俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

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語らう男達。 前編

 

 トドロキさんの見舞いの為に訪れた病院であったんだが、今現在俺はその病院の売店側に設置されているソファーに腰を下ろし一人愛する千葉のソウルドリンク『マックスコーヒー』では無く。

 

 「濃い目の緑茶(さけ)飲まずにはいられないッ!。」

 

 五百ミリリットルのペットボトルの濃い目の緑茶を一口で一気に全体量の八割程を飲み干して呟く。

 あの後一通り挨拶を済ませ久しぶりに会った人や初対面の人達との交流が始まり………其処までは別に良いんだよ、其処まではな。

 問題はその後だった、病室に集った皆が交流を深め和気藹々とした空気が流れる室内の様子に俺も柄に無くほっこりとした気持ちを抱いていた。

 しかし其れが崩れ去ったのは(そう思っているのは俺だけだろうがな)昨日のバケガニ変異種転じてアミキリ変異種を清める迄の件くだりを複数体のディスクが収めた映像を編集した動画の上映会が執り行われたからだ。

 

 「まさかあんな物まで用意してるなんて思わないっての、まぁ多分みどりさん辺りが編集したんだろうがな。」

 

 このトドロキさんの病室に集った人達は猛士に所属していない雪ノ下と由比ヶ浜と一色も魔化魍に行きあった経験があるし、一色警部にしても警察官として県警の魔化魍対策班に所属し猛士と協力関係にある訳だし、今更機密がどうのとか言うのもアレだ野暮っものか。

 そして始まった上映会、普通に生活していてはほぼ遭遇する事など無い大型の魔化魍の脅威的な姿を映像の上とはいえ目の当たりにして雪ノ下達も戦慄を覚えただろうし其れも無理は無かろうだ。

 途轍もなく巨大な、怪獣の様な化け物がこの世に存在が実在した上に其れを払うこれまた異形の鬼なんてものまで存在し其れが身近に居る人間である俺だって事を知っていて尚普通に接してくれているが、俺は時に思う事があった。

 其れは彼女達がもしかすると心のほんの片隅にでも、実は魔化魍だけじゃ無く鬼の存在に対しでも恐怖心を隠し持っているんじゃ無いかって、普通に生活している分にはその恐怖心も表に現れる事は無いだろうが何事かが彼女達の身に起こった時、その思いが表面化して俺は拒絶されるんじゃ無いかってそんな思いを俺は持っていた。

 しかも去年の夏川遊びに出掛けていた雪ノ下姉妹と由比ヶ浜がそこでカッパと遭遇、其処に駆け付けた俺達は彼女達の前で鬼へと変身した。

 初めて友人として付き合う事のできた二人に拒絶される事を覚悟して、けど二人はそんな事は無く変わらず俺と付き合ってくれている、それでも尚俺は。

 

 『ふわぁ、ヒッキーも斬鬼さんも凄いねぇあんな大きな魔化魍相手に、でもさあんなにいっぱい怪我してさ、痛かったよねヒッキー……。』

 

 『今回のトドロキさんの負傷を鑑みても鬼の務めと言う物がどれ程過酷な物なのかと言う事がこの映像からでも十分に理解できるわ、比企谷君……其れにこれからしばらく後になるのでしょうけど姉さんもどうか気を付けて。』

 

 由比ヶ浜と雪ノ下は心から俺達の務めに感嘆し尊敬の眼差しと俺の身を安じ優しい言葉を掛けてくれた、殊に雪ノ下は自分の姉が鬼の修行を積んでいる途中だし尚更に心配が募ったのかもな。

 まぁその妹の言葉に姉は感激して思いっきり妹をハグして頬をすりすり姉妹ゆるゆりを展開し、皆が其れを微笑ましく見守る。

 

 『先輩、先輩、スゴイです!スゴイです!カッコいいです、鬼の皆さんはこんなふうに魔化魍と戦っているんですね、私感激しちゃいました。』

 

 一色はその発した言葉の通りに感激も露わって感じのキラキラした瞳と笑顔で俺を称えてくれたし、其処には普段のあざとさなど感じさせない一色の本心からの言葉だと思われる。

 まぁ雪ノ下や由比ヶ浜と違って一色の場合は初対面での変身だったから多少違うけど、鬼の姿とか怖いって思わなかったのかな。

 まぁその辺の感覚とか良く解らん。

 その混じりっけの無い近い世代の異性からの称賛に俺は面映さと若干の居心地の悪さとを感じてしまった。

 

 更にカガヤキさんにアワユキさんとトドロキさん、三人の現役のベテラン勢や財津原さんにも高く評価してもらったし此れから修行を終えてやがて独り立ちするだろう雪ノ下さんからも賛辞と俺を目標とするとの宣言までされてしまい、その雰囲気に気圧されてチキンな俺はトイレを装い病室を失敬して来たって訳だ。

 

 「ハァ、たまには緑茶も悪く無いもんなんだな。」

 

 俺はペットボトルのパッケージ表面を眺めながらため息一つ吐いて呟き、次いで裏面を向ける。

 

 「あれ、俳句が載って無いヤツだったのかこれって。」

 

 別に何処の何某さんが考えたものだか分からない俳句にさして興味がある訳でも無いんだが、今は何となく活字の世界に浸りたいって気分のアンニュイな倦怠感を感じていた。

 つかアンニュイな倦怠って同じ様な意味合いだよな、イカンな我ながらバイオリズムが低下中なのか。

 何て事をアレコレと考えていた俺だったが目の前に誰かが立っている事を少し前から知っていたんだが。

 その人物がまさか俺に用があるとは思いもしなかったし、思考の方にソースを割り振っていた為にその声が意味を持って耳に入って来ていなかったんだが、流石に少し煩いと感じた俺はその人物に苦情を入れようと顔を上げてみた。

 

 「やあ、やっと顔を上げてくれたね比企谷。」

 

 俺の目の前に立つその男は今、間違い無く俺の名を爽やかな笑顔で呼んだよなってか誰だっけコイツ?

 

 「あれ、もしかして俺の事知らないのかい、ハハっちょっとショックだよ君とは同じクラスなのにな。」

 

 そこに立っていたのは如何にも爽やかさが売りですっ感じの金髪イケメン、春物のニットってのかなファッションとか疎いからよう知らんけど、清潔感溢れてますけど何か?とまでの激しい自己主張はしていないがこざっぱりと決まってやがる。

 うん俺にイケメン男子の同世代の知り合いは居ないし、何ならイケメンじゃ無くても居やしないしだかコイツはら知らん奴だ……が、ん?コイツ今同じクラスって言ったよな。

 

 「………ああ、その、スマン誰?」

 

 

 

 

 そのイケメンは俺の隣に座り同じくペットボトルのドリンクを飲みながら語りかけてくる。

 つかちょっと近すぎじゃね、まぁさっき自己紹介してくれたから何となく思い出しはしたんだけど、話とかしたこと無いから殆ど初対面に等しいよな、なのにこの距離感……。

 

 「まさか本当に知られていなかったなんて、ちょっとショックだったよ。」

 

 金髪イケメン男、葉山隼人は苦笑しながらそんな事を言ってきた、まぁ仮に俺が女子だったなら或はコイツの事を知っていたかもしれんが、生憎と俺はTSする気も無きゃ腐な人達が歓喜しそうな方向へと舵を切るつもりも無い。 

 つか段々と俺はこの葉山ってヤツの事に思い至り始めた。

 

 「あぁ何か悪かったな、生憎と俺はボッチだからなあまり人の顔と名前を覚えんの得意じゃ無いんだよ。」

 

 確か由比ヶ浜の友達の金髪お蝶夫人がよく絡んでいるヤツだったよな、なんかやたらと爽やかなスマイルを絶やさないって感じのヤツだよな。

 

 「……フフッそうかいじゃあそう言う事にしておくよ、本当は違うんだろうけどさ。」

 

 俺の返答にそう切り返して葉山はペットボトルのドリンクを飲みだす、そんなセリフや仕草まで一々イケメンスメルを放っている、くそ誰かこの匂いを止めてくれッ陰キャボッチにはこの臭いに耐えられん、何ならそこの売店で自腹を切ってノンス○ルでも買って来ようか、もしくは○ァブリーズでも可です、そうすりゃ多分幾らかこの臭いからも解放されるかも……ナンテコトハナイデスヨネェハチマンシッテルモ〜ン。

 

 それから僅かな時間この場に沈黙が訪れた、葉山はペットボトルのドリンクをゆっくりと飲んでいるし、俺は飲み終えてしまい空になったペットボトルを何気無しきもて遊び、自ら葉山へと何かを問うたりなど出来ずただ一刻も早くこの妙な空間から逃れられないかとそんな事を思案する、ってか此処は『スマン俺人を待たせてるからもう行くわ。』と言ってこの場を離れりゃ良いんじゃね。 

 ヨシ!我ながらナイスなアイデアだ、では早速とがかりに、俺は葉山に向き合い声を掛けようとしたその時、葉山はヤツはポツリと呟く様に言った『凄い奴なんだな君は。』と。

 唐突に俺の事をそう評した葉山の真意が俺にはまるで解らなかった、解らなかったからって理由わけでも無いんだが俺は多分ポカンとした間抜けな表情で葉山の顔を見つめる。

 つか理由わけが解らん、葉山とは此れ迄に話した事も無いよな、何を以てコイツは俺の事を。

 

 「この一年で彼女達、雪ノ下姉妹は随分と変わったよ、端から見ていても理解(わかる)よ君と関わってから彼女達が良い方向へ変わっているとね、本当に君は俺が出来なかった事を……。」

 

 なる程そう言う事か、確かに雪ノ下は出会った当初と比べると人当たりとかも随分柔らかくなったし、良く微笑む様にもなったし人を思いやる事も出来る様にもなった、雪ノ下さんは俺と言うよりかはアワユキさんとの師弟関係や仁志さんやたちばなの皆からの助言とかそう言った関係性、言わば繋がりとかの影響で変わって行ったんじゃないかと俺は思うんだがな、あの人妹もだけどアワユキさんの事を大好きだからな……つか雪ノ下姉妹の其れが解る葉山ってヤツはもしかしたら。

 

 「何!?お前、もしかして雪ノ下姉妹のストーカーか何かなの、ソレはヤバイぞ悪い事は言わんそう言うのは止めておけ。」

 

 葉山が言う出来なかった事ってのが何なのかは一旦置いて、俺は心からの忠告を葉山に与える、別に俺は葉山とは親しい間柄では無いが雪ノ下姉妹とはそうじゃ無いからな、姉の陽乃さんは猛士に仲間だし妹の雪乃は部活の仲間だし友人だしな、その二人に害を為そうと言うのなら俺は全力を持って排除にあたろう。

 尤も雪ノ下さんなら確実に葉山を返り討ちに出来るだろうから、心配は杞憂ってもんだろうけど。

 

 「イヤイヤ、誤解しないでくれよ、雪ノ下姉妹と俺は所謂幼馴染みと言うヤツなんだ、俺の父が雪ノ下家の顧問弁護士をやっていてねその関係で二人とは顔見知りなんだよ。」

 

 しかし両の手を高速でヒラヒラとさせて葉山は慌てて否定する、なる程な親同氏にそう言う繋がりがあるんならその子供達もまた知り合いだってのも頷ける。

 まぁ雪ノ下達に実害が無きゃ別に構わんか、だがそうか幼馴染みかなる程な。

 葉山は葉山なりに雪ノ下達を見守っていたのかも知れないな、今日まで俺は葉山とは接点が無かったからその為人がどんなものかは分からんけど、コイツは案外良い奴なのかもな。

 

 「そうか悪かった俺の早合点だった様だな。」

 

 と、結論も出たところで俺は素直に葉山に謝罪すると同時に心の中のスタ○ドを引っ込めた、同じ日本人同士だからな謝罪をしたからと言って其処を(あげつら)って罪を認めた謝罪と賠償を要求するとか言ってくる事は無いだろう、無いよな。

 

 「ああ、いや解ってもらえたならそれで良いんだ……ははっ。」

 

 頬をヒクつかせ苦笑しながら葉山は俺の謝罪を受け入れてくれた、何かこう言う態度を取られると申し訳無さ具合が半端ないわ。

 だがこうなって見ると尚の事口から言葉が出て来ないわ、まさか出会った当初の雪ノ下との会話の様に言葉のドッチボールをする訳にはいかんだろうし、はて如何したものか。

 

 「それと……。」

 

 俺の口がまるで交通規制か渋滞に嵌ったかの様に会話のネタに詰まっているとその沈黙を破り葉山の方から話を切り出した、ふぅ~っ漸くこの気不味さから解放されるのかと俺は内心の安堵感を押しやって、何でも無いふうを装い葉山の方目を向け続く言葉を待つ。

 

 「俺自身君と話しをしてみたかったと言うのもあるんだけど、父から釘を刺されたんだ例え何があろうと君と敵対する事の無い様にと言われたよ……人知れずこの世の穢より産まれる異形のモノを祓う猛士の鬼、君がその鬼の一人だってね。

 俄には信じられなかったけど其れは本当の事だったんだな。」

 

 そして語られた葉山の言葉に暫し俺は驚きの余り要らないキャッシュが溜まり重くなったPCの様にフリーズしてしまったが、思い当たるフシが有ったので直様再起動を果たし葉山に告げる。

 

 「ああそうか、お前の親父が雪ノ下家の顧問弁護士ってなら猛士や鬼の事を知ってても不思議はないか、まぁ別に俺は誰かと敵対しようとかって意志は無いからなお前も別段構える必要は無いんじゃねぇの。」

 

 その俺の言葉に葉山は何処か困った様な或いは意外な事を言われてしまったみたいなそんな表情で俺を見やり、やがて視線を外し「そうなのかな」と呟いた後暫く、ほんの僅かな時間だったが沈黙。

 其れは多分だが、葉山は何なしら自分の考えを纏めようとでもしているかの様にも思える、実際はどうか知らんけど。

 

 「比企谷やっぱり君は凄いよ、俺は過去に失敗した事があってねその結果雪乃ちゃ、雪ノ下さんを救うことが出来なかったどころかその問題を悪化させてしまったんだ、だから俺は彼女に疎まれていると思うんだ、その上でほぼ初対面に近い君に言うのも何だかと思うけど……これからも君に雪ノ下さんの力になって欲しいんだ。」

 

 葉山は立ち上がり俺の目の前で頭を下げながらそんな事を宣いやがる、過去の失敗がどうだとかそんな事は俺の知ったこっちゃ無いしコイツに頼まれなくとも友人として俺は今後も雪ノ下と交流を続けていくつもりだ。

 

 「なぁ葉山お前はそれで良いのか、お前の言う失敗ってのが何なのかを俺は聞くつもりは無いし別にどうだって良い、けどな人間なんて生きてりゃ失敗の百や二百位やらかすモンなんじゃねえの、言っちゃ何だが中学時代の俺なんてそりゃもう勘違いしまくりで数多くの黒歴史を築いて来たもんだ、だがまぁ俺の場合は中学迄の俺の黒歴史を知ってる奴等との繋がりを断ったから後腐れも何も無いけどお前の場合はそうじゃ無いんだろ、ずっと昔から親同士が繋がっててお前ら子供同士もそうなんだから繋がりも早々断てないだろう、だったら……お前に負い目が在るんなら其れを挽回する何らかの行動を起こした方が良いかも知れんぞ、まぁぶっちゃけ言うとこんな事を言ってて何だが俺からすりゃ所詮他人事だからお前がやるやらないはまぁどうでも良いんだけどな。」

 

 俺は先の葉山のまるで雪ノ下を俺に託すみたいな物言いに少しばかり苛つきを覚えた、だからまぁこれくらいの事は言ってやっても構わんだろう。

 それに依ってこの男がどう行動するかは此奴次第だ、これ以上は人がとやかく言う事でもないしな。

 

 俺の言葉に葉山は何か苦い物でも飲み込んだかの様な何とも言えない表情を見せた、イケメン爽やかさ男もこんな表情をするんだなと俺は妙な所に意外性を感じていた。

 

 そして葉山はその表情を引き締め直して俺に挨拶を告げて去ってゆく、何でもヤツの母ちゃんがこの病院に医師として勤めていて、今日は親子で外食でもって話になって葉山は此処でお袋さんと合流する事にしていたそうだ、なる程だからこんな場所でヤツと遭遇してしまったって理由だ。

 去り行く葉山の背中を何となく見つめていた俺だが流石にそろそろ病室へ戻らなきゃかと思いはじめたその時、またしても俺に呼び掛ける人が現れた。

 

 「……一色警部、すいませんもしかして俺の事を探しに来てくれたんすか。」

 

 それは俺にとって初めて出来た後輩である一色の父にしてトドロキさんの警察官時代の先輩でもあり千葉県警魔化魍対策班に所属し、且つ何かと俺を気に掛けてくれている一色警部だった。

 

 「ああ、それもあるんだけどね私も個人的に君と話がしたくて探していたんだけど、さっきの彼は確か葉山弁護士の息子さんだったかな。」

 

 はぁ、一色警部が俺に話とは一体何についての話だろうか、まさか一色との関係を父親として問い詰めたりとかされるのん?イヤイヤイヤ誤解です一色警部殿ワタクシ誓って貴方のお嬢さんに不埒な真似などしておりません、お宅のお嬢さんとはあくまでも学生として先輩後輩の間柄でありますれば、そうです言わば一色警部とトドロキさんとの関係の様な物でありそれ以上でもそれ以下でもないです、ハイッ!

 なんてなお巫山戯はこの辺で終わりにしておこう、一色警部が態々俺を探してくれたって事はその話と言うのは真面目な話なのだろう、普段この人と会うのは基本警察署でだからってのもあるし一色警部自身もユーモアに富んだ為人って訳でも無いからな、おそらく話ってのは所謂お固い話だろうと思うがまぁ確りと聞いてみよう。

 

 「ヒビキ君単刀直入に聞くけど、この間君がいろはを救ってくれたあの公園なんだが、君はあの場所について何か思う所或いは感じた事などないだろうか。」

 

 売店側のソファー、俺の隣に腰を下ろして一色警部は静かにゆっくりと、しかし真剣な面持ちで俺に問うた。

 その質問の意味するところが今一つ掴めなかった俺は瞬間思考を巡らせてその質問の真意が奈辺にあるのかを考える、先ずは一色警部が言った様にあの公園の様子を思い出してみよう。

 

 「そうっすね、何てかあの公園って住宅街にほど近いのに割と広いっすよね、樹木も色んな種類が植樹されてるしベンチやテーブルなんかも処々設置されてて休日に家族で弁当持って出掛けるには結構良さそうだと思いますけど。」

 

 俺はあの公園へは片手の指で数える事が出来る位の回数しか足を運んだ事は無いんだが、先ずは俺の感じるあの公園の良い印象の部分を一色警部に伝える。

 見ると一色警部はそれに対し無言で頷いている、その目には静かだが強い目力が感じられ何だかそれは俺に『其れだけじゃないんだろう』とでも言っている様だ。

 なので俺はその後を続けて自身の所見を一色警部に伝える、次はあの公園に対するネガティブな要素を。

 

 「但しそれはあくまで昼間、日中に限っての事ですね、俺が思うにっすけどあの公園って規模に比して全体的に街灯が少ないと思うんですよ、しかもその上樹木もかなりの種類と本数が植えられているから全体的な見通しが悪いし、その結果死角になる部分が多い様に思います。

 だから何てんですかね、そう言った状況を利用して良からぬ事をやる連中には結構都合が良いかもですね。」

 

 俺は話し終えて「ふう」と一つ吐息を吐く、これは俺としてはちょっと喋り過ぎたんじゃねえのかと思える位に文字数使ったよな、おかげでまた喉が渇いて来たな。

 それで肝心の俺の話を聴いていた一色警部はと言うと、ソファーに腰掛け前に身体を傾けて両肘を太腿に浸け更に両手を組んで、所謂変形型ゲンドウさんポーズをとりなんぞ思案している様だ。

 はて、俺の返答は一色警部のお眼鏡には適わなかったのだろうか、だとしたら俺地味にショックです。

  

 「……フッ、ヒビキ君、君は本当に良く周囲の事を見ているんだな、君が猛士の人間で無ければ将来は警察への道を進めるんだがな。」

 

 しかし蓋を開けてみたら、元い一色警部の開かれた口から紡がれた言葉は意外な程に俺に対する高評価だった。

 

 




当初予定に無かった葉山との邂逅を挟んでしまい予定していたエピソード全部を書けませんでした。
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