こえ無き声を届けたい   作:hirag

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3話

退院してから三日後の週末…

 

―午前5時―

 

昨日は、退院祝いをして義父も義母。つぐみさんも眠っている

 

僕はあの場所向かうために準備をする。

 

お金に水、精神安定剤をカバンに入れ一階に降り、店の出口に向かう

 

つぐみ「何処に行くの?」

 

振り向くと私服姿のつぐみさんが立っていた

 

口を動かし訊ねる。

 

つぐみ「どうしてって…退院してから様子がおかしかったから…」

 

観念してつぐみさんに手紙を見せる

 

[今から実家に向かいます]

 

つぐみ「大丈夫なの?」

 

[不安ですが、僕は行かないと…]

 

つぐみ「私も付いて行く!もし庄司くん一人だと何かあったら…」

 

嬉しくて口元が緩む。そして口を動かし伝える

 

[行きましょう]

 

つぐみ「うん!」

 

といったものの…逃げるのに必死で道すら覚えていない…

 

住所は手紙に書いてあるが…

 

つぐみ「その手紙貸してくれない?」

 

つぐみさんに手紙を渡す。するとつぐみさんはスマホで何か調べ始めた

 

つぐみ「ここから1時間半ぐらいでたどり着けそうだよ」

 

と言っても駅までの道もあまり覚えていない…

 

つぐみ「道順は…こっちみたい。ついてきて!」

 

_________________

 

~1時間半後~

 

目的地周辺の駅に着いた。ここまで来ると家までの道のりが分かる

 

つぐみ「静かな町だね…」

 

コクリ

 

僕の実家は首都から離れた少し田舎寄りの場所にある

 

見慣れた街並み…懐かしい香りがする

 

一歩一歩前へ…あの家に向かって進む

 

ある建物の前に足を止めた…

 

つぐみ「ここは…」

 

『MCF…かつて僕が歌っていたライブ会場。もう二度と来ることはない場所だと思っていた』

 

つぐみ「歌えなくても庄司くんは庄司くんだよ。それは何があっても変らないよ」

 

僕は僕…そうだね。声がなくても僕の事を理解してくれる人が傍に居る

 

こんな嬉しいことはない…

 

 

~笹野家~

 

家の前に着いたけど、少しボロボロになっている

 

手足が震え、呼吸が荒くなり頭が真っ白になる

 

つぐみ「大丈夫。私が付いているから」

 

コクリ

 

つぐみさんはそう言い手を握ってくれた。そのおかげで手足の震えも呼吸も落ち着いてきた

 

覚悟を決めて鍵を差し込み捻る。扉を開け中に入る――

 

つぐみ「酷い…」

 

中は逃げてきたときと何も変わっていない…

 

臭いこそ無いが所々見ると嫌な思い出が蘇る…

 

玄関の血の跡。これは、逃げ出した時に頭から流した血

 

壁に空いた穴。アイツが怒った時に投げつけてきた包丁が刺さった跡

 

他には床のへこみ。破れたカーテン…二階に続く階段の傷。

 

二人で二階に上がり自分の部屋に入る

 

つぐみ「この部屋は…」

 

[僕の部屋です]

 

この部屋だけは荒らされていなかった。

 

タンスの奥に隠してあったはずのあれを探す

 

あった!

 

つぐみ「それは…懐中時計?」

 

コクリ

 

傷だらけの懐中時計を開き確認する

 

母さんが死んだあの時から針は止まっている

 

蓋の裏に張っている写真は傷がついていなかった

 

つぐみ「それは?」

 

[家族の写真です]

 

母さんが生きており、あいつも狂い始める前に時に撮った唯一の写真…

 

時計いじりが好きな叔父さんが作ってくれた僕の宝物…

 

どうしてだろう。この写真をみてから涙が止まらない…

 

つぐみ「庄司くん…」

 

つぐみさんに抱き付き泣き続けた

 

 

 

~数分後~

 

 

 

つぐみ「大丈夫?」

 

コクリ

 

恥ずかしい…///

 

つぐみさんに泣きついてしまった

 

取り敢えず、僕の宝物は回収した。もうこの家に思い残すことはない…

 

[さようなら]

 

そう呟き僕たちは家を後にした

 

つぐみ「庄司くん帰ろう。私達の家に」

 

つぐみさんが手を差し伸べる。あぁ、逃げて正解だった…

 

あのまま、あの家に居たら絶対この人に…手を指し伸ばしてくれる人に出会えなかった

 

手を握り歩き出す。僕たちの家に向かって――

 

 

~羽沢珈琲店~

 

義父「うおぉ~庄司!心配したんだぞ~!」

 

店に入ってみると義父が駆けつけてきた

 

義母「何の連絡もなしで出て行くなんて。悪い子ね」

義父「そうだ。お前に知らせることがある。いいか?落ち着いてきくんだ」

 

真剣な目をして義父は言った

 

「正明…お前の実の父親。亡くなったって…」

 

あの家が売却から取り壊しになった時点で薄々そうだと思っていた…

 

はは…いい気味だ!今まで散々やってきたことの報いだ!

 

もう追われることはない。隠れて過ごす日々は終わった。

 

けれど……

 

けれどなんだろう?嬉しいはずなのにどうして心がざわつくのだろうか

 

懐中時計を握りしめる。

 

つぐみ「庄司くん…辛いのは分かるよ。だけど、どんな酷い人でも親は親だよ」

 

親は親…

 

父「つぐみの言う通りだ。アイツは親としてやってはいけない事をやった。だが、その前のアイツはお前の事を愛していたはずだ…お前の母、美智子と同じく」

 

本当にあいつは…父は…

 

父「お前はもう既に俺の息子だ。お前の苦しみも俺に分けてくれないか?」

 

え?

 

父「支えあってこそ家族だ。そうだろう」

 

コクリ

 

いま気がついた。僕が求めていたものはもうこんな近くにあったことを…

 

前の家族はこの時計に…この写真に…

 

もう義理の家族じゃなく。本当の家族がここに…

 

 

もしも主人公(庄司)が学校に通うなら?

  • 羽丘
  • 花咲川
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