俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

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魔化魍発生の条件をオリジナル、独自解釈で付け加えてみました。


語らう男達。  後編

 一色警部よりのまさかの高評価、まぁ多分にジョークも含まれているんだろうけどまさかなぁ……警察官の道を勧められるとは思ってもいなかったわ。

 しかし一色警部は未だ俺が出した回答に対する答え合わせをしてくれてはいない、果して一色警部は俺にどの様な返答をしてくれるのだろうか、そしてゆっくりと一色警部は語り始める。

 

 「実はねヒビキ君、あの公園なんだがここニ年程で婦女暴行或いは暴行未遂事件が九件、その他に障害致傷事件や未成年者によるグループ間抗争などの事件も発生していたんだよ。」

 

 一色警部より語られたその情報に俺は物凄くドン引きしてしまった、まさか実際にそんな大事が起こっていたとは思いもよらなかった、正に事実は小説より奇なりを地で行ってたわ。

 

 「マジですか、しかしそれだけの事が起こっているのに自治体かもしくは管理会社は街灯を増設するとか樹木を間引くとか、何らかの対策をしようって思わなかったんすかね、もしくは警察の方からもそう言った要請を出すとか。」

 

 ぼやく様に俺はそう口にし、それに一色警部は声なく無言で真剣な面持ちで頷いて見せる、やっぱり一色警部も俺と同意見なんだろうな。

 一警察官としてもこの地に住まう者としてもそんな犯罪が多発する様な場所はどうにかするべきだとの思いもあるんだろうな、しかし。

 

 「つか一色警部、その話が魔化魍とどう繋がるんすか。」

 

 一色警部が俺にその事を問い掛けるからにはおそらく、結論的には魔化魍に行き着くんだと思うんだよな。

 だってな問われた側の俺は猛士に属する鬼で一色警部は県警の魔化魍対策班に所属しているんだし、そんな人がわざわざなんの関係も無い犯罪関係の話だけで終わるとは思えんし。

 尚も何か思案しているかの様な雰囲気を醸す一色警部が言葉を発するのを俺は静かに待つ、っても其処まで長い時間を待つ訳でも無いんだけどな、精々十秒とか位だろうかな。

 

 「ヒビキ君、猛士の君にこう言う事を説明するなど釈迦に説法も良いところだろうが、魔化魍の発生原因と言うのは確かいくつかの条件が重なって発生する場合や、過去には何かしらの組織的な物が魔化魍を産み出していたと言う事例もあったそうだね、いや先程のディスクの記録映像からすると、あの黒い存在などは何某かの組織が裏で暗躍している事を表しているのかも知れないね。」

 

 一色警部の言う様に魔化魍の発生には確かにいくつかの条件や要因がある、例えば季節や天候がそうだし、一節には自然界のサイクルによってどうしてもあまり良く無い物が澱のように溜まってしまいそれが魔化魍って形になって顕れるんじゃないかって説もある。

 

 「はい、確かに一色警部の言った通りかもですね。」

 

 その地方や季節、これに気温や湿度などの要因が加わって来る、遥かな過去の時代から活動して来た猛士にはそれらの記録が遺されているので、そのデータをもとにかなりの精度で予測が可能だったりする。

 昨日の件もそうだ、トドロキさんとザンキさんが出張ったのは近日中にバケガニが顕れるだろうと言う事は過去のデータを元にして導き出され結果があったからだ。

 まぁ尤もそれがあんな大事になるとは予想だにしていなかったけどな。

 

 それから何らかの組織の暗躍だがこれは割と昔からあったらしいんだよな、十一年前の百鬼夜行事件の裏側だがこれも人工的魔化魍を産み出していた連中がいて暗躍していたらしいが、結局その首謀者は見つからず終いに終わったそうだなのでその目的も分からず終いなんだと。

 その年は例年に比して魔化魍の発生件数が爆発的に増加していて、そのうちの何割かはその連中が人為的に産み出した物だったと言われている、まぁそれを差し引いてもその前の年までとは比べるまでも無い程に増加していたんだそうだがな。

 更に厄介な事に、近年頻繁に発生している人型や等身大の魔化魍はこの年から発生する様になったと言う事だ。

 其れまでは、人型の魔化魍と言うと夏のヤツが主流で他の季節には滅多に現れる事は無かったとの事だ、しかしその発生に組織的な物が関わっているかは今のところ解っちゃいないんだけどな。

 

 「これは現時点ではあくまでも私の推測に過ぎないんだが、いろはの件も在って私は独自に調べて見たんだが。」

 

 一色警部はそう前置きをして説明を始める、猛士との協力関係を結んだ事により警察にも魔化魍に関する過去の資料も提供されているし、近年のデータも共有しているうえに警察から出向して鬼として活動している警察官の人達からより詳細な報告が上がって居るだろうからな。

 

 「あまり時間を取れなかったからより深くは調べ()れてはいないんだが、調べられた範囲内で解った人型等身大魔化魍の出現場所の傾向にについてなんだが。

 その殆どが過去に殺人事件や婦女暴行などの事件などが幾度も或いは幾度か起こっていた場所だったんだよ。」

 

 声音は静かでゆっくりだが力強さを感じるで口調一色警部は自身で調べた調査結果を語ってくれた、なる程一色警部は警察官として独自の観点から魔化魍発生場所に何らかの共通点があるんじゃないかと考察したのだろう。

 そして調査の結果現場の共通点が過去に幾度も何かしらの事件が起こっていた場所だったと、ん、つまりそれと魔化魍発生に何の因果関係があるんだ?

 

 「ふっ、魔化魍の出現にそれがどう関係しているのかと疑問に思っている様な表情だね。」

 

 俺の表情から一色警部はそれを読み取ったんだろう、流石はベテランの警察官だその観察眼は伊達じゃない、それこそνガ○ダムにも引けは取らん位だ。

 つか、雪ノ下にしても一色や一色警部にしても何で俺の表情から思考を読み取れるんですかね(怖)

 

 「これはあくまでも私の推測でしかないから、全くの的外れな解答かもしれないんだが。」

 

 一色警部が独自に行き着いた見解を語ってくれようとしている、此処は猛士の一員として鬼として俺はこの見解を確りと拝聴しなければなるまい、一色警部は優秀な警察官だその意見は必聴の価値ありだろうからな。

 頷き、俺は一色警部に見解を伺う意を示すと警部もまた頷いて語り始める。

 

 「魔化魍の出現の条件の一つに自然界の良く無い気や澱の様なものがその場に溜まり、やがてそれが魔化魍としての形を形成するのではないかと言われているよね。

 もしかするとだが、その良くない気と言う物の一つに生き物の、この場合は人間の事だが、そう言った場に於いて発せられた加害者の欲望だとか想念、そして被害者の無念や恨み怨念などがその場に溜まり時間を掛けて、それがやがて魔化魍へと変じているのではないのかと推察してみたんだよ。」

 

 見解を聞き終えた俺は一色警部マジ凄えッ、と心底感心してしまった。

 

 人型等身大が出現し始めてから此処十年程、その出現に至るプロセスは解らないでいた。

 人型等身大は大型種と違いその殆どが市街地に出現する事、その脅威度はピンキリだが大型種よりかは対象は容易ではあるものの人目のある市街地に出現すると言うその特性は非常に厄介と言わざるを得ない、警察から出向して鬼として活動している皆さんの大半はこの人型等身大への対処に当たる事がメインとなる。

 先日の一色が行き遭ったクロボウズにしてもそうだが、人型等身大は夜間に出現する事が多くそれ故にあまり世間に知られないで済んでいる一面もある、もし奴等が昼間に顕れる様になったらこれ迄の様に魔化魍の存在を一応秘匿する事は難しくなるってか、そうなると秘匿は無理だし俺達鬼や猛士の存在も大っぴらになるだろうし、そうなりゃ厄介な事になること間違い無しだ。

 

 「一色警部、何つか警部の見解には凄く納得が行きます、今迄解らなかった人型の出現の傾向が此れでかなり絞れるんじゃないっすかね。

 なる程なぁ犯罪の犯行現場っすか警察官ならではのアプローチですよね。」

 

 俺の評価を聞き一色警部は何だか、はにかんだ様な照れ臭さを感じている様な微笑を浮かべ「まだ現時点で調べられた段階での統計だからね、断定には至らないと思うよ」と謙遜というか控え目に己を律する様に言う。

 

 「ですけど警部、俺達猛士だって此れ迄の統計とかのデータでの予測を踏まえて動いている理由(わけ)っすから、警部が導いたデータだって此れから魔化魍に対する備えにはなると思いますよ。」

 

 一色警部は俺の言葉に頷く。

 

 「ああ、私も此れは一つの指針にはなると思うんだ、近日中に報告書を纏めて上層部へ提出しようと思っているよ、勿論猛士の方にもね。」

 

 あくまでも警部の説は現時点ではその一端って処だろうけど俺はかなり的を射てると思う、それもかなり中心近くを。

 しかしこのデータと警察の組織力があれば全国レベルでのそう言った場所の警戒態勢も取れるかもだよな、そうなりゃ魔化魍による被害をいくらかでも減らせるだろう。

 魔化魍ってのは古くからこの国に顕れる災害に近しい物だから、おそらくは完全撲滅って事は出来ないと思うがそれを少しでも減少させられるなら其れに越したことは無い。

 一色警部のもたらしたこの情報はある意味朗報と言ってもいいだろう、これで俺達の非番が増えればなお良しだな。

 

 

 

 

 一色警部の話も一段落した事だしもうそろそろトドロキさんの病室へ戻った方が良いだろう、そう思った矢先俺は一色警部からの一つの要請を受けた。

 

 「ヒビキ君、君に会わせたい男が居るんだが少し付き合ってもらえないかな。

 場所はこの病院内だから移動に時間も掛からないんだが。」

 

 一瞬、あまり時間が掛かってしまうと雪ノ下と由比ヶ浜と小町がお怒りになるのではないかとの懸念が俺の頭を過ぎったが、相手はこの病院内に居るって事はもしかすると警察から出向し鬼として活動している方が負傷して入院しているのかもと推察し、ならば其れは断るべきでは無いと判断し俺は一色警部に了解の意を示した。

 小町達には何連何らかのご機嫌伺いをせねばならんだろうけど、願わくばあまり俺の財布に負担を掛けないでもらいたいが、彼奴等の笑顔はプライスレスだからな致し方無しだ、当然だよな。

 

 「そうかありがとう、じゃあ連絡を着けるから少し待ってもらえるかな。」

 

 一色警部はそう言うと懐から年季の入った携帯電話を取り出すと、操作を行い左の耳に添える。

 凡そ五〜七秒程で先方が着信を受けたのだろう一色警部との通話が始まった様だ、しかし連絡を入れるって事はこれから会う人は入院患者では無いのかもな、だが電話で話す一色警部は何だか気安い口調で話してるし、この病院のお偉方とかじゃ無いと思うが。

 

 「ああ、態々すまないな、それじゃ直ぐにそちらに向かうよ。」

 

 通話を終えた一色警部は携帯電話を懐にしまうと立ち上がり、待たせた事を詫ると出発を促す。

 

 「っす。」

 

 俺はそれに小さく短く応えると一色警部と二人して院内の廊下を進み行きエレベーターへと乗り込み目的の階へ、やはり行く先は入院患者の病室では無かった様だ。

 目的の階へ到着し更に暫し通路を歩き受付にて来訪の目的を一色警部が告げ、看護師の方に場所を教えてもらうが何度か訪れた事があるのだろう一色警部は解っている旨を告げ、受付の看護師さんに礼を言って歩き出す。

 その看護師さんは去り行く一色警部の背中を少し顔を紅潮させて見送る、まぁ分かりますよお姉さん。

 四十代半ばとはいえ一色警部はハンサムっすもんねぇ、先代当代ザンキさんズとはまた別系統のカッコ良さって感じだけど、見た目的には十歳以上若く見えるし。

 

 「あざっす。」

 

 看護師さん達に挨拶をして俺も一色警部の後に続き目的地へ向かう、途中一色警部は学校の事とか日常の事などの世間話を俺に振ってくれた。

 言葉数は少ないがその言葉にはやはり俺を気に掛けてくれている事が伝わってくる。

 

 「まだ高校生の君に魔化魍の対処を任せている事に大人としては忸怩たる思いもあるんだが、こればかりは鬼である君達にしか成し得ない事だからね。

 だからこそ、普段は……日常に於いては君に充実した学生生活を送って欲しいと、心から願っているよ。」

 

 最後に私には願う事くらいしか出来ないんだけどね、と一色警部は自嘲気味に言うと口を噤んだ。

 ありがたい事に会う度に一色警部はこんなふうに何かと俺の事を気に掛けてくれる、本当に俺の回りの大人達は温かな心根を持った人達ばかりだ。

 こんな人達に出会えた幸運を俺は感謝しよう、神なんて不確かな物じゃ無く出会った人達にな。

 なのでまぁ感謝の意を込めて一色警部の憂いを払う為にもこれだけは言っておこう。

 

 「一色警部、何時も俺の事を気に掛けてくれてありがとうございます、けど俺も結構適当にやれてますんでまぁ大丈夫っすよ。

 基本俺は働きたく無い人間なんで、怠けようと思えばいくらでも怠けられますから、そりゃもう本気になれば一日中ベッドと枕を友にして惰眠を貪る位の事はお茶の子さいさいって奴っすよ。」

 

 俺のその発言に一色警部は苦笑を以って答える、もしかするも其処には多少の呆れの成分がツーサイクル混合オイルの様に混じっているかも知れないが。

 

 「フフ、君は全く日高さんやカガヤキ君が言っていた通りの男の様だなヒビキ君……二人が言っていたよ、君は口では恰もやる気の無い様な発言をするがその実は物事に対して真剣に誠実にあたる人だとね。

 私もその二人と同意見だよ、まだ年若いが君は信頼に足る人物だとね。」

 

 何か………一色警部からの俺の評価が高過ぎて逆に辛い件、果たして俺は一色警部にそれ程評価してもらえるだけの人間なのだろうかと。

 

 

 

 それから程なくして目的の場所へと到着した、其処は所謂医師や看護師の方達が業務にあたる執務室だろうと思われる一室だった。

 一色警部はそのドアをノックして来訪を告げるとその室内から入室を許可する声が聞こえて来た、それはそれなりに年齢を重ねた大人の男性の声だった。

 

 「どうぞ、入ってくれ一色。」

 

 その返事を受け一色警部はそのドアを開け室内へと入室して行く、俺もそれに続いて行く。

 

 「やあ椿、失礼する。」

 

 「失礼します……。」

 

 一色警部が部屋の主である人に挨拶をして入室、部屋の主は椿さんと言う方の様だ、それに続き俺も挨拶し入室する。

 

 「よう一色、さっき会ったばかりだが珍しいなお前がこの部屋まで来るなんてな。」

 

 其処に居た人は身長百八十センチを超える長身に水色の医師用のユニフォームのうえに白衣を纏った、髪を短くさっぱりと纏めた細身のスポーツマンタイプって感じの中年男性だった。

 その人は白衣を翻しながらこちらを向き直り一色警部へと話し掛ける。

 

 「いやすまないな椿、お前に紹介したい少年が居てなこの機会に連れて来たって訳だよ。」

 

 どうやら一色警部がその椿さんに俺を紹介したいと言う事だった、なので俺は椿さんにペコリと頭を下げる。

 しかし此処で俺は椿さんに対して何方の名を名乗れば良いのだろうか、本名か或いは鬼としてのヒビキの名か。

 

 「ほう、その坊主をか……。」

 

 椿さんはこちらへと歩いて来ると、ぬっとその顔を俺に近付けてジッと見定めるかの様に俺を見回す、なっ、何なのコレって……。

 

 「年の頃はお前の娘と同じ位か、ははぁなる程こどうやらの坊やはお前の娘の彼氏、将来の義理の息子って所だな。」

 

 俺をマジマジと見ていた椿さんは口を開いたかと思うととんでも無い発言の爆弾をぶっ込んできた。

 

 「な、な、なっ、いきなり何を言ってんすかッ、俺と一色はあくまでも先輩後輩の間柄であって、そっ、そんな関係じゃにゃいでしゅよっ……。」

 

 あまりの事態に俺は噛み噛みながら椿さんの爆弾発言を否定する、そうだ此処は断固として否定しなければならない場面だ、こんなトンデモ発言をカマされた日には一色警部の怒りの電流が迸ってしまうまである。

 

 「おいおい椿、彼と俺の娘はそんな関係じゃ無いよ、今はな。」

 

 一色警部は苦笑しながらそれを否定してくれた、そうですあくまで俺と一色はそんな関係ではありません、今はな…って今は!?

 

 「紹介するよヒビキ君、彼はこの病院に勤務する総合外科医の『椿秀一』私とは高校時代からの付き合いで、トドロキの主治医だ。

 椿、彼はヒビキ君、お前が担当する戸田山と同じ猛士の鬼だよ。」

 

 一色警部は俺と椿さんの事を互いに紹介してくれた、それは良いんだが今一色警部は俺の事を椿さんに鬼って紹介したけど、良いのか。

 

 

 

 

 

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