俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

4 / 42
今回は私の好きなあの作品の要素を取り入れてみました。


語り合う二組。

  南房総市内『国道○号線』4月7日

 PM1:40

 

 紫色の業火を振り払って顕れた、人がその身を変えたし者、人知れずこの世を護る異形の鬼、響鬼。

 思えばあの瞬間を目撃したからこそ今の俺が在るんだよな。

 

 「…しかしまさか、俺がカガヤキさんの弟子になって、鬼になる為の修行を始めて、遂にはそのその鬼になって、しかも伝説と言われる先代の響鬼さんから名前まで受け継ぐ事になるとか思いもしなかったけどな…。」

 

 それまでは俺なんて何処にでも居る、いや千葉にしか居ないか、嗚呼我が愛しき理想郷たる千葉、嗚呼我が青春のアルカディアたる千葉って何を俺はいきなり千葉を賛美してんだよ、賛美歌でも歌っちゃうのか太鼓を叩きながら、でも賛美歌に太鼓の音色は合わないだろうな多分てか確実に……ってそれは置いといて俺は小町だけのお兄ちゃんだったのに、今じゃもう名実ともに『鬼の鬼いちゃん』になっちまったんだもんな。

 …おっと、そんな事をつらつらと考えて過去を振り返って居たら、もう間もなく目的地の御○山ももう間近だ、よし早い所カガヤキさんと合流しなきゃな。

 俺は乗機CB400SB=漁火《イサリビ》のスロットルを開け追加速した。

 

 

 

 

 

 

 

  千葉市内『サイゼ○ヤ』4月7日

 PM1∶45

 

はぁ〜あ、今日から新学期で久しぶりにヒッキーと会えたし、クラスも一緒だになれたし超ハッピーな日になると思ってたのにさ、春休みはヒッキーが猛士のローテに入ってたから駄目だったけど、今週はお当番じゃ無いって言ってたから今日はずっと一緒に居られると思ったのにぃ。

 

 「う〜ぅ、せっかくヒッキーと遊べるって思ってたのにぃ…。」

 

 あたしはゆきのんと一緒に来たサイゼでテーブルに向かい合って座っている、そのゆきのんにヒッキーと居られない不満を口にした、だってきっと…ううん絶対にゆきのんだってあたしとおんなじ気持ちだからさ。

 因みにテーブルの上にはあたし達が食べたお昼の食器と飲みかけのドリンクのグラスとティーカップが置いてある。

 

 「…もう、仕方が無いでしょう由比ヶ浜さん、比企谷く…ヒビキ君は自分が果さなければならない事を果たしに行ってしまったのだから、由比ヶ浜さん私達が今出来る事はそのヒビキ君が無事に帰って来る事を願う事だけなの…私としてもとてももどかしいのだけども…。」

 

 ゆきのんはちょっとだけクスッと笑ってからあたしをたしなめる?様にそう言った…ゆきのんのこう言うところあたしは凄いなって思う、ゆきのんだって本当はヒッキーと会えて嬉しかっただろうしそのヒッキーが、あたし達の暮らしを守る為に危険なお仕事を果たさなきゃいけない事を…なんの手伝いも出来無い事を辛いって思っている筈なのにさ。

 ゆきのんはきっと言い聞かせているんだよね自分にさ『我慢』って、ならあたしも、なんたってあたしの方がゆきのんより半年くらいお姉さんなんだからね!

 

 「…うん、だね、ヒッキーが帰ってきたらおかえりなさいって一緒に言おうねゆきのん。」

 

「ええ、由比ヶ浜さん一緒に言いましょうね、それと…お疲れ様もね。」

 

 そう言って優しくゆきのんは微笑む、それは同性のあたしから見てもとても綺麗で、思わず魅入っちゃう。

 ゆきのんはあたしの一番の親友でヒッキーと同じ位大切な人、でも同時に恋のライバルでもあるんだよね。

 だからさ、あたし他の事は兎も角これだけは絶対に譲れないんだ、それが例え親友のゆきのんだったとしてもね。

 

 

 

 

 

  南房総市『御○山』4月7日

 PM2:08

 

 麓の駐車スペースにカガヤキさんが使用している車は停めてあった、なので俺もその隣に「漁火」を停めて荷物を降ろすとスマホを取り出しカガヤキさんに到着を伝えた。

 千葉県内の山は他県に比べ標高も高くないし、携帯電話の電波が届かない場所はそれほど無い(多分、作者が千葉県に住んでいたのはもう数十年の昔なので、現在の状況は解りません)なので直ぐにカガヤキさんとの連絡は取れた。

 

 「はい、そんじゃあ此れから向かいます。」

 

 『うん、悪いねヒビキ、お詫びって訳じゃ無いけど、コーヒーを淹れてまってるから。』

 

 「うっす、ありがとうございます、それじゃ。」

 

 カガヤキさんの現在地は此処からなら常人の脚でもニ〜三十分もありゃ歩いて行けるって距離だから、俺の脚ならほんの僅かな時間で着ける…なので取り敢えず其処のコンビニで昼食でも買ってから行くとするか、昼飯食ってなかったからな俺。

 

 

 

 

  千葉市内『サ○ゼリヤ』4月7日

 同時刻。

 

 「あっ、そうだゆきのんジャンケンしようよ!」

 

 由比ヶ浜さんと訪れたサイゼ○ヤ、その私達二人が案内されたテーブル席で昼食を済ませデザートと紅茶の味を楽しんでいると、由比ヶ浜さんが突然そのような事を言ってきたの、けれど由比ヶ浜さんが何かを突然何の脈絡も無く言い出すのは何も今に始まった事でも無し、私も慣れてしまったわね。

 

 「別にそれをするのは構わないのだけれど、由比ヶ浜さん一体それは何を目的としての物なのかを説明してはくれないかしら…。」

 

 とは言えそれとこれとは別、目的、主語ははっきりと言ってもらわなければ賛成とも反対とも言えないのだから。

 

 「あ〜ごめんね、ほらさっきさヒッキーのバイクの後ろに乗っけてもらおうって言ってたじゃん、だからさあたしとゆきのんでどっちが先にヒッキーの後ろに乗せてもらうか順番を決めようよ、ヒッキーって人を後ろに乗せたことないって言ってたからさ…その…ヒッキーの初めてをあたしと……きゃっもうやだっ、もうもうもうっ………」

 

 最後の方は真っ赤に染めた両頬に手を当てて己の発言に妙な妄想でも掻き立てられたのかしら左右にその身を振るその姿は恥じらいつつも何と言うか…その、っ…いけないわ思わず私もつられて想像してしまっていたわ、私もまだまだと言う事ねこの様な場所で…気を引き締めなければ。

 と、それから私はその事について由比ヶ浜さんに伝えなきゃいけない事があったのだったわ。

 

 「ねえ、由比ヶ浜さん…その事なのだけど私、オートバイに付いて調べてみたの、それによると二輪免許所持者は免許取得後一年間は二人乗りは禁じられているのよ、だからヒビキ君は今年の8月迄はオートバイの後ろに人を乗せる事が出来ないのよ。」

 

 そうこれが伝えなければならなかった事、私もその…意中の人が好きな物の事を知りたかったから調べてみて、それに依って知った事。

 

 「えぇ〜、そうだったの!?そっかぁそれじゃあしょうがないよね…でも8月になったら乗せてもらっても大丈夫なんだね、えへへぇ楽しみだなぁ…。」

 

 本当に由比ヶ浜さんったら、心から好きなのね比企谷君の事を、けれど私もそれは同様、そしてその気持ちも負けていはいない筈よ。

 

 「そうね、その時は誰にも遠慮する事なく彼の背中の温もりを思う存分に堪能しましょう。」

 

 「うん!」

 

 由比ヶ浜さん本当に貴女の笑顔は何時も邪気が無くて、とても優しくてまるで人を蕩けさせてしまいそうな程に魅力的で、おまけに私には無いふくよかで温かさを感じさせる魅惑の物を備えていて、それはきっと世の男性に安らぎと…いけないわねこれ以上は考えない方が良さそうだわ、私自身の其処を見る度にコンプレックスを感じてしまいそうだもの。

 私の初めての同性の親友、けれど同時に最大のライバルでもあるのよね由比ヶ浜さんは、だけれど私負けないわよ。

 

 

 

 

 

  南房総市『御○山』4月7日

 PM2:18

 

コンビニで食料を買い込み、ダッシュで俺はカガヤキさんが陣取る野営地へ到着した、テントを張りテーブルと椅子が設えられている其処でカガヤキさんは入念にウォーミングアップをしている様だ。

 

 「うっすカガヤキさん、ただ今到着しました。」

 

 「やっ!来てくれたねありがとうヒビキ、取り敢えずはコーヒーでも飲んでひと息つこうか。」

 

 朗らかに、そしてにこやかにカガヤキさんは俺を出迎えてくれた、こんな優しげな笑顔を向けられた日には堕ちない女性は居ないんじゃね…なんて思わせる甘いマスクのイケメン。

 しかも超絶美人の恋人?もいるし更にそのひとにも負けないくらいのレベルの超絶美人の同僚アワユキさんからも想いを寄せられてるっぽいし…マジどんだけリア充なんだよって端から見てると思いますし、中学生の頃の俺のままだったら多分『ケッ!この爆発しちまえっ!』だとか『リア充死すべし!』とかなんか思ってたんだろうな。

 けど先代とカガヤキさんに出会って、この道を進む事を決意して、カガヤキさんの弟子になって猛士の人達や鬼の先輩達と交流を深めて俺は知った、カガヤキさんにしても他の鬼の先輩達にしても、ルックスだけじゃ無いんだよな、皆心の中、ハートまでもが凄えイケメンなんだよな。

 

 「はい、いただきます、後ついでに昼飯も食いますんで。」

 

 「えっなんだヒビキ、昼食食べる時間も取らないで来てくれたの、それはごめん…。」

 

 「いや大丈夫っす、連絡を受けて取り敢えず早めに合流だけでもしとこうって考えて、勝手に食わなかっただけっすから。」

 

 腹が減っては戦も出来ぬってな、鬼になるって案外カロリーの消費が激しいんだよな、だから食える時に食っとかなきゃだ。

 俺は椅子を借りてテーブルにコンビニのビニール袋を置き、弁当を取り出して早速食べ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

  南房総市『御○山』野営地 4月7日   PM2:35

 

さて昼飯と食べて腹も充分に満たされたし、ここで一つ昼寝でもって訳にはいきませんよね…うん勿論ですとも。

 

 「…カガヤキさんマジなんすか、もしかしたら複数体居るかもしれないって、まさかこんな然程大きくも無い山に。」

 

 大型魔化魍の複数体発生、それはこれまでも偶に起こっていた事態らしい。

 あと近場ではあるけど別々の場所で発生した奴の対処に当たっていた二人の鬼が自分が受け持った奴を追い、最終的にはその複数体の魔化魍と鬼が合流する形になった、なんて事もあったそうな。

 

 「うん…どうやらね、しかも一体はツチグモっぽいんだよ、もう一体はまだ判らないけど、おそらくはね。」

 

 うわっマジかぁ〜…ツチグモねぇ。

 

 「あははっ、相変わらず虫は苦手みたいだね。」

 

 あ、やっぱり顔に出てんのかね、マジ俺虫とかあり得ないし、多分あれだ、出来るかどうかは分からんけど将来結婚して子供ができたと仮定する、まぁこの場合は男の子だな、もしその子に夏休みに虫取り行こうよってせがまれたとしても俺の返事は『だが、断る!』だよ。

 すまんな、まだ見ぬ産まれてくるかも解らぬ我が倅よ、カブトムシやクワガタを捕まえたければうちの親父(お前にとっては爺ちゃんだな)と一緒に行ってくれ。

 なんたってあの親父、齢四十代も後半のくせして『サキシマヒラタクワガタをブリードしたい!』とか言ってるし、当然ながらそんな物を我が家の最高司令官たる母ちゃんと首席幕僚たる小町が許す筈も無く、我が家に虫の侵食は防がれているって訳だ、当然だな…全く敗北と言う物を知りたいぜフヒッ…。

 てか何時までも現実逃避しちゃメッだからね俺…うはっメッだってキモっ!

 しかし同種の魔化魍の同時出現とかってなると、何かしらの原因とかあるんだろうかな…まぁ今はそんな事解らんし、そういった事の考察も研究もこれからなんだろうし、今は目の前のお仕事に集中だな。

 

 「…すね、まぁ果たさなきゃならないお仕事ですし、其処は一つ我慢の子ってヤツっすかね。」

 

 うん、頑張ろう…カガヤキさんはにこやかにそう言ってくれた、けど…しないで済む我慢なら、しないにこしたことは無いんだけど…ってそんな事を言える雰囲気ではありませんね、八幡自重。

 

 「それでカガヤキさん、現在の状況はどんなものなんすかね?」

 

 ノートパソコンのモニターと印刷物の地図を見比べ、ディスク達を向かわせた位置にマーキングし、怪しいと思われる場所の検討をしつつ俺は確認を兼ねて質問する、こう云う現場作業は報連相が大事だからな。

 

 「うん、まず現在確認出来ただけで、地元の人が三名行方が分らなくなっていて、旅行者や登山者四名がやはり行方が分からないそうだよ。」

 

 確認が出来ただけでそれだけの人数がだからな…もしかするとそれ以上の人が既に犠牲になっているかもしれないって事だ。

 

 「そうですか…もうグズグズはしていられない状況っすね、まだ未帰還のディスク達の中に当りがありゃ良いんすけどね。」

 

 現在この御○山は猛士を通じて警察と市役所に申請し入山禁止にしてもらっている。

 当然犠牲者をこれ以上出さない為にって事だ、それに此れはあまり言いたくない表現だが、餌になる人間が存在しなければアチラも食い物を求めて積極的に動き出すかもだからな。

 

 「ああ、そう言やカガヤキさん、今でこそ俺達鬼と猛士は警察なんかと繋がりがありますけど、昔はそうじゃ無かったそうっすね?」

 

 実はそういう事らしい、太古の昔から鬼達はそれぞれ独自に魔化魍退治を行っていたそうだ、その過程で鬼によって助けられた人達が鬼に対して恩を感じ、その恩義に報いその活動をサポートする為に作り上げたられて行った組織がやがて『猛士』となったそうな。

 まぁ昔から鬼も猛士の人達も基本人が良かったって事なんだよな。

 

 「うん、僕が先代のヒビキさんに弟子入りした頃かな『百鬼夜行』と呼ばれる魔化魍の大発生があってね、その時に猛士の上層部が魔化魍の存在を警視庁と防衛省とに情報提供して、それに依ってその後警察が協力してくれるようになって今の体制があるんだよ、まぁ元警察官の轟鬼さんが居たしその伝手もあったからね。」

 

 「はい、前に聞いた事があります…当時鬼は全国で119人しか居なくて、しかもその鬼になろうと志す人も減少傾向にあったとか。」

 

 その内関東地方には11人の鬼が在席していて、その11人でローテを組んで事に当たっていたとか。

 

 「その結果、当時の鬼一人一人の負担が増えてね、ヒビキも当然知ってるだろうけど鬼になるには相当な体力を消費するからね、一度出動したら本来は数日は休養に充てなきゃならないのに、そんな状況だったから無理をする人も居てね、その無理を押して出動してしまい、怪我などでダメージを受けその結果引退や長期離脱を余儀なくされる事態に陥ったりと、あまり良い状況とは言えなかったそうなんだよね。」

 

 警察の協力を得られる様になってそれも改善が見られた、その一つに警察官から出向という形で鬼の修行を行い、結果見事鬼になる事が出来た人はそのまま、鬼として活動する様になった人もいるって事だし。

 中には修行するも残念ながら鬼にはなれなかった人も居るがな。

 

  「例の百鬼夜行以後、町中に出現する等身大の新種なんかも増加したそうっすね、それまで等身大の魔化魍は基本的に夏の奴位しか居なかってって聞きましたけど…。」

 

 「そうらしいよ、僕もその辺りは正式に先代ヒビキさんの弟子になってから教えてもらったから。」

 

 まぁ何れにしても、現状はその頃に比べるとかなり恵まれた環境にあるって事だな、ああ良かった今の俺達の労働環境はかなりホワイトな状況にあるって事なんだな。

 もし当時の労働環境に居たとしたら、きっと俺身体を壊していたと自信を持って言えるわ、いやそんなモンに自信を持つなっての俺、しかも基本がコミュ症気質だからな言いたい事も言えず社畜の様になってたかもだな。

 

 そんな話をカガヤキさんと二人語っていると、十数体程のディスクたちが帰還して来た。

 さて、この中に当りが有れば、俺達も行動が起こせるんだけど、果たしてどんなもんかね……。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。