「演習前演習」のお時間です。
「さすがに人が乗るとなると大きいな。」
僕らは二階格納庫にある有人試作一号機の骨組みを眺めていた。
「このサイズになると着艦制動距離足りないだろ」
「そのために着艦制動フックと着艦制動ワイヤーの実験しただろ。」
「そのための二枚羽」
「複葉って言うんだろ?こういうの!」
「機体はよ完成させようぜ」
「それなんだけどな、同志大鷲」
「なんだね同志真田」
「材料がない。」
「は?」
「用件を満たすエンジンもなければ外板となるブルーシートもないぞ。」
「それからもうすぐで訓練海域につくから機体固定しないと壊れる。」
「そっか、じゃあ固定しないとな。」
「でも材料ないのは辛いよな…」
「エンジンルームに収まって150馬力以上出るエンジンどこかにないかな…」
「まっ先に演習だ。気持ち切り替えよーぜ!」
僕らは飛んでも落ちてもホワイトドルフィン練習生。もともと呉東海洋学校に入ったのはホワイトドルフィン(白鯨)に入隊するため。
今日は集合地点到着日の二日前。目的地付近の演習海域にて、艦に異常がないか確かめるために艦長の独断で低気圧に突っ込み全力公試まがいのことをするのだ。
そして1200、全力公試もどきが始まった。
※『』のなかは伝声管からの声です。
『総員!戦闘配置!』
ジリリリリリリリリリリリリリリ
『主砲配置よし!』
『速射砲配置よし!』
『機銃配置よし!』
「飛行船固定よし!」
『見張り異常なし!』
『レーダー異常なし!』
『無人機コントロールルーム、配置よし!』
『よし、総員に告ぐ!これより本艦は低気圧に突っ込み全力公試まがいの航海をする!不安もあるだろう!だがこれは演習で問題を発生させないために行う動作確認だ!そして僕たちにとっての最初のテストだ!大丈夫だ!入試の筆記試験や実技試験の通りに、また時には臨機応変に対応すれば必ず加賀は答えてくれる!諸君の健闘を祈る!』
『アイアイサー!』
「艦長演説下手だなー。」
「まあそんなもんだろ、一浪艦長だもんな。」
どごーーーーん
雷がなる。
「これより整備課は六個小隊に別れ格納庫の点検に当たる!第一から第三小隊は艦前方、第四から第六小隊は艦後方を担当せよ!以上!」
僕と真田は第一小隊、沢田は第四小隊、清原達は機関科なので機関室だ。
『左舷10度から波!高さ5メートル!』
『取舵10度!第4戦速!』
『第4戦速!』
『左舷倉庫の積載備品の固定を再確認しろ!バラストを失うぞ!』
「第1、3、4、6小隊!左舷倉庫積載備品の固定再確認に向かえ!」
「第一小隊了解!」
「第三小隊了解!」
「第四小隊了解!」
「第六小隊了解!」
ざっぱーん
波が押し寄せる
艦が大きく揺れる
「うっ!」
指宿飛行船団委員長が壁に叩きつけられる。
「指宿委員長!」
「この変態野郎!ボクより備品だ!さっさと確認してこい!」
「アイアイサー!」
(ほんとに委員長女っぽいな…うわ!)
がっしゃーん
コンテナが崩れる。
『第一小隊全員負傷!軽傷一!重傷二!』
『軽傷一名に応急処置を施せ!』
『右舷30度より波来ます!高さ4.5メートル!』
『機関一杯!面舵30度!』
『おもーかーじ!』
「次は右舷倉庫!モタモタすんな!第二小隊第一小隊重傷者の代わりに行け!」
「了解!」
「大鷲か!第一小隊軽傷者は!」
「そうだ!飛行機の大鷲だ!」
「そこのロープをとってくれ!この箱の固定が緩い!」
「なんで飛行船設備用の倉庫にみかんの箱があるんだよ!」
「第一第二小隊!無駄口を叩くな!」
「すみません委員長!」
「くっそ!あのアマ!」
「あれでも男だ!」
「みかんの箱の固定完了!」
ざっぱーん
「あっ!りんごの箱が倒れた!」
「ここは食料庫じゃねえのになんでこんなもんが!」
「知らん!いってえ!」
「どうした!」
「ネズミ取りに引っ掛かった!」
「だからここは食料庫じゃねえっての!なんでネズミ取りがあんだよ!」
「ずばろーし!ペチャクチャしゃべらんとはよしねーやこのあんごうが!」
「岡山弁でてんぞ!ばかたれ委員長!」
「大鷲お前!委員長にそんな口聞いたら!」
「大鷲…これ終わったら覚えとけよ…」
「委員長に死ねって言われた」
「ありゃ倉敷弁だ!岩田!そこのベルト回して!」
「ほい!」
「サンキュー」
「第五小隊!無人15番機の固定を再確認だ!固定具は今持っていく!」
『左舷40度から波!高さ3.5メートル!』
『取舵40度!左舷停止!』
『とーりかーじ!』
『清原!左舷止めろ!』
『了解!』
艦が左へ回頭する
『左舷一杯』
『左舷一杯よーそろ!』
艦が大きく動く
「うおお!」
「島田!大丈夫…じゃねえ!」
格納庫の中で飛ばされた第五小隊島田は固定用具を持って走っていた指宿に激突、奇しくもその胸筋に顔面が挟まれる結果となった。
「なんと言うラッキースケベ!」
「男どうしだろ!何に萌えてんだ!」
どごん!
拳の音が響く
「てめえどこに顔埋めてやがる!」
「すみませんこれは偶然でして」
揺れ巻くる艦内で殴り問答が繰り広げられる。けど…
「無人15番機が滑るぞ!」
「第六小隊援護頼む!」
「委員長避けて!」
「ロープよし!」
「車止めよし!」
「よっしゃ!止まった!」
ふう。よかった。
そう思ったのもつかの間。
「大鷲!危ない!」
僕の頭に崩れてきた木箱が激突した。
知ってるけど慣れたくない天井だ…
絶対的医務室だろここ。
「起きたか!同志大鷲!」
「起きたよ、同志…誰だっけ?」
「忘れんなよ!真田だ!中学の時スクリューを上につけまくってたアホだ!」
「ああ、あの真田ね」
「どの真田を思い浮かべた!?」
「赤い真田」
「タイムスリップすんな!」
おもしれーやつだな…
「あっそうだ、同志大鷲、お前明後日から内地で精密検査な。」
「なんで?」
「演習中ずっと寝てたから」
「は?」
いやどう言うことだ?これから演習が始まるんじゃないのか?
「動作確認でくたばって演習中ベッドで寝てるとか…」
「は?僕丸三日寝てたの?」
「お陰で艦長以下艦橋メンバーは上陸禁止だってさ」
「マジかよ」
「それから残念なお知らせがもうふたつ。」
「なんだよ」
「校長からラジコンのレプリカもしくはコピーを作って学校に提出すること、という命令が出た」
は?なんで?なんでばれたの?
「それから、有人試作一号機が演習前演習で大きく損壊した」
「マジ?」
「マジ。」
航空主兵への夢が一歩遠退いた
感想よろしくお願いいたします。