こえ無き声を届けたい   作:hirag

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今回の話は前回の後日談になります


最終話

あの事件から7年……

 

あたし達はあの日から何か物足りない毎日を過ごしてきた

 

あいつが写った写真を見れば···あの日のことを思い出す

 

_________________

 

~7年前 病院~

 

 

蒼「損傷が酷すぎる···生きているのが奇跡だ……だが、今の医学だと助けられない……」

 

つぐみ「そんな……」

 

蘭「どうにかならないの⁉ねぇ、義兄さん!」

 

巴「落ち着け蘭」

 

蒼「その子の言う通りだ。落ち着け蘭。俺は”()()()()()”だと助けられないって言っただけだ」

 

蘭「え···」

 

モカ「それってつまり……」

 

 

ひまり「まだ助かるの!?」

 

蒼「あぁ、幸いにもこの病院には冷凍カプセルがある」

 

酒井「先生それは無理です! あれには莫大な維持費が……」

 

蒼「維持費ぐらい俺が何とかする。これ以上あの子を苦しめるわけにはいかない。俺はもう目の前で誰かが死んでいくのは見たくない!」

 

 

酒井「……分かりました。急いで装置を起動させます」

 

蒼「あぁ、頼んだ……」

 

蘭「どれぐらい時間が掛るの?」

 

蒼「分からない。一年かもしれないし最悪もっと掛かるかもしれない」

 

つぐみ「待ちます。私達は庄司くんが帰って来るのを待ちます」

 

巴「つぐの言う通りです。どれだけ時間が掛ろうと蒼さんを信じます」

 

ひまり「蒼さんならきっと庄司君を助けてくれますよね」

 

モカ「蘭」

 

蘭「義兄さん。お願い。彼を……庄司を助けて」

 

蒼「あぁ! 必ず救って見せよう何があっても」

 

_________________

 

~美竹家~

 

 

美竹父「蘭。またお見合いの話が……」

 

蘭「断っておいて」

 

美竹父「お前もそろそろ相手を……」

 

蘭「あたしが結婚する相手は決まってる。それ以外の人と結婚する気はない」

 

美竹父「そう言ってもう7年だ。彼が帰って来る可能性は低い」

 

確かにあいつが帰ってくる可能性は低い。

 

あいつが入っている冷凍カプセルは一般人が立ち入ることが出来ない病院の奥にある。

 

それに義兄さんも中々家に帰ってこないから会話する暇もない

 

だから生きているかどうかあたし達は知らない

 

だけど、あたし達は生きていると信じている

 

 

美竹父「よく考えなさい。彼と結婚することは彼をこの家の掟に縛ることになる」

 

蘭「それは分かってる。けど、あいつにそんな重荷を背負わせない」

 

あいつには自由に生きてほしい……それを邪魔するならだれが相手でもあたしは容赦しない

 

 

 

 

Pipipi……

 

 

蘭「もしもし……」

蒼『やぁ、久しぶり♪』

 

今日の義兄さんは少し機嫌がいいみたい

 

蘭「機嫌良さそうだね。何かあったの?」

蒼『まぁ、いいことはあったかな』

 

蘭「──?」

 

蒼『ところで今日13時、羽沢珈琲店に来てくれないか? もちろん他のみんなを呼んで』

 

蘭「湊さんも?」

 

蒼『いや、呼ばなくていいよ。ってかなんでそこで友希那の名前が出るんだよ』

 

蘭「別にいいの? 恋人なのに」

 

蒼『いや、そうだけど……ってそんなことより13時にみんなと羽沢珈琲店に集合! いいな?』

 

蘭「分かった」

 

ピッ

 

_________________

 

~商店街~

 

約束の時間まで少しある。少し花屋でも覗きに行こうかな……

 

「あの……そこの人」

 

蘭「あたしですか?」

 

振り返るとフードを被り、車いすに乗っている青年がいた

 

「そう、貴女です。ここら辺に羽沢珈琲店という喫茶店があると聞いたのですが……」

 

見るからに怪しい人はそう言った

 

蘭「あそこの角を曲がってまっすぐ進めばあります」

 

「これはご丁寧にありがとうございます」

 

青年は震える手でハンドリム(タイヤの近くの持ち手)を回して進もうとする

 

どうしてか分からないけど···

 

何故か懐かしい感じがした

 

蘭「押しましょうか?」

 

「あぁ、ありがとうございます」

 

あたしは青年の車いすを押す。すると青年は──

 

「はは……」

 

蘭「どうかしましたか?」

 

「いえ、こんな風に誰かが車いすを押してくれたのが少し懐かしくて」

 

蘭「懐かしい?」

 

「えぇ、もう7年前です。当時僕はある理由で入院していたのですよ」

 

7年前……丁度あたし達がアイツと出会った時と同じ……

 

でも、この青年は7年前ってことになると恐らく小学生くらいだろう

 

「って今日、退院したばっかりですけどね……信じられないと思いますが、昔僕は声が出せなかったのです」

 

蘭「え?」

 

「声が出ない僕に優しく接してくれた人や羽沢珈琲店で働かせてくれた人。その中で僕が恋した人もいました」

 

蘭「庄司?」

 

「え? どうして僕の名前を……」

 

7年前に車いすを押してくれた、声が出せなかった。

 

羽沢珈琲店で働いていた。これらの条件が一致するのは一人しかいない……

 

蘭「覚え……てる? あたし……だよ……」

 

涙が溢れてくる。あたしが……あたし達がずっと帰って来るのを待っていた人。

 

 

 

 

──笹野庄司

 

 

 

庄司「美竹···さ···ん?」

 

蘭「待って……たよ。あんたが···帰って……来るのを……」

 

庄司「ただいま……戻りました。美竹さん」

 

蘭「生きてた……本当に……」

 

庄司「簡単に死ねませんよ。言ったじゃないですか。声が戻ったら最初に声を聞かせるって」

 

蘭「変わらないね……アンタは……」

 

庄司「まだ目が覚めて数日しか経っていませんから、そんな直ぐに変わりませんよ」

 

_________________

 

 

~羽沢珈琲店~

 

つぐみ「あ! 蘭ちゃんいらっしゃい! その人は……」

 

蘭「あとで紹介するよ。他のみんなは……」

 

ひまり「蘭~こっちこっち!」

巴「遅かったじゃないか」

 

モカ「あれ~? もしかして蘭~泣いてた?」

蘭「な、泣いてないし///」

 

「ブラックコーヒーを頼めますか?」

 

つぐみ「は、はい。分かりました」

 

つぐみさんは相変わらず元気みたいだ。

 

もちろん、他のみんなも

 

ひまり「蘭。その人誰なの?」

 

蘭「ちょっと待って。つぐみが戻ってきてから話すから。それより義兄さんは?」

 

「先生は急患で来ることが出来なくなりました」

 

巴「医者だから仕方ないよな。庄司の件といい忙しいもんな……」

 

当の本人は目の前にいるけどね……

 

モカ「しょーくん。早く帰ってこないかな~」

 

ひまり「心配だよね……あれからもう7年か……」

 

つぐみ「ブラックコーヒーです……」

 

つぐみさんは少し警戒した様子で僕の前にコーヒーカップを置いた

 

仕方ない。フードを深くかぶった人が目の前にいるから怪しく思うでしょう

 

つぐみ「みんなお待たせ」

 

巴「つぐも座ったことだし、蘭……その人誰なんだ?」

 

美竹さんを見ると軽く頷いた。

 

「みなさん久しぶりですね」

 

その言葉と同時に僕はフードを取った

 

巴「お、おまえは⁉」

 

モカ「……!」

 

つぐみ「庄司くん⁉」

 

ひまり「本当に……庄司⁉」

 

庄司「えぇ、正真正銘の笹野庄司です」

 

 

蘭「その目は……」

 

庄司「あ、これですか? あの事件でもう駄目になっていましたので、義眼を入れました。変ですか?」

 

つぐみ「そんなことないよ……片目がなくても庄司くんは庄司くんだよ」

 

巴「つぐの言う通り。どんな姿になってもお前はアタシ達の仲間だ」

 

蘭「アンタとあたし達は揺るがない絆で結ばれてる。声がなくても……目がなくてもそれは変らない」

 

ひまり「でも、どうしてその色にしたの?」

 

モカ「普通は黒とか……もう片方と同じ色にするよね?」

 

庄司「僕は井ノ島で見た景色。あの夕日の色が忘れなくて···」

 

僕の義眼は赤色……

 

あの夕日の色も赤

 

庄司「それに僕が恋をした人の髪に入れている。同じ色です」

 

蘭「──⁉///」

 

モカ「おぉ~蘭の顔が真っ赤かだ~」

 

庄司「こういうところは変ってませんね」

 

蘭「う、うるさい!」

庄司「ハハハ……僕が失ったのは目だけではありません」

 

つぐみ「え⁉」

 

テーブルから少し距離を空け、足に指をさす

 

モカ「足……」

 

庄司「そうです。足はありますが動きません。手はリハビリ中です」

 

巴「だから車いすに乗ってんだな」

 

ひまり「庄司君、実はね···」

 

 

上原さん曰く、あの事件の後

 

父が死に、冨田は無期懲役になったらしい。

 

 

 

でも、喜ばしい事に蒼さんと友希那さんが近々結婚するみたい

 

 

ー数時間後ー

 

 

庄司「さてと……」

 

つぐみ「何処か行くの?」

 

庄司「えぇ、少し町を探索に···美竹さん」

 

蘭「うん、行こう」

 

ひまり「私達も一緒に···」

 

モカ「ひーちゃん、それはやめた方がいいよ」

 

巴「だな。二人の邪魔をするわけにはいかないだろ?」

 

 

~高台~

 

 

羽沢珈琲店を後にした僕と美竹さんは高台にやって来た

 

庄司「さて、美竹さん。僕に何か隠していませんか?」

蘭「え、どうして……」

 

庄司「分かりますよ……なんとなくですが……」

蘭「なにそれ……実は……」

 

どうやら美竹さんのお見合いの話が進んでいるらしい。

 

おじさんは僕の事を考えて話を進めているみたい

 

 

蘭「ねぇ、庄司はいまでも……その……あたしの事好き? ///」

 

頬を赤くしながら美竹さんはそう問いかけた。僕の答えは──

 

庄司「昔から変わりませんよ。僕は美竹さんの事が……蘭の事が大好きです」

 

蘭「そう……///ありがとう……でもこれ以上庄司には……」

 

庄司「掟に縛られる事、僕は気にしませんよ」

 

蘭の言葉を遮り、僕の本音を言葉で伝える

 

庄司「前に体験した時からやってみたいと思っていたし、何より蘭と一緒に居ればどんな困難だって乗り越えられる」

 

失った物は数知れない……声……父……母……目、そしてこの足……

 

それとより多くのモノの僕は手に入れた。

 

僕を受け入れてくれた羽沢夫妻、信頼できる友達、僕を救ってくれた武崎さんと蒼先生

 

 

そして……僕を愛してくれた人。

 

 

この人がいれば今更なにがあっても恐れはしない

 

庄司「見てください……あの夕日を」

蘭「庄司もこの風景が気に入ったんだ」

 

蒼先生からこの高台からの景色は格別と聞いていた。それなら夕日も見えるだろうと思った

 

庄司「そういえば蘭。美人になったね」

蘭「な! 何言っての! まだ子供のくせに///」

 

庄司「身体は17のままだけど心は蘭と同じだよ」

蘭「でも、結婚できるのは18歳以上のはず」

 

庄司「それ本当ですか⁉」

蘭「ホント……」

 

迂闊だった……現代社会をもっと勉強しておくべきだった……

 

蘭「ねぇ、こっち向いて……」

庄司「え? ──⁉」

 

唐突の事で数秒間。頭が回らなかったけど……柔らかいものが唇にあたっている

 

庄司「蘭⁉な、なにを……」

 

蘭「先約。あたし以外の女に浮気したらただじゃおかないから」

 

庄司「大丈夫。僕は蘭以外に恋心を持たないよ」

 

蘭「そ、そう……///な、ならいいよ……こっちに来て」

 

ベンチに蘭が座り、膝を叩いている

 

庄司「なんですか?」

 

蘭「さ、察してよ///」

 

 

ああ……膝枕かな。車いすを蘭の横に移動させ、蘭の膝の上に頭を乗せる

 

こうして蘭の膝に頭を乗せているとあの時を思い出す…

 

あの時と違うのは、蘭が笑っている事と身体の自由が利くこと

 

 

蘭「ねぇ、庄司は今何を考えているの? あたしは7年前の事件の事を思い出していた。庄司が命がけであたしを守ってくれたこと」

 

 

庄司「僕も同じ事を思い出していたよ。あの時、僕は生きることより蘭を助けることで精一杯だった。まさかこんな日が来るとは思っていなかったよ」

 

 

蘭「あたしも…もう庄司が帰ってこないとずっと思っていた。でも、こうして同じ景色を見ることができるなんて思っていなかった。ねぇ、あの時何って言ってたの?」

 

 

蘭と向き合い、頬に手を当て誤魔化す

 

 

庄司「その言葉はいま言うには少し早いかな」

 

 




蘭編最終回、ご覧いただきありがとうございます。

次回からは最後のヒロイン。モカ編がスタートします

モカ編はどんな感じになるか執筆してないので分かりませんが、ボチボチ書いていこうと思っています

もしも主人公(庄司)が学校に通うなら?

  • 羽丘
  • 花咲川
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