俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか? 作:佐世保の中年ライダー
四月も半ばを過ぎ下旬を迎え、俺達も高校二年生としての学生生活にも馴れた頃、本日の昼休みもまた俺は一人心のオアシスたるベストプレイスへと向かい心静かにお昼のひと時を過ごすべく午前中の授業の終了と共に席を立った、迄は良かったのだが。
『ヒッキー部室行こ!』と由比ヶ浜が俺の行動パターンを的確に読んでいたのか、速攻で俺に声を掛けて来て、意想外の素早さでそのまま俺の逃走経路を塞いで来た。どうやらコイツはただの旅行者では無かった様だ。
逃走ルートを見い出だせ無かった俺はなされるがままに何時もの如くお馴染みの、この奉仕部部室へと連行されてしまった。
俺を逃すまいとしていた時の由比ヶ浜はきっと心の中で『カバディ、カバディ、カバディ……』とか言っていたのかも知れない。て灼熱か。
くっ、俺からお昼の優雅で静かな一時を奪うとは、おのれ由比ヶ浜のクセに生意気な。
そして連れてこられた部室にて、雪ノ下が作ってくれた弁当を食している訳なんだが、これがまた美味すぎなんだよな。
出来れば一言苦情でも言ってやりたいところなんだが、全く非の打ち所がねえのがなぁ。
「あっ、ところでですね、私実は雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩に聞きたい事があったんですよ。」
そして何時の間にかと云うべきなのか、なし崩し的にと言うべきかは解らんが、至極当然の如く自然にこの部室に居座る様になった一つ年下の新一年生、一色いろはが弁当を食べつつ言い放った。
何だかまたぞろ厄介な事になりそうな予感がするのは果たして俺の気のせいか?どうも我ながら被害妄想が過ぎるんじゃねえかとも思うんだが。
「……一体何を聞きたいと言うのかしら一色さん、悪いのだけれどその質問の内容如何によっては答えられない事柄もあると言う事を理解したうえでの質問なのよね。」
「そうだよね、誰だって言える事とか言えない事とか言っちゃいけない事とかあるからさ、悪いけど答えられ無いところは勘弁してねいろはちゃん。」
一色の言に、如何にも遣手な出来る女感を醸し出しながら問い質す雪ノ下と、それに便乗する由比ヶ浜。
彼女が何となく犬っぽい感じだからか、まるで雪ノ下に追従する忠犬の様に思えてならないが、それを口にすると面倒事が更に面倒になりそうなので言わないでおく。
ってか、この二人傍から見てても本当に互いの事を好き過ぎてるからな、あまりにもゆりゆりしくて目の保養になり過ぎるまである。
「はい了解です、それはもう重々承知していますよ先輩方、それでですね。」
愛想よく二人に返事を返し一色は一旦そこで言葉を区切り、チラリと俺に目を向ける。
「私って入学式の翌日に先輩と素敵な運命の出会いを果たした訳じゃないですかぁ。」
一色はあざとらしく、思いっきり甘ったるしく語尾を伸ばして、何だか訳の解らない事を宣う。イヤイヤ一体あの出会いの何処に素敵な運命を感じる要素があったのか、俺にはさっぱり解らないんだが。
まぁ、そんなだから俺は小町に乙女心が解らない朴念仁とか言われてしまう所以なのかもな。
しかし解らないモノは解らないのだから、俺は一色に対してその素敵要素とやらが何処ら辺りにあるのかを問うてみた。
「だってそうじゃないですかぁ、魔化魍なんて言う人の命を脅かす脅威の存在に遭遇してしまった私を、先輩は颯爽と現れて正義のヒーローの様に華麗に退治して助けてくれたんですよ、そんなの女子なら誰でもトキメいちゃうに決まってるじゃないてますかぁ!」
右手に箸を持ったまま両掌を併せてうっとりと(多分これは芝居に違いない)夢見がちな感じに上方に視線を向けるあざと一色。
いやそう言われてみても俺としては、何だかあの出来事はベタでネタの尽きた残念なB級ドラマ程度の出来事位いにしか思えんのだが、低視聴率で打ち切りか或いはスポンサーのテコ入れが入りそうなレベルの。
そして挑戦的な目で雪ノ下と由比ヶ浜を見ては、ニヤッと口の端を釣り上げて微笑んで見せる。コイツ案外命知らずで向こう見ずな性格だったんだろうかと、ちょっとだけだがそんな一色に驚嘆の念を禁じ得ない俺ガイル。
「ハァ………。」
そんな一色の様子に雪ノ下が
少し前までの雪ノ下だったら、売られた喧嘩は大枚叩いてでも買う様な負けず嫌いの性格だったのにな。大人になったものだ。
「いや、お前はそう言うけどな一色、あれは偶々俺があの場に居合わせただけであってだな、まぁ居合わせたからには鬼として魔化魍を清めるのは当然の勤めであってだな、例え其処に一色が居なかったとしても俺は魔化魍を清めていたぞ。」
「そうだよいろはちゃん、ヒッキーはさ、普段はアレだけど基本的に真面目だから自分がやらなきゃなんない事はどんな時でもちゃあんとやり遂げるんだよ。」
一色からの度が過ぎた俺Ageの度合いに、些か以上に居心地が悪く感じた俺がそう言うと由比ヶ浜が助け舟を出してくれた。
しかしその由比ヶ浜も一見俺の事を下ろしている様でいて、何気に仕舞いには彼女も俺の事をAgeていたりするから、何ともこそばゆいったらありゃしない。
「ええ、由比ヶ浜さんの言う通りよ一色さん、比企谷君は口ではやる気の無い様な事を言って私達を煙に巻くけれども、決して自身の責任から逃げ出す様な事はしない人よ。」
オイオイお二人さん、まるで阿吽の呼吸の様に俺Age俺Sageするの止めてぐださい株価じゃあ無いんだから乱高下は御免被りたいのでお願いします。
あまりにもこっ恥ずかしくって穴があったら入りたくなっちゃうでしょうが!
「はいはい勿論、出会ったばかりですけど先輩がそんな人だって事は私も十分承知していますよ。」
雪ノ下に答えてそう言った一色の今の顔は、これまでの遣り取りで見せた、あざとい造り物の表情では無く素の彼女の表情の様に思えて、俺の小っ恥ずかしさ指数はゲージを振り切ってしまう。
「そっ、そんな事より一色、お前雪ノ下と由比ヶ浜に前振りの挑発ばっかりしてないで、いい加減本題に入った方が良いんじゃねぇの?」
そう俺が言うと、それまで素の顔でいた筈の一色だったが、一瞬“あっそうだった”とでも言いそうな表情を見せたかと思えば、忽ちのうちに彼女から素の要素が引っ込んで、再びあざといろはすと化す。
「てへ、そうでしたスミマセン先輩方。」
片方の目を閉じて舌先をほんのちょっとだけ出して下唇に付け、そして側頭部にコツんと軽く握った拳を当てる。
所謂テヘペロをやりがる、あざと一色いろはすさんの其の所業よ。
もし俺がアワユキさんや持田さんや雪ノ下と由比ヶ浜と云った、綺麗所な女性達と出会っていなければ今の仕草でコロッとヤラれていた可能性が無きにしもあらずだ。
「あざとい、やり直し!」
「もうっ、酷いです先輩、私あざとくないですぅ。」
力も入れずポカポカと俺の腕を叩き一色が抗議の声を上げる、イヤその仕草こそがあざといんだがってかやべぇ、ポカポカ叩く手さえもが柔らかいんですけど。
そしてそんな一色に雪ノ下と由比ヶ浜が、まるで殺意の波動でも放つかの様な鋭い眼光を向けつつ、話の続きをさっさと話せと促す。
出来ますれば御二方、その殺意の波動を俺にまで向けるのは勘弁願いたいんですけど、その願いは聞き届けられないんですね……うん知ってたよ。
「コホンっ、と言うかですね私が先輩方へ聞きたかった事って言うのがですね、まさにさっきの前振りと関係がありまして。」
仕切り直しとばかりにわざとらしい咳払いを入れてから一色は雪ノ下と由比ヶ浜に肝心の質問とやらを開始した、要らん挑発行為とか入れずにさっさと本題にはいって欲しかったわ。
全く一色のヤツ常にB+Cボタン同時押しかDボタン押しっ放しにしてるんじゃないだろうな、マジ俺の方が気力をめっちゃ削がれたわ。
「えっと、要するにですね、私は出会ったその場で先輩が鬼に姿を変えるところを目撃しましたけど、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩はどうだったのかなと思いまして、もしよろしければ先輩方が先輩が鬼だと知った
一色が前振った一連の流れから、多分雪ノ下は話が此処に行き着くだろうと予測出来ていた様で然程表面的な態度に変化は起こって無いが、由比ヶ浜の方はその辺りあまり察しが良くなかった様で、『それって話して良いのかな』と少しばかり逡巡している様に見える。
「まぁ、一色も魔化魍や鬼である俺に関わっている訳だし、たちばなのみんなとも面識があるんだし別に話しても構わないと思うぞ。」
チラチラと俺へ視線を向ける由比ヶ浜へと俺はそう伝えると、彼女はホッと一息つくと了承の意を示しコクリと頷く。
「じゃあさヒッキーも良いって言ってるから、話しても良いよねゆきのん。」
「ええ、そうね。」
雪ノ下と由比ヶ浜の二人は一色へと向き直り、俺が鬼だと知ってしまったあの日の経緯を語り始めた。
それを聞きながら俺も何気なしに脳内で回想を浮かべ始めた、それはあの日の去年の夏休みが始まって間もなくのある日の雪ノ下からの電話連絡が切っ掛けとなったと言っても過言では無いだろう。
その日俺は何時もの如く朝の鍛錬を終え、朝食までの一時をまったりと過ごしていた時の事だった。
ヴァイブレーションと小さな音量のメロディとを伴って告げられたスマフォの着信に気が付いた俺は、モニターに表示された雪ノ下の名と電話番号とを確認しそれを受けた。
その彼女からの要件とは、ぶっちゃけると遊びへのおさそいだった。
曰く、週末避暑を兼ねての川遊びを雪ノ下の姉の陽乃さんが企画していて、雪ノ下の友人である由比ヶ浜と俺にも参加して欲しいとのことだった。
しかし
けっ、決して彼女達の水着姿を見たかった訳じゃゃ無いんだからね。
嘘です、ゴメンナサイ本当は凄く見たかったです。
「そう残念だけれどアルバイトの予定があるのなら仕方がないわね、ではもし貴方の都合が良い日があればその時は是非にね。」
俺はバイトという事で雪ノ下からの誘いを断ったんだが、ふと思い立った事があったので雪ノ下にそれを提案してみる事にした。
「ああそうだな、その時はよろしく頼む、ああそうだ雪ノ下すまんがその川遊びだが、もしよければ小町を俺の代わりに連れて行ってもらえないか。」
来年(現時点では今年だが)小町は受験生となる、なので中三の夏ともなれば頻繁に遊びにも行けなくなるだろう、まぁ成績優秀な雪ノ下がたまに小町の勉強を見てくれるからあまり心配する必要は無いのかもだが、それでも気を抜く訳にはいかんだろうからな、なので思いっきり遊べるのは今年の内までだろう。
「ええ、勿論最初からあなたと共に小町さんも誘うつもりでいたのだから、それは構わないわよ。」
雪ノ下の微かに笑みを湛えた様な声音がスピーカー越しに聞こえてきて、俺は何だかむず痒い気持ちを惹起させられてしまう。
「そうか、ありがとうな雪ノ下、由比ヶ浜にもよろしく言っといてくれ、俺からも近日中に何らかの埋め合わせらするつもりだ。」
雪ノ下に謝意を示し通話を切るとタイミング良く、小町がキッチンからリビングへと朝食を運んできてくれた所で、俺は今の話を小町へと伝える。
頭に(何故か勝手に起動してしまうディスクアニマル)アオイクマを乗せ、足元には我が家の愛猫カマクラに纏わり付かれつつもテキパキと朝食の準備を進めつつも、その話に小町は大層喜んでくれた。
「ありがとうお兄ちゃん、後で雪乃さんにもお礼を言っとくね。」
「後、お兄ちゃん、雪乃さん達と出掛けるときこの子達も一緒に連れてっても良いかな?」
頭の上のアオイクマを指してこの子達を連れて活きたいと願う小町に併せて、当のアオイクマもその頭上で俺も俺もとばかりにアピールのゼスチャーを繰り出す。
しかしこのアオイクマ達との付き合いも二年になるのか、あの日初めて先代ヒビキさんとかカガヤキさんと出会い魔化魍と遭遇した日、俺を助ける為にカガヤキさんが放ったディスクの内の一体がコイツだった。
それから何故だか俺は特にコイツに気に入られ、カガヤキさんに正式に弟子入りした時から我が家でコイツ等を預かる事になり、今じゃすっかりウチに馴染んでいる。
しかも何故か俺以上に小町に懐いてるし、解せぬ。
「まぁ、そうだな何があるか分からないしボディガード代わりにいいかもな、基本はディスク形態にしておいて有事の際にはステルスモードで起動させりゃ他人には見えないしな、それで良いか。」
「やたっ!ありがとうお兄ちゃん小町的に超ポイント進呈だよ。」
俺はポイントカードもアプリもダウンロードもインストールもしていないんだが、そのポイントの照会は何処で出来るんだろうか、そしてそのポイントで一体何がもらえるのか甚だ疑問だが貰えるモノは貰っておこう。
「おうサンキュー、アオイクマお前後でちゃんと充電しておけよ。」
そんな会話を朝から小町と交わしてから数日後、俺は早朝六時に自宅を出発し浅草はたちばなへ到着。
この日共に事に当たるメンバーはトドロキさんとカガヤキさんとイブキさんに俺の、鬼は四人とサポート役に財前さんと先代のヒビキさんこと仁志さんとザンキさんの計七名にのぼる。
目的地までは財前さんの運転でトドロキさんとカガヤキさん、そしてザンキさんがトドロキさんの使用する車両『雷神』へ搭乗し、仁志さんは現役の頃一時期使用していた専用二輪『剴火』に搭乗する事となり。
俺はイブキさんが使用運転するする専用二輪『竜巻』の後部へと乗せてもらい現場へと向かった。
うん、やはり単車で風を切って疾走るのは気持ちが良いし現実から解き放たれたって感じの開放感を味わえるしな。
速く八月八日を迎え自ら単車を操りたいものだと心底思ってしまう。
今回俺達が訪れた現場は日本三大河川の一つ利根川の上流、水源までは遡らないが山間部に位置する付近だ、そこから少し下ると水遊びを出来るスポットがある様だ。
「今回顕れそうなのって淡水型のバケガニなんですよね、確か淡水型って海のと比較するとわりかし小型だって聞きましたけど。」
拠点の設営作業を行いながら、俺は隣りで同じ様に作業を行う先代ヒビキさんこと仁志さんに尋ねる。
「ん?そうかヒビキは淡水型のバケガニは初めてか、そうだなここ数年はその傾向が特に顕著の様だけどな。」
「バケガニなら弦の鬼のトドロキさんのある意味独壇場って感じなんですかね、何たってヒビキさんが引退した現在だと現役最年長だし場数も飛び抜けてるでしょうしね。」
「オイオイ、もう忘れたのか今のヒビキはお前だぞ八幡、早くそう呼ばれるのにも慣れなきゃな。」
ポンポンと俺の肩を叩きながら仁志さんは、注意としての指摘と言うよりも俺を激励し且つ奮起を促す様にそう言ってくれた。
「うす。」
もう一度軽く俺の肩を叩くと仁志さんは拠点設営作業を再開する、テキパキと必要物資をテーブル上へと配置しながらも、自身の見解を語ってくれる。
「まあ、お前の言う通りだよヒビキ、バケガニの討伐なら関東支部ではトドロキの右に出る者は先ず居ないだろうな。」
今回おそらく出現したとしても、その数は数体程度になるだろうと推測されていると、仁志さんはこれまでのデータと今日の気象状況から猛士本部はそう判断していると説明してくれた。
なので普通に考えれば今回の件、通常ならばトドロキさんだけでも対処出来そうだと思うが、でなければ弦の鬼をもう一人配するとか。
しかし今回この場にて事に当たる者は鼓、管、弦と三種の鬼に決された理由は、やはり事前に香須実さんから伝えられた様に複数種の魔化魍が顕れる可能性が高いと言う言葉がいよいよ信憑性を増して感じるな。
「まあ顕れるのがツチグモとかならコレだけの面子を揃えているし対処も問題ないんだろうけど、もし夏のヤツだったら少し厄介かも知れないと思ってな。」
夏の魔化魍はその性質上弦や管では清める事が出来ず、唯一太鼓の音撃でのみ清められる。そして弦や管で攻撃を行うと夏の魔化魍は文分裂増殖してしまうと云う甚だ厄介な魔化魍だったりする。
なので夏の魔化魍を相手取る時は弦の鬼も管の鬼も太鼓を以て相対し清めなければならない。
「はぁ、成程だからカガヤキさんと俺にもお声が掛かったって訳だったんすね。」
仁志さんの見解に納得が行き俺はそう答える、すると背後から今度はザンキさんが激励の言葉を掛けてくれた。
「ああ、まだデビュー三戦目だからお前も多少不安に思うかも知れないが、教わった基本を忘れず気を抜かず事に当たればそうそう不覚を取る事も無いだろう。」
「ザンキさん、うっす、ありがとうございます。」
設営を終え、ディスクアニマルを偵察へ放ち打ち合わせを終えてウォーミングアップを済ませ、全員集合し俺達は団欒の一時を迎えていた。
一頻り夫々の話題を持ち寄り語り合い、その話題は俺の事へと流れ込む。
「それでヒビキはもう何を買うか決めてるのかな。」
同好の士、同じバイク好き仲間として、俺と話の合うイブキさんが軽い調子で話を振ってくれた、主語は略されているがこれまで幾度がバイクに対する質問をイブキさんにはぶつけていたので、何を指しているのかは察しが付く。
「はい、近所のバイク屋の親父さんが程度の良い状態のKLX250を見つけてくれて、それを買うことに決めましたよ。」
「へえ、そうかオフロードタイプを選択したのか、確かに走破性や運動性をを考えるとオフ車って選択は大いにアリだね。」
「はい、しかもKLXと言や自衛隊も正式採用している由緒ある名車ですからね。」
このイブキさん、猛士から支給されている専用車両ワルキューレルーン『竜巻』の他にも個人所有で二台の単車を所有しているって根っからのライダーだ。べっ、別に羨ましく何か、おっ、大いに羨ましいんだからね。
「フッ、早いもんだな、二年前当時のヒビキとカガヤキが連れてきた中学生がもう単車を買える年齢になろうとしているんだからな、俺も歳を取るわけだ。」
猛士随一のダンディでイケオジなザンキさんが、顎に手を当てしみじみと呟くとその門弟一門がすかさず続ける。
「ちょっと何を言ってんですかザンキさん、ザンキさんは今でも十分若いっすよ、なぁ斬九郎もそう思うだろう。」
「はいっす、ザンキさんはめっちゃカッコいいし渋いっすよ。」
本当にザンキさん大好きで結束力が高いな弦の鬼一門の皆さんは、まぁ俺達太鼓の鬼も一門も負けてはいないんだけどな、多分。
「しかしそうかヒビキは個人でオフロード車を選んだんなら、猛士からの支給品はオフロードは外した方が良いか。」
「そうですね、僕もソレが良いと思いますよ仁志さん。」
「えっ、何っすか!?」
和気藹々とザンキ一門のいちゃつきを後目に、仁志さんとカガヤキさんが何やら聞き逃がせない事を口にしていると感じた俺は身を乗り出してその真意を問う。
「うん、ヒビキが二輪免許取得後に猛士から支給されるマシン何だねどね、ヤマハのWR250RかホンダのCB400スーパーボルドールの何方かを支給しようって話なんだよ。」
カガヤキさんが告げたその言葉に俺は内心歓喜のあまり小躍りでもしたい心持ちであったが、流石にそれは後々を考えると黒の歴史を刻む事になりそうな気がして自粛したが、きっと俺の表情筋はダルンダルンに弛緩しきっていたに違いない。
「うおっ、本当ですか!?なら是非スーパーボルドールの方でお願いします!」
この数週間後普通二輪免許取得後直ぐに、俺は猛士よりCB400SB『