俺が伝説の鬼の名を襲名して良いのだろうか?   作:佐世保の中年ライダー

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語られるあの日  巻の拾

 

 このいい加減長過ぎた利◯川山渓大量同時多発魔化魍討伐行も一件の落着を迎え、俺達は野営地に設えたテントの中で順番に着替えを済ませて、まぁ最後に着替えたのは俺なんだがな。こう言った場合の年功序列はわりと大事、所謂処世術ってやつだな。尤も、先輩方はそんな事はお構い無く俺に最初に着替える様に促してくれたんだが、それだと何となくだが俺の居心地が悪そうなので其処は辞退して先輩方に譲ったって訳だ、悪かったな。所詮俺は、社畜な両親の血を引いた小市民だよ。と閑話休題、着替えを終えて表へと出た俺を待っていたのは…………

 そんな俺達を迎えたのは“パシンッと、柔らかな肉を叩く鈍い音の響きだった。咄嗟に俺は音のした方向に目を向けて状況を確認した。

 そして俺の視界に入ってきたものは、それはザンキさんによって頬を平手で叩かれ俯いている雪ノ下さんの姿だった。

 

 「なっ!?ちょっザンキさん!何してんすかッ!!」

 

 あまりの事に俺は若干興奮気味に声を荒げて飛び出してザンキさんと雪ノ下さんの間に立ち塞がる。何故ザンキさんがそんな行動に出たのかは解らないが、かなり昔に引退したとは言っても鬼だった人が一般人に平手とかあんまり過ぎるだろう。

 

 

 

 

 

 

 「えっ……それって本当ですか、先輩?」

 

 淡々として事実をありのままに雪ノ下さんが話すと、一色が唖然とした表情と声音で問い返してくる。それに俺と由比ヶ浜と雪ノ下は頷き、雪ノ下さんがザンキさんに平手を食らった事が真実だと肯定する、なーわすると。

 

 「そ、そっ!いやぁホントにさぁ一色ちゃん、我ながら若気の至りってヤツだよねぇ。もう叶う事ならあの時に戻って私自身、自分の頭を引っ叩いてやりたいくらいだよ。」

 

 さも何でも無いとばかりにアッケラカンと、雪ノ下さんは当時のザンキさん、現在は斬鬼の名を財前さんに譲った事により本名を名乗る、財津原さんに引っ叩かれた事を一色と平塚先生に自ら語ったからだ。

 

 「ええ本当よ一色さん。けれどアレは明らかに姉さんの方にに問題があったのだから、いえどんなに贔屓目に見ても悪いのは姉さんなのだから、あれは謂わば自業自得と云うものだったのよ。私でって、そうね叶うならば、大きくて幅広のハリセンか、樹齢三千年の一位樫で造られた警策でも用いて姉さんを力いっぱい叩きたいと思ったものよ。」

 

 十八番(おはこ)の頭痛いのゼスチャーをかましジトッとした冷めた目を雪ノ下さんに向けながら、雪ノ下は此処ぞとばかりに攻め立てる。相当溜まってたんだな雪ノ下、今のセリフからも雪ノ下が姉に散々振り回されてるって事が察せられるわ。

 しかしさり気なくネタをぶっ込んでいる辺り雪ノ下の心には、あの頃と違って姉に対しての隔意はもう存在して無いんだろうな。

 因みに雪ノ下が言った『警策』ってのはアレだ。座禅を組んで修行している人をお坊さんがペシッと肩を叩く時に使う棒状のヤツの事を言うんだよ。コレ豆な。

 

 「うん。あたしもそう思うよ、いろはちゃん。だってあの時の陽乃さんってばさ、財津原さんに事情説明する様に言われたて答えて謝ったのはいいんだけどさ、その後がねぇ何かちょっとテヘペロってやってて巫山戯てたっぽい感じだったしね。でもさ、あの時ヒッキーが直ぐに陽乃さんを庇って財津原さんの前に飛び出して間に入ったんだよね。あの時のヒッキーすっごく男らしくてカッコ良かったよ!」

 

 雪ノ下さんに対し僅かばかりの非難的な視線を向けて、由比ヶ浜が雪ノ下の言葉に同意する。雪ノ下さんは由比ヶ浜の言葉を受けて、今まさにリアタイで『テヘペロ』をかましやがった!いやまぁ、俺的にはもう随分と前の事だし構いやしないんだがな。今話を聞いたばかりの一色と平塚先生からすると、どんなもんだろうな。

 てかそれよりも、由比ヶ浜が雪ノ下さんから俺へと向き直ってから、若干頬を赤らめてやたらと俺をアゲて来るんだが、勘違いしそうになるから、そう言う仕草は止めて頂きたいものだ。お前はそんなに俺を勝算のない戦場へと送り込みたいのか。

 

 「えっ、でもですよ。それでも女の子の頬をぶつなんて酷いんじゃないですか!」

 

 確かに俺もあの時、ザンキさんが陽乃さんを引っ叩いた時はちょっと理由が解らず憤慨したが、やっぱり同性である一色としても女性に手をあげるって事は、許されざる大罪に等しく感じるんだろうか。

 

 「あははっ、いやぁ一色ちゃんってば見た目からして計算高いあざとい娘ちゃん系のちゃっかりさんタイプの娘だと思ってたけど、案外気持の優しい娘だったんだねぇ。流石は一色警部の娘さんだね。ありがとうお姉さん嬉しいぞ!」

 

 一色相手にウインクカマして礼を言う雪ノ下さんだが、あざといだの、計算高いだの思われ言われて一色も何やら微妙な表情をしている。うんまぁそらそうなるわな。

 そして雪ノ下さんは、そんな事は何でも無いとばかりに、にゃははと笑い飛ばして続ける。

 

 「でもねぇ、アレは全面的に私に非があった事だしさ。財津原さんが私を咎めるのも致し方無し、なんだよ一色ちゃん。」

 

 しかし今の発言からも見て取れるんだよな。雪ノ下さんの心構えやあり様が、あの日から大きく変わったって事がな。それはきっと雪ノ下さんも俺と同じ様に猛士のみんなと触れ合って、多分たが、心に抱え込んでいた闇的な何かから解き放たれたのかも知れないな。知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 ザンキさんと雪ノ下さんの間に入り俺は何故なのか自分でもよく解らない憤りを感じ、その気持ちを露にザンキさんを睨む。いや、俺は本当は理解しているんだと思う。

 カガヤキさん仁志さんとの出会いからこの方、俺は猛士に所属する人達にとても良くしてもらっている。暖かく、時に厳しく俺を導いてくれた猛士の人達。猛士のみんなに共通する為人、それはみなさんが基本的にコレでもかってくらいにお人好しな人達の集まりだって事だ。

 だってそうだろう。皆出会いや経緯はそれぞれだが、人知れず、人々の日常を守る為に、魔化魍何て化け物と戦う道を選び厳しい修行と戦いの日々を送ってんだ。ザンキさんだってそうだったんだ、人の世の日常を守る為に若い頃から鬼として魔化魍と戦って、戦って。大怪我を負ってまで戦って、なのにそんなザンキさんが女性に手を挙げるなんて。

 俺は、あいにく俺も鬼に姿を変えられるとは言ってもまだ人間を辞めた訳じゃ無い、であるからして残念な事に自分の表情や顔色を自分の目で見る事が出来無いが、きっとこの時俺はもしかするとザンキさんから見て、ものすごく居た堪れない思いを喚起させられる様な表情をしていたのかも知れない。だからそんな俺の表情を見て取ったザンキさんは。

 

 「………すまないな、嫌な思いをさせてしまったなヒビキ。安心してくれとは言わないがな、もうこれ以上俺は彼女に手を挙げないよ。」

 

 俺の肩に右手を置いて、謝罪の言葉を掛けてくれた。そしてザンキさんは確りと俺の目を見つめて自らの思いを述懐する。

 

 「なあヒビキ、どうにも俺は古い考えの人間でな。今日この場を預かった身としても、そして一人の人間としても今日の彼女の行いを、ただで許す事が良い事だとはどうしても思えなくてな。勿論、当然それは彼女自身にとってもな。」

 

 ザンキさんは真摯に俺に向き合って俺に伝えてくれる。強く鋭い眼光に、厳しさと優しさ或いは慈しみとでも言おうか、そんな思いをのせて俺と雪ノ下さんに向けて。しかし。

 

 「……それは、ザンキさんの言わんとする事は俺にも理解は出来るつもりです。けど、ですけどザンキさん!だからって女の人に手を出すのを俺は良い事だとは思えないんすけどね。」

 

 何だろうか、その言葉と表情からも、ザンキさんの思いは確りと俺にも伝わったているんだが、そしてもし俺がザンキさんの立場だったとしても、きっとザンキさんと同じ行動に出た可能性も高いだろうと言う事も解っているのに。

 

 「そうだな。お前は何も間違っていないよヒビキ。ただなコレだけは理解してくれ、今回彼女の好奇心から何も知らされないままに、小町ちゃんやお前の友人達が魔化魍と行き遭ってしまったんだぞ。しかもその内の一人は、お前も知っているだろうが、彼女の妹なんだろう。」

 

 「はい。」

 

 「彼女は自分の幼く無責任な欲求を満たす為に、そんな人達を巻き込んだんだ。幸い、日高とお前が間に合ったから最悪の事態は免れたが、一歩間違っていたら彼女達の内の誰か、或いは全員が魔化魍の犠牲になっていたかも知れないんだぞ。」

 

 「っ……それは、そうかも知れないっすけど。」

 

 「彼女がその事を知ってか、それとも知らずに小町ちゃん達を巻き込んだんだのかは知らないが、いや此処へ来る為には警察による道路封鎖を越えて来てるんだ。彼女が魔化魍の存在は知らなかったとしても、その先には何らかの危険があると想像する事は容易いんじゃないか。」

 

 ザンキさんの言葉の正しさに俺は返す言葉を見つけ出せず、押し黙るしか出来無い。雪ノ下さん達がこの場へと辿り着くには警察の道路封鎖を越えなければならず、それが出来る者は俺達猛士に所属しているメンバーと警察の魔化魍対策班の人達たげだ。

 その条件を勘案してみるに、出てくる答えは一つ。雪ノ下さんは道路封鎖を担当している警察官に猛士関係者だと虚偽報告を行ったものだと推察出来る。と言う事は。

 

 「それは十分に刑法に抵触する行為だろう。そうなってしまうと其処の彼女に何らかの処罰が下るだろう事は言うに及ばずだが、加えて俺達猛士と言う組織は勿論の事、その他一体どれ程の範囲に影響が出るだろうな。」

 

 そう言う事だよな、雪ノ下さんはそれだけの事をやらかしたんだよ。

 

 「だが猛士としてはな、事をそこまで表沙汰にはしたくない面もあるんだよ。打算的な事を言えば、雪ノ下家が我々猛士に協力してくれる事になって、千葉県方面のネットワークも拡充出来たしな。」

 

 確かに雪ノ下家は千葉をメインに関東地方の建設土木工事請け負っている関係から、ザンキさんが言う様に大きなネットワークがあるんだろうな。まぁだからそう言った事を踏まえるに、最終的には雪ノ下さん達は猛士の関係者として扱い、警察には事実は告げず、今日の事は有耶無耶にし後日改めて猛士上層の方で何らかのペナルティを雪ノ下さんに与えるとか、その辺が落とし所って事で済ますのがベターな選択か。

 ザンキさんさんの言葉を受けて俺はそんな考えをつらつらと口に出して呟くと『ああ、そんなところだろうな』とザンキさんが、そう応えてくれた。そしてザンキさんは俺の後ろの雪ノ下さんに目を向けて、今度は彼女に。

 

 「しかし俺はなお嬢さん、今回の君の様に誤った行動を取ってしまった年少者を叱り糺す事は、年長者の役割だと思っている。俺達鬼が(いにしえ)よりずっと伝えられた鬼としての役割や技や心構えを学んだものを次代へと伝える様にな。場合によっては、女性に手を挙げる事は許され無い行為だと承知したうえでな。」

 

 少し柔らかな眼差しを向け、ザンキさんは自身の想いを伝える。そこで一旦言葉を区切り、雪ノ下さんから自分の右手に視線を移しザンキさんはその掌をまるで痛ましそうにジッと一睨みすると、もう一度に雪ノ下さんに視線を戻した。

 そうなんだな。やっぱりザンキさん自身も、本当は女性に手を上げるなんて事やりたくは無かったんだ。

 

 「……………」

 

 雪ノ下さんも、どうやら今のザンキさんの様子からその気持ちを察したのか、無言ではあるが左の頬を掌で抑えつつも、その顔を挙げてザンキさんをしんけんな眼差しで見つめ返している。

 ほんの暫しの間俺を間に挟んで二人は視線を交わし合うが、其処にはさっきまでの緊迫感は無かった。雪ノ下さんはおそらくザンキさんの言葉からその真意を知り、己の行動を省みているのかも知れない。

 そしてそれは俺も同様だった。ザンキさんの想いを斟酌出来ず感情のままに動いてしまい、女性に暴力を振るったと言う表層的な事象だけを見て非難してしまった。全くな、鬼として独り立ち出来たっても、まだまだ俺はケツの青いガキだって事を知らしめられたって気分だわ。やっぱり猛士に所属している人達はみんな、底抜けにお人好し揃いなんだって改めてそう思う俺ガイル。

 

 「もう随分昔に現役を終えたとは言っても、俺も元は鬼だった身だ。大きく手加減をしたが、それでも痛かっただろう。すまなかったなお嬢さん。」

 

 もう既にその表情から厳しさの欠片をも残さない、いや寧ろ慈しみさえ感じられる穏やかな表情をしてザンキさんが雪ノ下さんに頭を下げて謝罪の言葉を述べるが、対して雪ノ下さんは一瞬呆けた様な意外とでも言いたげな表情を見せた。かと思うとザンキさんから顔を背けて僅かに頬を染め。

 

 「……………ええ。いえ。」

 

 何やら言い淀む様に、ポツリと一言呟いた。もしかして、やっちゃいましたかザンキさん。雪ノ下さんのこの仕草からすると多分。そして更にザンキさんはダメ押しの一言を雪ノ下さんに投げ掛ける。

 

 「だがな。もしヒビキと日高が君達を救えなかったとしたら、今頃君はその痛みすら感じる事は出来なかったんだぞ。そしてヒビキはたった一人の妹の小町ちゃんを永久に失っていたかも知れないんだ。そうなってしまった場合の、ヒビキやご両親の心の痛みと悲しみは一体どれ程のものになるんだろうな。そう言った事も踏まえて、お嬢さん、どうかもう一度自分自身を見つめ直してくれないか。」

 

 気持ちを引き締めて、力強く真摯な眼差しで雪ノ下さんを見据えて。

そして雪ノ下さんも抑えていた左の頬から手を外して、ザンキさんを確りと見据えて『はい』と返事を返した。それはきっと雪ノ下さんにも、ザンキさんの思いが確かに伝わった証だと、俺は確信する。いやそうだよね?そうであって欲しいんだが、どうだろうな。

 

 「みなしゃ……みなさんお疲れ様です。コーヒーを淹れたっすから、みなさん撤収前にちょっと小休止なんてどうっすか?」

 

 そのタイミングで、話は一応の終わったと空気を読んでだろうが、財前さんが言葉を噛みながらも休息を勧めてくれた。この緊張感漲る場の空気が変わった事を察知して、か?

 まぁその声がタイミングの良い合図となったんだろうな、みんなもコーヒーが置かれたテーブルの周りに集い始める。ザンキさんも俺の肩にの手を置くと『折角だから頂こう。お嬢さん達も』と促してくれ、ここに集った全員で財前さんが待つテーブルへと向かった。その道すがら、なんて程の距離でも無いが、仁志さんがザンキさんの側へと歩み寄り語り掛ける。

 

 「すいませんザンキさん。何だかザンキさん一人に嫌な役を押し付けてしまいましたね。ありがとうございます。」

 

 軽く頭を下げて、仁志さんはザンキさんに謝辞を告げる。その仁志さんの表情は何時もの人好きのする快活さが鳴りを潜めている。確かに仁志さんが言う通り、俺達はザンキさんに嫌な役を任せっきりにしていたんだろうな。

 

 「いや、気にするな日高。人には向き不向きってのがあるんだ。今回の件に関しては俺が適任だった、まあ適材適所って事だな。それに人手が足りなかったとは言え、今回は引退したお前にも出張ってもらったんだ。こんな役割を担う事くらい、何て事もないよ。」

 

 「ははは、それこそ気にしないで下さいよ。鬼を引退したとは言っても鍛える事を辞めた訳じゃ無いですからね。今回の様な事が今後も起こらないとは限らないですし、これからヒビキに続いく斬九郎や他の若い連中の事も、見なきゃいけませんからね。」

 

 この場を預かる年長者の二人、俺達後進にとっても関東支部に所属するほとんど全ての鬼にとって、謂わば精神的支柱でありまとめ役とも言える二人。カガヤキさんとその弟子である俺やトドロキさんとその弟子である財前さんの様にそれぞれに正式な師弟で、基本の育成はその師弟間で行うものだが、それ以外にも仁志さんやザンキさんの他にも多くの先達から、コレまたそれぞれに肉体面や精神面でのアドバイスを受けている。

 そうやって歴代の猛士って組織と鬼達は長い歴史の中を連綿と役割を全うして来たんだな。そして今も、ザンキさんや仁志さんの様に鬼の役割を引退した後もこうして。改めてその事を認識し直した俺は。

 

 「ザンキさんッ………すいませんでした!」

 

 サッと頭を下げてザンキさんへ謝罪する。ビジネスマナーとしての謝罪の言葉ならば此処は『申し訳ありませんでした』と言うところなんだろうが、今俺が口にした言葉はビジネスとしてでは無く、俺のザンキさんへ対する素の思いと一個人としての感謝の念も込めている。だからとて、まぁそれが正解かどうかは知らんけど。

 謝罪の言葉を伝え俺は下げていた頭を上げて、ザンキさんの目を正面から見据える。するとザンキさんは何が可笑しかったのか、フッと微笑むと静かに口を開き優しく俺に言葉を掛けてくれた。

 

 「ふっ、何を謝るんだヒビキ。お前は何も悪い事をした訳じゃ無いだろう。」

 

 悪い事をした訳じゃ無いとザンキさんは言うけれど、しかし俺はザンキさんの真意も知らず、大人として抱えている責任の重さにも気付かずに食って掛かる様な真似をしてしまったんだ。それはそんな責任のある立場の人に、高々十代の小僧っ子の底の浅い正義感や価値観の押し付けをやってしまった訳で、十分に謝罪をする理由足り得ると俺は、そう思うんだが。しかし。

 

 「だが、そうだな。それじゃお前の気が済まないと思うんだったら、俺にも見せてくれよ。これからも鬼としても一人の人間としても成長して行くお前の姿をなヒビキ。」

 

 俺の肩に手を置くと、ザンキさんはそんな熱い言葉を掛けてくれた。本当にな、何て大きな人なんだよこの人は。そんな事を言われてしまっては、返す言葉は一つしか無いじゃありませんかね。

 

 「はい。ザンキさん!」

 

 決意を込めて俺はザンキさんに返事を返すと、無言で頷きフッと優しい微笑を浮かべてザンキさんは俺の肩に置いた手で二度、激励する様に軽く肩を叩いてくれた。

 

 「よし!固っ苦しい話は取り敢えず此処までにして、ゆっくりコーヒーでも飲みながら話でもしようか。小町ちゃんも、そっちの可愛いお二人さんもな。そうだなあ、普段のヒビキの様子や学校でのヒビキの事を俺達に教えてくれると嬉しいな。」

 

 パンッと両掌を合わせて叩いて仁志さんが砕けた調子でそう言うと、その場の雰囲気が緩やかに塗り替えられる。恰もそれは張り詰めていた緊張感から解きほぐされて行く様に穏やかに、先程のザンキさんの言葉じゃ無いがコレもある意味適材適所って事なのかもな。だが。

 

 「うん!それは良い考えですね仁志さん。僕も普段のヒビキの事をもっと知りたいですしね。いつの間にこんな可愛い娘達と仲良くなったのか、詳しく聞かなきゃですね。」

 

 「同感だね。カガヤキに続いてヒビキまで、こんな事になってるなんてね。やっぱり弟子は師に似るって言葉は本当だったんだね。」

 

 「そうですね。中学生の頃のヒビキは友達が出来無いって言ってましたけど、高校に入学した途端これですからね。けどヒビキ、お前はまだ未成年なんだし、ちゃんと節度を持って彼女達と付き合うんだぞ。」

 

 仁志さんを皮切りとして、カガヤキさんにイブキさんとトドロキさんが次々と俺達を弄り始める。特にトドロキさんの言葉などは、勘違いなんて光年単位でレベルを通り越しているんじゃ無かろうか。おかけで雪ノ下と由比ヶ浜が顔を真っ赤に染め上げて、お怒りモードに突入しているじゃありませんかねぇ!コレはもうアレだな、小一時間程じっくりと俺達の関係を理解してもらえるまで話し合いをするべきだな。

 

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