俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

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語られるあの日  巻の撥

 

    駆

 

       跳

 

 イブキさんがイッタンモメンの討伐へと向かったダムの方角の上空に突如現れた、変異種だと思われるイッタンモメンだが、それは今妙な事に低空を舞いながら時に地面付近へと降下したりと不規則な動作を繰り返している。

 これは俺の推測ではあるが、向こうでは今もなお威吹鬼さんが奴に攻撃を加えていて、イッタンモメンの方もまた威吹鬼さんを迎撃しているんだろう。

 しかし飛行型の魔化魍には管による遠距離からの攻撃が有効な筈なんだが、それが決定打となっていないって事は。

 

 「あのイッタンモメンの外皮が厚くて、管による射撃の効果が薄いのかも知れないな。」

 

 どうやら輝鬼さんも俺と同じ答を導き出した様で、そう推論を口にしてみせると轟鬼さんが相槌を打つ。

 

 「そうか成る程な、おそらく輝鬼の言う通りなんだろう、なら一刻も早く威吹鬼さんと合流しないといけないな。」

 

 俺達の脚力なら現着まで一分と掛からないだろうけど、轟鬼さんの言う様に合流を急ぐに越した事は無いだろう。

 何より、あのイッタンモメンの変異種が徐々にだが此方の方へと向かって来ている様だし、そうなると小町達を巻き込む事態になるおそれがあるし、それは避けたい。

 

 「響鬼、さっきの今だけど紅はまだ行けそうかな。」

 

  懸けながら輝鬼さんが少し思案し俺に問いかける、まだまだ発展途上な俺は紅を維持できる時間も輝鬼さんの半分以下だしな。

 

 「そうっすね、さっき紅になってた時間は五分ちょいってところでしたから、もう少し位なら。」

 

 俺は一度紅に変身して、それを解いているからおそらくもう一度使うとすれば、その使用時間は十分ってどこだろう。

 そうなると使うタイミング、使い時ってのが重要になるし輝鬼さんの言う事は尤もだ。

 

 「うん、じゃあ響鬼にはなるだけ通常態でいてもらって、状況次第では紅を使ってくれるかな。」

 

 「うす、了解です。」

 

 ささっと輝鬼さんが現場での対応の方針を固め俺達はその案に従い動く事に了承し、現場へと駆ける。

 

 「なっ、おいアレ拙いんじゃないか、奴が此方へ向かって更に速度を上げているみたいだぞ。」

 

 轟鬼さんが空中のイッタンモメンの変異種を目視しながら注意を喚起する、彼我の相対距離が近づいているんだから対象物が次第に大きく視えてくるのは当然の事だが、轟鬼さんが言う様に急激にイッタンモメンの体躯が俺達の眼に大きく映り始めた。

 

 「て事はもしかさて、奴が威吹鬼さんを相手取るより距離を取って射程外に逃れようとしているのかも知れないっすね。」

 

 「そうだね、だったらもうこれ以上は前進させちゃいけないね二人共急ごう。」

 

 「ああ勿論。」「うす。」

 

 俺の推察を受けて輝鬼さんはチラリと一度後方を振り向く、野営地との距離を確認した上で現着を急ごうと促したんだろう。

 現在の野営地から俺達との距離がおおよそ四百メールを越えた位だろうか、相手の攻撃力や攻撃範囲が如何ほどのものかとか、移動範囲とかが不明だからなここで迎え撃って迎撃とか出来ないだろう。

 なら、少しでも野営地との距離が離れていた方が安全ってモノだ。

 

 五百メートル、六百メートルと十秒弱で更に俺達はイッタンモメンへと接近するが、奴の方も此方へと近付いて来ている為にもう互いの距離は後極僅か。

 近付くに連れてハッキリとしたイッタンモメンの変異種の姿が視認出来た、その姿はまるでイッタンモメンがその身のいたる所に装甲を纏っているかの様な見た目をしている。

 まぁこりゃ確かにこの外殻をい穿くのは骨が折れるだろうな。

 

 「くっ、此処らが限界かッ。」

 

 轟鬼さんが忌々しげにそう呟き疾走るのを止める、それに倣い俺と輝鬼さんも足を止めイッタンモメンを見上げる。

 

 「ですね、仕方が無い轟鬼さん此処で奴を迎え撃ちましょう、響鬼も何時でもいけるように。」

 

 「ああ!」「はい!」

 

 輝鬼さんの号令の元に俺達は其々の音撃武器を手にし迎撃体制を取り構える、輝鬼さんをセンターに左側に俺が右側に轟鬼さんが各自適度に距離を取り横一列に並びたつ。

 

 「はァァーっ………」

 

 其処で直ぐ様輝鬼さんはグッと全身に力と気合を込め始める、同時にその身から深紅の炎が立ち上り輝鬼さんを包み込む、早期決着を図るべく初手から『紅』を発動するって訳だな。

 

 「……たぁーッ!」

 

 身を包む炎を振り払い輝鬼さんの紅が顕現する、その色合いは俺の紅とは違い頭部の二本の角や身体を守る装甲部や縁取りの色が金色っぽい色合いでゴージャスで強そうな感じが溢れ出している。

 

 因みにだが、俺の紅は先代の響鬼である仁志さんの紅とほぼ変わらない銀色をしている、まぁ銀色ってのも格好良いと俺は思っているけど。

 何てっても銀色ってのは『いぶし銀』とかこう渋く輝く的な雰囲気とか風格とかってそんな事に思考を割り振ってる場合じゃないな。

 

 「よし響鬼、先ずは僕達で烈火弾を撃ってみよう!」

 

 「はい、輝鬼さん!」

 

 先ずはと輝鬼さんが俺に指示を出してくれる、俺も其れがこの場合の最適解だと思うし輝鬼さんの案に否はない。烈火弾を放つ事に拠る先制攻撃が奴の前進を阻む為の牽制を兼ねるって訳だ。

 もう奴との距離は百メートルを切っただろう、そしてその向こう側からは此方へと駆け付けるべく疾走りくる威吹鬼さんの姿も確認出来た。

 

 俺は更に左側へと十メールほど走り輝鬼さんとの距離を離す、この場合一塊りになって一点に集中攻撃を加えるよりも散開しての範囲攻撃を行った方が奴の行動の選択肢を狭められるかと考えたからだ。

 多分だが俺達の攻撃のタイミングに併せて威吹鬼さんも管による射撃を行ってくれるだろうとの考えも当然ある。

 

 「よしっ、今だ響鬼ッ!」

 

 「はい輝鬼さんッ!」

 

 二人同時に構え、そして放つ。

 

    劫  

        炎 

 

 二対四発の火炎の弾丸がイッタンモメンの変異種へと向かい高速でかっ飛んで行く。因みに輝鬼さんの烈火弾は俺のそれよりも一回り程大きいサイズだ。

 そして流石ベテラン、俺達の射出とほぼ時を同じくして威吹鬼さんもまた音撃管・烈風による射撃を開始する。

 

     撃

 

         弾

 

 そして俺と輝鬼さんは連続で更に烈火弾を放つ、イッタンモメン視点で見て進行方向から放たれた烈火弾と烈風による連射を上昇下降左右旋回と不格好ながらも回避行動を行うが、全弾回避とかいかず多少被弾してはいるがさしたるダメージを与えられてはいない様だ。

 

 「クッ、予想はしてたけどこれは厄介っすねッ。」

 

 その現実に俺はウンザリ気分を思いっきり声音に出してぼやく、奴の硬い装甲が厄介だって事が行動を持って改めて理解出来たって訳であ〜ぁるぅ、と思わず若本節が出たとしても俺は悪くはない……筈だ。 

 

 「うん、あのイッタンモメンの体表の殆を守る様に取り巻く装甲っぽい外皮をどうにか攻略出来ればいいんだけどね。」

 

 俺のぼやきに輝鬼さんはそれを咎めるでも無く、今も飛び回る奴から目を離さずに答えると、轟鬼さんも奴に対しての自身の見解を呈示さてくれた。

 

 「だが、逆に言えば装甲に覆われていない部分を攻める事が出来れば奴を空から陥せるて事だよな。」

 

 確かに轟鬼さんの言う事は一理あると俺も思う、例えば装甲に覆われていない翼っぽい部分とか装甲と装甲の間とかに強攻撃を食らわせられればワンチャンな。

 

 しかし飛行型の魔化魍の装甲強化型か、まるでVF−25ア○マードメサ○アのファイター形態だな。

 名付けるなら、アーマード・イッタンかアーマード・モメンって所だろうか、知らんけど。

 閑話休題、だがまさかあの装甲部がパカッと開いてミサイル全弾発射の板○サーカス的な事とかやんないよね(フラグ?)

 

 「でも取り敢えずは、手数を減らさない様に俺達は烈火弾で牽制を続けてましょう、その内何か策を思い付くかも知れないなっすからね。」

 

 さしあたり今はどうするべきか思い浮かばないし、だからって思考にばっかり気を取られてても奴に行動の自由を与えるだけだし、ならばさっきみたいに手数である程度抑えとかなきゃ小町達の方へと向かわれちゃ元も子もないし。

 

 アーマードモメンに一ヶ所に留まらず疾走りながら音撃管による射撃を継続しつつ威吹鬼さんが俺達と合流し、輝鬼さんがその威吹鬼さんに今話して決めた当面の方針を説明しその提案に威吹鬼さんも此れを是とする。

 

 「悔しいけど俺には遠距離からの攻撃手段が無い、此処は威吹鬼さんと輝鬼と響鬼に任せてしまう事になるけど、よろしく頼む。」

 

 各々にアーマードモメンに対処しながらの手早い打ち合わせを終える間際に、轟鬼が口惜しさを滲ませた声音で対処を俺達に託してくれた。

 

 「はい、ですが奴を墜す事が出来ればその後は轟鬼さんの打撃力が必要ですから、その時に備えていて下さい。」

 

 その轟鬼さんの思いを受け、威吹鬼さんが代表し俺達の思いを轟鬼さんに伝えてくれた。確かに奴が墜ちれば轟鬼さんの打撃力と斬撃は効果絶大だ。

 

 

 

 

 「そこだっ!」

 

 駆けながら音撃管を構え射撃、タタタタン…タタタタタンッと小気味良い連射音を奏で射出される威吹鬼さんの鬼石。それを避けようと空を泳ぐアーマードモメンにその幾つかがヒットするも着弾せずに弾かれてしまう。

 お返しとばかりにアーマードモメンの方もまた翼っぽい部分をはためかせて突風を発生させたりだとか、長い尾ひれの様な部位を振り回して俺達を攻めたてる。

 

 「ハッ!」 「ハァーッ!」

 

 それを回避しつつ、足腰に溜めを作り振り上げた音撃棒から火炎弾を放つ俺と輝鬼さん、ゴォッと空気さえも焼き焦がしてしまいそうな音と熱量とを発しながらアーマードイッタンにその内の数発が着弾するも、奴の外皮をほんの少し焦げ跡を付ける程度に終る。

 しかしだからと言って今はその手を止める訳にはいかない、奴を墜す為の策を練り上げるまでは。

 

 音撃管での射撃の連射、音撃棒からの烈火弾の連打を繰り返す事数ターン。

 その時、それは狙い澄ました一撃ってわけでは無く偶然、俺が放った烈火弾の内の一発がアーマードモメンの右翼の先端付近に着弾し、奴の巨大な体躯をぐらつかせ。

 

 「やったかっ!?」

 

 現状手持ち無沙汰な轟鬼さんは、いよいよ自分の出番かと期待を込めてそう口にするが、おそらくまだ決定打とはならないだろう。

 

 「いえ、まだです。」

 

 輝鬼さんが直ぐ様に逸る轟鬼さんの気持ちを抑えるべく答える。

 

 「そうっすね、けどまぁやっぱり装甲に覆われていない部分への攻撃が有効だって事は証明されたって訳っすね、っと破ぁッ!」

 

 俺も輝鬼さんの言に肯定しつつ奴に烈火弾を放ち、向かって来ると回避行動を取ったりと忙しなく動く。

 

 「破ッ!うん、奴が飛翔する為に必要な翼の部分は流石にあまり硬い外皮で覆い過ぎると可動にも支障をきたしてしまうだろうからね、それは出来なかったんだろう。」 

 

 「だけど輝鬼、それでも通常のイッタンモメンよりも奴の翼は硬いみたいなんだよ、さっきから幾つか僕の疾風による鬼石の弾丸は翼に当たったけど徹らなかったしね、おっとッ。」

 

 輝鬼さんと威吹鬼さんも俺と同様に奴へと攻撃を加えながら、同時に奴の攻撃を回避しつつ手早く打ち合わせる。

 

 「ええ、でしたら威吹鬼さん、威吹鬼さんには響鬼と奴に対する囮役をお願いします、その隙に僕が奴を落とします。そうすれば威吹鬼さんと轟鬼さんの出番ですからよろしくお願いします。」

 

 「了解!」

 

 

 

 輝鬼さんの指示の下、俺と威吹鬼さんは件のアーマードモメンの前面へ、左右に別れて奴への囮として対処に当たる。やつ視点から見て前方斜め左側に俺が位置取り、反対側前方斜め右側には威吹鬼さんが。

 

 「破ぁッ!ヤァーッ!」

 

 烈火弾を放ちつつたまに口部を開いては、射程距離が足りず奴に届く事が無いと解っていながらわざと攻撃に鬼火を混ぜる。まぁ、これは嫌がらせのヘイト集めを兼ねての攻撃で、まぁ言うなればヘイヘイ俺にはこんな技もあるんだぜ!ってな具合にデモンストレーションしているに過ぎないんだが。

 まぁしかしコレが功奏したのかは知らんが、アーマードモメンイッタンはそのヘイトを俺へと向け急降下爆弾プレスよろしく突進してくる。

 

 「ヨシ来たぁッ!輝鬼さん今っすよね!」

 

 そしてこれこそが、輝鬼さんが思案し希んでいた絶好の機会な筈だろうと、勝手にだがこの状況を見取り俺はそう判断し声に出して輝鬼さんに確認を取る。

 輝鬼さんからの返答は無かった、だが返答に代わるかの様に輝鬼さんはグッと力をその身に貯め込む様に軽く前傾姿勢を取り膝を沈ませ少し肘を曲げて両腕を左右に開く。

 それはほんの瞬間的な動作で、一種の後に輝鬼さんは紅の身体能力の限りを尽くして疾風の如きスピードで疾走りはじめる、同時に両手に構えた音撃棒に鬼力を込めて炎の刃を生み出す。

 

 俺へと向かい高空より降下してくるアーマードモメンと、その後方から両手に炎の刃を構え疾風の様に駆け抜ける青い閃光と化した輝鬼さんがそれを追う。

 

 そして……………。

 

 「とりゃーッ!」

 

 気合の掛け声を発して輝鬼さんが大地をその脚で力強く蹴り上げ、飛翔と形容するのが相応しいってほど美しく大空へと舞い飛ぶ。

 当然ながら俺へと目掛けてイッタンモメン装甲強化型が降下突進している訳だからその高度は低くなり、逆に空へと跳躍する輝鬼さんは自身の身体能力の限界値へと到達するまでは上昇している訳だから、自然その位置関係は逆転し輝鬼さんが奴の上を取れる形が出来上がる。 

 

 「そう簡単にやられるかってぇのッ!」

 

 降下し迫りくるアーマードモメンを、俺はなるだけ自分へと引き付けてからタイミングを見計らって右方向へと側方回避。

 叩くべき対象物である俺を討てずに空振ってしまったアーマードモメンは再度高空からの攻撃を加えようとでも考えてか、直ぐに上昇飛行へと移ろうとしていたが。

 

 「ハァーッ、トリャーッ!!」

 

 しかしお次はこの時を狙い澄ましていた輝鬼さんが奴に対して、上方からの攻撃を放つ番だ。

 

 「ヤァーーッ!!」

 

 地上から大凡百メートル弱、輝鬼さんの跳躍力の最高到達高度より落下速度が加わった斬撃がイッタンモメンの左翼根元付近へと叩き付けられる。

 ザックリと斬り裂かれるアーマードイッタンの左翼部のつけ根、その八割程が縦に裂かれる。

 何とも形容のしがたい鳴き声を放ち奴が低空で飛行バランスを崩しフラフラと体躯を揺らす。

 その殊勲をあげた輝鬼さんは素早く着地を決めると、今にも墜ちていこうとする奴がを扇見る。その先には轟鬼さんが待ち構えている。

 

 「ヨシ、今度こそやったか!?」

 

 次第に高度を落とし墜落寸前の奴の前方に位置取る轟鬼さんがグッと右手の拳を握って声高に確認する。

 その轟鬼さんの思いは此処に居る俺達全員の思いを実質代弁したモノであり、当然俺もそう思っているってかそう確信しているし威吹鬼さんと輝鬼さんもそれは同様で、皆一様に頷きあう。

 

 

 見る見るうちに高度を落とし、数十メートル程を不格好に滑空した後奴の正面に一度っていた轟鬼さんは自らの音撃弦を斬撃モードへと展開させ大上段に構える。

 

 「行くぞ!」

 

 墜落して来るイッタンモメン装甲強化型に対して駄目押しの一撃を加える為の動作で、轟鬼さんの膂力とまるでカウンターを自ら打たれに行くかの様な状態にある奴に対して極まれば威力絶大間違い無しだ、が。

 

 「なっ……何だ!?」

 

 威吹鬼さんの口から漏れ出た呟きはそれは俺も感じたモノだ、しかもそれは俺がさっき脳内で適当に考えていた事が現実に現れたんだから驚きも一入だ。

 

 「アーマーが展開した!?」

 

 奴の身を覆う装甲の一部がパカッとミサイルランチャーポッドの発射態勢を取るかの様に開かれた。

 

 「オイオイまさか嘘だろッ!」

 

 イッタンモメンの奴マジで板○サーカスやるんじゃないだろうな、と鬼面の下で俺は額や背筋に冷たい雫が滴る思いを味わう。

 

 「チィッ、やらせるかよッ!」

 

 どうか俺の思い過ごしであってくれよと、そう願いながら俺は墜落してゆく奴を追い駆け出す。

 もしも本当に奴が何かを射出するのなら轟鬼さんもだが、その先にはみんなが居る野営地が在る。

 仁志さんやザンキさんってベテランの元鬼だった二人が着いているとは云え、こうなっちゃ何が起こるか予測もつかない。

 

 「はぁーーーッ………」

 

 疾走りつつ俺は体内に鬼力を漲らせる、再度紅蓮の業火が俺の身を包み膨れ上がり、そして。

 

 「たァーッ!」

 

 その炎を払い捨て、その残滓と共に再度現出する俺の紅。

 紅に変じた事により更に底上げされた脚力を総動員しアーマードモメンを追い疾走る。疾走りながら先の輝鬼さん同様俺も音撃棒へと鬼力を込めて炎の刃を形成する。

 

 「響鬼!よし僕もッ」

 

 装甲強化型イッタンモメンの左翼に多大なダメージを与え、華麗に着地を決めた輝鬼さんも体勢を調えると直ぐに駆け出し。

 

 「セィッ!」

 

 俺と輝鬼さんは共に跳躍し墜ちてゆくイッタンモメンの体躯を飛び越えて轟鬼さんが待ち構える前方に着地する。

 

 「ッ、轟鬼さん!」

 

 「ああ、奴が何かをやろうとしているんだろうが、そうはさせないさ行くぞ!」

 

 着地するや間髪入れずに後方へと追いやったアーマードイッタンの方へと向き直りつつ輝鬼さんが轟鬼さんへと呼び掛けると、委細承知と轟鬼さんはそれに応えると烈雷を構え駆け出し俺達もそれに続く。

 

 「待ってて下さい威吹鬼さん、今俺が奴の外殻を斬りますから其処に威吹鬼さんの鬼石を撃ち込んで下さい!」

 

 俺たちから見て現在前方左手方向からイッタンモメンの正面へと回り込んで来ようと動き始めた威吹鬼さんへ、轟鬼さんは力強く請け負って見せる。

 

 「ええ頼みます轟鬼さん!」

 

 威吹鬼さんも音撃管・烈風を構え何時でも攻撃を放てる様に準備しつつ答える。

 

 「響鬼、僕達はあの展開している装甲部の対処に当たるよ!」

 

 「はい輝鬼さん!」 

 

 そして俺と輝鬼さんは奴の両翼付近の何某かやらかそうと展開した装甲部へと対応すべく両手に烈火剣を構え駆け出す、もうこの場はみんなが居る野営地にもかなり近い位置だし、もし奴に何かやらかされたら小町達に被害が行くかも知れない。

 そんな事態にならない様に俺達が此処で食い止めなきゃな。

 


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