雲居の空   作:くじぃらぁす

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萌芽

「夜去、どうした?怖い夢でも見たのか?」

義勇さんの腕にしがみついていた。

腕を僕が強く抱くものだから、義勇さんも目が覚めたのだと思う。

 

「ごめんなさい、起こしてしまって」

「怖い夢じゃないんです。暖かい夢でした」

 

「そうか。俺の布団に入るか?」

「まだ、日の出までは長いぞ」

水屋敷に泊まった時もこんな感じだった。

夜中に目が覚めて、寝付けずにいると一緒に寝るかと言ってくれた。

昔から義勇さんは変わらないんだ、とても優しい。

 

「いいんですか?」

 

「構わない」

錆兎さんと真菰さんを起こさないように布団に入ろうとした。

 

「義勇だけ、ずるいよ」

 

「あぁ、そうだな真菰」

 

「ごめんなさい、起こしてしまって」

二人は初めから起きてたみたいだ。寝ている間に、僕が泣いたから三人は起きたみたいだ。

 

「夜去は、よく泣くんですね」

 

「朝、泣いていたつもりはないんだけど」

むしろ、僕には幸せな時間だった。忘れていた、大切な思い出を、思い出せたんだ。

 

「私も夜去と、一緒の布団で寝たいよ」

少し恥ずかしかった、同世代の女性と寝ることなんてなかった。

姉さん達や、カナヲ姉さんとはよくあったが。

四人で一緒の布団で寝ることになった。でも順番は錆兎さん、僕、義勇さん、真菰さんだ。

 

「なんで、私が端っこなの」

 

「僕、変わりますよ」

 

「夜去が変わったら、意味ないじゃん」

なんでだろう、僕と変われば真ん中になれるのに。

 

「錆兎か、義勇変わってよ」

 

「それは、できない。俺は夜去の横が…いや、玄関に一番近い所で寝ないといけない。不審なやつが来たらすぐ対処できるように」

錆兎さんはやはりかっこいい、早生まれだから二人を守ろうとしているんだ。

 

「俺もできない、もし天井から入ってきた時、俺が全員を守るために真ん中じゃないといけない」

そんなことあるんだろうか、でも鬼は高く飛べるからありえないこともないのかもしれない。

 

「二人とも、夜去の横がいいだけじゃん」

二人は寝てしまった、真菰さんは少し機嫌が悪いみたいだ。

 

「夜去は、人気者ですね」

 

「どうしたの朝。ここ来る?」

 

「自覚ないんですか。でもお邪魔します」

とても幸せだ。未来でも一緒にいられるだろうか。

一緒にいられるように、守れるように強くなろうと改めて思った。

 

 

 

朝起きると、義勇さんと、錆兎さんはまだ寝ていた。多分、夜中に起こしてしまったせいだ、心の中で謝った。

真菰さんは、朝ごはんの準備に行ったんだと思う。

 

「真菰さん、手伝います」

 

「ありがとう、夜去」

「お味噌汁のお野菜切ってて」

置かれていたのは、大根と白菜と牛蒡だった。

 

「夜去、何か隠してることない?」

野菜を切っていると、さりげなく聞かれた。

時の呼吸のことは、絶対に言ってはいけない。

みんなさんは優しすぎる。僕に使わせないために、自分が無理して戦ってしまう。

鬼の首が斬れないことを話そう。

 

「真菰さんは、すごいですね。僕、鬼の首が斬れないんです」

これも、僕の隠していることではある。だから嘘は言っていない。

 

「やっぱり、そうなんだ」

「私も一回思ったの。でも、私と体格も変わらないから、そんなことはないと思ってしまった」

錆兎さんと義勇さんにも話したんだろうか。できれば心配させたくないから、知ってほしくはない。

 

「錆兎さんと、義勇さんは知ってますか?」

 

「まだ、二人には言ってないよ」

 

「二人には、言わないでくれませんか?心配させたくないんです」

 

「二人の秘密だね。わかった、私になんでも相談してね。私はお姉さんみたいなものだから」

 

「ありがとうございます。真菰さんはすごく頼りになります、心強いです」

そう言うと、真菰さんはすごく嬉しそうだった。

真菰さんには、なんでも話してしまいそうだ。でもそんなことは絶対できない。

 

「夜………か…か……ね」

なんて言ったんだろう、よく聞こえなかった。

けど、僕はその言葉をもう一度、聞くことができなかった。

野菜を切り終わったので、次は何をするかを聞いた。

 

「おにぎり、握ろっか」

 

「僕、おにぎり大好きです」

不器用な、もう一人の姉が僕のためにとよく作ってくれた。

形は良くない、でもそれが僕はこの世界で一番美味しく、一番好きだった。

 

「夜去はおにぎりが好きなんだね」

 

「はい!」

真菰さんと二人で作った。でも僕のはカナヲ姉さんと同じで、形が良くなかった。

カナヲ姉さん、ごめんなさい。僕も上手じゃなかった。

義勇さんと錆兎さんを起こして、朝ご飯にした。

 

「いただきます」

 

「真菰、このおにぎり形悪くないか?」

「俺のもだ」

 

「それ、僕が作りました。真菰さんのもあります」

 

「いや、いい。夜去が作ってくれたのなら、ありがたく頂くよ」

そう言って二人は食べてくれた。もっと上手に作れるようになりたいと思った。

僕のは真菰さんの握ったのだからとても綺麗だ。

今度、真菰さんに教えてもらおう。そしてカナヲ姉さんにいつか食べてもらいたいと思った。

 

 

お昼に、鱗滝さんが帰ってきた。

そして一緒に刀鍛冶さんも来た。三人の日輪刀を持ってきたみたいだ。

三人とも水の呼吸にふさわしい綺麗な青系の色だった。

鱗滝さんは、それを見てとても嬉しそうだった。

 

「夜去の、日輪刀は何色なんだ?」

「見せてくれないか?」

鱗滝さんに言われた。刀鍛冶さんも楽しみそうにこちらを見ている。

カナヲ姉さんさんの方を抜いてみたが、やはり色は変わらない。本当は綺麗な桃色なのに。

 

「もう一つの方は、どうなんだ」

刀鍛冶さんがすごく興味ありげに聞いてきた。

これを見せると、何かに気付かれてしまうかもしれない。

入夜さんが、この過去に時の呼吸を知ってる者は存在しないと言っていた。でも、僕はまだ見せる勇気がない。

 

「この刀は、柄の部分しかありません」

今ここで、抜いてくれと言われたら、終わりだ。

 

「夜去にとってその刀はとても大切なの。だから、柄の部分だけだけど、持ち歩いてるの」

真菰さんが言ってくれた。

真菰さんが言ってくれたおかげで刀は抜かなくて済んだ。

 

その夜、鬼殺隊の隊服が届いた。

隊服に袖を通し、カナヲ姉さんの羽織を着て、その上に、輝夜姉さん、咲夜姉さんの羽織を着た。

 

 

全員を助けるなんて夢物語だと言われると思う。

それでも、僕はこの物語を綴る。

英雄譚、そんなだいそれた物語などではない。

今から、失うもの、そして守れるものもあると思う。それでも、地に足をつけてゆっくり進んでいく。

ここから始めよう。

夢物語の萌芽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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