を弁えてください雪ノ下先輩のお姉さん、先輩が嫌がってますから!」

 

 俺は抱き着かれた状態から感じられる女性特有の柔らかな感触と匂いと、由比ヶ浜にも引けを取らない程の膨らみに鼻の下が伸びそうになるのを、紳士スキルで我慢する。

 でなければ後が怖い、下手こいて此処で変態紳士スキルでも発動しようものなら俺はきっと由比ヶ浜と雪ノ下によって因果地平の彼方へと送られることとなるだろうから、その先に異世界転生とかが待っているなんて確証も無いのにそんなところ行く気にはなれん。

 てか、雪ノ下と由比ヶ浜とはもう一年の付き合いだし、雪ノ下は自分の姉がこんな不始末をやらかしてんのが不快なのは解るが、何故か一色までそうなっているのか俺は甚だ見当が付かん。

 

 「はぁ、おふざけは陽乃その辺にしておきなさい。」

 

 そんな俺の現状を見かねて助け舟を出してくれたのは、件の雪ノ下さんの師匠であり現在猛士関東支部所属の鬼の紅一点であり、俺の師匠カガヤキさんとは高校時代からの同級生で(おそらくはカガヤキさんに好意を抱いている)鬼としてはカガヤキさんの先輩にあたる、本名は『天美あきら』さん通称アワユキ(淡唯鬼)さんだ。

 

 「てへっ怒られちゃった(キラッ)」

 

 雪ノ下さんが反省の色無く悪戯っぽい笑みを浮かべながら俺から離れる、ハァもうついて早々こんな目に遭うとは今年の八幡は厄年か。

 

 淡唯鬼さん二十七歳、その見た目は肩の辺りで切り揃えられた黒髪と静かで淑やかな佇まいを感じさせ、少しの厳しさと内に秘めた優しさを感じさせる美人なお姉さんで、中学時代初めてこのアワユキさんに会った時はその雰囲気に俺は目を奪われてしまった、多分一目惚れだったのかもだがそれは叶わぬ恋故に俺は直ぐに諦めたがな。

 しかしカガヤキさんはアワユキさんと良い持田さんといい十代の頃から付き合いのある綺麗所に思われていながら一体何時になったらその思いに答えを出すんだろうか、弟子としては非常に気掛かりでならんわ。」

 

 「っ……あっ、安達君弟子不行き届きですよ!!」

 

 アワユキさんはその顔をまるで中高生くらいの少女か恥じらっているかの様に真っ赤な顔をして何故かカガヤキさんを本名で注意つか叱るつか怒る、いやマジ何でだろうか。

 

 「えっ、アワユキさん何で僕が責められるの!?」

 

 何故かとばっちりを被ったカガヤキさんが焦りながら疑問の声を上げて俺を恨みがましく睨む、いや何で?

 

 「へえ〜っヒッキーってアワユキさんが好きなんだ(ゴゴゴゴゴゴゴッ)」

 

 「そうだったのね比企谷君、貴方アワユキさんの事をね(ゴゴゴゴゴォッ)」

 

 「みたいですねぇ、初めてお会いしましたけど綺麗な方ですからねぇ、先輩が心奪われるのも仕方無いのかもしれないですけどぉ(ドドドドドドッ)」

 

 「へぇーっ、ヒビキくんが師匠の事を好きだったなんてねぇお姉さん知らなかったなぁ(ズキューーーン)」

 

 由比ヶ浜と雪ノ下と一色と雪ノ下さんが何故か俺がアワユキさんに恋心を抱いていた事を知っているんだが、しかもその語尾には何か恐ろしい擬音までもが含まれている様な。

 

 「もしかして、俺……。」

 

 一滴の冷たい汗が背中を伝う感触が俺の不安を掻き立てる、いやまぁこれはもしかしなくてもだろうな。

 

 「うん、中学時代初めて辺から声に出てたよゴミぃちゃん、小町はもう何も言えないよ哀れ過ぎて言葉も無いよ。」

 

 オーマイガッなんてこったい、マジかいなっ!?

 またしても俺のお口のバルブは知らぬ間に開いていて脳内の思考を口の端に載せていたのかよ、もうコレはアレだな普段俺は人との会話があまり無くて常に何かしら思考を働かせている物だから、ふとした時にその思考の圧力がバルブの耐久圧を超えて決壊してしまうのかも知れないなコレ、気圧水圧ならぬ言語の圧力略して『言圧』だ。

 けど何か言圧なんて略し方ってまるで言論弾圧を略したみたいじゃね、何なら中学時代の俺は学校では、いや中学でもかな…まぁ常にボッチ故に圧倒的少数派所謂スクールカースト最底辺に属していた訳で、そんな最底辺の意見なんぞを語ろう物ならカーストの上層からの圧力に依ってそこ発言は棄却からの弾圧にまで発展してったからな、正に当時の俺の立ち位置を如実に表しているって言っても過言では無い……んじゃないかな。

 ってまた思考が逸れてしまったが、まぁ俺だからねしゃあないしゃあないってなってそろそろ現実を受け入れよう。

 

 「まぁ、アレだ中学生男子なんて単純なもんだからな、歳上の綺麗なお姉さんに少し優しくされただけで舞い上がって勘違いしたりするもんなんだ、ソースは俺なってか他のソースとか知らんがな。

 何せボッチは他の事例何ぞを知る機会なんて無い訳だしな……あれっ、何か言ってて目から汗が。」

 

 「……ヒッキー……。」

 

 「比企谷君……。」

 

 「……先輩……。」

 

 「ヒビキくん……。」

 

 四人の女性陣の俺を見る目が憐れみの色を濃く顕し、声にまでその響きが含まれているし周りの人達はそんな俺達をニマニマとした顔で恰も見守ってますってふうに見ているし、もう止めて八幡のライフはもうマイナスよぉ!

 

 

 コホン、気を取り直して病室内の説明を続けようかこの場に居る残りの人物についてな。

 

 「ふふふ、ありがとうヒビキ君、私の事ヒビキ君は綺麗所って思っていてくれたんだね。」

 

 微笑を含み俺に語り掛けてくれた、黒髪ロングの女性はアワユキさんにも引けを取らない程の美貌を持つ妙齢の女性。

 カガヤキさんとは中学生の頃からの友人関係にあり、また何とトドロキさんとは従兄妹関係にある(意外だ)

 

 「うす、持田さんお久しぶりっすね、まぁ残念ながら俺はお世辞とか上手く言えないっすからね。」

 

 何の混じりっ気も無い本心でもって俺は持田さんに挨拶を返す。

 彼女の名は『持田ひとみ』さん、猛士が展開する系列会社にて広報を担当していて以前はテレビCMにも出演していた事もある、まぁこれだけの美貌の持ち主だし一応法人として表向き会社も経営している猛士としては企業イメージのアップに美人を起用するのは当然と言えるだろう。

 

 「おいヒビキ、お前なぁ女性を褒めるんならそんな捻た言い方なんかせずにストレートな言葉で言うものだぞ、と言いたい所だがお前の現状を鑑みれば分らんでも無いな。」

 

 俺の物言いに苦言を呈しながらも同情の念を示してくれたのはトドロキさんの師匠で猛士一番のモテ男。

 その人が由比ヶ浜と雪ノ下と一色に腕を抓られ、雪ノ下さんに何故か人差し指でグリグリと頬を甚振られている俺の置かれた現状を見て憐憫の目を向ける。

 

 「うす、ザンキさん……じゃ無かったっすね財津原さんお久しぶりです、昨日は電話ありがとうございましたってか君達いい加減やめてね、まぁ鍛えてるから痛くはないんだけど雪ノ下さんのグリグリ以外は。」

 

 昨日めでたく斬鬼の名を後進に受け継がせる事が叶った元弦の鬼で、現在は次世代の鬼の育成を手掛けるトレーナーや相談役を先代ヒビキさんこと仁志さんと共に務めている、本名『財津原蔵王丸』さん御年四十二歳。

 

 「ああ、昨日はよく頑張ってくれた様だなご苦労さん。」

 

 とまあ、此れが現在トドロキさんの病室に詰め掛けている人達である、俺は兎も角としてカガヤキさんとアワユキさんは今日は非番でローテには入っていなかったそうで、それに二人共トドロキさんとは十年以上の付き合いだしな見舞うのは当然か。

 それに持田さんは従兄妹だし財津原さんはトドロキさんの師匠だし、これも当然さもありなんだ。

 

 「はいっ、けど財津原さんも漸く斬鬼の名を引き継がせる事が出来てホッとしている面もあるんじゃないっすか。」

 

 俺がそう言うと財津原さんはフッと微笑し軽く顔を横に向け『ああそうだな』と一言ニヒルに呟く、やらやだやっぱりこの人格好いいわぁ何かハードボイルドって感じで。

 

 「それで今日はザンキさんはどうしたんすか、てっきり此処に居るもんだと思ってたんすけど。」

 

 俺はこの場に姿の見えない、トドロキさんの事を心底尊敬している弟子であるザンキさんの事が気になり聞いてみた。

 

 「ザンキくんは昨夜遅くまで此処に居てくれたんですけどね、昨日の感触を忘れないうちにまだ経験を積んでおきたいからって言って、サバキ君からの応援要請を自分から買って出て箱根まで出向いているんですよ本当に真面目な子なんですよねぇザンキくんは、無茶をしなきゃ良いんですけど。」

 

 答えてくれたのは日菜佳さんだった、鬼のスケジュール管理を受け持っていてくれる日菜佳さんには当然応援要請などの連絡も入ってくる訳で、その話をもしかすると此処でチラッと口に出したのかもな。

 

 「ああ、ザンキのやつ昨日ヒビキと一緒に闘ってみて刺激を受けたみたいでなぁ、ヒビキ君は凄いっスってしきりに褒めていたぞ。」

 

 そうだったのか、しかしマジで真面目な人なんだなザンキさん、何処かのヒビキ君にその爪の垢でも煎じて飲ませたいとか思ってそうな人が俺の周りに何人か居る様な気がするが多分気の所為だ。

 でもな、ザンキさんが俺の事をんなに評価してくれてるって事だけは素直に喜んでも良い気がするよ八幡、うんでも良い気になっちゃいけないけどね。

 

 

 

 

 

 




姉ノ下さんとあきらさんともっちー何気に初登場です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。