雲居の空   作:くじぃらぁす

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日の下で

「夜去、東の村で任務です。向かいましょう」

隊服が届いた次の朝、それぞれに別の任務がやってきた。

鬼殺隊としての、初任務がとうとうやってきた。

 

「錆兎、真菰、義勇、夜去、頑張るんだぞ。お前達なら大丈夫だ」

返事をして、狭霧山の麓まで共に歩いた。

 

「錆兎さん、真菰さん、義勇さん、またどこかで」

ここから先は、それぞれ別の任務に向かう。

鬼殺隊は数の多い組織ではないので、多くの任務が一人当たりに割り当てられるので、次会えるのは何ヶ月後とかになるかもしれない。

三人は、その間にどんどん成長して、強くなる。三人と肩を並べて歩けるように、置いていかれないないようにしよう。

 

 

「朝、この村でいいんだよね?」

あまり大きな村ではなく、人もあまりいない。

大きな村ではないこともあり、村に住んでいる人達の仲がとても良く、いい村だと思った。

 

「夜まで、少し時間があります。話を聞いてみましょう」

村の人たちには、刀を持っていたこともあり不審者と思われ、快くお話を聞かせてくれる人はいない。

それでもわかったことは、この村で街に買い出しに行った男の人が帰って来なくなったということだ。

 

「あの、帰って来なくなったのは私の旦那なのですが、何かに襲われたのでしょうか?」

鬼以外に襲われた可能性もある、でもここで任務と言われたからには、この近くで鬼が出ているんだと思う。

いきなりこの世界には鬼がいると言われた、あなたの旦那さんはその鬼に襲われたかもしれませんなどと、言われても信じられないと思う

なんて言えばいいか迷った。

でも言わないといけない。大丈です、絶対に助けます、という言葉を簡単に口に出すことはできない。

 

「旦那さんは鬼に襲われた可能性があります」

 

「鬼なんてこの世にいるんですか?」

 

「います、鬼は夜に行動します。そして人を喰います」

日が沈んできたので、女性には家の中に入っていてくださいと伝えて、鬼が出るのを待つことにした。

 

村の周りを鬼が出ないか歩いて回っていた、もう真夜中だと思う。

鬼はぜんぜん現れなかった。鬼に襲われたのではなく、もしかすると獣に襲われたのか、帰ってこられない事情があるのかもしれない。

でも、そんなことはなかった。

 

 

闇に包まれていたが、目の前に何かがいた。

日輪刀に手を添えて、目の前にいるものが何か見える位置まで近寄ると、そこにいたのは男性だった。

 

「大丈夫ですか?」

返事は返って来ない、どこかふらふらと歩いている。それでもなんとかこの村まで戻ってきたみたいだ。

 

「夜去、この男性は鬼です」

気付くことができなかった、この男性からは血の匂いが全くしなかったから。

日輪刀を鞘から抜いて、戦う準備をした。

そして、男性は襲いかかってきた。朝日が昇るまで、男性と戦う必要がある。

この男性に、この村の人は絶対に殺させない。

 

「あなた、どこに行ってたの?」

話を聞かせてくれた女性がやってきた、外でずっと待っていたのだろうか。

 

「女もいたのか。女の方が美味しそうだ」

男性はいきなり声を出した。

ダメだあなたはこの女性だけは絶対に襲ってはいけない。あなたが、世界で一番大切に思っている人だから。

 

「ダメです。この女性を襲ってはいけません」

 

「なぜだ、俺は鬼だ。人を見ると喰べたくてたまらない。それに女は特にだ」

 

「あなたは、覚えていないかもしれませんが、あなたにとって掛け替えのない人です」

頭痛がしたのだろうか、男性は頭を抱えている。そして女性は蹲って泣いていた。

 

また襲いかかってきたらどうしよう、この女性の前で旦那さんを斬ってしまえばこの女性はそれに耐えられるだろうか。

でもどこも斬ることなく朝まで凌ぐことができるのか。

 

「思い出せない、この女が何なのか。なぜ俺はここにいる。俺の言葉からはこの言葉が離れない」

「幸」

この男性は思い出そうとしている、鬼になる前の記憶を。

 

「あなた、それはあなたがつけてくれた名前」

 

「うるさい、うるさい。喰べさせろ」

男性はまた女性に襲いかかってきた。歯に日輪刀を当て、動きを止めている。

 

「絶対にさせない。あなたに人は襲わせない」

「話を少し聞いてください。何か、何か、思い出せるかもしれないです。大切な記憶を」

この男性からは、血の匂いがしなかった。今まで、誰も襲うことなくここに戻ってきたんだ。

 

「あなたがつけてくれたじゃないですか。私達の子供に、数多くの幸せがありますようにといって幸という名を」

男性は襲いながらも涙を流している。苦しいんだ、思い出せないことが。

女性は男性に、お腹を触らせに近づいてくる。僕は止めようとした、でもしてはいけないと思った。

これが最後だと思ったから、この男性が思い出すことができる。

 

「何をする!」

女性は男性の手をとりお腹に持っていった。

男性は傷つけないようにしたんだと思う、少し触って飛びのいた。

 

「美雪と幸」

 

「そうですよ。近字さんの家族です」

近字さんという男性は思い出したようだった。そしてその男性はあったことを話し始めた。

 

「俺は、買い出しに行った帰りに山賊に襲われた。あまりに沢山のものを持っていたから金持ちに見えたんだと思う」

「金を持ってないのを知って、俺を襲った山賊はすぐにいなくなった」

「だから、俺は生きる希望を捨てなかった。そんな時、一人の顔のいい男が現れた」

胸がざわめく。その男は、僕の母と父、そして沢山の人々を殺した鬼ではないだろうか。

鬼舞辻無惨。

 

「その男に笑いながら言われた、生きたくないかと。俺は藁にもすがるおもいで言ったよ。生きたいと」

「その男は、たくさん人を喰って私に貢献しろと言っていた。そして大切な人も喰えともね」

この人を襲った山賊も許せない。それと同じようにその男も許せない。

生きたいという人の思いに漬け込んで。この人が大切な人を襲うところを想像して楽しんでいたんだ。

この人はただ、会いたかっただけだ、大切な家族に。

僕には何もしてやることができない、それがとても苦しい。

 

「俺は生きていてはいけない。今は美雪のおかげで自我を保てているが、いつ襲うかもわからない」

「あなたは鬼狩りさんなんだろう。鬼は首を斬られるか、日に当たると死ねるんだろう。なんとなくわかっている」

 

「はい、でも僕は首が斬れません。僕が首を斬れたらあなたに苦しい思いをさせなくて済むのに。ごめんなさい」

 

「いいんだよ。あなたのおかげで俺は、美雪と話が出来て、幸ともう一度会うことができた。お腹の中だけど」

この人は、僕が傷つかないようにしてくれている、なんて優しい人なんだ。

 

「あなた、お味噌汁飲まない?」

 

「美雪のが飲めるのか?鬼狩りさんいいか?」

 

「大丈夫です。あなたには誰も襲わせません」

 

「頼もしい、ありがとう」

近字さんと、美雪さんと、幸ちゃんのお家にお邪魔した。

二人は、会話しながらお味噌汁を飲んでいた。これが普通だったんだ。

今僕が座っている位置には、いつか幸ちゃんが座って三人でご飯を食べている。

でもそれは、もう叶わない。なんで、なんで、こんな優しい人ばかり奪われてしまうんだろう。

姉さん達もこんな気持ちだったのか、間に合わなかった時、助けれなかった時。

 

「夜去君、ありがとう。君のおかげでもう一度、お味噌汁を飲めた」

「俺は幸せ者だ。もう会えない、話なんてできない、そう思っていた。でも君と美雪と幸のおかげだ」

「あの男に感謝はしない、大切な人を襲うなら俺は行きたいなどと望まなかったからな」

僕なんて何もしてやれていない、感謝なんてされるべきではない。

 

「そろそろ、日の出だな。二人とも置いて行ってすまない。でも俺はお前達の幸せをずっと願っている」

美雪さんは中で待っているように伝えていた。それは近字さんの優しさだ。

僕と二人で外に出てきた。

 

「夜去君、これを渡しといてくれないか?」

 

「いやでも、これは自分で渡さないと」

 

「恥ずかしいんだよ、最後の俺のお願い聞いてくれないか?」

 

「わかりました、渡しておきます」

 

「夜去君、君は優しい。だから、自分をたくさん責めると思う。でも俺は君の優しさに救われた、鬼の俺にまで寄り添ってくれた」

「君はこれから、沢山の人を救える人になるよ」

「でもね、助けれない命もあると思う。そんな時、あまり自分を責めないでほしい。」

「助けれなかった人の中にも感謝している人は必ずいるから、俺のようにね」

そのあと、近字さんは日の下に自分で歩きだした。とても苦しそうに燃えて、消えていった。

美雪さんが中から出てきて、大声で泣いている。

 

 

「美雪さん、これ近字さんからです」

それは簪だった。自分の大切な人、愛している人に渡すもの。

それを受け取ると、美雪さんは簪を抱きしめて、ありがとう、ありがとうと言っている。

それを聞いて、ほかの家から村人の人達が出てきた。

 

「お前、美雪さんに何をした」

石を投げられ、頭に当たり血が流れ出した。でも全然痛くない。

今はそれより胸がどうしようもなく痛い、とても苦しい、張り裂けてしまいそうだ。

 

「違うんです、夜去さんは」

 

「いいんです、僕を庇うと美雪さんも何か言われるかもしれません。中に入っててください」

石が美雪さんに当たったら大変だ、僕は早くこの村から去ろう。

 

「皆さん、お騒がせしてすみませんでした」

「二人をどうか、よろしくお願いします」

僕が言うべき言葉ではないと思う、でも伝えないとこの場からさることができなかった。

 

「早く出て行け」

これぐらい、遠ざけてくれた方がよかった。あんなに感謝なんてされるべきではなかった。

僕が願うのもおかしいかもしれませんが、どうか幸せに暮らしてください。

 

「夜去、血が。すごい出てる」

 

「大丈夫、大丈だから。心配しないで?」

 

「今日は、藤の花の家紋の家に泊まりましょう。少し休まないと」

朝にうまく返事できているだろうか、不安にさせてるかもしれない。

 

「ごめんね、朝」

「ちょっと、耐えられない」

涙は出ないが、歩けない。前に進むことができなかった。

その間、朝はずっと肩に乗ったまま、何も言わずに待ってくれた。

 

 

 

任務は初め緊張したが、鬼の首を直ぐに斬ることができた。

私は、今藤の花の家紋の家で晩ご飯ができるまで転がっている。他にも隊士の人がいるかと思ったが、誰もいなかった。

おばあさんがここの家で、料理、洗濯などをしてくれていた。

そのおばあさんの、おかえりなさいという声が聞こえてきた。

誰か隊士が来たんだと思う、仲良くなれるかな。

 

「こんにちはって、夜去じゃない」

「またすぐ会っちゃったね」

 

「真菰さん、そうですね」

あれ、夜去元気ないのかな?

おばあさんが、晩御飯を作ってくれたので夜去を連れて行く。

 

「夜去の好きなおにぎりだよ。食べないなら私が、全部食べちゃうよ」

 

「はい、あまりお腹が空いてないんです」

やっぱり、絶対に元気がない。私に無理して笑っている、心配かけないように。

 

「夜去、食べないと。何も食べてないでしょ」

 

「朝、ごめん。食べれない、喉を通らないんだ」

「お風呂、入ってくるね」

夜去がいなくなるのを待って、私は朝に何があったのかを聞いた。

 

「朝、何があったの?」

 

「鬼にされた男性に会いました。その男性は、鬼でしたが自我を取り戻しました」

鬼が自我を取り戻した、そんなことありえるのだろうか。

鬼は家族関係なく襲って、喰べてしまう。

 

「夜去は、その男性が愛する女性と少しの時間ですが、一緒に過ごせるように二人を見守りました」

「二人はとても感謝していました。でも夜去はそう思っていない」

「助けれなかった自分、鬼の首を斬れなく日の下で苦しみながら殺してしまった自分のことを、感謝されるべきではないと思っています」

「そして村の人から、その女性に何かした人だと思われ、たくさん石を投げられ、罵詈雑言を吐かれました」

そんなことがあったのか。夜去は特に優しいからすごく気にしていると思う。

でも、村の人もそれはないだろう思った。夜去は守ったのに、村の人、その女性と男性を。

 

その話を聞いたあと、私は何も声をかけてあげることができなかった。

お布団を敷いてもらい、別の部屋で寝ることになった。

私は、おばあさんにご飯はないかと聞くと、まだあるよと言っていたので、おにぎりを作って持っていくことにした。

鬼の男性の話を考えながら握っていると、すごく大きくなってしまった。

 

「流石に、大きすぎたかな」

「夜去中いる?入るよ」

でも部屋に夜去の姿はなかった。

どこ行ったんだろう、朝もいないし。

探していると、縁側で座って空を見上げている夜去がいた。

 

「朝、僕は鬼の首を斬れなくとも、みんなを助けられると思ってた」

「でも鬼になってしまった人達のことを、ぜんぜん考えてなかった」

「僕が鬼の首を斬れないから、すごく辛い思いをさせてしまった」

「相手に寄り添ってあげない人は、弱い人と言っておきながら、僕もその弱い人だったよ」

「僕は、ぜんぜん強くなんてなれてなかったんだ」

夜去ほど鬼のことまで考えている鬼殺隊員はいないと思う。それが、夜去の良いとこであり、悪いところでもあると思う

けど、私はその言葉を許さない。

 

「夜去何言ってるの!あなたは弱くなんてない」

「鬼に大切な人を奪われて、それでも鬼にやさしくなんてできない。夜去も大切な人を奪われたんでしょ?でもあなたは、鬼のことまで考えてあげられる、それは強いってことだよ」

「その男性は夜去に感謝してたんでしょ?なら、あなたが否定してどうするの!」

 

「感謝なんてしてほしくなかった。ありがとうなんて言われたくなかったよ」

私は夜去の顔を叩いていた。

 

「そうして欲しかったよ、二人にも。でも二人は、二人はありがとうって」

 

「二人は、本当に感謝してたんだよ。最後に少しの間だけでも、家族で過ごせたんだもん」

「夜去はどうしてあげたかった?」

 

「せめて、せめて苦しくないように、首を斬ってあげたかった」

 

「わかった、ならこれから夜去と一緒に任務に行く。あなたが斬れない首を私が斬る」

何か言いたそうだったけど、私は話させずに口におにぎりを突っ込んだ。

 

「黙って、食べて」

私は夜去を優しく抱きしめた。

夜去は、涙をぼとぼとと落としながら、おにぎりを食べていた。

やはり、朝がいってたようにこの子は泣き虫だ。でも人のために涙を流せる、とても優しい子。

私がこの子を支えよう。この子にできないことを私がしてあげよう。

放っておくことができない、錆兎と義勇もそうなんだろう。そして、二人とも夜去のことが好きだ、私も好きなのかもしれない。

いや大好きなんだと思う。

すごく大きかったおにぎりを全部食べて、そのまま私に抱きついたまま肩で眠ってしまった。

 

「真菰さん、ありがとうございます。夜去は、真菰さんがいないと壊れていたかもしれません」

 

「大丈夫だよ、夜去は今からどんどん強くなっていく」

これから、何度も何度も、挫けて、転んで、後悔して。でも立ち上がって、進んでいくと思う

今、流したたくさんの涙は次の糧に間違いなくなる

私は信じてるよ、夜去

 

 




オリジナルの敵はやめました。

でも、これだけは必要でした。真菰ちゃんと任務に行くために。

鬼の首を斬れないことを僕が一番甘く考えてた。朝まで戦うしかないんだもん。
急遽いれた話だから少しおかしいかも…

読んでいくれている方々、ありがとうございます、これからも頑張るのでよろしくお願いします。

感想や評価をしてくれると励みになりまず。

日常回を少し書いてもいいですか?三人との日常もあります

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